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給金の使い方

 ギルドのお仕事は初日の方が派手でした。

 今は平和なものです。

 何か起きると、シエラさんが解決してしまいますしね。

「ルリさん、買い取りお願いできます?」


 今日はギルドの受付のお仕事です。魔法が使えないのに危なくないか、ですか?

 皆さん、いい方なので大丈夫です。 


「はい。買い取り内容は何でしょうか?」


 お仕事に慣れたと思います。といっても、買い取りばかリですけど。

 こちらの方は印象が大事らしく、私に向いているそうです。


「買い取りはこれなんだけど」


 私の目の前に置かれた物は鉱石でした。


「赤鉱石ではありませんね……朱鉱石ですか?」

「……ルリさん、知らない事ってあるの?」


 私の予想は当たったようですね。島生活はダテではないのです!


「ありますよ?」

「私は冒険者生活長いけど、知識が負けてそうで自信なくしそうだよ……」

「勘違いはしてはいけませんよ?私は受付ですから、知識があって当然なのです。冒険者の方も知識はありますが、覚えている知識量は受付の方が多いのです。だから、自信をなくす必要はないのです」

「そっか、これからも頑張るよ」

「はい。えっと査定ですが朱鉱石はギルドマスターの部屋みたいですので、案内しますね」

「ありがとう」


 私は冒険者さんを連れて、ウェイスさんがいるギルドマスター室へ向かいました。



「朱鉱石を持ってきた、冒険者の方をお連れしました」

「入ってくれ」

「どうぞ、私はこれで……」

「ルリアルカさんはこっちに」


 定番といっても不思議じゃなくなってきました。私が案内をするといつもウェイスさんの横で座ることになりますからね。

 言われた通り、ウェイスさんの横にある秘書さんの椅子にすわ……あれ?


「私の名前が書いてあるプレートがあるのですけど……?」

「ああ、ルリアルカさんが案内してくれた時はそこに座ってくれればいい。教訓なども話してくれるから、他の冒険者からの要望でもある」

「……そうなのですね」

「ルリアルカさんが思っている以上に、周りは見ている。働き者だしな」

「私は普通にお仕事をしているだけですよ?」

「それでもだ。……今更だが、ルリアルカさんを無給で働かせるのが忍びなくなってきたな」

「え!?ルリさんって、ただ働きなんですか!?ギルドマスター、さすがにそれは酷すぎる……」


 ウェイスさんと冒険者の方の意見が出た所で。


「私は無給でもよいのですけど?」


 思った通りのことを言っただけですが……。


「これは真剣に考えないとダメだな……」

「ルリさん、欲が無さ過ぎるのもそこまでいくと……」


 何故か、悲しそうな目で見られてしまいました。

 何かしましたか?


「そう言われましても、私は別にお金が目的で働いているわけではありませんから」

「ギルドマスター、その朱鉱石の買い取り金、全部ルリさんに上げてください。さすがにこれは見てるのがつらい……」

「これは普通に買い取って、私がルリアルカさんに給金を払えば済むことだ」

「えっと、私の意見は……」


 見事に私の意見は聞いてもらえていません。

 ……泣きますよ?


「じゃぁ、半値をルリさんへ」

「お前も欲がないと思うが?」

「かまいませんよ。ルリさん、これで服を買うなり、美味しい物を食べるなりしてください」

「……美味しい物?」


 美味しい物に反応してしまいました。


「……ギルドマスター、ルリさんすごく幸せそうな顔してるけど……今まで気が付かなかったのこれ?」

「話には聞いたことはあるが、ここまでとはな……。これからは給金を払うから、ルリアルカさんの自由に使いなさい」

「いえ、別に私はこのままでいいの……」

「ルリアルカさん、私も良心が痛むのだよ……」


 私は給金を受け取ることにしました。

 お金には困っていませんよ?




「……どうしましょう?」


 私は朱鉱石を持ってきた冒険者さんの買い取りが終わった後、今日の仕事がそこで終わりになってしまったのです。ウェイスさんが強制的に打ち切って……。

 

「給金ですか」


 私はスカートのポケットに入っている、お財布を取り出して中身を確認します。

 今の服装ですか?赤いブラウスに黒い少し丈の長いスカートですよ?刺繍などは目立たないシンプルな物です。え?女の子なんだからもっと可愛い物を?服なんて着るだけなのですから、そこまで気にしません。


(金貨が10枚あります……)


 正直に言いますと、多いです。

 ウェイスさんは「給金も兼ねているが、お小遣いとして使いなさい」と言いました。


(ウェイスさん、これはお小遣いという額ではありませんよ……)


 小さくため息を吐きながら、お財布をしまいます。


「?」


 考えながら歩いていると、悲鳴の様なものが聞こえてきました。


「近くです」


 声は若い女性だと思います。悲鳴が聞こえたのは裏路地みたいですね。

 走れば直ぐ着く距離ですし、大事にはならないはずです。

 なので、一気に駆け抜けます。魔法が使えないので普段よりは遅いですけど。


「返して!返してよ!」


 裏路地に着くと、私と同じぐらいの歳の女性が……。


「わふわふ!」


 小さな狼に絡まれていました。絡まれているというのが正しいのかもわかりませんけど……。


「それは大事なお薬なの!だから、返してってば!」

「わふ!」


 女性が狼に飛びつくと、狼は横に「ピョン!」と飛び跳ねて避け。


「きゃん!」


 女性が地面に顔からぶつかり、狼の様な悲鳴を上げました。


「何事ですかこれは……」


 女性が顔を押さえながら起き上がろうとすると、狼は後ろから飛びかかり……。


「きゃん!」


 と、また地面に顔をぶつけています。


「もう、怒ったんだから!」


 女性がそう言うと、背後にいるであろう狼に向かって背を向けたまま後ろに倒れ……。


「きゃん!」


 と、後頭部を地面にぶつけて、うずくまってしまいました。

 なんでしょう?この残念な方は……。え?残念美人が言うな?うるさいですよ!


「うぅぅぅ……」


 うずくまって、呻いている女性の横で狼が勝ち誇ったような顔をしています。


「はい、そこまでです。悪戯はダメですよ?」

「わふ!?」


 狼は簡単に抱えられて、驚いたような鳴き声をしました。

 魔力は感じません。普通の子供の狼ですね。


「大丈夫ですか?」

「へ!?あ、はい……」


 頭を押さえながら、女性がゆっくりとこちらを見ます。


「あ、あの……ありがとうございます。って、あぁ――――!」


 女性が指した方向を見ると。地面に落ちて割れている薬瓶が目に入りました。


「どうしよう……。この国のお金、もう持ってない……」


 思い切り、沈んでますね。


「お嬢様にお薬を渡さないとダメなのに!すみません、その狼を渡してくれますか?八つ裂きにします!」

「ダメです。そんな物騒なことはダメなのです。ほら、あなたも謝りなさい」

「わふ……」


 狼が申し訳なさそうに小さく吼えました。


「ダメです!許しません!そんな可愛い顔をして許してもらおう……なん……許します!」

「どっちですか……。でも、よかったですね。許してくれたそうですよ」

「わふ」


 私は狼を地面に降ろすと。


「わふ!」


 と吼えて、女性に飛びついていきました。

 動物に好かれる方なのかもしれません。


「そんなに飛びついても、何も持ってませんよー!」


 女性の周りを狼が走っています。何か忘れていますよね?


「お薬とか言っていませんでしたか?」

「ああ!そうでした……。お嬢様に届けるお薬が……」


 崩れ落ちましたね。


「そんなにも大事なお薬なのですか?」

「はい……。この国にしかない薬で、私たちの国では交易でしか手に入らないの……」

「そうですか」

「……どうしよう。あのお薬がないとお嬢様の命が……」


 女性が青ざめていますね。……命?


「お薬がないと、そのお嬢様という方の命は?」

「……なくなります」

「それを早く言ってください!どこに売っているのです!早く案内してください!」

「は、はい!」


 私は女性に道案内をしてもらいました。狼はトコトコとついて来てましたよ?




「何から何まで、すみません……」

「気にしなくていいのです。早く届けて上げないとダメなのです」


 私は案内されたお店でお薬を買い、それを持って歩いています。狼ですか?今は王都から出て歩いているので、途中の森で帰しました。王都にいても捕まえられて酷い目に合うかもしれませんからね。名残惜しそうにこちらを見ていましたが仕方がないのです。


「そろそろ、馬車が見えて……。あ!あれがそうです!」


 確かに馬車があります。でも、豪華な馬車ですね……。

 二人で馬車に近づいていくと。


「ミーナ!遅いぞ、何をやっていた!」


 馬車の直ぐ傍にいた若い男性が、女性を怒っていました。


「ちょっと、問題が起きて……」

「また問題を起こしたのか!まったくお前は……。だが、今はいい」


 男性が私の方へ向き、腰に下げている剣に手をかけ。


「お前は誰だ?」


 言い終えると剣を抜き放ちました。


「この人はいいの!私を助けてくれたの!」

「助けた?目的はなんだ!」

「目的と言われましても。目的があるとすれば、このお薬を届けに来たとしか言えません」

「なぜ、お前が薬を持っている!」

「ちょっと!私の話を聞きなさ……」


 やり取りをしている間に、馬車の中から音が聞こえました。人がいるのはわかっていましたよ?気配がありますし、きっとこの人がお嬢様と呼ばれる方なのでしょう。あれ?気配が徐々に弱くなってますね。少し危ないかもしれません。


「すみません、馬車の中を見させてもらいます」


 私は剣を向けている男性を無視して馬車に近づいていくと。


「斬られたいのか!」


 馬車の目の前で遮られました。この人は一大事と気が付いていないのでしょうか?


「だから、私の話を!」

「うるさい!お前が失敗したから、こんなわけもわからない女に!」

「うるさいのはあなたです。お薬を必要としている人がいるのに、状況がわかっていないのですか?」

「黙れ!」


 頭に血が上っているのか、私の話を聞いてくれません。このまま、無視しましょう。


「きさま!」


 声と同時に剣が振り下ろされます。


「……はぁ」


 振り下ろされた剣を避けると同時に、男性の腕を掴んで、そのまま引っ張り。


「何を!」

「雑です」


 強引に振り払おうと腕に意識を集中した所で、両足を払って宙に浮かせます。簡単に言いますと、派手に躓いた状態ですね。このまま、倒れると剣に当たるので、剣は蹴り飛ばしておきます。


「ぐっ!」


 男性が地面に倒れるのを確認して。


「頭を冷やしなさい」


 肩越しに言いながら、私は馬車のドアに手をかけ、開けました。


「う……うぅ………」


 中では女性が胸を押さえて倒れていました。薬は間違いなく必要ですね。


「大丈夫ですか?」

「む……胸が……くる……し……。ミ……ナ……」


 意識があるのかは怪しいですが、命があるのが一番です。


「私はここに!ど、どうすれば!」

「落ち着いてください。この方にお薬を飲ませる時はどの様に飲ませたのですか?」

「お薬は普通にスプーンにひとさじですが……」

「スプーンなんてありませんね」


 馬車を見渡しますが、それらしき物はありません。馬車で買いに来て、戻ってから飲む予定だったのかもしれませんね。


「この薬はきついお薬なのですか?」

「それほどきつくはありません。少量でも効果がありますが、多く飲んでも危険はないお薬です」

「そうですか」


 私は薬瓶の蓋を開けて女性を起こし、そのまま飲ませることにしました。


「……う……げほっげほっ……うぅ……」

「お、お嬢様!?」


 ダメですね。飲んでくれません。


「あ、ああ、どうしたら!どうしたらいいの!?」


 こちらは完全にパニックです。


「おい、お前……」

「なんですか?」


 振り返るのも面倒です。こんな無礼な人は背中越しでよいのです。


「……なんとかなるのか?」

「あなたが邪魔をしなければ、ここまではならなかったかもですよ?」

「そんな……」


 後ろから力のない声が聞こえます。


「大丈夫です。意識が戻るのは少し時間がかかるとは思いますけど」

「悪い冗談をいうな!心臓に悪い……」

「落ち着いて人の話を聞いていれば、このような事にはならなかったのです」

「……すまん」

「もういいですよね?私は治療に専念しますから」


(この人は胸を押さえていますね。心臓が悪いのでしょうか?)


 薬があるから大丈夫だとは思いますが、今の私は魔法が使えません。ダメだった時の保険なんてありませんから。

 押さえている腕をずらして、胸に手を当てます。


(呼吸が荒いですね。鼓動も結構早いです。このお薬はこの症状を落ち着かせるものなのでしょう。ですが、飲んでくれませんね。このままだと、呼吸ができなくなってしまうかもしれません)


 胸に当てている手から、鼓動が徐々に早くなるのがわかります。


(手段は選んでいられません)


 私は薬瓶から薬を口に含み……。


(このお薬、苦すぎます!苦い方が効果があると、オリヴィアから聞いたことがありますが、これは酷いです!)


 女性に無理やり、お薬を飲ませました。

 無意識でしょうが、暴れたりしてますが、それでも無理やり飲ませます。


(……鼓動が少しゆっくりになったみたいです)


 口に含んだお薬を全て飲ませて、私は顔を上げました。


「あ、あぁ……」


 目の前には顔を赤くした女性と言葉を話さない男性。

 今は無視です。

 少し様子を見ていると。


「………すぅすぅ」


 女性から静かに寝息が聞こえてきました。呼吸も楽になったようですし、鼓動も普通ですね。


「これで大丈夫みたいですね。ですが、心配なので暫く様子を見ます」

「は、はい」

「俺は川で飲み水を汲んでくる」


 男性は川がある方角へ向かっていきました。


「とりあえず、少しは落ち着けそうです。あ……」


 お薬でお小遣いを全部使ってしまいましたね。

 でも、人助けもできましたし、良いことにしましょう。

 ちなみに、お薬ですが材料が大変らしく、一瓶で金貨10枚という高級品らしいです。

 お薬は高いですが、大事ですよね。

 ……美味しい物は今度にしましょう。




「……ここは?私は一体……」


 お嬢様と呼ばれる方が気が付いたのは、お薬を飲ませてから約1時間と少し経過したぐらいでした。


「お嬢様!よかった……」

「何を泣いてるのよ?……おかしいわね?あなた、薬を買いに出たわよね?」

「はい……。薬を手に入れて戻って来た時には、お嬢様は発作で倒れていて……」

「私が倒れた?……それで記憶が少し曖昧なのね」


 お嬢様は納得したようです。


「この方がいなければ、どうなっていたことか……」

「そちらの女性?」


 二人がこちらを見ます。バタバタしていて余裕がなかったですが、お二人とも綺麗な方ですね。この馬車から考えて、貴族だと思いますけど。


「はい!この方がお薬の代金も支払ってくれて、お嬢様も助けてくれて」

「薬の代金?それに私を助けた?」

「そうです!この方が……」


 ミーナさんが私を見て固まります。何かあったのでしょうか?


「……すみません、お名前をお聞きしてもいいですか?」

「そういえば、聞かれていませんでした」


 一気に静かになりましたね。


「本当に、あなたは何をしているの………」

「ご、ごめんなさーい!」


 ミーナさんの声が響きました。




「ルリアルカさん、この度は私の従者が申し訳ないことをしました。主としてお詫び申します」

「気にしないでください。命の方が大事ですから」

「薬の代金は……戻らないとありません……。宜しければ、一緒に来てくださると助かります。お礼もしたいですし」

「そこまで気にしなくてよいのですが……」


 お金にも困ってませんし、お嬢様……えっと、エスタさんの命も無事でしたから。

 簡単に説明しますね。


 お嬢様と呼ばれている方はエスタさんと言います。貴族のご令嬢らしいです。

 ミーナさんは使用人さん、いわゆるメイドさんらしいです。

 クルトさんは護衛です。

 三人は幼馴染でもあるそうです。

 で、話を戻しまして。



「私が困ります。強引ですが、一緒に来てもらいますね」

「……仕方がありません」


 強制的に一緒に行くことになってしまいました。まだ、お昼過ぎなので、時間は大丈夫でしょう。


「クルト、馬車を出して。戻ります」

「わかりました」


 馬車は私、ミーナさん、エスタさん、クルトさんの四人で出発しました。

 目的地は知らないですが、そこまで遠くはないでしょう。


「ミーナ、戻り次第、歓迎のパーティを開くわ」

「はい!盛大にしますよ!」

「いえ、そこまでしなくても……」

「命の恩人が遠慮しなくてもいいのよ。……それにしても、金貨10枚を見ず知らずの人に使うなんて、損をする性格してるのね」

「そうですか?」


 私は本当に気にしていません。魔法が使えないのなら、救える手段で助けたいですからね。


「そうですよ!私も今、気が付きましたが、ルリアルカさんは不用心すぎます!」

「そうですか?」

「そうです!あったばかりの私に……」

「ミーナは黙りなさい。あなたが問題を起こさなかったら、ルリアルカさんには何もなかったのよ?」

「それは……そうですけど……。ですが、あの狼が!」

「狼のせいにしない!その狼からも、ルリアルカさんに助けられたのでしょう?……私の使用人はここまで無能だったの?」


 エスタさんが冷めた目でミーナさんを見ています。


「お嬢様、お願いですから見捨てないでください!」


 ミーナさんが土下座をしてます。


「そんなことしないわよ。でも、しっかりしてもらわないと困るわ」

「が、がんばります……」

「ルリアルカさん、お金は少し追加してお返しします。さすがに、そのままの額ではなんというか……」

「金貨10枚しか受け取りませんよ?私はお金儲けのために使ったわけではありません。人の命を助けるのに使っただけですから。お礼に追加する必要はありません」

「損をする性格というのか、欲がないというのか。人材に欲しいわね」

「人材?」


 エスタさんの言葉が気になります。何か商いもしている貴族なのでしょうか?


「ルリアルカさんの様な人は私の手元に置いておきたい人材よ。使用人じゃなく、仕事で」

「仕事ですか。私はお仕事は間に合っていますから」

「きっと、今よりも高額の給金を手に入れれると思うわよ?」

「かもしれません。私は給金を貰ったのが今日が初めてですから」


 私の返事にエスタさんが固まりました。


「今、初めての給金って言ったわよね?」

「はい。金貨10枚は今日、初めてもらった給金そのままの額です」

「……ミーナ、あなたは今月の給金はなしよ」

「ええ!?」

「当然です。ルリアルカさんを見習いなさい」

「そんな……。今月は念願の服を買おうと思っていたのに……。お嬢様の人でなしー!鬼ー!」

「……人でなしに、鬼ですって?」


 エスタさんの眉が一瞬動きましたね。ミーナさん、さすがに言いすぎ……。


「えっと、言い間違えました……。悪魔でした」


 全て台無しです……。


「悪魔ですか。よく言いましたね。ええ、悪魔ですか」


 「ふふふ」とエスタさんが笑っています。

 これは手遅れですね。


「わかりました。給金は出します」

「わーい」

「そして、あなたが贔屓にしている服屋で、あなたが着ることができるサイズの物は全て買い占めます」

「へ……?ええ!?なんですかそれ!?お嬢様、横暴すぎますよ!」

「反省していない、従者へのしつけよ」

「そんな……私の楽しみが……酷い……」


 ミーナさんが地面に座り込みました。


「エスタさん、その辺りで。人の楽しみを奪ってはダメなのですよ」

「う……。そんな目をしながら言わないで欲しいわ……。わかったわよ、ルリアルカさんに免じて許してあげるわ。でも、次はないわよ?」

「は、はい!ルリアルカさんも、ありがとうございます!」

「よかったですね」


 その後、皆さんと会話をしながら楽しく、馬車で揺られていましたが、気が付いたことがあります。

 外が暗いのです。


「思ったよりも遠かったのですね」


 私が外を眺めていると。


「あ……命の恩人に言い忘れてたわ……。私達が向かっているのは、ファニエスタ。フェイマスの隣国よ」

「え……」


 ……隣国?

 私は誰にも行先を言ってませんよ!?


「ま、待ってください!妹や親友たちにも連絡もしていないのに、隣国はさすがに!」

「大丈夫よ。直ぐに連絡してくれる人を出すから」

「そういうことではないのですが……」


 ダメですね……。

 連絡は取れるように手配してくれますし、それでお願いしましょう。


(皆さん、怒りますよね……。少し、頭が痛いです……)


 思い切り怒られて拗ねる未来しか見えないのでした。

 ルリが新しい国へ移動しました(強制ですが)。

 新しい国では何が起きるのでしょう?




 次回の更新は書き終わり次第となります。

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