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病と勘違い

 人は生きているのだから、失敗や勘違いは当然ありあす。

 一度もしない人は居ません。

 もし、一度もしたことがないという人がいれば。

 それは神様としか、私は思えません。

 王都に住み始めて、それなりの月日は経過したと思います。

 人が苦手な私でも慣れました。宿の受付、ギルドの受付も頑張っていると思います。

 でも、ふと思うことがあるのです。


「私はこんなに幸せでいいのでしょうか?」


 幸せなことはいいこと?そうですね。辛いことや悲しいことに比べれば、良いことです。

 では……。


「私はこんなにも笑っていてもいいのでしょうか?」


 笑えることは恵まれているから?愛してくれる家族がいて、一緒にいてくれる親友、妹がいる。とても、恵まれていると思います。

 それでも、やっぱり……。


「怖いです……」


 今の私はとても臆病で、弱いのです。

 昔のようには過ごせません。


「いつか……私がいなくなった後でもいいから、本当の私に気づいてくれるといいな」


 気付いてほしいという望みと、今のままでいいという想い。

 私はどちらを大切にしたらいいんだろう?


「ルリ、置いていくわよー」

「待ってください、セシリー」


 でも、今は楽しい日常が過ごせるだけでいいと思いました。

 それ以上は望んではダメなのだから。




 普段通り、窓際のソファーに座ってくつろいでいると。


「旅に出たい気分です」


 ぽつりと声が出ました。


「え……?」


 レティアの呆然とした声が響くなか、「パリン!」と音を立て、コップが割れました。


「コップを落としてしまいました……。ルリお姉ちゃんが変なことを言うから悪いのです!」


 レティアが怒りながらいいます。怒らせるようなこと言いましたか?


「レティアが怖いです」

「ルリお姉ちゃんが悪いのです!」

「むー」

「ああ!もう、丸くならないでください!」


 ソファーで丸くなります。お気に入りでもあるので、ちょうどいいのです。


「……本当に旅に出るのですか?ルリお姉ちゃんが本当に旅に出たいというのなら、私は止めません。私はお家を守ってます」

「なんとなく思っただけです。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

「……本当に」


 レティアの消えそうな声が聞こえます。心配させ過ぎたようです。


「旅に出る事はないでしょうけど、気分転換に少し遠出はしてみたいかもしれませんね」

「ルリお姉ちゃんの遠出って隣の国ぐらい平気で通り過ぎて行きそうです……」

「………」


 隣の国ですか。何か美味しい物を探しに行ってみるのもありかもしれません。レティア、いい案を出してくれて感謝しま……。


「……やっぱり、遠出という名前の旅に出るのですね」

「な、泣かないでくださ……」


 レティアがポロポロと泣き出したので、慌てて立ち上がったのが失敗でした。まさかソファーから滑って落ちるなんて……。


「ル、ルリお姉ちゃん!?」

「……大丈夫です。レティアを泣かせた罰が当たったのです」


 慌てていたのは本当ですが、こんなことで滑って落ちるなんて……。あれ?

 身体に違和感を覚えました。なんでしょうかこれは?経験したことがない感覚です。

 目の前がふらふらして、身体もちょっと熱い気もします。


「ルリお姉ちゃん、顔が真っ赤です」

「顔が……?」


 頬に手を触れてみました。確かに熱いです。何が起きているのでしょう……?


「セシリーお姉ちゃんを呼んできます!」


 レティアは部屋を飛び出していきました。


「大丈夫です。そんなにあわ……て………」


 「バタン!」と派手な音が聞こえました。音の元は私ですか……。倒れたようです。


「これは一体……何なのでしょう……ね……」


 私の意識はそこで途絶えました。





「魔力霧散症ですか?」

「症状からして、それしか思い浮かぶものはありません」

「ありがとうございました。あとはこちらで見ておきますので」


 城から来てくれた医者の方は部屋を後にした。レティアが部屋に飛び込んできた時は本当に驚いたけど、ルリが体調を崩して倒れたという内容の方が驚いたわ。倒れるなんてイメージがないから。私は宿の人にお城への急ぎの連絡を取ってもらい、医者を手配してもらった。


「セシリーお姉ちゃん。魔力霧散症というのはなんですか?」

「珍しい病気よ。症状は酷い風邪と変わらないんだけど、困ったことに魔力が多い人がかかると大変なのよ……」

「それ、ルリお姉ちゃんだと……」


 レティアがベッドで静かに眠ったままの、ルリを見る。言いたい事はわかる。ルリの魔力は普通の人と比べるだけ無駄な程、多いから。


「……間違いなく大変ね」


 ほんと、魔力霧散症なんてレアな病気にかかったわね。知り合いでもかかった人が居ないので書物で読んだ知識しかない。たしか……。

 

 魔力霧散症:魔力を扱う人が極度に魔力を使い続けた結果、身体に宿る魔力を体内で維持できないほど弱った状態。風邪を引いたときと症状がよく似ているので、専門の医者等に見てもらう必要がある。


 だったかしら?でも、ルリの魔力量からしたら枯渇することなんてないわよね。魔法の扱いも比較する人がいないほどだし。なんでこんな病気に……。

 ふと、魔法の基礎的なことを思い出した。魔力の回復は一般的に、眠っているときが回復が早い。仮眠も意外と回復もする。あとは、集中して魔力を集め、それを身体に取り込む。これは冒険者がよく使う方法だったわね。魔物と連戦した時に魔力が枯渇していると一方的にやられるからって作られた方法だったし。


「セシリーお姉ちゃん、ルリお姉ちゃんは本当に大丈夫でしょうか?」

「泣かないの。きっと大丈夫よ」


 ポケットに入れているハンカチを取り出して、レティアの涙を拭う。レティアって元王族だけど、最近はルリに似てきた気がする。年相応の子供っぽさになったというのが正しいのかしら?そう考えると、ルリがやっぱり、一番子供に見えるわね。

 精神年齢は子供っぽいけど、スタイルとか可愛さを含めて魅力が圧倒的にある。……色々危ないわねこれ。どこかで対策とらないとダメかもしれない。でも、今はルリが元気になることを願いましょう。


 けれど、私の願は叶わなかった。





「ルリさん、目を覚まさないね」


 目の前のルリさんは誰が見ても衰弱しているようにしか見えないと思う。


「そうね……。一週間も眠ったままなんて思いもしなかったわ」

「ルリさんは病気とかには縁がない人だと思ってたよ。ところで、レティアは?」


 部屋の中にレティアが見えないので気になった。ルリさんはソファーの上で眠っている。ここは日当たりもいいから、長い間眠っているなら、ベッドよりもここがいいだろうということで移した。


「寝室よ。泣き疲れてるのもあるけど、精神的な影響も多いみたい。まだ、今日は起きてないわ」

「そっか」


 時刻はお昼を過ぎて13時ぐらい。朝早くから起きている、レティアを考えると相当疲れているんだろう。


「レティア辛いだろうね」

「そりゃね……。正直に言うと、私も結構辛いわ」

「セシリーにしては弱気だね」

「当たり前じゃない……。親友がこんなことになるとか思わないから」

「ふーん」

「な、なによ?」


 セシリーが私の適当な返事に反応した。当然、これはわざとだよ?


「セシリーのルリさん大好き度がわかった気がする」

「な、なによそれ!?」

「しー。静かにしないとレティアが起きるよ」

「ご、ごめんなさい……」


 でも、セシリーの気持ちはわかる。私も親友のこんな姿は見たくない。見ているだけで苦しくなるから。数日なら、我慢できるかもしれない。数日ならね……。


「ルリさんが羨ましいなぁ。私にはこんなにも心配してくれる人なんていないよ」


 冗談気味ながら言うと。


「ふざけないでよ……。あなたがこんなことになっても同じぐらい悲しいんだからね!」

「ご、ごめん……」


 嬉しかったのと同時に申し訳ない気分になった。怒らせたら、少しは元気になるとは思ったけど、逆効果だったみたい。


「セシリーも少し寝たら?どうせ、あんまり寝てないだろうし」

「まともに眠れてないのは事実ね。心配でろくに眠れてないわ……」

「レティアの横で寝てきなよ。ルリさんは私が見てるから」

「でも……」

「ルリさんが目を覚ました時にふらふらなセシリーを見たら、心配するどころか自分を責めると思うよ?そんなことになってもいいの?」


 私が今言ったことに関しては、大袈裟ではないと思う。私でもそうする。


「……わかったわ。少し休ませてもらうわね。何かあったら、直ぐに起こして」

「うん。お休み」

「お休み。…………ありがとう」


 セシリーも少しはしおらしくしていれば、可愛いのにね。私には似合わないけど。


「ルリさんの看病をしよう」


 ルリさんが眠っているソファーに近づく。


(やっぱり、人形が寝ているようにしか見えないんだよね……。呼吸してるからわかるけど)


 ルリさんの胸は呼吸で上下に動いている。これがなかったら、本当に人形としか思えない。


「それにしても、今日は温かいを超えて熱い……」


 ルリさんの傍に置かれている、小さな氷を手に取り、ルリさんの口に運ぶ。さすがに眠っている状態なので、飲み物を飲ませるというのはまずい。でも、小さな氷なら口の中を湿らせてくれるし、溶けても少量だからね。


「額のタオルもぬるくなってる。これも変え……」


 ルリさんの首に汗が見えた。これ、そのままだと、悪化するよね……。


「とりあえず、カーテンを閉めて」


 これで、ルリさんに直接当たる日光はない。一先ず安心。


「着替えさせないとダメだよねこれ……」


 ルリさんの着替えは、寝込んでから直ぐ傍に置いている。身体も拭かないとダメかな。


「大人しく寝てるんだよ。直ぐにお風呂場からお湯を取ってくるからね」


 私はお風呂場に向かった。



(身体を拭くには、ルリさんの服を脱がさないとダメだから)


 ルリさんの身体は起こさずに前に付いているボタンを外していく。なんだろう……。いつもは三人で着替えとかをしてるから、一人ですると物凄く悪いことをしている気がしてきた。


(これは人助け!ルリさんの為になることなんだ)


 ルリさんの服をはだけさせ、お湯につけたタオルを絞って丁寧に身体を拭いていく。


(細くて真っ白。本当にお人形だよね)


 丁寧に丁寧に拭いていく。壊れ物を扱うかのように。


(それなのに、危険なところでも人助けならって飛び込んでいく)


 誰がこんな娘が大事件に飛び込むと想像できるのだろうか?

 そう考えてながらも、腕を拭き終わり、身体を拭いていく。


(細いのに出るところは出てるんだよね。背も小さくて可愛いのに。反則だよ……)


 普段は三人だから気にも留めていないのに、一人ということで変に意識が傾く。


(べ、別にやましいことはしてない!寝込んで、目を覚まさないルリさんの身体を拭いているだけ……うわ!?)


 意識しせずに身体を拭いていたのに、ふよんとした感覚に驚いた。


(なにこれ!?本当に私と同じ女性……?)


 違う感覚に無意識に手がのび……。


(って、何やろうとしてるの私は!これじゃ変質者と変わらないよ!)


 ぎりぎりで踏みとどまった。さすがに変質者扱いはされたくない。

 不安を覚えて、室内を見渡す。誰もいない。よかった、誰にも今の行動を見られてない。


(あ、そうか)


 ここ数日の事を思い出した。初日にルリさんの胸元を拭いたのは、セシリーだった。身体を拭き終わった後、様子が妙だった。その次の日からは、レティアが拭いてる。レティアは余裕がなさ過ぎるから何も思わないのかもしれないけど……。


(思い出したら大変なことになりそうだね)


 これから起こるであろうことを考えながら、身体を拭くのを再開した。

 何度も誘惑に耐えながら……。

 ある意味、大変だった。


 セシリーとレティアは翌日の朝まで起きてこなかったよ。

 手伝う時間を増やそうかな。





「………んぅ?」


 目が覚めたのはソファーの上。カーテンが閉まっているので日差しがありません。寝起きですが、少し気が滅入りそうですね。


「……よく寝た気がします。でも、まだ少しふらふらするような?」


 ゆっくりとソファーから立ち上がって身体を伸ばす。伸ばしたのはいいものの、力を抜いた時に視界が揺らぎました。


「まだ、本調子ではないようですね」


 足取りはふらふらとしたまま。熱もまだ少しある気がします。


「ここまでゆっくり眠ったのは久々です」


 壁にかかっている時計を見てみると、時間はお昼時ですか。寝起きなのでそこまでお腹は空いていません。残念です……。


「?……私が眠ったという記憶はありませんね」


 最後に眠ったという記憶がありません。確か、レティアの目の前でソファーから滑り落ちて、そこから床に私が倒れ……。

 記憶がないわけです。床に倒れたんだと思い出したのはいいのですが、疑問が生じました。


「私が倒れたのはお昼前だったはずです。それが目が覚めてみるとお昼過ぎですか……」


 さすがに腑に落ちません。もしかすると、丸一日寝ていたのかもしれませんね。眠るのも好きですが、さすがにそれは……。

 日付を表すものがテーブルの上にあったはず。急いでそちらを見てみると。


「19日……」


 思考が停止しました。


「え?私が倒れた日って5日でしたよね!?」


 14日間も眠っていたということになります。寝坊?こんなに盛大な寝坊なんて聞いたことありませんよ!


「皆に心配かけたでしょうね……」


 下に降りれば、誰かいるでしょう。隣にいけばシエラさんかウェイスさんもいますし。

 怒られるのは嫌ですが、仕方がない事です。とりあえず、部屋から出て……。

 「バタン!」と派手な音が聞こえます。言わなくてもいいです。私ですから……。


「どうしたものでしょう?」


 うつ伏せになっている状態から、仰向けになります。

 思った以上に身体が動いてくれません。これは大問題です。


「魔法で身体強化を使えば大丈夫ですね」


 仰向けのまま魔法をイメージし発動させます。発動……あれ?


「……魔法が使えません」


 魔法が使えないのです。いったい何が起きているのでしょうか……?


「そうです、翼です」


 よろよろと起き上がり、翼を広げます。色は白ではなく、赤でした。深紅と言った方が正しいのでしょうか?


「鮮やかな赤になりました。気分転換にはいいです」


 深紅の翼を広げ確認します。空は飛べそうですね。まともに歩けないなら、飛べばいいのです!


「まだルリは目を覚まさないのでしょうね。まったく、この娘は何回、私に心配かけ……」


 部屋に入って来たセシリーと目が合いました。


「ルリ……?」

「色々心配をかけたようです」

「そうね。本当に心配したわよ」


 セシリーの様子がおかしいです。嬉しそうなのに複雑そうな顔をしています。私の翼をずっと見ていますね。深紅の翼が珍しいのでしょう。


「で、あなたは本当にルリなのよね?」


 セシリーが私を見て警戒しているような?別に警戒させるようなことはしていませんよね?


「私は私ですよ?」

「じゃぁ、その深紅の翼はなにかしら?」

「この翼ですか。昔から稀に色が変わるのですが、深紅も綺麗ですよね」

「そうね。普段の真っ白な翼も綺麗だけど、その深紅の翼も綺麗。髪が真っ黒で長いから色がよく映えるわ」


 そう言いながらも、セシリーの警戒が解けません。どうしたらよいのでしょうか?


「ところで、私は長い間眠っていたよう……」

「動かないで」


 セシリーに近寄ろうとしたら、制止されてしまいました。私は何もしてませんよね?泣いてもいいですよね!?


「もう一度聞くわね。あなたはルリよね?」

「何回聞かれても、ルリですよ!ルリアルカです!セシリー、一体どうしたのですか!」

「理性は保ってるってわけね。でも、安全とは限らない!」


 セシリーが魔力を集めています。えっと、殺気とまでは言いませんが、穏やかではありません。本当に泣きますよ?


「今、深紅の翼のルリを見て覚悟を決めたわ!できるなら、したくなかったけど……」


 セシリーが俯きながらいいました。覚悟ってなんの覚悟でしょう?


「ねぇ、ルリ」

「なんですか?」

「私は嬉しかったのよ。親友が出来て。それも可愛くてとても優しい娘で。何回も心配させられて、そのたびに泣くことになっても……。それでも、嬉しかった。それぐらい、ルリが大切だから」

「ありがとうございます。でも、改まって言われると恥ずかしいですね」

「大切だから……本当に大切な親友だから……」


 魔力が攻撃性を持ち始めましたね。いつも通り防げばいいです……あ!私は今魔法が使えません……。まずいです。かなり、まずいです!


「あなたが周りを破壊しないうちに、私がこの手で!」

「ちょっと、待ってください!セ………」


 セシリーが風属性の魔法を発動させました。砲弾のように勢いのある魔法です。今の私では防げません。つまり、直撃しかないということです。


「くぅ……きゃっ!」


 止まる足が床から離れ、宙に浮き、「ドガッ!」という音を立てて壁に叩きつけられました。それでも、風魔法は止まりません。叩きつけられた身体にそのまま重みが増え始めました。


「うぅ……セシリー、一体なんで……こんなことを………ゴホッ!」


 思った以上にダメージがあるようで、咳き込んだ拍子に地面に血が落ちました。

 訓練の成果なのでしょうけど、今の状態を考えると複雑ですね。


「ルリが何かをしでかす前に私が……私が止める!それが親友としての義務だから!」


 セシリーが泣きながら叫びました。私が何かすると勘違いしているようです。ですが、これほどの覚悟なのですか。嬉しいですね。


「……セシリーになら……後を任せても大丈夫そうですね。……レティアのこと、お願いしますよ?」

「え……?もしかして、本当に普通なの?え、ええ!?そんな、嘘!?」


 セシリーが慌てだしました。何かうっかりしたようですね。

 そう思った直後、背後の壁が「バカン!」と音を立て、私を室内から外に投げ出しました。身体強化の魔法も使えませんから、ダメージも軽くはありません。全身が痛いですからね。おかげで、翼を動かす余裕もありません。大怪我確定です。


「ルリ―――――――!」


 部屋に空いた穴からセシリーが顔を出して叫んでいます。本当に早とちりはダメですよ?

 私を思って、ここまでの事をしてくれたのです。責める気なんてまったくありません。むしろ、私の為に心を痛めてもこのようなことをしてくれる。嬉しいことです。


(親友というのは本当にいいものですね)


 私のお家は『ミューズの安らぎ』の4階です。壁なんて突き破れば、あとは落ちるだけ。自由落下で順調に地面に墜落中です。

 未だに聞こえる、セシリーの悲鳴にもにた声。

 まったく、もう……。


「ふふ……。セシリーみたいなことを思ってしまいました」


 地面に向かって身体が落ちていく。その後は地面に叩きつけられて大怪我をするだけです。痛いでしょうね。そう思って諦めてた時。


「っと!危ない危ない……」


 異変に気が付いた、シエラさんが受け止めてくれました。


「おはよう、ルリさん。大丈夫だった?」


 にこにこと笑顔のシエラさん。


「おはようございます。私は数日間眠っていたのですね」

「うん、そうだね。でも、目が覚めて嬉しいよ」


 シエラさんから涙がポロポロと流れます。泣かせた?酷い事言わないでください。でも、原因は私ですよね……。


「シエラさん、涙が……」

「うん……嬉しくて泣くこともあるんだよ?本当に、本当に目が覚めてよかった。それにしても……」


 シエラさん上を見上げます。


「ルリさん、病み上がりなんだよ!セシリー、何てことするの!」

「私にも理由があるのよ!好き好んでこんなことしないわよ!」

「それじゃなに?セシリーは好き好んではないけど、ルリさんに大怪我させようとしたんだよね!」

「それは……」

「一先ずはいいよ。先にルリさんの治療もしないとだから。ああ……、頭から血が流れてるし。早く、部屋に戻って治療しよう」

「はい。あ、歩けますよ」

「このままでいいの。歩けるかもしれないけど、その状態だとね……深紅の翼?」

「あ、はい。深紅の……ふぁああん!」


 翼に触られて声が出てしまいました。翼は敏感なのですよ?だから、丁寧に触らないとダメなのです。


「うわ!?ごめん……」

「ん、んん……。大丈夫です」

「とりあえず、ルリさんの部屋に急ぐね。周りの目がちょっと……」

「お願いします……」

「あれ?ルリさん?ルリさん!?ああ、もう!セシリー、やりすぎにもほどがあるでしょ!」


 シエラさんは気を失った私を抱えたまま、宿に入って行ったのでした。

 ルリが寝込むという珍しいことが起きましたが、その後が大変ですね。

 勘違いで家の壁突き破って外に叩き出されるのも大概だとは思いますが……。


 この小説はルリの成長はもちろん、それに関わる、セシリー、シエラ、レティアの成長も話となる物語です。



 次回の更新は書き終わり次第となります。


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 疑問もあるので、書いてみました。


 気に入って頂けるのが一番嬉しいですからね。

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