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アルテナ・フィエル

 旅は楽しみながらするもの。

 色々な事が起きるから。

 だから、私は旅をする。

 私の名前はアルテナ・フィエル。

 気ままな旅人よ。旅人なんだけど……。


「気になる噂を聞いたんだよね」


 この海岸から遠く離れた無人島に何かがある。聞いたのはそんな噂。

 なんとなく気になるから、見に行ってみようかなと考えてるんだけど。

 船でいく?そんな不便な物は使わないよ。

 私は精霊と魔族のハーフだから、空が飛べるのよ。

 私の姿が想像もつかない?……変な想像してないでしょうね?

 まぁ、気になるのもわかるわね。精霊と魔族のハーフなんて、私以外にいるとは思えないし。なによ?希少生物?否定はしないけど……って、うるさい!


 はぁ……。仕方ないから、私の見た目を簡単に説明するわ……。


 私の髪の色は赤色、深紅に近い色かな。後ろ髪は腰まであって、横髪は胸元。前髪は瞳が見える長さで切ってる。

 美人か?なによその質問……。自分で「はい、美人です」なんて言うわけないでしょ!そんなの言える人の方がおかしいわよ。

 次はスタイル?それも私自身ではいいのかわからないわよ……。胸はまぁ、そこそこあるかな?平均よりはあるし。背は微妙な高さね。高くもなく、低くもない。別に高いことに憧れはないけど。

 服装?旅装束だから簡単な物よ。どこにでも売っているような布の服とズボン、あとは黒いローブ。

 目の色?また妙な事を聞くわね。金色よ。薄い金色。

 もう、私の容姿とかに関してはいいよわね?面倒になってきた。


「さてと、目的の場所はどんな所かなー?」


 魔力を集めて特殊な魔法を発動させる。

 簡単にいうと遠くを見れる魔法よ。空間魔法の応用。


「無人島に何かねぇ……」


 海岸から海の方を見てるけど、何もないわね……。本当に無人島なんてあるの?


(距離が足りない?)


 魔力を増やして、さらに遠くを見る。……海しかないじゃない!


(ただの噂か………あれ?)


 一瞬だけど、何かが見えた。

 何かが見えた場所をもう一度見てみる。


(魔法で見えにくくしてる?)


 距離は私の立っている海岸から、船だと三日ぐらい?微かだけど、孤島が見える。大きさはそれなりの大きさね。島ということだけはある。


「それにしても、なんであんな遠い場所に……」


 思わず、呟いてしまう。それはそうよね。あんな不便な場所に隠れて何かしようだなん……!?


(見られてる……?)


 海の向こうから視線を感じる。なによ……私の真似でもしてるの?

 視線を感じた方向を注意深く見る。


(人じゃないのはわかるけど……)


 こんなことができる時点で、普通の人というのはありえない。

 城にいる魔法使いでも無理な芸当だからね。

 そうね、この世で英雄って呼ばれるぐらいの魔法使いなら可能かもしれない。

 なによ?私は英雄並みに凄いのかですって?精霊と魔族のハーフは伊達じゃないわよ?


(……いた)


 視線を感じた方向に人らしきものを見つけた。

 見た感じは人族の男だけど……。

 ん?私に向かってなにか……。


(小娘が何をしている)


 口の動きを読んでみると、そう言っているのがわかった。

 小娘ですって!?初対面の相手にそんな言われ方したくないわね!


(殴り飛ばしてやるから、そこで待ってなさい!)


 私は相手にわかるように口を動かした。

 返事の代わりだろう。男が呆れた顔をしていたのが見えた。


(小娘って言って、喧嘩を売ってきたのはあなたでしょうが!)


 島にいる男を殴りに行くのは決定よ!




「で、小娘」


 島についてるわよ?早くないって?この男を殴りたいからね!全速力で飛んだわよ!


「ちょっとまってよ……」

「なんだ?」

「その小娘っての止めてくれない?イラッとくるし、殴りたくなるんだけど?」


 私が怒り気味で言うと。


「この程度で怒るとは……小娘以前に、ただのガキか」

「誰がガキよ!」


 間合いを詰めて殴りかかる。手加減なんてしない!泣いて後悔しなさい!


「落ち着け」


 私の振りかぶった拳は簡単に受け止められた。

 嫌でもこいつが人族でないというのがわかる。


「受け止めたわね」

「そんな単調なものなど、食らうわけないだろ」

「そう……。なら、至近距離からの魔法ならどうかしらね!」


 属性なんてどうでもいい。こいつをぶっ飛ばせるなら!


「大した魔力だが、そんな雑な物は無意味だ」


 魔法が霧散した。そんな魔法なんてあるの……?


「………」


 目の前の男は人の姿をしているけど、間違いなく化け物だ。

 この男は敵だと本能が告げている。


「こちらからは攻撃するつもりはない。そんなに警戒しなくていいぞ?」

「……私が弱い小物にしか見えないってこと?」


 普段の私だと勝てないとは思う。


「そうとは言わん。まぁ、狼に遭遇した程度とは思うがな」

「言ってくれるじゃない」


 完全に頭にきた。


「死んでも恨まないでよね!」


 感情が黒いものに染まっていく。目の前の男の生死に興味はない。殴り飛ばす?そんな、優しい言葉は使わない。せいぜい生き残りなさい!


「瞳の色が赤く変わったな」

「そうね。本当に怒らせてくれて感謝するわ。容赦なくやれるから」

「小娘、魔族か?」

「また小娘って言った!」


 魔力が全身から溢れ出す。

 私の瞳の色が金色から赤に変わったのは魔族の血が騒いでいるから。


「魔族か。なら、少しぐらいは相手してやろう」

「そんな軽口言えるのは今だけよ!」


 言い終えると同時に地を駆けて、男の背後にまわる。卑怯?戦いなんだから、そんな言葉は知らないわよ!それに、こいつは私の動きに反応しきれてない。これなら、確実にやれる!


「だから、雑だと言ったんだがな」


 男は右側に一歩動いて、私の拳をかわしていた。


「なにそれ、でたらめすぎ………うっ!」


 言い終える前に、私はその場から弾き飛ばされた。何が起きたの……?

 男の方を見る。男は右手をこちらに向けているだけだった。


「魔族なのにその程度か?」


 明らかに落胆している。どうせ、私は半分しか魔族じゃないわよ!


「いちいち癇に障るわね……。私はハーフよ!」

「なるほど」

「納得すんな!」


 左右から挟撃となるように、火属性の魔法を撃ちこむ。正面からは火属性と水属性の魔法。


「もう少し考えた魔法は使えんのか……む?」


 左右と正面からの魔法が当たった直後、爆発が起きる。

 超高温の火に真逆の低温をぶつけたら爆発するのよ!


「バカじゃなかったか。こっちにダメージはないがな」


 男には傷一つない。涼しい顔をしている。


「だから、バカとかいうな!殺すわよ!」


 私の攻撃は全て受け止められ、あしらわれる。魔法も同じ。何も通用しない。


「私を殺すか。その程度の力量でできると?」

「いちいち腹立つわね……」


 私では殺せないのはわかっている。でもね……この男が憎たらしすぎるのよ!

 二言目には小娘だのバカだのと!

 これでも私は女よ?もう少し言葉ぐらいあるでしょうが!


「最近は魔族の質も落ちたもんだな。もういい、帰れ」

「あれだけ、挑発しておいて帰れ!?ふざけないでよ!絶対にぶっ飛ばすわ!」

「物騒な発言だが、可愛らしく聞こえるな」


 男は何も気にしていないようだった。この余裕が更に、私を苛立たせるのよ!


「大体、あなた何者よ?こんなことができる種族なんて聞いたことないわよ」

「はぁ……」


 なによ?そのため息つかせたのって私が原因なの!?


「まぁ、教えてやろう。小娘、龍族って知ってるか?」

「龍族?聞いたことはあるけど、あれっておとぎ話とかに出てくる、空想の種族でしょ?」


 何をバカなことを言っているのかと思った直後、説明しようのない悪寒が走った。

 ないない!それはありえない!


「龍族は基本的に多種族と交流は持たないからな」


 男が龍へと姿を変えていく。魔物でごく稀に見かける龍とは違う。


「白竜……」

(あはは……。ダメだ、絶対に死んだ。相手が悪すぎる。生き残る方が無理!)


 白龍の口がゆっくりと開く。龍はブレスと呼ばれる魔法に匹敵するものを扱うって聞いたことがある。でも、相手は白竜。その表現は当てはまらない。何で当てはまらないかって?魔物でも『白』とつくものは『黒』より上だからよ!


「殺しはせんよ」


 その声が聞こえると同時に、私の横に真っ白なブレスが通過していった。

 背後に広がる海からは、滝の様な感じの音が聞こえる。海が割れたんだろうな……。

 これだけ力量差があって殺さないっていうことは……。


「……慰み者にでもしようっての?」


 私は敗者だ。生きているわけじゃない。生かされているだけ。何をされたとしても、ここは無人島。誰も何も気が付かない。それに、逃げ切れるわけがない……。


(少しは強いと思っていたんだけど、私はなんて無力なんだろう……)


 全てがどうでもいい。壊されるぐらいなら、壊れた方が楽そうだ。自分の今からの事を悲観するのなら、全て諦めて、どうでもいいと考えるのが気楽ともいえる。


「小娘相手にそんな感情は持たんよ」

「……は?」


 目の前の白竜は人の姿へと変わっていった。

 呆れたを通り越して、こちらを可哀そうな目で見ている。


「お前みたいな小娘を誰が相手にするんだ?」

「これでも、平均よりかは可愛いと思うんだけど……?」


 ささやかな抵抗だった。本当にささやかだとか言うな!


「かもしれんが、小娘だ」

「人の事を小娘小娘って……私はこれでも326歳よ!」


 女が自分から年齢をばらすな?小娘小娘言われるのが嫌なのよ!


「326歳か……」


 男が目を瞑り考えている。答えは直ぐにでたようだった。


「その年齢でその容姿か。若作りに苦労しているんだな」

「………」


 頭の中で何かが切れた音がした。


「誰が若作りに苦労してる年増よ!童顔なのよ!昔から背もあまり伸びないし、童顔のせいで子ども扱いされ続けてるのよ!この苦労がわかる!?私が普通に旅をしていると、「お母さんはどこにいるの?」って警備兵に呼び止められたりとかするのよ!?私が言いたいわよ!「あんたの方が母親を探す歳だろう」って!どいつもこいつも、人を子供扱いして――――――!」


 魔力が暴走気味に放出され、自然災害と勘違いされるぐらいの突風すら発生している。

 コントロールぐらいしろ?うっさい!これだけイライラするのにコントロールも何も知らないわよ!


「私から見れば子供と変わらん」

「うるさい!小娘って言ったり、バカって言ったり、子供って言ったり!これでも苦労してるのよ!」

「そうか」

「関心なさそうにいうな!私を怒らせたのはあんたでしょうが――――!」

「子供の癇癪としか思えん……」

「またい………」


 え?今何が……?って、近い!近いわよ!

 目の前に男がいる。いえ、私を押し倒した状態でいる。

 

「せっかく、この島を選んだのに荒らされては困る」

「放せ!って、魔法だけじゃなくて、力まで……なによこれ!?」


 押し倒され、両手は頭上で掴まれたまま。全く動かせない。


「魔力を抑えるなら放してやる」

「わかったわよ!」


 魔力を制御すると、押さえつけられていた腕が少しだけ動かせるようになった。


「で、まだ放してくれないの?」

「完全に放した瞬間に殴りかかってきそうだからな」

「それはあたりま……あ……」

「やはりか」


 殴りたいに決まってるでしょ!

 馬鹿にされ続けた上に、押し倒されて。……押し倒され?え……やっぱり、そういうこと!?


「……本当に慰み者とかにしないのよね?」

「言っただろう。小娘にそんな感情は持たんと」

「その小娘を力で押さえつけてるのは誰よ?」

「口だけは達者だな」


 男は言い終えると、両腕を放して立ち上がった。

 正直に言うと、少しだけほっとした。強い人に惹かれることはあるけど……。


「本当に何もしないんだ」


 立ち上がらずに、地面に座ったままで言った。

 色々と疲れたから……。


「何度も言わせるな」

「ごめん……。って、なんで私が謝るのよ!私は別に悪くないじゃない!」

「いや、襲い掛かってきたり、魔法で島を荒そうとしたりと悪い事だらけだと思うが?」

「うぐ……」


 正論を言われると少し辛い。


「でも、あんたが私を小娘とかいうから!」

「事実だから仕方がない」

「なら、あんたは何歳なのよ!私を小娘って言うんだから年上よね!?」

「もう数えるのは止めたが……」


 男が考えている。年齢で考えるってなによそれ……。


「1000歳は超えてるか」

「は?」


 え、今なんて言ったの?1000歳は超えてる?

 違う意味でイライラしてきた。

 何よ何よ!私のことを小娘だのガキだの言っておいて……。


「あんたなんて、年寄りなんて言葉が軽く思えるぐらいじゃない!このクソジジイ!」


 私の絶叫が島に響いた。




「で、小娘、お前はここに何をしにきた?」

「アルテナ。アルテナ・フィエルよ。小娘いうなクソジジイ」

「なら、アルテナ。お前はここに何をしにきた?」


 私と目の前の男……いや、クソジジイは小屋の中にいる。こいつが建てたらしい。

 中には椅子の代わりに丸太があるだけ。小屋ではあるが、屋根がある程度と思っても間違いはない。


「海岸から離れた無人島に何かがあるって噂を聞いただけよ。そしたら、あんたが喧嘩を売ってきた。名前ぐらい名乗りなさいよ。名前がないわけじゃないでしょ?」

「カイレイス」

「思ってたよりも、いい名前じゃない。……あれ?カイレイス?」


 小さい頃、本当に小さい頃に、お母さんが教えてくれた、おとぎ話を思い出した。

 おとぎ話に出てくる、龍族の名前がカイレイスだ……。


「昔、お母さんがおとぎ話を聞かせてくれたんだけど、話に出てくる龍族があなたと同じ名前……。伝承に出てくる名前も同じ。まさかと思うけど、あんたじゃないわよね?」

「………」


 カイレイスと名乗った男は無言で横を向いた。


「うそ……よね?」


 何かが崩れる音がした。盛大に派手な音を立てて。


 このおとぎ話は龍族の青年が色々な国を旅する話だ。内容は人々を守り、訪れた国を助けながら旅をする。種族をとわず、助ける為なら命をも懸ける。女の子なら恋をし、男の子なら憧れる。誰もが夢をみる英雄と呼ばれる青年のおとぎ話。

 そんな素敵なおとぎ話が……。


「私の初恋を……私の憧れを返せ!返してよ―――――!」

「そんなことを言われても困る」

「返せ……私の……思いを……」


 気が付いたら泣いていた。

 あまりにもショックが大きすぎて泣けてきた。


「私は自分のしたいことをしただけだ。あんな話になるとは思いもしなかった」

「……あんたにどれだけの……女の子が恋したと思ってるのよ?」


 最早、恨み言ともいえる。


「どれだけの男の子が憧れたと……英雄と呼ばれる青年の物語に……」

「私からは何とも言えん。その時に見た者が作り、語り継いだことだ」

「無責任……」

「酷い言いようだな」


 呆れた顔をしながら言わないでよ。虚しくなるじゃない……。


「それに語り継がれているような、いい話ばかりじゃない」

「……どういうことよ?」

「人々を助けたというのは間違いじゃない。だが、裏を返せばそれだけ殺したということになる」


 英雄と呼ばれる人の裏の話。何があるのだろう?


「よく考えてみろ。人を助けるというのは魔物が相手とは限らない。他の種族の場合もある」

「でもそれは、正しい事をしようとしたからじゃ……」


 英雄と呼ばれているんだから、正しいことをしているんだよね?

 だから、英雄って……。


「私が助けた国が、実際は周辺諸国を蔑み、虐げていたとしたらどうする?」

「何がいいたいのよ」

「私は旅人だった。偶然、立ち寄った国が周辺諸国から攻撃されていた。女子供も関係ない。無慈悲に殺される姿も見た。だから、私は戦った。だが、襲われた国が実際は悪く、襲った国が正しかった。それを妨害した、私を正しいと思えるか?」

「………」


 何も言えない。

 正しくは言葉が出ない。言葉を選べない。

 私には、カイレイスの気持ちがわからないから。


「助けられないのは罪だ。何も知らないのも罪だ」


 英雄と呼ばれることに抵抗があったのではないだろうか?

 そうとしか思えない。


「私は逃げるように、その国から立ち去った。国内に取り込もうとした輩もいたが、まとめて蹴散らした。罪滅ぼしというわけではないが、元凶と呼ばれるものは全て潰した」


 カイレイスは何を思い出しているのだろう?


「助けれなかった命も多々ある。次は助けれるようにと願いながら旅を続けた。現実は助けることができないことの方が多かった。何度も心が折れそうになったのを覚えている」


 もういい。思い出さないでいい!話さなくていい!

 そう思っているのに!

 私の声はでない……。


「何百年と旅を続けている間に英雄と呼ばれ、おとぎ話として語り継がれるようになっていた。嬉しいとは思わない。苦痛とも思わないし、後悔もしていない。ただ、私が知ったことは……」


 カイレイスは空を見上げて言った。


「助けられないことに意味はない」


 その言葉を聞いた後、私の涙は止まらなかった。

 言葉は今もでないまま。でも、何かを言えるのなら……。


『何も知らないのに、勝手なことを言ってごめんなさい』


 伝えられない代わりに、嗚咽ともいえるような、自分の声だけが聞こえた。




「それで、カイはここで何がしたいの?」


 泣き明かしてから、私は尋ねた。

 一生分、泣いた気はする。


「カイとはまた略されたものだ」

「いいじゃない。それの方が呼びやすいから」

「好きにしろ」

「うん。好きにする」


 これだけの事を乗り越えた人が、これから歩む道が気になって仕方がない。

 だから、私は気軽に呼ぶようにした。

 『改めて恋をした』とかじゃないからね?


「アルテナは魔島というものは知っているか?」

「噂ぐらいなら。バカげた内容だと思うけど」


 存在する属性を本当の意味で極めた者が集まる島。それを魔島と呼ぶ。

 私からすれば、それは自意識過剰の集団としか思えない。だってそうでしょ?極めたって誰が決めるのよ?


「確かにバカげた内容ではあるが、あれにも裏がある」

「魔島にも裏があるの?」

「簡単に言えば、疎まれた集団だ。強いが故にな」

「笑えないわね……」


 本当に笑えない。ただの僻みじゃないの。


「無駄に争うよりは賢明な考えではある。そして、私は一通り、魔島をまわってきた」

「凄い事してるし……」

「思う所もあったからな。案の定、それは起きていた」

「何かあったの?」


 想像もつかない。

 疎まれて追いやられた人達に何が起きるの?


「同じだ。魔島でも強すぎて疎まれる者がいる」

「本当にバカの集団じゃないのそれ……?」

「かもしれん。だから、疎まれる者が来ても暮らせる場所を作ろうと考えた」

「……ごめん、もう一回言ってくれない?」


 カイが今とんでもないことを言った気がする。聞き間違えよね?


「ここを新しい魔島にする」

「さっきよりもわかりやすく言ったよね!?」

「その方が伝わりやすいだろう?」

「そうだけど……」

「騒がしい島になるかもしれんが、私は静かに暮らしたい」


 本音なんだろう。戦い疲れたとは言わないが、そう言っているのと同じと思った。

 誰か、カイに休めと言わなかったのかな?

 ……仕方ない。


「なら、それを手伝う」

「アルテナが?」

「ええ」


 カイという英雄が作る島。それが見てみたい。

 結末を知る気になれば、反則だけど、私にはできる。でもそれはつまらない。

 だから、手伝って生きてみようと思う。


「あなたほどじゃないけど、私もそれなりに長生きしてるからね」

「なら、お前がこの魔島にやって来た初の住人だな」

「そうね」


 自然と頬が緩む。


「それに、ここに住んでれば強くなれそうだし」


 自分が強くなるというのは一番の目的じゃない。

 この島がどうなっていくのか?

 私はそれを見届けたい。これは願いともいえるかもしれない。


「それにあなたは目的を終えるまで死なないでしょ?……それ以前に、寿命あるの?」

「私の寿命なんて、それこそわからん。明日死ぬかもしれないし、忘れたころに死ぬかもしれない。こればかりは運としか思えないな」

「私もそんな感じ。だから、とことん付き合う。ただし、私の機嫌を損ねたりしたら、後が酷いわよ?」

「肝に銘じる」


 カイの返事を聞き終えてから、右手を差し出した。


「なんだ?」

「これから、よろしくってこと」

「そうか」


 カイが私の右手を握り返した。


 これから新しい日々が始まる。

 退屈もしなさそうだし、とても楽しそうだ。


「では、最初に自分たちの住む場所を作らないとな。これは仮の小屋だ」

「そこからなの!?」


 訂正しよう。

 少し不安になったと。

 アルテナは色々な意味で重要な人です。

 ルリアルカにもかなり影響を与えています。


 物語の合間に、アルテナを中心とした話を書いていく予定です。



 次回の更新は書き終わり次第となります。

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