夢と現実に影響を及ぼすこと
最近、困った夢を見る。
毎夜と言っても過言ではない。
夢の中でも困らされるのね……。
「セシリー」
甘い声が聞こえる。この声の主はルリね。
それにしても、なんて声出してるのよ!
「ルリ、そんな声を出しちゃダ……」
言葉が途中で止まる。ルリは蕩けるような表情をしている。頬を赤く染め、目を潤ませ……。
そして、一歩ずつ確実に私の元に向かって歩いてきてる。
「私の物になる覚悟できましたか?」
「な、ないわよ!そんな覚悟は!」
ルリが目の前にいる。正しくは私をしたから覗きこむようにしてみている。可愛いけど、色々と反則よ!
「どうしてですか?私の事が嫌いなのですか?」
「そんなことはないわ!ルリは大事な親友だから!」
私は叫んでいた。
それを聞いた、ルリは嬉しそうに微笑み、服をはだけさせて……はだけさせ!?ちょっと!?
「私もセシリーのことは大事ですよ」
ルリが一歩進むと、私は一歩下がる。
「だから、いいじゃないですか。セシリーが私の物になっても」
「それとこれとは……あっ!」
後ろに意識が向いてなかったので、ソファーの上に押し倒された。
ルリは……服は着ていない……冗談よね!?嘘って言ってよ!
「あなたは私の物ですよ」
「ル、ルリ、話を……話を聞いて!」
「怖い事はありません。私が大事にしてあげます。私の事しか考えられないように……」
ルリの顔が近づいてくる。吐息すら聞こえてきそうな距離。私は怖くなり、目を瞑ってしまった。
「怖がらなくていいのです。私が愛してあげます。だから、安心して私の物になりなさい」
ルリの方を薄っすらと目を開けて見る。もう、距離はない。
このままだと……。
「…………ゆ……め………?」
目を開けると、ルリは居ない。
辺りを見回してみる。ここは私の部屋ね。うん、私の部屋。ルリは当然居ない。
「う……ううぅぅぅぅ!」
夢の事を思い出して枕を掴み、目の前に叩きつける
「なんで!私が!」
枕を殴りつける。リズムよく、右、左と手を叩きつけていく。
「私は!あんなことは望んで!」
『本気の方が良かったですか?』
ルリの声が聞こえた気がした。今の私は耳まで真っ赤になっていると思う。だって、顔が熱いもの……。
「私は普通の女の子!私は普通の!」
枕が悲鳴を上げるとすると、大きな声で悲鳴を上げていると思う。それぐらい強く、ベッドの上で枕を叩いている。
『私が愛してあげます」
「っ!………う………うああぁぁ!」
私は両手で枕を叩きつけた。
「はぁ……はぁ……。私……私……」
私とルリは親友、恋愛の対象としては見てはいない。だって、私は女だから!
でも、最近のルリは小悪魔過ぎるというのかしら?ちょっと、周りが耐えるのが厳しい。
何よりも問題なのは、ルリは無自覚であるということ。
……ああ、そうね。子供の無垢な言葉は痛烈よね……。
「どうしよう、このままじゃ、いずれルリの物にな……」
自然と出た言葉にぎりぎりでブレーキをかける。
「そんなわけないでしょうが――――――!」
自室で悩み、赤くなり、戸惑い、そして……吼えたわ。
「……私、ダメな娘になってきてるかもしれないわね……。どうしよう……」
私は幼馴染である親友に相談してみることにした。
「病院、行ってらっしゃい」
幼馴染のシエラは笑みを浮かべたまま、さらりと言った。
「開口一番、そんな言葉は止めてよ!」
私はここ数日悩まされている内容を話した。途中から生暖かい目で見ていたのは気が付いてたけど……。
「私、理解力はあると前に言ったよ?」
「それとこれとは!」
「同じだよ?」
「うぅ……」
頭を抱えるしかできない。まさか、シエラがこんな簡単に突き放すとは思わなかったから。
「で、本当の所はどうなのかな?」
「本当の所って?」
「ルリさんに迫られた時、落ちたでしょ?」
「ぐっ……」
シエラの言葉を否定できない。本当にあの誘惑には負けたのだから。
「で、でも女同士なのよ!?」
「それで?女性同士でお付き合いしてる人も多々いると思うよ?」
「それは……」
王都では付き合うのは同性でも罪には問われない。種族の壁というのも王都内では緩和されているというか、その辺りも規制はない。簡単に言うと、恋愛は自由だ。不倫はダメよ?
しいて上げれば、位を超えた恋愛だけは厳しいわね。貴族と市民、市民と奴隷とか。でも、正当な理由なら、それも許される。ゼフィア王、この辺りは自由にしてるから、魔島での生活が影響しているのかもしれない。そんな答えを見つけたのはこの際、置いておいて。
「別に私はルリさんとセシリーが付き合うというのなら反対はないよ。でも……」
シエラの目が鋭くなる。え、ちょっと怖いんだけど……。
「独占はダメだよ?」
「え?」
独占はダメ?ちょっとまって……それって!
「ルリに惚れてるの……?」
「否定はしない。私もちょっと感情的には複雑なんだけど、助けられたことがあるし。あの姿はとってもかっこよかった」
何かあったのはわかったけど……。シエラが乙女ですって顔をしてるわね……。これはダメな状態だわ。
「もし、ルリが迫ってきて、私の物になりなさいって言ってきたらどうする?」
これは興味本位で聞いたという感じ。それに対してシエラは……。
「受け入れる可能性は高いかもしれないかな?本音で言うと、セシリーにもレティアにも譲りたくないって感情はある。自分でもここは嫌な所だと思うけどね。でも、それぐらい、ルリさんが大事なのは確かだよ」
これって、べた惚れってやつよね?私よりもひど……毎夜、夢に見たりするぐらいだから、私の方が危ないかもしれない……。
「シエラに尋ねたのが失敗だったわ」
「なにそれ!?真剣な顔して『相談があるの』って言うから聞いてあげたのに!」
「ねぇ、シエラ……」
「何よ!」
「これから、私達はどうしたらいいと思う……?」
「それは答えがでないよ……」
「「………」」
部屋の中が静かになる。
「とりあえず、普段通り過ごせばいいと思うよ」
「……そうね。そうするわ」
本当に答えがでなかった。
「あ、そうそう」
「なに?」
「夢って、その人がそうなりたいって思う願望が見せてるって聞いたことあるよ?本当か嘘かはわからないけど」
「え!?その話が本当だとしたら私って……」
シエラは口を隠すように右手を当て。
「セシリーはルリさんとそういう事がしたいってことだよね」
ぐさりと言葉が胸に刺さる。
え、私ってルリとそういう事がしたいから、あんな夢を見るの……?
「ま、言われてるだけだから、気にしなくてもいいと思うよ」
「そんな話を聞いたら、気にしないっていうのが無理よ!シエラのバカ!」
「なによ!セシリーのエッチ!」
「エ……!本当にどうすればいいのよ、もう!」
レティアには相談できない。ルリにも聞くのは無理。こっちは私がもたない……。
ファリス?問題外よ。ゼフィア王……魔島での生活を聞いたら、何か打開策が思い浮かぶのかしら?
「ちょっと、お城に行ってくる」
「私みたいに殴り込み?」
「しないわよ!そんなのができるのは、シエラだけよ」
「そうかなぁ?レティアもやると思うよ?」
「レティアが?」
レティアがそんなことをするイメージはわかないわね。
「レティアからしたら、ルリさんはとても大事な家族だからね。自分の命ぐらい平気で懸けるよ」
「そう……」
少し、置いて行かれた気分になる。
「大丈夫だよ。どうせ、そんな状況になったら、セシリーも殴り込みにいくから」
「何の根拠よそれ……」
「ルリさん大好き度」
「それ、根拠じゃないわ……」
私は肩を落としながら言った。
暫く、不毛なやり取りをした後、私はお城に向かった。
普段なら、お城に辿り着くまでに色々なお店を見たりするけど、今日は別。今の状況を打開したいから。
ちなみに普通に城内を歩けるようになっていたりする。王様の知り合いであり、王女ことファリスの友人でもあるから。シエラ、レティアともにそうだけどね。
目的の場所はゼフィア王がいるところ。
そして、私は今、王座がある部屋の前にいる。
「王様に用事ですか?」
「はい」
「扉を開けますね」
そう言って、扉を開けてくれた。ここまで有名人になると少し複雑ね。
「どうぞ、お入りください」
「ありがとう」
私は王座の間に入った。
「ん?一人なのか?」
王座でのんびりと座っている、ゼフィア王が私の姿を見て言った。
「はい。少し聞きたい事がありまして……随分、くつろいでますね」
「まぁ、ここ最近は平和だからな。ルリ達のことを除けばだが」
「それはその……すみません……」
ルリがゼフィア王を巻き込んで色々なことを起こしているのはわかってる。見てたりするしね……。でも、あれを止めるとか……無理ね。
「で、話を戻すが、俺に聞きたい事ってなんだ?」
「あ、それは……尋ねにくい事なんですけど」
「遠慮はいらん。聞けばいい」
「なら……」
私は意を決して聞いてみた。
「魔島では恋愛とかはどうなっていたのでしょうか!」
「は?……すまん、もう一度、言ってくれないか?」
「だから、魔島では恋愛とか、どうなっていたのかって聞いてるのよ!」
あの一件以来、私はゼフィア王に対しても素で話すことがある。ゼフィア王もこれは容認してくれているわ。
「魔島の恋愛事情か。ん?なんで、そんなこと聞いてくるんだよ?」
「そ、それは……」
「ルリになんか言われたのか?」
「っ!」
顔が赤くなった気がする。ゼフィア王の表情を見る限り、当たりね……。
「そうか、ルリに何か言われたか。たぶん、そういう感情はルリ自体も初めてだろうからな」
「どういうことですか?」
「極光の魔島でルリに何かしようとするもんなら、長がブチ切れる。あと、アルテナも」
「ルリのお爺さんと最近、名前を聞く方ですよね」
「アルテナはまぁ……ルリの姉みたいなもんだと思ってくれたらいい」
「ルリのお姉さんですか」
ルリみたいな人なのかなと思っていたら。
「ルリの為なら、情けも容赦もない女だったけどな」
「ルリの家族って、本当に凄いですよね……」
ある意味、ルリを中心でまわっていると言っても過言ではない。
何かが起きても、ルリがその中に居れば、ルリが最優先されるから。
「ま、そうだな。しかし、ルリに言い寄られたか。あいつも大人になったもんだ」
「冗談と言ってましたけど……その……強烈すぎて。恥ずかしいですけど、夢に見るぐらいです……」
「あいつ、色々な意味で危ないからなぁ……。俺もたまに夢に見るしな」
「……ゼフィア王、今なんて言いました?」
たまに夢に見る?どのような情景で見るのかしら?
「あいつも大きくなって女性としての魅力が凄いからな」
「そ、それってまさか……」
「魅力的な女がいる。それなら、そう思うのは不思議じゃないだろう?」
「私に聞かないでください!それに、今の事はルリに報告しておきますから」
「かまわんよ。だが、そう思っていても、俺たちはルリには何もしない」
「やましい夢を見ているのに説得力ないわよ」
本当に説得力がない。というより、真顔でよく言えるわね……。
「そういう約束なんだよ。これは魔島での決まり事なんだ。ばれたやつから制裁を食らうからな」
「せ、制裁!?」
「ああ。長から殲滅級魔法を連続で撃ち込まれたりとかな」
「意味がわからないわ……」
「深く考えるな。とりあえず、魔島ではルリ以外を恋愛対象にするのは有りってことだったよ。当時の年齢考えてみろ?ルリってレティアより小さいんだぞ?」
「あ……」
詳しいことはわからないけど、ルリは10歳ぐらいから旅をしてると聞いた。それよりも前からの話なら、確かに大丈夫だとは……あ!
「ゼフィア王は幼女趣味とかはないですよね?」
「幼女趣味?なんだその言葉?初めて聞いたが……ん?それって、幼い子供ってことを指すってことだよな?」
「はい」
「そんなわけあるか!」
どこか安心したわ。この国の王の新たな性癖が判明しなくて……。
「しっかし、ルリが困ったことをするのか、わからなくなってきたな……」
「私に言わないでくださいよ……」
「前にルリに兵を追い込んでもらったり、お前たち三人に模擬戦頼んだことあったろ?」
「大変でした……。もうしませんからね」
「わかってるよ。でもまぁ、模擬戦の効果が予想以上に出てな。兵が強くなって民を守れるのには問題ないんだが……」
「問題があるようには思えないのですけど?」
ゼフィア王の歯切れが悪い。何かあったのかしら?
「色々と考えるのはいいんだが、どうすれば『ルリ達みたいになれるのか?』って考えが出始めてな。またこれが、見当違いもいい方向で。どうも、無茶したら強くなれると勘違いしててなぁ……」
「それはまた危険ですね……」
「そうなんだよ。魔法については間違いじゃないんだが、少しずれてるから困ったもんだ」
「あはは……」
ルリは魔法自体を強くするには、魔力量とその扱いを覚えるのがいいと教えてくれた。
武具の扱いや体術は身体を魔法で強化して補うこともできると。
身体強化に関しては自然とできることが多いらしいから問題はないらしいけど、魔法に関しては別。これは迂闊に話せない。
「剣術や体術は俺でも教えるのは可能なんだが、ザインの指導だけで充分なんだよな……。魔法はさすがに教えれないし。理由はわかるよな?」
「はい」
「おかげで、魔法隊が迷走してる。とくに、レティアの事を見て余計にな」
「レティアですか?ルリの方が凄いと思いますけど?」
「ルリはなんていうか、ルリだからって言葉で終わるらしいんだが、レティアは年齢も相まって才能と思われてるんだよ。才能だけでどうこうできるものじゃないんだがな」
「困ったもんだ」とゼフィア王は言う。
確かに才能は必要だとは思う。でも、レティアも私もシエラも大変な訓練はしている。才能って思われると少し腹が立つわね。
「ま、こっちは何とかする。さて、話は戻すが、お前はルリとの関係を頑張れ」
「か、関係って!?」
「ん?ルリと恋仲になりたいんじゃないのか?そうなりたいから、魔島の事を聞いてきたと思ったんだが?」
「どうすればいいのか、正直……」
「悩め悩め。安直な答えを出して失敗したら目も当てられないからな。自分で最良と思える結果を出したらいい」
「そうします」
私はどうしたいのかしら?魔島の事まで聞いて。
あれ?私ってかなりバカなことしてない……?
「ゼフィア王、もしかして私、バカな事してません……?」
聞くしかないと思った。
「かもな」
「あぁ……」
がっくりと肩を落とす。
考えたらそうよね……。
「気にするな。ルリの事を思って動いた結果なんだろ?いいんじゃないか?」
「で、でも!」
「あいつは何に対しても真っ直ぐなんだよ。周りも影響されて動き出す程な。近くにいるお前たちが実感しているだろ?」
「確かにそうですが……」
影響はかなり受けてると思う。シエラもレティアも……そう、色々と変わろうとしている。
「本当に感謝してる」
「え?」
いきなり、お礼を言われても困るわよ……。
でも、とても真っ直ぐな目。
「ルリは未だに島の事は教えてはくれない。でも、あいつが今、笑って過ごせてるのはお前たちのおかげだろう。だから、感謝してる」
「親友だったら普通と思います。感謝される程じゃないですよ」
「かもしれんが、あいつの家族として言いたかったんだよ」
私はお礼の言葉を聞いたあと、最近の出来事などを話してから、お城を後にした。
「おかえりなさい」
「ただいま。って、ルリ!?」
我が家に戻ってくると、出迎えてくれたのは、ルリだった。
「その驚き方は……お城でゼフィアに何かされました?」
「何もなかったわよ。少し話を聞いてきただけ」
「そうですか。何かあったら、直ぐに教えてくださいね?」
「ええ。その時は直ぐに言うわ」
「はい」
とことこと、ルリは食堂の方へ歩いて行った。
(もう、お昼は過ぎてるわよね?おやつでも食べに行ったのかしら?)
「セシリー、シエラさんもレティアも待ってますよ。遅いですがお昼を食べましょう」
「あ……」
わざわざ待っててくれたんだ。先に食べてたらいいのに。
「直ぐに行くわ」
四人で遅いお昼を食べ、その日はルリの部屋でのんびりと話をしたりして過ごした。
ルリの部屋で集まることって多いわね。
私達の中心にはルリがいる。これって考えてみると、ルリの故郷と同じ状況じゃないかしら?
これがルリの本当の魅力なのかもしれない。自然と中心にいて、周りを明るくする。
(同性、異性からも好かれるのって納得できるわね。私もその一人なんだろうけど……)
答えはゆっくり見つけよう。
ルリは直ぐ傍にいるのだから。
「あふ……」
レティアから眠そうな声が聞こえた。
「あれ?もうこんな時間……」
「楽しい時間は過ぎるのが早いね」
「ですね。レティア、寝室で寝ないとダメですよ?」
「はい。お休みなさいです……」
レティアはふらふらとした足取りで寝室へ……あ、ドアにぶつかった。
「痛いです……」と言いながらも寝室に入って行ったわね。
「私も戻るよ。二人ともお休み」
「お休み」
「お休みです」
シエラも続いて、部屋を出た。
「私も寝る用意をしますね」
ルリが椅子から立ち上がり、寝る用意を……って、何してるの!?
「ねぇ、ルリ……」
「なんですか?」
「それ、寝る用意なの……?」
ルリはソファーの近くで服を脱ぎ、下着姿のままソファーに横になっていた。
「用意ですよ?」
「就寝着は?」
「最近は暑くて眠りにくいのですよ」
「服ぐら!……着なさい」
夜中なので、声を小さくした。吼えそうになったからね……。
「嫌です」
「レティアが真似するわよ……?」
「大丈夫ですよ。レティアは寝室で寝るのですから」
「そういう問題じゃないけど……。暑くない日は服を着なさい」
「はい」
ルリは返事をした後、ソファーに仰向けになって伸びている。
ほんと、凄い光景よねこれ。
可愛いとも美人ともいえる女性があられもない下着姿だけで、ソファーの上で仰向けになってるとか……。
「ルリって色々非常識よね……」
「いきなり酷いです……」
ルリが伸びているのを止めて、沈んだ表情で言う。沈んでも破壊力あるのよね……。
「それじゃ、私も部屋に戻るわ。お休み」
「はい。お休みなさい」
ルリがソファーの上で丸くなりだしたので、部屋を後に……。
(って、不用心ね……。私が鍵を持ってるからいいけど)
部屋の鍵をかけ、自分の部屋に戻った。
「はぁ……。きっと今日も夢を見るのよね……」
ベッドの上で枕を抱きしめながら呟く。
「しかも、眠る前にルリのあんな姿…………寝ましょう」
夢は夢!いっその事、慣れてしまえば、現実のルリの誘惑にも勝てるかもしれない。
私はそう思い、眠る事にした。
「セシリー」
声が聞こえる。ルリの声だけど、夢なのは間違いない。意外と覚悟して夢を見ると意識はあるのね。
少し驚きながら、夢の中で目を開ける。
「え……」
見える風景は燃え盛る街並み。
「なによこれ……」
燃え盛る街の中にルリがいる。
「セシリー」
「ルリ……?」
ルリが泣いている。
どういうこと?夢だとしても意味がわからない。
「ごめんね、守れなかった」
「守るって何を……」
「色々だよ……。助けられなかった人も沢山」
ルリの背後で建物が崩れ落ちる。
「頑張って守ろうとしたのよ?それでも、遅かった。私がもっと早く街に着けば、こんな事にならなかったのに……」
違和感がある。
ルリ自体に凄い違和感が。
(何が違うの……?)
「本当にごめん……。私がもっと……」
(話し方が違う)
違和感はルリの話し方だった。夢だから話し方が違うんだ。
「守り切れない事だってあるわよ。人なんだから」
「人だから?」
ルリはふるふると首を横に振り。
「私は化け物。人じゃないよ?」
ルリが翼を広げる。赤いけど暗い……禍々しい翼を。
「化け物だから、守らないとダメなのよ。今更だよね」
泣きながらも「あはは」と笑う。
「化け物化け物って、ルリは人でしょ!」
「違うよ?私は化け物だよ。人の形をした化け物よ」
「違う!私の大好きな、ルリは自分の事をそんな風に言わない!」
現実の私も叫んでいるかもしれない。それぐらい、夢の中で大声で叫んだ。
「ありがとう」
「え?」
ルリが優しく微笑む。同時に何かを決意したように。
「こんな私でも大好きと言ってくれて、ありがとう。だから、全部終わらせてくるね」
「全部って何を……」
「今までありがとう」
ルリが羽ばたいて飛び、上空で魔力を集め、一つの地点に向かって真っ黒な魔法を放った。魔法の着弾地点から大規模な爆発が起こる。なんていうのかしら?嫌な雰囲気が消えた?
ルリはそのまま、身体に秘めている魔力を全て解放したかのように、燃え盛る街並みの炎を薙ぎ払っていく。魔法なんていうのがおかしいぐらい、それぐらい神秘的なことが起きている。
街中から炎が消えたと思った時、ルリに変化が起きた。
「え?」
上空のルリと目が合った気がする。
何か私に向かって言ってる?
「何を言って……!?」
ルリの翼がボロボロと崩れていくのがわかる。
まって!そんな上空なんかで!
翼を失ったルリの身体は空から地面に向かって落ちてゆく。
「ダメ……ダメよ!」
身体が動かない。何よ!動きなさいよ!このままだと……ルリが!
「ル……」
「ドシャ!」と音を立て、ルリが地面に叩きつけられた。叩きつけられた身体から血が流れ出しているのがわかる。
「ル……リ……?」
足が動いた。びくともしなかった足がやっと……。
「ルリ……ルリ!」
ルリの元へ駆け寄る。自分が血まみれになるなんて気にしない。
「目を開けて!ルリってば!」
ぐったりとしている、ルリを抱き起す。血が止まらない。どうしたらいいのよ!?
「セシ……リー……」
ルリがゆっくりと目を開けて、返事をした。
「ルリ!」
「ごめんね……」
「何を謝るのよ!早く怪我を……」
ルリが目を閉じていく。ダメ!目を閉じちゃダメ!お願いだから、目を開けて!
「大好き……よ……ほん……とに……ごめ……ん……ね………」
ルリが目を閉じると同時に、身体から命が無くなっていくのがわかった。
「いや……いや!ルリ!ルリってば!ダメよ……こんな……こんなの………いやあああぁぁぁぁぁ!」
自分の悲鳴で目が覚める。
どっちが夢?さっき見た光景が夢なのよね?それとも、私が起きているのが夢?
ベッドから飛び起きて部屋を出る。
自分が正気なのかわからない。考えがまとまらない。
それぐらい、混乱してると思う。
でも、することは決まってる。わかっている。
「ルリに会わないと……」
涙が止まらない。正しくはずっと泣いていたのかもしれない。
ルリの部屋の前に着き、鍵を開けて中に入る。
ルリはソファーで丸くなって眠っていた。
「ルリ……」
ルリに向かって走り、そのまま飛びつく。
温かさから、ルリが目の前にいるんだと実感が湧く。
「いたぁ……セシリー?何かありました?」
「ごめん……。今日はここで寝かせて……」
「……いいですよ」
ルリが優しく抱きしめてくれる。
「泣いたりして、怖い夢でもみたのですか?」
「そう……ね。本当に……とても怖い夢だったわ……」
「そうですか。私がここにいますから、ゆっくり眠ってください」
「ありがとう……」
私は心が落ち着いていくの実感しながら眠りについた。
翌朝、目を覚ました、レティアが混乱して大変だったのは言うまでもないわよね。
でも、本当に夢でよかった。
夢の中でも人を巻き込むのがルリです。
良いことなのか悪い事なのかは本人(見た人)しかわかりません。
セシリーが派手に悩んでいますが、今後はどうなるのでしょうか?
次回の更新は書き終わり次第となります。
今回は夏バテ&模様替えで更新が遅くなりました。
反動で少し長くなってしまいましたが、次回は普段通りの長さぐらいで終わらせたいです。




