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似た者姉妹。悪魔と小悪魔?

 騒動以来、セシリーが妙です。

 おどおどしているような、遠慮しているような。

 私はいつも通り過ごしたいのですよ。

 皆で仲良く。

 今の現状を改めて確認してみます。やっぱり、魔法が使えません。

 私はソファーの前で身体の不調を確認していたのでした。


「少し困りました」


 背中の翼は深紅のままです。今は広げていません。

 魔法が使えないというのは魔力がないということではありません。

 簡単にいいますと、翼に魔力が集まっているという感じですね。


「ねえ、ルリ」

「なんですか?」


 心配そうな顔をしながら、セシリーが私を見ています。


「怪我はもう大丈夫なの……?」

「はい。もう大丈夫です。心配かけました」

「それは……いいの……」


 セシリーが胸元を抑えながら、言いづらそうにしています。

 まだ心配なことがあるのでしょうか?


「……怒らないの?」

「何をですか?」


 何か私が怒るようなことってありました?

 思い当たるものがありません。


「ルリを大怪我させたことよ……」


 それを気にしていたのですか。そんなことは気にしなくもいいのです。


「私はセシリーが怪我をしなくてよかったと思います。シエラさんとも仲直りできたようですし」


 私があの騒動から目を覚ましたのは、一週間先でした。大怪我をしたのは覚えていますが、ゼフィアが色々手配してくれたらしく、怪我は全て回復しています。

 私が気になっていたことがあるとすれば、セシリーとシエラさんが大喧嘩をしたということです。仲直りはしたみたいですが、レティアが「とても怖かったのです……」と泣きそうになりながら教えてくれました。

 あとはそうですね。シエラさんがお城に殴り込みに行ったとか?派手に暴れたと聞きました。

 聞いた内容で……えっと、ゼフィアがシエラさんを奴隷にして人に言えないようなことを、昼夜関係なく行い、飽きたら捨てるとか?でしたか。

 ……私が怒るのは問題ないですよね?いえ、これは怒れと言われているようなものです!


「ど、どうしたの!?そんな怖い笑みを浮かべて……」

「私が目を覚ましてから、また寝込んでいる間に起きたことを思い出していたのです。……私も殴り込みにいきましょう。今の私なら一瞬でお城を落とします!」

「お、落ち着いて!落ち着いて―――!」


 セシリーが慌てて私に駆け寄ってきました。でも、いつもと違います。遠慮しがちというのでしょうか?私が目を覚ましてから、ずっとこうなのです。


「……私がセシリーを許さないと言ったらどうします?」

「え?」


 セシリーが凍ったように固まりました。どう会話をしたらいいのかもわからないという感じです。


「ルリがそういうのなら……。ううん、そういっても……おかしくないわね。それだけのことをしたんだから」

「大怪我を負わせましたからね」

「っ!」


 セシリーの身体が「ビクッ!」と跳ね、逃げるように動こうとしました。

 私はセシリーの腕を掴み、引き寄せます。


「逃がしません」

「う……」

「私が逃がすと思いますか?」

「おも……わない……。うぅ……」


 セシリーの顔が赤くなっています。私は見上げながら言うので、よくわかります。


「セシリーが反省して謝ってくれたのも知っています。でも、それでも私が許さないと言ったらどうします?」

「それ……は……きゃっ!」


 セシリーをさらに引っ張り、ソファーに腰かけるように移動させ、顔を覗き込みます。


「許してあげません。逃がしてあげません」

「ル、ルリ?」


 深紅の翼を広げて、顔を近づけていきます。


「セシリーは私のものです。誰にも渡しません」

「……え?ええ!?うそ!?ちょっと!?」


 セシリーが顔を真っ赤にして、バタバタと慌てています。

 ……後が少し怖くなってきました。でも、少し楽しいかもしれません。


「あなたは誰のものですか?」


 セシリーの右肩に手を乗せて力を込めると、ソファーに押し倒した状態になりました。


「わ、わたしは……」

「さぁ、誰のものです?」


 セシリーの頬を左手で触れると、驚いたように目を見開いています。

 真っ赤です。湯気がでないか心配な程真っ赤になってしまいました。

 ……どうしましょう。収拾がつかないような気がしてきました……。

 悪乗りしすぎたからそうなる?否定しません……。私だって、たまにはやり返したいのですよ!もー!


「わ、私は……ル…リ……の……」

「うわ……。セシリーが落ちた……」


 部屋の中にシエラさんの声が響きます。本当に驚いていますね。


「セシリーお姉ちゃんが、ルリお姉ちゃんのお嫁さんですか?あれ?でも、女性同士?」


 レティアは混乱しています。


「シエラ!?レティアも?一体、いつから……」


 セシリーは部屋の入口の方に首を向けただけです。私が上から押さえてますから、顔だけしか向かないようです。


「セシリーが腕を掴まれたぐらいから」

「私はつい先ほどです」

「えっと、これは!その……違うの!違うのよ!」

「言わなくていいよ。私は理解力あると思うから」

「えーと、私は子供なのでわかりません」


 セシリー、本当に湯気出ないですよね?倒れても不思議じゃない程真っ赤です……。


「だ、だから!ルリー……」


 セシリーが涙目になってます。そろそろ、終わりにしましょうか。


「冗談ですよ?」

「ほら、やっぱり!……冗談?」


 私の下から唸るような声が聞こえます。

 ですから、セシリーに顔を近づけてこう言いましょう。


「本気の方が良かったですか?」

「っ――!?」

「あ、あれ?」


 セシリーはそのまま、気を失いました。へにゃりと力なく。


「ルリさん、なんて言ったの……?」

「えっと、『本気の方が良かったですか?』と……」

「それは、私でもダメかな……」

「ルリお姉ちゃんの悪魔の囁きです……」

「悪魔ですか……」


 セシリーが気を失っているので、ソファーは埋まっていますが、いいです……。


「……レティア」


 抱き付くようにセシリーの横に転がり……。


「お姉ちゃん、立ち直れません……」


 拗ねました。

 本人よりも外からの方が破壊力が高かったです。

 ぐすん……。



 セシリーが目を覚ました後も大変でした。何故って?私が拗ねて抱き付いたままでしたから。セシリーから何度も「冗談なのよね!?本当に冗談なのよね!?」と、いう大声が部屋に響きましたが、私は何も答えませんでした。

 レティアの一言は重かったのです。殲滅級魔法が霞む程に……。


「ルリお姉ちゃん、機嫌を直してください」

「………」


 私は返事をする代わりに、ソファーの上で更に丸くなりました。


「はぁ……。この姉は可愛らしすぎて困ります……」

「いや、レティア、そこで納得してはダメだからね……」

「レティアの方がお姉ちゃんみたいに見えるね……」


 「レティアの方がお姉ちゃんみたいに」という言葉に身体が反応します。私の方がお姉ちゃんなのです!


「大丈夫です。私はお姉ちゃんが楽しそうにしているなら、それだけでいいのです」

「……本当によくできた妹ね」

「だね……」


 セシリーもシエラさんも納得しないでください。私の方がお姉ちゃんなのですよ!


「ルリお姉ちゃん、気にしなくていいのですよ」


 レティアが背中を向けたままの私に優しい声を掛けます。お姉ちゃんは嬉しいです。


「ルリお姉ちゃんは何もしなくていいのです。猫のように丸くなっていても可愛いのですから。ええ、何もしなくても可愛いのです」

「うぐ……」


 胸にぐさりと言葉が突き刺さりました。


「拗ねて丸くなってもいいのです。ルリお姉ちゃんのような人が拗ねて丸くなっていると、抱きしめて撫でたくなります。本当に可愛いのです」

「はぅ……」

「だから、気兼ねなく丸くなってください。丸くなって何もしていなくても、私の大好きなお姉ちゃんです」


 レティアの言葉が痛いです……。


「レティアって結構……」

「……天然かもしれない。元皇女だから仕方ないかもしれないけど」

「「姉妹って似るのね」」


 セシリーとシエラさんの言葉がはもった後に。


「なんでしょう?ルリお姉ちゃんを見ていると可愛らしく、愛おしく思うのですけど……」


 けど?なんでしょう?

 ふと、背筋が冷たくなりました。


「苛めたくなる……?」

「その考えはダメ!」

「お、落ちついて!」


 振り返るのが怖いです。もう今日はこのまま、寝てしまいたくなります。


「ですけど……。ルリお姉ちゃん可愛いですよね?」

「可愛いのは認めるわよ!でも、それとこれとは違うから!」

「そうだよ!可愛いのと苛めたくなるは別だから!」

「……そうですよね。私もルリお姉ちゃんみたいに色々ありすぎて、疲れているのかもしれません。…………苛めたいなぁ………ふふ……」


 私はソファーの上から飛び跳ねるように起き上がり腰を掛け、レティアの方に向きました。レティア、そんな顔をしてはダメです……。セシリーとシエラさんからは表情が見えない位置にいますが、二人とも私の表情を見て固まっています。


「レティア」

「なんですか?」


 レティアの返事を聞いてから、両腕を広げて。


「こちらに来なさい」

「わーい」


 嬉しそうにレティアが駆け寄ってきました。力いっぱい、抱き付いてきます。


「……なんとか、大丈夫そうね」

「だね……」


 二人の安堵した声の聞こえます。レティアに限って何かすることはないです。


「最近はこうやって、ルリお姉ちゃんに抱きしめられていなかったので寂しかったです」

「いつでも抱き付いてきていいのですよ」

「微笑ましい光景ね」

「うん」

「だから、私に寂しい思いをさせないでください。苛めたくなりますから……」

「「「………」」」


 前言撤回です……。


「レティアが……レティアが!どうしたらいいのです!?お姉ちゃんが悪かったのですか!?」

「そうです。ルリお姉ちゃんが悪いのです」

「そ、そんな!?お姉ちゃん、頑張っていますよ?頑張りが足りないのでしょうか?拗ねるのがダメなのでしょうか!?それとも泣くのが……?」

「ルリお姉ちゃんは私を甘えさせてくれないとダメなのです!心配かけてばかりではダメなのですよ!」

「……はい」


 心配かけないようにしないとダメですね。


「……ダメな姉程、可愛いものはありませんね」

「「え!?」」


 セシリーとシエラさんから聞いたこともない声が出ました。私は反応するのが無理でした。涙が出てきてますから……。


「ほら、ルリお姉ちゃん、また泣いてる。ダメですよ?そんなに可愛い顔してポロポロ泣いていたりするとダメなのです。苛めたくなって仕方がなくなるじゃないですか」


 レティアの冷えるような声が部屋の中に響き渡ります。


「……お姉ちゃんはもうダメです。こんなダメな姉でごめんなさい。ダメすぎる姉はソファーで丸くなっていればいいのです……」


 私はレティアを抱きしめていたのを止めて、ソファーに丸くなるのでした。

 本当に立ち直れません……。

 私が丸くなって、泣き声が部屋に響き始めた直後。


「冗談です。演技です。まさか、ここまで効果があるとは思いませんでした」


 レティアが「やりすぎてしまいました」といいながら、謝りました。


「そ、そうよね」

「だよね……」

「ルリお姉ちゃんの真似は難しいです」

「ルリ超えてたわよ……」

「ルリさんがこうなってる時点で、レティアが一番怖いかも……」

「ほんと、姉妹って怖いわね」


 何かを話しているようですが聞こえません。私の泣き声の方が耳に入りますから。


「ほら、ルリお姉ちゃん、演技です。だから、こっちを向いてください!」

「いや……レティアが……いやぁ……」

「もう!」


 レティアが腕をひっぱり、皆の方へ私を向けます。なんですか……?ダメな姉は丸くなって、泣いているのがいいのですよ。


「「「………」」」


 私を見た三人が複雑な顔をしています。何を考えているのですか……?


「ダメ、苛めたくなる気持ち、わかったかもしれないわ……」

「ルリさんのこんな顔を見れるなら、ってダメ!…………泣いてる顔も反則だよ」

「皆が……私を苛める……のです……」


 涙が頬を伝って流れるのがわかります。ダメです、さっきよりも声が出てしまいます。自然と手で泣いている顔を隠します。もうそれしかできません。


「……演技よりも本気の方がよさそうです」


 レティアの言葉を聞いた後、私は大泣きしたのでした。




「ルリ、機嫌直しなさいよ」

「そうだよ。ほら、レティアも」

「ご、ごめんなさい……」

「……苛めない?」


 消え入るような声がでました。涙声のまま、それぐらいしか声がでません。


「苛めないわよ。まったく、もう」

「苛めないよ。ほんと、ルリさん可愛いなぁ……」

「苛めません。ですから、泣き止んでください」

「……はい」


 何とか泣き止みましたが、次の質問が待っていました。


「ルリ、困ったことがあるって言ってたわよね?」

「……そうですね。一つ困ったことがあります」

「ルリさんが困ったこと?珍しいとしか思えないけど」

「……魔法が使えません」

「「「……え?」」」


 三人の目が点になっています。嘘は吐いていません。


「だから、魔法が使えなくなったのです」

「うそ!?でも、魔力は……」

「魔力が宿っているのは私もわかっています。ですが、魔法が使えません」

「ちょっとまって!ルリさんが魔法を使えない?悪い冗談だよね?」

「冗談ではありません。本当です」

「ルリお姉ちゃん、この前から身体の調子が悪かったですし、それが原因ですか?」

「かもしれません」


 深紅の翼を広げます。可能性も伝えないとダメですからね。


「魔力は翼に集まっているようです。私が魔法を使えない原因の一つだと思います」

「綺麗だよね」


 あ、シエラさん、また無造作に私の翼を……。


「ふぅ……ふぁ……あぁん!」


 やっぱり、いつもよりも感覚が鋭いみたいです……。

 翼は敏感なのです。丁寧に触らないとダメなのです。

 ですが、これは魔力も影響してそうです。


「はぁ……はぁ……」


 三人揃って、顔が真っ赤になっています。赤くなるならそんなことを……!?


「んー?」


 顔を赤くしたまま、シエラさんが翼をもふもふと触ります。


「ん……んん!?」


 声が出るのを抑えようとしますが。


「むー?」


 シエラさんは更にもふもふと触ります。

 ダメです!ダメですよー!


「ダメです……。もふもふしない……で……んん!……くだ……さい……はぁん!」

「あれ?やっぱりそうなのかな?」


 シエラさんは何かを確認するように、もふもふを続けます。だから、止め……。


「やぁ……やめ!……んん!……ふぅ……や……やぁあ!」

「あ……」


 シエラさんの手に深紅の羽が一枚握られ。


「――――――!!」


 私は声にならない悲鳴を上げました。


「……ごめん」


 シエラさんが謝りますが、私は返事どころではありません……。


「何やってるのよって、レティア!?」

「きゅぅ……」


 レティアは真っ赤になったまま、崩れ落ちました。床の上で「きゅぅ……」と、呻き声をあげています。呻き声ですよね?


「だって、この部分の羽が抜けそうだったから……。あれ?抜けた場所だけ翼が白い」


 シエラさんが言った直後、1枚の羽がはらりと抜けました。


「ルリ!?あれ?何ともないの?」

「うぅ……。自然に抜けるのは大丈夫みたいです……」

「そうじゃないと困るわ……。抜けるたびにあんな声出されたら、こっちがもたないわよ……」


 片手で顔を押さえながら、セシリーがいいました。私だって好きで声を出していませんよ!


「被害者は私なのに……」

「……っ!そんな顔しない!」

「そんなぁ……」

「確かに、外では見せられない顔だよね」


 追撃が酷かったです。

 私は被害者ですよね……?




 レティアを寝室で寝かせた後、三人で椅子に座っています。

 テーブルには果実水です。今回はお水ではありません!


「ルリさん、翼の一部が生え変わって変化とかあるのかな?」


 シエラさんは抜けた深紅の羽を楽しそうに触っています。


「とくにはないです。でも、その羽自体に魔力がありますよね」

「そうなんだよね。しかも、結構な魔力」

「ルリらしいと言えばいいのかしら……?まぁ、いいわ。話をまとめるわよ?」


 セシリーが真剣な顔をして言います。


「ルリが最初に倒れた時に罹っていたのは『魔力霧散症』。ルリ以外は知ってるんだけど……」

「解りますよ。魔島では病気に関しても優れていますから」

「……魔島ってなんでもありだね」

「そういうわけではありません。私が住んで居た島は閉鎖的な島でもあるので、医術に優れた家族がいたというだけです。何か大きな病気が発生するたびに海を渡っていては意味がないですから」


 魔島の住人だからといって、病に強いわけではありません。もちろん、怪我もです。とてもきつい病気になれば衰弱もします。場合によっては死にも至るでしょう。怪我は想像がしやすいですよね。そのままなのですから。

 しかし、病気はそうではありません。一般的に言われる『風邪』という軽い病があります。これはどこに行っても薬が手に入るので、致命的な事にはなりませんが、魔島では話が別です。薬がありませんから。

 小さい頃、私が風邪に罹った時は、アルテナが海を割るような勢いで空を飛んで大陸に向かったと聞いたことがあります。オリヴィアが医術に長けていたので、彼女が魔島に来てからは病気の対処も楽になったのです。なので、私も色々と詳しいのです。


「でも、これは『魔力霧散症』ではありません」

「違う……?ちょっとまって!」

「命に関わったりしないよね!?」

「セシリーもシエラさんも落ち着いてください。レティアが驚いて起きてしまいます」


 二人をなだめながら、推測でしかないですが説明しましょう。


「今の私の状態は魔法が使えません。でも、魔力が無くなったわけではありません。魔法が使えない代わりに翼に魔力が宿っていますからね。熱が出て寝込んだ理由はこの変化が原因だと思います」

「ルリの翼の色が変わった理由は?やっぱり、ストレス?」

「そうですね……。少なからず影響はあるとは思いますが、皆さんの勘違いを一つ訂正しますね。セシリーがゼフィアから聞いた私の翼の色が変わった時とありますが、それは今の色とはまた違います」

「どんな色をしてるの?」


 二人が息を呑みます。怖がらせてはいませんよ?


「限りなく黒に近い赤色です。ですから、私の翼はもっと禍々しい色になります。その状態にだけならなければよいのです」

「簡単に言うわね……」

「私もそこまで子供ではないということです。だから、別に気にしなくて大丈夫ですよ」

「ルリさんらしいというかなんとういか……」

「と、まぁ、私の翼の色はおいておいて、問題はここからです」


 コホンと咳ばらいをしてから。


「私の翼に魔力が集まっていて、また抜けた羽に魔力が宿っているということから予測できるのは二つ。一つは深紅の翼が全て生え変わり、白い翼に変わると私の魔力は元に戻る可能性があります。生え変わりですから、今よりももっと魔力が多くなるかもしれません」

「今よりも多く……?」

「ルリさんを敵に回した人が哀れに思えてくるね……」

「もう一つは、翼が生え変わって魔力を失うことです」


 普通に言ったのですが、二人の反応がありません。解りやすかったですよね?


「ルリの魔力が無くなる?私達、生物は多かれ少なかれ魔力を持ってるわ。それが無くなるの?」

「そうです」

「……ルリさん、それって生きてないよね?」

「そうですね。きっと、魔力を失うことになれば……私でも生きてはいないと思います」

「何を暢気に!?ああ、もう!シエラ、ここは任せたわよ!私はお城に行ってくる!」


 セシリーが扉を蹴り破る勢いで外に出て行きました。扉、少し傾いてますね……。


「そんなにも慌てなくても……」

「ねぇ、ルリさん」

「なんですか?」

「どうして笑ってるの?」


 シエラさんは目に涙を浮かべたまま言います。あ、涙が流れました。


「笑っているですか。そうですね……それが自分の運命だというのなら割り切るしかないでしょう」

「……治す方法はないの?」

「……無いと思います。この様な病は聞いたこともありません。私が初めての可能性もありますから。ほら、翼のある人って少ないですからね」


 私が「あはは」と笑っていると。シエラさんは俯いたまま立ち上がり、こちらに向かって歩き始め。


「どうしてそんなに笑って!ルリさん、死ぬかもしれないんだよ!?」


 言い終わると私に飛びかかってきました。「ドサ!」と音を立てて椅子から落ちます。ちょっと痛いです……。


「ルリさんばっかり、こんな目に遭って!なのに、なんでそうやって笑っていられるの!?」

「幸せだからです」

「幸せって……。そんな風に思えない!大きな事件に巻き込まれたり、大怪我したり。それなのになんで幸せっ……」

「皆さんがいるからですよ」


 シエラさんの言葉を遮って続けます。


「私は魔島を出てから、一人で旅をしていました。シエラさんも知っての通り、死ぬ場所を探し求めて。目的も何もなく、ただふらふらと、迷子のように。ですが、セシリーに誘われて王都に来て、色々な物が見れました。親友もできました。妹もできました。これを幸せと言わずに何というのです?」

「そんなの……そんなのって……ないよぉ……」

「いいのです。今はまだ推測ですから。それに、いつ翼が生え変わるかもわかりません。明日かもしれませんし、こないかもしれません。だから、いつも通り私は過ごすのです」

「そんな笑顔で言うなんてずるいよ……」


 私の上で泣いている、シエラさんの頭を撫でながらも私は笑顔でした。


「仕方がないじゃないですか。私はそれぐらい幸せなのですから」


 幸せを求めてはいけない、幸せになってはいけないと知っておきながらも、それは勝手にやってきます。

 なら、それは幸せということですよね?

 ルリ&レティア姉妹が派手に暴れました。

 結局、巻き込まれる人が多いですね。

 レティアを制す者がルリを制す、意外とハズレではないかもしれません。



 次回の更新は書き終わり次第となります。



 ちょっと夏バテ気味になってます。

 皆様も注意して、夏をお過ごしください。

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