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抱き枕とお泊り

私は戦うことが嫌いです。

傷つけられる人を見るのが嫌いです。

でも、怒っている時は……。

どうなっても、知りません!

「次はどなたでしょう?」


 周囲を見渡します。私の周囲で立ち上がっている兵隊さんは約半分程になっていますね。あちこちから、うめき声が聞こえます。多少の怪我はありますけど、大怪我はありませんよ?地面には大きな穴や燃えた跡、外壁は崩れている部分もあります。やりすぎ?私をここまで怒らせたのが悪いのです。


「相変わらず、容赦ねーな……」

「ゼフィア、まだ無事だったのですね」

「笑顔で言うなよ……」


 笑顔ですよ?私を怒らせた張本人が相手ですから。


「お姉さまが恐ろしい……」

「……何かいいましたか?」

「な、なんでもありません……」


 ファリスが青い顔をしながら言います。あなたの腕はまだ見ていませんね。


「ルリアルカさんを囲むように展開!剣と槍を使う前衛は出すぎるな!弓、魔法を使う者は援護を!」


 ザインさんの指揮が聞こえます。私を包囲するように前衛と呼ばれる方が集まります。援護の方は弓を構え、魔法だと詠唱中ですね。定石なのでしょうけど、それだけでは足りませんよ?


「人や魔物が相手でも少数なら有効策ですが……」


 剣と槍を持っている兵隊さんの足元に地属性の魔法を発動させ、そのまま拘束します。周囲から驚きの声が上がります。こういう事もあると想定しないとダメなのです。


「高レベルの魔法を使う人が相手の場合は無意味です」

「援護を!」

「甘いです」


 飛来する弓と色々な属性の魔法。当たらなければ意味がありませんよ?

 そのまま、翼を広げて上空へ飛び上がり、停止します。はい、見事に弓と魔法は空振りです。


「空を飛んでる?」

「港の報告にあったのって、ルリちゃんか!?」

「状況が追い付かない……」


 色々な意見が飛び交います。隙だらけですよ?今は狩るか狩られるかなのです。


「練習ついでに使いましょう」

「……ルリ、それはなんだ?」


 地上から、ゼフィアが私を見上げています。呆れたような困ったような顔をしていますね。


「雷ですよ?」

「な!?それ、洒落にならないだろう!?」

「大丈夫ですよ?死ななければいいのです」


 笑顔は当然です。追い込むなら笑顔の方がいいのです。楽しんでいませんよ?

 ええ、楽しんでなんか……くすくす。


「では、落としますね」


 広範囲に落ちるように発動させます。逃げ場はありません。逃がしません。

 地面に着弾するまでは一瞬。激しい光と鳴り響く轟音。これだけでも、追い詰めれるはずです!


「さてと」


 ゆっくりと地上に着地し、辺りを確認します。怒っているからか、少し威力が強かったようです。痺れている人よりも意識がない人の方が多いですね。生きていますから問題はありませんが。


「ルリアルカさん、降参だ」


 ザインさんは痺れて動けないようですね。


「はい。いつか、剣での勝負をお願いしますね」

「できれば、遠慮したいな。負けるのはわかっている」

「そうですか」


 少し残念です。間違いなく、ゼフィアの次に強いはずですからね。


「あああぁぁ!」

「あら?」


 思った以上に、一人元気な方がいたようです。幅の広い剣を使っている方ですか。声よりも剣の幅に驚いたのは秘密ですよ?


「かすった……か?」

「はい。かすりました。おかげで服が台無しです。剣の長さを見誤りました」


 もう少し、冷静になった方がよいですね。服が斜めに斬れていました。肌に傷はありませんよ?


「え!?いや、これはそんなことをするつもりではなく!」


 私の下着が見えていることで、動揺しているようです。

 はぁ……。本当に甘いです……。


「あなたは自分が生きるか死ぬかの状況でも、女性の下着が見えたら動揺するのですか?」

「いや、でも!?」

「でも、ではありません。これが敵対する兵隊さんだと、あなたはおしまいですからね」


 兵隊さんの目の前にまで移動します。顔を背けるなど、問題外ですよ?


「精神面を鍛えてください。それでまた強くなれます」


 言い終えると、私は兵隊さんの腕を掴み、投げ飛ばしました。おまけも忘れません。

 投げ飛ばされて宙に浮いている所へ、風属性魔法を撃ちこみます。受け身は……取れていませんね。ゴロゴロと転がっていきました。この中では、一番の怪我人かもしれません。


「残りはゼフィアとファリスですね」

「教訓っていうか、精神面は大事だが……。ちょっと酷くねぇか?」

「乙女の柔肌を見たぐらいで動揺するのでは、本当に危険な時に判断なんてできませんよ?」

「確かに……」


 仮に対峙している人が盗賊や国に悪事を企てている人だとしましょう。そのような相手に下着が見えたからといって目を背けるなど、相手からするとお得すぎます。自分より強いかもしれない相手がその程度の事で隙を生むなど、ありえませんからね。


「では、ファリスの前にまずは、諸悪の根源であるゼフィアを亡き者に……」

「物騒すぎるわ!亡き者とか色々とダメだろうが!」

「えー」

「えーって、お前な……。戦うことは戦うから、ひとまず、周りの兵達を安全なところに運ばないか?」


 周囲や外壁、あちこちに兵隊さん達はうずくまったり、気を失ったりしています。たまに悲鳴が聞こえます。この悲鳴を聞いているとやりすぎた気もしますが、追い込んでいるのですから、乗り越えてくれるでしょう!無責任?これは兵隊さん達を鍛える手段なのです!そのような簡単な言葉でまとめないでください。


「わかりました。兵隊さん達を安全な場所に移動させ終えたら、ゼフィアの最後です」

「マジでやられそうだから嫌だな……」



 兵隊さん達が安全な場所に移動するのは、思った以上に時間がかかりました。私のせいではありませんよ?防御が甘い兵隊さん達が悪いのです。


「なぁ、ルリ」

「なんですか?」


 ゼフィアは私の目の前で剣を構えています。構えは両手で構えるのではなく、片手で持っているだけです。物はもちろん、ゼフィアが作ったものですよ?半身で右腕だけで持っています。私ですか?片手か両手、どちらにしましょうか。


「着替えとかないのか?空間魔法使えるだろ?」

「着替えはお家に置いてあるのです」


 『ミューズの安らぎ』に自分のお家が出来てから、衣類は持ち歩いていません。空間魔法には部屋の中に置いておいても困る物だけ入れています。武器とかですよ?あ、下着も入れていますね。湖の傍にいけば、露天風呂が待っているのです。


「見慣れてるから平気だが、なんかなぁ……」

「懐かしい感じはしますね。ですが、今日がゼフィアの最後の日です」

「……ほんと、怒らせ過ぎたな」

「覚悟はいいですよね?」

「死なない程度で頼む……」

「えー」

「そこは不満を持つところじゃないだろう!?」

「考えておきます」


 右手に愛用の剣を携えます。構えはありません。私は自然体が多いですからね。


「行くぞ」


 ゼフィアが地面を蹴って上段から斜めに斬りかかってきます。その斬撃は受け止めません。降り抜かれる方向に自分の剣を傾け受け流します。私は受け流したまま、ゼフィアに体当たりをし、姿勢を崩したゼフィア目掛けて、上空に飛び上がり、身体を捻って回転しながら持っている剣を叩きつけました。


「あっぶね……」


 叩きつけるように振り下ろした剣を、ゼフィアが受け止めています。島にいた時では今ので決着がついていました。


「懐かしい手を使いやがる。だが、俺は島を出てからも鍛錬は怠っていない。以前のままと思うなよ?」

「嬉しいですね。ゼフィアが強くなっていることは素直に嬉しいです。ただ……」


 不満が一つあります。これは女性なら全員賛成してくれると思いますよ?


「私の胸元見ながらいうのを止めてくれると嬉しいのですけど?」

「……意識はしてないんだが、ルリはスタイルいいからなぁ……」

「理由になりませんよ」

「まぁ、そうだな。酷いと言われようが、こちらの命を狙ってくる相手がどのような姿だろうと、躊躇った時は自分が終わるからな。長にも言われたよ」

「はい」


 私の返事のを聞いてから、ゼフィアがその場を飛びのきます。構えからすると突きでしょうか?剣は縦に構えず横向きです。ゼフィアの得意な攻撃方法の一つでしたね。


「ふっ!」


 ゼフィアが限りなく低い体勢でこちらに向かってきます。


「懐かしい攻撃パターンです……!?」


 引く姿勢から繰り出されたのは突きではなく、凪払いでした。その場で飛び跳ねて、凪払いを避けますが、次に視界に入ったのは、地面を蹴って飛び上がり、回転して勢いをつけた蹴りを放つ姿でした。こちらは跳ねている状態のままです。なので、剣の柄で受け止めます。


(空間魔法!?)


 私の剣に空間魔法がぶつかります。驚きました。ゼフィアは基本的な魔法は使えません。空間魔法は武具の収納の為に島に来てから覚えていましたけど。

 ゼフィアが魔法を使う時は得意である剣の刀身を生成する時だけです。攻撃として空間魔法を使ってきたのは予想外でした。


 地面に着地した後、私は剣を弾き飛ばされないように後ろに飛び去りますが、ゼフィアは追撃といわんばかりに空間魔法を連続で発動させ、剣を狙ってきます。武器の無力化を前提とした、コントロールされた空間魔法が飛び続けます。


「収納しか使えなかったが、色々と使えるようになったんだよ」

「そうみたいですね」


 捌きながら答えます。『精霊の眼』を使って位置を把握しながら、弾き、斬り、避けと、あらゆる手段で回避し続けます。

 近距離では剣で戦い、遠距離は空間魔法の砲撃で牽制というところでしょうか?この程度の距離であれば、ゼフィアからしても距離はあってもないようなものです。隙があれば、斬りこんでくるでしょう。


「さながら、魔法剣士という感じでしょうか?」

「そうかもな。体術も使うが」


 ゼフィアが一気に距離を詰めて左の拳を打ち込んできました。それをかわすと右の拳、蹴り、蹴りを放った足を地に着けると縦に回っての蹴り落とし、防いだと思えば、両手をついて、逆立ち状態から勢いをつけて、足を払ってきました。


「体術もなかなかだと思います」


 止まることのない猛攻。至近距離なら剣と体術の複合、距離を開けると魔法での牽制。一対一なら強いですね。


「っと」


 ゼフィアの姿が正面から消えたので、剣を背中にあわせるように置きます。直後、斬りかかってきた衝撃が伝わりました。


「簡単に防ぐなぁ……」


 既にゼフィアは距離を取り構えています。


「私が負けると抱き枕ですし」


 抱き枕が嫌と言うわけではありませんよ?家族と一緒に眠れるのも嬉しいですから。


「あー、そういう話もあったな。忘れてた」

「わす……れてた?」


 真剣に相手をしていても、負けると抱き枕にされる。負けることはありませんが、抱き枕になる可能性があると思い、頭の片隅に置いていたのですが……。忘れてたですか。


「……忘れていたのですね」

「ル、ルリ……?」


 私はずっと覚えていましたよ?私の方が被害者なのですから。ですから……。


「私は忘れません。ゼフィアの最後を。あの大切な家族の顔を」

「ちょ、まて!」

「天に帰っても安らかに過ごしてください。家族の私は、それを願っています」

「だ――――!」


 ゼフィアが私の声を遮りました。


「なんですか?これから、あなたの事を忘れないように。記憶に残るように頑張っているのですよ?」

「お姉さま、さすがにダメです!」


 背後からファリスが抱き着きましたが。


「きゃうん!」


 私が雷属性を纏ったことにより、そのまま気絶して崩れ落ちました。


「ル……」

「制限解除」


 剣を持った右腕を頭上に掲げ、魔力の放出量を爆発的に増やします。私の魔力を受け、刀身が何倍もの長さに変化します。


「私の大事な家族。私の手をもって、この世と離別させてあげます。その後の未来に幸あれ!」


 私は全力で剣を振り下ろしました。




「死んだと思ったわ……」

「最初から殺す気はありません。殺気も出していないのに、焦りすぎですよ?」

「そんな余裕ねーよ……」


 ゼフィアは訓練場の真ん中で私に膝枕をされています。


「あの雷の魔法、俺が帰った後で作られた魔法なのか?」


 ゼフィアも魔島で新しい魔法が作られるということは知っています。魔法を作った一人ですから。

 ゼフィアの剣には様々な刻印が入っています。魔法を刃として発動させる刻印。これがゼフィアの作った魔法となります。この刻印は魔法陣とも言われていましたね。


「あの魔法は先日の雷を見て、思いついたものですよ?」

「はぁ……。お前の『あれはなに?』は変わってないんだなぁ」


 ゼフィアが目を瞑って、笑いながら言いました。


「好奇心というのは大事な物です。行き過ぎるとダメですけどね」


 ゼフィアの頭を優しく撫でます。ゼフィアは目を瞑ったままです。


「懐かしいな。島で弱い俺はいつもボロボロで、小さいのにいつも膝枕をしてくれる、ルリがいて……。あの頃は、いつも情けねぇって思ってたんだぞ?自分よりも歳が下で、しかも子供に膝枕されながら頭を撫でられ」

「いやでしたか?」

「……嬉しかった。島に渡った俺に最初に優しくしてくれたのは、ルリだったしな。皆と打ち解けるのに時間はかかっても、いつもお前が横にいてくれた。ルリと話す機会が増えて、長やアルテナ、オリヴィアとアルシェと仲良くなって、リファイ、ゼオ、クルシェ……沢山の人が友となり家族となった。忘れることは絶対にない」

「あの頃は幸せでしたね」

「ああ。でも、俺は自分の国を守るために帰った」


 ゼフィアが複雑そうな表情をしています。


「帰るのは約束もあったからな。でも、心のどこかで、島に残って皆と……いてっ!」

「それ以上はダメですよ。ゼフィアには大切な家族と国があるのです。それ以上、望むのは贅沢というものです」

「贅沢か……。確かにそうかもしれないな」


 ゼフィアが横で気を失ったままの、ファリスを見ています。


「時々、ファリスに剣を教えていいのか迷うんだよ」

「迷うですか?」

「ああ……」


 ゼフィアは私に視線を移し、真剣な目をしています。大事な話みたいです。


「俺が王都に戻る前は色々な策謀があってな。当然、こいつも狙われたことはある。だから、俺は王になった時、害意ある者達をまとめて潰した。暴力的なことはダメだと思われるかもしれん。だが、俺は王である前に一人の人間だ。傍から見れば個人的な意見と思われるだろう。でも、あれらは潰すしかなかった」

「その害をなす人達を潰した結果、どうなったのです?」

「王都自体にも悪い影響を出していた奴らだったからな。城内は平和になり、王都も平和。変なしがらみも無くなって、自由に民が生きれるようになった。だから、英雄と呼ばれた」


 英雄と呼ばれることはよい事だと思います。

 でも、ゼフィアの表情は暗いです。


「家族を守る為に取った行動が、結果として最後は英雄だぞ?なんかおかしくないか?俺は家族を守るために大勢の人を手にかけた。そいつらにも、家族はいる。恨まれても当然だ。でもな、恨まれないんだよ……」

「負の怨嗟が起きないのはよいことです」


 恨まれて当然。これは普通の事です。

 誰かを傷つけたら恨まれる。

 傷つけられたから恨む。


「あなたは自分が行ったことが間違いだと思っているのですか?」


 ゼフィアを撫でる手を止め言いました。


「間違ったとは思っていない。家族と民を守るには、最善とは言えないだろうが、取るべき手段だった」

「なら、それでいいと思います」

「だが……」


 私は家族が言っていた言葉を告げました。


「『あなたは考えすぎるから考えちゃダメ。思った通りに動きなさい。それで結果が悪かったなら、良くなるように頑張ればいいの。大体、あなたバカなんだから、考えるだけ無駄よ、時間の無駄。無い知恵絞って悩むぐらいなら、行動で示したらいいの。だから、あなたは自分の決めた道を進みなさい。いいわね?』」


 声も似ていると思います。ですが、あそこまで優しい声は出せません。あの声は本当に安らぎますからね。


「よく怒られたな」

「私も怒られましたよ」

「ルリの場合は怒られてるよりも、笑顔で引っ付かれてる姿の方が多かった気もするけどな」

「そうですね」


 二人して笑います。


「でもあいつ、年齢の話だしたら切れるよな」

「女性に年齢を聞くことが失礼なのです……よ!」


 私は膝の上に目掛けて、拳を落としました。

 アルテナは怒らせてはダメなのです!小島ぐらい軽くけし……なんでもありません。

 

 

 訓練場での騒動の後、お城の中庭でゼフィアとファリスの三人で雑談をしていたのですが、長居し過ぎました。中庭には夕日が差し込んでいます。お城から歩いて帰ると、お家に着くのは夜になるでしょう。理由を伝える暇もないまま、ギルドからお城に来ていますし、レティアが心配しているはずです。


「ルリ、今日は泊まっていけ」

「遅くなってきたので、帰るつもりだったのですけど?」

「レティアに連絡は届いてるから大丈夫だろ」


 レティアはしっかりしています。でも、心配なのです。


「……泣いたりしてないでしょうか?」

「いや、それはないだろ……」


 ゼフィアが椅子から滑り落ちそうになっていました。私は真剣ですよ!


「まだ小さいですし……」

「『ミューズの安らぎ』中に家があるんだ。それに、お前の友達のセシリーもいる。何も心配いらないだろ。何かあったとしても、隣はギルドだ。ウェイスもシエラもいるしな。危ない事でも起きたら、ルリは飛んでいくんだろ?」

「あたりまえです!」

「なら、大丈夫だ。少しはゆっくりしろ」

「……わかりました」


 レティアには申し訳ありませんが、今日はお城にお泊りです。


「ルリの泊まる部屋をどうするか……」

「私は空いている部屋があればどこでもいいです。なければ、この中庭でもいいですし」

「お姉さま、さすがにそれは認められません……」


 ファリスが肩を落としながらいいました。野宿は嫌いですが、この中庭だと気持ちよく眠れそうですよ?


「俺の部屋に泊まるか?」

「それでもいいですけど」

「よくありません!自然とお父様はなんてことを言うのですか!お姉さまも即答で返事しないでください!」

「私は別に気にはならないのです」


 島で過ごしていた時に一緒に眠っていたこともありますし。


「ダメです!客室が空いています。それに客室が嫌なら、私の部屋に泊まれば、問題は解決します」

「そうだな。ファリスはまだ抱き枕を狙っているのか……」

「狙っていません!それはお父様の方でしょう!」

「私は抱き枕以外の扱いはないのですか……」



 私が案内されたのは客室というには豪華すぎる部屋でした。お城の客室が豪華なのは想像できますけど、これ程とは思いませんでした。まるで、誰かが住むことが決まっていたような、そのような雰囲気すらもあります。

 考えていると、ドアがノックされた音がしました。


「どなたでしょう?」

「俺だ」

「ゼフィアですか。開いてますよ」

「そうか」


 ゼフィアがドアを開けて入ってきました。


「夜更けに女性の部屋を訪れるなんてダメですよ?」

「そいう意味で来たわけじゃ……なんだその姿……?」

「下着ですけど?就寝用の服もお家ですから」

「あー……」


 ゼフィアが「失敗した」といいながら、顔を押さえてます。


「お前が島の時と同じなのは嬉しい事だが、確かに心配になってくるな」

「皆は私を心配しすぎなのです」

「実力面では何も心配してねーよ。ただ、他の面でな」

「?」

「お前はそのままでいろ。ああ、俺が部屋に来たのはそういう話をしにきたんじゃない。魔島の話を聞きたいんだ」

「それは……」


 いいたくありません。いつかは話さないとダメですが、それでも話したくありません。家族が相手でも?ですか?家族が相手だからこそ、言えないこともあるのです。

 話せば、ゼフィアは納得してくれるとは思います。それも当然のように。魔島の家族なら普通だと。


「言いたくないか?」

「………」


 私は返事の代わりに頷きました。


「ならいつか話してくれ」


 ゼフィアがベッドに腰かけます。


「いつかですよ?」


 ゼフィアの横に座ります。


「気長に待つさ。って、おいルリ!?」


 私がゼフィアの膝に頭を置いて横になったので驚いています。


「魔島の時はこうやって、遊んだ後に皆の膝の上で横になりました」

「そうだな」

「あの日々は帰っては来ません。でも、私は………すぅ……」

「寝たか。大きくなっても変わらないな。って、この状態だと俺が動けねーじゃねーか……。起きろ!起きろルリ!」

「んぅ?………え?」


 動いた拍子に私はベッドから落ちました。


 盛大に拗ねましたよ?

魔島は閉鎖的なので家族仲はとても良いです。

家族に遠慮がないのが特徴でもあります(でも、失礼なことをいうと大惨事に)。



次回の更新は書き終わり次第となります。

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