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ドジ娘と罰、おまけに噂

 考えてみると、他の国に行くのは久々です。

 ファニエスタ王国にきた理由は、成り行きですが。

 考えても仕方がないですし、楽しんでいきましょう。

「少し離れた所にあるけど、ここもファニエスタ王国の敷地内だから」


 エスタさんは馬車が止まった家の前で言いました。

 このお家がエスタさんやミーナさん、クルトさんが住んでいる家なのでしょう。

 でも、おかしいですね?貴族だと思うのですが、豪邸とまではいきません。


「ここは私個人で持っている家なのよ。実家ではないからね」

「そうなのですか」


 お家としては大きな家です。きっと、実家は豪邸なのでしょう。


「遠慮せずに中に入って」

「ルリアルカさん、どうぞー」


 エスタさんとミーナさんが家の中に入っていきました。クルトさんは馬車を置きに行ったようですね。


「おじゃまします」


 入口をくぐると、きれいな空間が広がっていました。

 三人で座るであろう椅子が少し大きなテーブルと一緒にありますね。テーブルから少し離れた壁際には炊事場があります。ミーナさんが使用人と言われていましたし、料理を作るのでしょう。


「くつろいでいって」


 エスタさんが椅子を引いてくれました。素直に座りましょう。


「私は飲み物を取ってきます」


 ミーナさんは炊事場の方へ向かっていきます。


「さてと、本題だけど」


 私の正面の椅子にエスタさんが座りました。


「本当にごめんなさい。ミーナが問題を起こしてしまって」

「いえ、何度も謝られるほどの事ではありませんから」

「いいえ。これは主として大事なことです」

「………」


 エスタさんは引いてくれなさそうです。どうしましょう?


「ルリアルカさんがいてくれて助かりました。でも、私は問題ばかり……。あの狼はやっぱり悪い子ですよ!」


 ミーナさんが飲み物を入れたコップをトレイに乗せて運んできます。

 まだ根に持っていたのですね。


「子供の狼でしょ?噛まれたりしたのならまだしも、じゃれつかれただけみたいだし」

「いいえ!私はあの狼に襲われたのです!そうでなければ、問題にはなりません!私は薬瓶を取られないように、こうやって腕を上げて!」

「「あ……」」


 私とエスタさんの声がはもります。

 トレイとコップは綺麗に宙を舞い、そして落下していき。


「あー!」


 ミーナさんの叫び声と同時に、コップが私の頭にぶつかりました。ぶつかったというより、被ったというのが正しいのでしょうか?私の頭の上にコップが乗っていますから。中身は逆さまになっているので全て被りましたよ?

 幸いなことにコップは木製だったので割れることはありませんでした。割れる素材だと、破片で怪我をする人が出るかもしれませんから。え?落ち着いている場合か?ですか?別に飲み物を被ったぐらいです。怒ったりしませんよ?


「えっと、その……」


 ミーナさんがゆっくりと近づいてきます。


「冷たいですが、おこ……」

「何やってるのよ、お姉ちゃん!」


 私の声を大声で遮ったのは、エスタさんでした。本当にびっくりです。それに、お姉ちゃんですか。何か色々と理由はありそうですが、見守るしかなさそうですね。


「本当に昔から変わらない!ドジばっかり!」

「お嬢様!?」

「いつもいつも、ハラハラするのは私なのよ!まったく、私がどれぐらい心配してるかわかってる?」

「それはわかってますから!今はお客様が……」

「そうよ!お客様でもある、ルリアルカさんをまき……こ……んで……」


 エスタさんがゆっくりとこちらを向きます。そんな泣きそうな顔をしなくてもよいのですが……。


「ほ、本当にごめんなさい!お姉ちゃんにはきつい罰を与えますから!ルリアルカさんが望むなら、その辺りの森の中に縄で縛って投げ捨てますから!」

「酷い!」


 確かに酷い内容です。

 お姉ちゃんと呼ぶミーナさんを縛ってから投げ捨てるとか……。


「!?」


 ふと、背筋が寒くなりました。

 目に浮かんだのは、レティアが私を縄で縛りあげて投げ捨てる光景。

 とても冷たい目をして、私を見下ろし。


「残念美人な姉を持つと私が苦労するのです。そんな、ルリお姉ちゃんは縄に縛られて転がっているといいのです」


 と言い放ちました。

 ダメです、お姉ちゃん泣いてしまいそうです……。


「とりあえず、お風呂を沸かしますから!お姉ちゃん、お風呂を沸かしてきて!あと、タオルも!」

「は、はい!」

「ルリアルカさん、本当に……って、ルリアルカさん!?」

「え……?」

「大丈夫!?いきなり、涙を流したから……」


 目の前にエスタさんがいます。

 そうですよね。今のはただの幻です。レティアがそんなことするわけないのです!


「大丈夫です。被った果実水が目に入ったので、少し痛かっただけです」

「よかったわ……。怪我で痛かったとかじゃなくて」


 エスタさんが真剣な目をしました。


「度重なる無礼、誠に申し訳ございません……。命を救ってくれた恩人に対して、仇となることばかり。お望みでしたら、私の命すら差し上げます。ですから、お姉ちゃん……ミーナの命だけは」

「何を言ってるんですか!命を差し上げるのなら、私のでいいの!」


 タオルを持ってきた、ミーナさんが階段を駆け下りてきます。

 お風呂等は二階にあったのですね。


「タオルをどうぞ」

「ありがとうございます」


 タオルを受け取ってから、被ったままのコップを手に取ります。髪が拭けませんからね。


「その……ルリアルカさん!」

「え?」


 目の前まで詰め寄ってきた、ミーナさんに驚いてコップを落としそうになりました。


「命を差し出せというなら、私の命をこの場でどうぞ」

「いいえ!私の命です!これは主の責任ですから!」

「別にそんなことを言うつもりはありませんよ……」


 私一人、冷静に髪を拭きながら返事をします。


「そんな!?」


 ミーナさんが後ろに下がりました。私の方が驚いていますよ?


「ルリアルカさんは優しすぎます!問題を起こして、さらに巻き込んでるのに!そんな優しい人は損をしますよ!」

「お姉ちゃんは黙って!全ての人が優しいわけじゃないの!ルリアルカさんのようにふわふわとした感じの人が優しいだけよ!」

「酷い言われようです」


 色々と言われてますが、これはどうすればいいのでしょう?

 目の前ではお二人が言い合いをしています。わかったことと言えば、エスタさんとミーナさんは姉妹の様なもので、似た者同士ということですね。大声を出してはいても、お互いを気遣っているのがよくわかります。

 内容は物騒ですけど……。


「何があったんだ……?」


 声の方を見ると、呆れた顔をしたクルトさんがいました。


「聞いてよ!お姉ちゃんがまたドジをして……」

「それはわかってる」


 クルトさんが申し訳なさそうに私を見ています。

 もしかすると、お二人のお兄さんなのかもしれませんね。


「クーちゃん、聞いてよ!私が失敗したのに、エーちゃんが責任を取ろうとしてるの!」

「ダメだなこれは……」


 クルトさんは片手で顔を覆いました。


「ルリアルカさん、少し耳をふさいでおいてくれないか?」

「わかりました」


 言われた通りに両耳をふさぎます。

 直後。


「少しは落ち着け!客人に失礼だろう!」


 クルトさんの大声が響きました。




「「本当に申し訳ありません……」」


 エスタさんとミーナさんがテーブルに両手をついて頭を下げました。


「私は気にしてません。ですから、お二人とも顔を上げてください」

「……これが貴族の間での出来事なら、私とお姉ちゃんは殺されても文句は言えません」


 エスタさんとミーナさんは顔を上げてくれましたが、エスタさんは目を瞑ったまま言いました。


「恩を仇で返す。私が一番嫌いな行為……。でも、それを今行っている。私は自分が許せません……」

「それは私がやった……」

「ルリアルカさん」


 エスタさんはミーナさんを手で制し、目を開けて私を見ています。


「私に罰を下さい」

「エーちゃん!?」

「……どうしてそこまでするのですか?」


 はっきり言って不思議です。私は本当に気にしていません。

 ですが、エスタさんとミーナさんは何かが違います。何と言えばいいのでしょう?

 罰を求めている?外れてはいないと思います。


「私の父は罪となる行為を平気でする人でした。自分が正しいとしか思っていない。だから、私はそんな父が大嫌いです。……そんな父と同じようになりたくないのです!ですから、どうか……無茶を言っているのはわかりますが」

「嫌です」

「そんな!?私の気持ちを考えて……」

「そんな気持ちはわかりません。私は最初から謝罪を受け入れています」

「ですが!」

「私は謝罪を受け入れましたよ?それ以上、望まれても困るのです」

「………」

「自分で無茶を言っていると言ったろ?ルリアルカさんを困らせるんじゃない」

「クルト……」


 クルトさんの意見は聞いてくれるようです。


「……そこまで、罰が欲しいのですか?」

「ルリアルカさん!?」


 ミーナさんが慌てだします。クルトさんは複雑な表情をしていますね。


「もしも、罰を与えるのなら……命だけはとらないでやってほしい」

「私は短気ではありませんし、貴族でもありませんからね」


 私はエスタさんに向き直り、告げました。


「エスタさんに罰を与えます」

「……はい。心して、その罰を受けます」

「罰は……」

「ルリアルカさん、お願い!エーちゃんに酷い事しないで―――!」

「私の背中を流してください」

「「「……は?」」」


 三人とも息がぴったりです。


「私は頭から、飲み物を被りました。それも果実水ですから、身体がべたべたするのです。だから、罰としてお風呂で背中を流して欲しいのですよ」

「そんなのは罰じゃないわ……」

「この罰はエスタさんが決めるものではありません。被害者である私が決めるものです」

「っ!」

「私からすると、エスタさんとミーナさんはお互いを守るように動いているとしか思えませんでした。罰を与える?はっきり言いますと、今私が背中を流して欲しいと言ったことすら、私は言いたくありません。お風呂は楽しく入る場所です。罰で入る場所ではありませんからね」

「ですが……」


 エスタさんは納得できない感じです。これは確認をしないとダメですね。


「もしも、謝罪を受け入れず、罰だけ与えた時はどうしましたか?」

「素直に受け入れます」

「わ、私も!私がやったんだから、受けるのは私です」

「……私がお二人に対して、今後まともに生きるのが無理な身体になるような罰を与える……そう言った時はどうしますか?」


 底冷えするような声でいいました。


「それでも……それは罰です。受けなければいけないものですから」

「なら、エスタさんの目の前で、ミーナさんを串刺しにします。その後で削るように斬り付けて、その度に上がる悲鳴を延々聞かせましょう。目を背ける仕草をすれば、ミーナさんはさらに酷い悲鳴を上げることになります。殺したりはしません、ただの罰ですからね」

「串刺し?……お姉ちゃんの悲鳴?……うっ」


 エスタさんはその光景が想像できたようです。


「ミーナさんの場合はエスタさんを目の前で八つ裂きにしてさしあげます。当然、助けることができないように縛って転がして。目の前で切り刻まれて悲鳴を上げ続けるエスタさんを見続ける空間を作ってあげます」

「そ、そんな……」

「立ち直れないというぐらい追い詰めて上げます。自分が言った言葉が失敗であると認識し、手遅れだったとわかるように」


 私は二人に笑顔でいいました。

 ビクッと身体を跳ねさせてから、二人が抱き合うようにして震えています。


「このような事でも、罰として受けるのですよね?」

「嫌です!エーちゃんのそんな姿なんて見たくない!」

「私も……お姉ちゃんのそんな姿は見たくない……」

「罰が欲しいと言っておいて、拒否できると思っているのですか?」

「「え……」」


 二人は完全に固まりましたね。


「お互いを大事にしているのはいいですが、そんなものは罰を与える側からすると、どうでもよいことなのです。つまり、お二人の意思は関係ありません。……お二人の悲鳴はさぞ綺麗な声で響くのでしょうね」

「………」

「う……あぁ……」


 エスタさんは呆然とミーナさんはどうすればいいのかわからないと言った表情です。クルトさんは私の意図に気が付いたみたいで静観しています。


「本当に罰を求めるのなら、どちらが求めるのですか?」


 私は立ち上がって二人にいいました。


「わ、私が……」

「エーちゃんダメ!私が受けます!私が受けますから……エーちゃんは……」

「そうですか」


 私はミーナさんの所へ歩いていき。


「なら……」


 ミーナさんの目の前で腕を振り上げて。


「あなたから先に死になさい」


 言い終わると同時に腕を振り下ろし……ませんよ?


「あ、あれ?」


 ミーナさんが涙を流しながら、私の方を見上げています。


「あ……あぁ……」


 エスタさんは……完全に放心してますね。


「冗談ですよ?」


 そんな酷い事するわけがありません。お二人は少し自覚がなかった気がしましたので追い詰めましたが、やり過ぎたかもしれませんね。


「本気なら俺も止めに入るし、二人にはいい教訓になった気がする。少しやり過ぎかもしれないけどな」


 クルトさんが二人の頭をポンポンと叩いた直後、エスタさんとミーナさんが大声で泣きました。




「お風呂はどの国でも共通です」

「私はこの国のお風呂しかしらないわ」

「エーちゃんに同じくー」

「ミーナ……」


 ミーナさんはエスタさんを『お嬢様』とは呼ばずに『エーちゃん』と呼んだままでした。


「今更だよ?それに私はいつだってエーちゃんって呼びたいの」

「私だって本当はおね……」


 エスタさんが私の方を見ています。


「私は貴族ではありませんし、気にしませんよ?」

「……気が緩みすぎるのも問題ですから」

「ええー」

「色々あるのですね」


 私は気にせず、服を脱いでいきます。お風呂は大事なのです!


「あとは髪を解いて……?」


 ふと、二人の視線が私を向いているのに気が付きました。


「ルリアルカさんは小さいのにスタイルがいいわね」

「エーちゃんもこれぐらいあればいいのに……」

「ミーナ!?」

「普通だと思いますけど」


 三つ編みを解けば、あとはお風呂場に入るだけです!


「背の高さはルリアルカさんが一番小さいのに……」


 エスタさんはスレンダーな方です。細いので綺麗なのです。


「ルリアルカさんは小さいのに反則かも?……触っていい?」

「別にいいですけど?」

「ミーナ!お客様に何を言って……」

「うわぁ……」


 ミーナさんが私の胸に触れて、驚いた声を上げました。


「同じ女性でもこれは羨ましいなー。ふわふわだし、肌もすべすべ。エーちゃん、これは触らないと損だよ!」

「そ、そんなに……」

「……かまいませんよ」


 エスタさんが息を呑みながら私の胸に触れました。手が震えてますね。


「これが私達と同じ女性……?とても柔らかくて、すべすべ。何かしら……誰にも渡したくなくなるわ」

「エスタさん、ちょっと強く掴みす……やん!」


 私が声を上げると、エスタさんは真っ赤になってしまいました。


「……これは反則だわ。ルリアルカさんがいれば、この国の男は全員落とせる。女性に目のない男だと操り人形にも……」

「私を使って物騒なことをする話はしないでください!」

「あ、ごめんなさい……」

「エーちゃん、柔らかくて、もふもふしたの好きだもんね。ぬいぐるみとか」

「ちょっと、ミーナ!」

「あはは。捕まりませんよー!」


 ミーナさんはお風呂場の扉を開けて、中に入ると同時に。


「ふえっ!?」


 と声を上げ、足を滑らせ。


「わ……わわっ!あー!」


 頭から浴槽に落ちました。


「ミーナ、大丈夫?」

「は、はいぃ……なんて、道連れですよー!」

「え、きゃっ!」


 エスタさんはミーナさんに腕を引っ張られて、浴槽に引き込まれていきました。


「お風呂は静かに入るものですよ」


 私はシャワーを見つけたので、静かに浴びていました。髪をよく洗わないとですからね。


「ルリアルカさん、シャワーの横にある石鹸で髪洗ってね」

「ミーナさん、ありがとうございます」


 私は髪を洗うことに専念することにしました。


「凄いわね」

「そうですね」


 髪を洗いながらでも、お二人の声は聞こえます。何が凄いのでしょうか?


「背が小さく可愛くて、水に濡れると物凄く色っぽくなる……。貴族じゃなくても、沢山言い寄られてそうね」

「羨ましい話です。私もルリアルカさんのような色気があれば、よい方と巡り会って……」

「私はもてたりしませんよ?」


 私が事実を言うと。


「「そんなわけない!」」


 と、一蹴されました。


「ルリアルカさんに声を掛けない男は情けなさ過ぎるわ!フェイマスの男はそこまで自分に自信がないのかしら?」

「もしかすると、ルリアルカさんに近づけなくて、声を掛けれないのかもですよ!ルリアルカさんの知らない所で、「ルリアルカさんを守る会」みたいなのがあったりして……」

「そうね!それに違いないわ」

「本当にそんなことはありませんよ。私はいつも受付をしているだけですから」

「……そういえば、今日が初給金と言ってたわね。ルリアルカさんの仕事に興味があるわ」

「私も興味があります!」


 お二人が浴槽からこちらに顔を向けています。


「本当にただの受付です。今日はギルドの受付をしていました」


 水分を吸った髪をかきあげて後ろに流します。


「ギルドで受付をしているの?」

「はい。買い取りとか楽しいですよ」

「私はギルドの職員と話をするの初めてかもしれないわ。……ミーナ?」


 エスタさんが急に黙ったミーナさんに声を掛けています。お風呂は温かいのですが、ミーナさんは真っ青です。まさか、湯あたりですか!?


「ミーナ、青い顔をしてどうしたのよ!?」


 エスタさんがミーナさんの両肩を掴んだ途端。


「……エーちゃん、フェイマスのギルドの受付の噂知ってる?」


 湯あたりではなさそうですね。安心しました。


「ギルドの受付の噂?聞いたことないわ」

「そうだよね……。もっと早く気が付くべきだったんだ……」


 ミーナさんは顔を青くしたまま、こちらを向きました。


「ルリアルカさん、フェイマスのギルドで有名な方がいるの知っていますか?いえ、知っていますよね?」

「有名かどうかはわかりませんけど、もしかすると私のことかもしれませんね」

「やっぱり―――!」


 ミーナさんは浴槽から勢いよく立ち上がりました。


「エーちゃん、今までありがとう。……お姉ちゃんは明日が命日です」

「いきなり不吉なこと言わないでよ!?」

「だって、だって―――!ルリアルカさんがギルドの受付って知ってたら、もっと早く対策したんだよ!でも、もう手遅れ!どうしようもないの!」

「落ち着きなさい!浴槽でバシャバシャと暴れないの!」

「うぅ……落ち着いてられないよー!そうだ……せめて、エーちゃんの事だけは守らないと」


 ミーナさんは諦めたような笑顔を私に向けています。


「お願いします、エーちゃんだけは助けてください。なんでもします……あなたが奴隷になれと言えば従います。ですから、エーちゃんだけはどうか!」

「えっと……」


 ミーナさんの慌てように心当たりがありません。嘘ではありませんよ?本当に心当たりがないのです。もしかすると、私が受付というのが何かまずかったのでしょうか?

 それぐらい、ミーナさんは必死なのです。涙をボロボロ流しながら震えて。

 私は苛めていませんからね!


「エーちゃんだけは、エーちゃんだけは!お願いだから……助けてあげて……」

「ミーナさん」

「お願いしますから……」


 ミーナさんに近づいて声を掛けます。髪を洗っている場合ではありません。だって、この怯え方は普通じゃないです。本当に怖がって怯えていますから。


「宜しければ、事情を説明して欲しいのです。私からすると何にそんなに怯えているのかもわかりません。力になれることがあれば、力になります。ですから、泣き止んで話してくれませんか?」

「本当ですか……?」

「はい。私ではお役に立てませんか?」

「いいえ……。ルリアルカさんしか解決できないの……」


 ミーナさんは私の手を両手で掴み。


「ありがとう」


 と、泣いたままですが、笑顔でいいました。


 本当に心当たりがないのですが、力になって上げましょう。

 お二人に害が及ぶなら、私が払って上げます。



「……私だけ話が全然わからないわ」


 エスタさんは浴槽のすみっこで拗ねていました。

 ファニエスタでも受付の噂は広がっていました。

 理由は他国のギルドで依頼を受けるのは普通だからです。


 ミーナが怯える理由は何か?



 次回の更新は書き終わり次第となります。

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