心得と呼び出し
ギルドのお仕事を再開して数日経ちました。
人と関わるのはやっぱり苦手です。
でも、最近は楽しいと思う時が増えました。
今日はギルドで受付です。
シエラさんは別の用事があるらしいので、ギルドには居ません。
「最近、赤狼が増えた気がします」
素材の買い取りに赤狼の毛皮が多いのです。少し腕の立つ方なら討伐は可能ですが、少し危険な気がします。「赤狼は簡単に倒せる」このように考えてしまうと、大怪我するのは間違いありません。ウェイスさんに注意書きでも書いてもらいましょう。
「ルリちゃん、買い取り頼めるかな?」
「はい。買い取り内容は何でしょう?」
この方は王都に出稼ぎに来ている冒険者でギルドでの評判も良いです。
「今日はこの毛皮よ」
「これは、黒狼ですか?」
私が「黒狼」というと、ギルド内の視線が一斉にこちらを向きました。
私は愛玩動物ではありませんよ?
「魔物の調査の依頼を受けたから、四人で森に入ったの。黒狼と遭遇した時には死んだと思ったけど……。でも、運よく討伐できた。怪我人は出たけど死人は出てない、運が良かったのかもね」
「生きているのは大事なことです」
(えっと、黒狼の査定額というのはいくらなのでしょうか?受付のお仕事をやるようになって少しは経ちますが、黒狼は初めてです。あ、ギルドマスターの元に案内するようにと書いてありますね)
「この場では買い取りの金額がわかりませんので、ギルドマスターの部屋へと案内します」
「ありがとう。他の三人も呼んでくるわ。四人で討伐したからね」
「わかりました」
三名は近くの席に座っていたらしく、直ぐに集まりました。ギルド内から賞賛の声が聞こえます。黒狼はそれほどの魔物なのですね。
ふと、湖の事を思い出しました。あれも黒狼でした。目の前の毛皮の量から見ると、数は一匹だと思われます。私の倒した数がわかると大変なことになりそうですね。秘密にしましょう。人に囲まれるのは嫌なのです。
「案内しますね」
私は集まった四人に言いました。
「黒狼を討伐した四人を案内してきました」
ドア越しに、ウェイスさんに声を掛けます。そのまま、入ってはいけませんよ?
「入ってくれ」
「はい」
ドアを開けて、四人に室内へ入ってもらいます。私は案内なので、ここで……。
「ルリアルカさんはこちらに」
「はい?」
びっくりしたので、変な返事をしてしまいました。少し恥ずかしいですね。
四人を部屋にある大きなソファー座らせた後、ウェイスさんの横に座るように手を向けました。私は関係ありませんよね?
「黒狼を倒したか。誇らしいことだ」
ウェイスさんはギルドマスターの机がある椅子に。私はその横にある、秘書さんが座る椅子に座っています。私は案内しただけですよ?
「黒狼を何匹討伐したのかね?」
ウェイスさんの声が鋭くなります。褒められる内容なのですよね?
「四人で一匹討伐しました」
「一匹か。お前たちはまだ若いが腕のいい冒険者と聞いている」
「「「「あ、ありがとうございます!」」」」
四人が嬉しそうに言いました。私は静かにしていましょう。
「黒狼は凶悪な魔物だ。当然、黒狼以外にも凶悪な魔物も存在する。黒狼と対峙してどう思った?」
「正直に言うと、死ぬと思いました」
「俺も、ここで終わりだと思いました」
皆さん、同じような感想でした。そういえば、シエラさんも諦めていましたね。
「そうか。だが、冒険者ならそれ以上の危険な目にも遭う。それは覚悟しているだろう?」
「はい……」
「お前たちは一つの脅威を乗り越えた。今後もそれが繰り返されるだろう。それでも冒険者を続けるか?」
「……続けます」
「自分の命が惜しくはないのか?」
ウェイスさんの追及が激しいですね。何か試しているようにも思えます。
「自分の命は大事です。でも、私は……。それでも冒険者でありたいと思います」
「それは名誉のためかね?」
「わかりません」
「そうか」
ウェイスさんが書類に何か書いていますね。内容はわかりません。
「黒狼討伐は金貨50枚だ。4人でわけるように」
「「「「はい」」」」
「ルリアルカさん、この書類を下に持って行ってほしい。四人と一緒に頼む」
「はい」
書類を受け取ります。これが金貨と交換になる書類なのですね。
「お前たちは、ルリアルカさんを見てどう思う?」
「私ですか?」
皆さんの視線が集まります。私を見てとは意図がわかりません。何故、私なのでしょう?
「ルリちゃんを見てですか?可愛い受付の女の子としか思えません」
「俺も可愛い受付の娘としか」
皆さんから可愛いと連呼されます。愛玩動物みたいな気分です。
「彼女が魔物に襲われていたらどうする?」
「「「「助けるに決まってます!」」」」
「……黒狼よりも凶悪な魔物が相手でもか?」
「それは……」
「緊急事態のようなものだ。見捨てても罪には問われん」
ウェイスさんの言っている内容は普通です。見捨てても問題はありません。
「私は……。私は戦っても勝てないとわかるのなら、言いたくはないですが見捨ててしまいます……。卑怯だと罵られても、自分の命が大事ですから。でも、逃げてしまったということに絶望するかもしれません。できれば、そのような事態は避けたいです」
「自分の命が大事か」
「勇気のない臆病者と呼ばれたとしても……。私は自分の命が大事です」
「それでいい」
「「「「え?」」」」
ウェイスさんの発言に、四人が驚いています。
「で、でも!見捨てるというような恥じるべき行為は……」
「なら、助けれるように強くなれ。自分の命を粗末にするものは強くはなれん。難しい内容だとは思うが、自分を守りながらも人を守れるようになれ。それが上級冒険者の心得だ」
「上級……?」
一人は反応し、他の三人は「上級」という言葉に固まっています。
「お前たち四人は今日から上級冒険者の仲間入りだ。これまで以上に奮闘するように」
「「「「はい!」」」」
上級冒険者の誕生ですか。微笑ましいです。私を見捨てる対象にしたのは、この際、気にしないでおきましょう。
「ルリアルカさんからは何かないかね?」
「私からですか?」
不意だったので返答に困りますね。
「そうですね」
目を瞑り、考えます。
「強者は最初から強者ではない。弱者が諦めず励み、強者へと至る。ですね」
「深い言葉だな」
ウェイスさんが頷きながら言いました。
「家族が言っていた言葉です」
「ルリちゃんって何者なの……?」
「受付ですよ?」
「そう……」
四人は不思議そうな顔をしていました。
「嬉しそうです」
戻って書類を渡すと、四人の上級冒険者の仲間入りを祝して、ギルド内では小さなお祭りになっていました。妬む人はいません。それだけ名誉な事なのでしょう。
「こちらに、ルリアルカという方はいますか?」
ギルドの入口が開くと同時に声が響きました。鋭い雰囲気の方ですね。
「ルリアルカは私です。何か御用でしょうか?」
「お迎えに上がりました。城でゼフィア様がお待ちしております」
ギルド内が静かになりました。お祭りの雰囲気が台無しです。
「ゼフィアが?私は何も聞いていません」
私の返事を聞いた途端、ギルド内で「ルリちゃんが王様の娘だという噂を聞いたことがある」という言葉が聞こえました。私はゼフィアの娘ではありませんよ?
「私はお迎えに行くように命じられただけです。ご一緒に来ていただけますか?」
「わかりました。ですが、今は……」
ギルドのお仕事の最中です。私の受付の終わる時間までは、まだまだあります。私がお仕事している時間ですか?決まっていませんよ?
「王様も用事があるのだろう。気にせずに行ってきなさい」
「ありがとうございます」
私はウェイスさんに見送られ、ギルドの外に出ました。
「なんですかこれは……」
呆れたような声しかでません。目の前には見たことがない豪華な馬車ですよ?
「迎えに行く時は、この馬車を使うようにと言われております」
「そうですか……」
「どうぞ中へ」
馬車についている扉を開けてくれました。馬車の中も凄く豪華です。
「ありがとうございます」
私が中に入ると、鋭い雰囲気の方も続けて中に入りました。
「城へ」
御者の方に声を掛けると、馬車はゆっくりと出発しました。馬車の揺れは心地よいですが、やっぱり、私は歩く方が好きです。
「ルリアルカさんは何者なのですか?」
「何者かといわれましても。えっと……」
「ザインと申します。王都守護隊、副団長をしています」
王都守護隊ですか。ファリスが率いていた兵隊さん達も王都守護隊でしたね。
「団長はファリス様です」
港の騒動の時、ファリスが指揮を執っていましたが、団長とは思いませんでした。びっくりです。
「ザインさんは港の騒動の時はいたのですか?」
「私は違う部隊を率いていましたので。港の件については報告書を見ただけです」
「そうですか」
改めて、港の出来事は大事だと思いました。爆発とかもありましたからね。
「……ルリアルカさんは王族なのですか?」
ザインさんの声が低くなりました。
「いえ。私は王族ではありません」
「王族でもない……ですか。ゼフィア様は何故、あなたを気にしているのでしょう?」
「家族だからだと思います」
「家族……」
これは殺気ですね。少しだけ警戒しておきましょう。
「王族でもないのに家族ですか。ルリアルカさんのことは、ゼフィア様より少しは聞いております。あと、王都での噂も少々」
「噂ですか?」
「ええ。あなたがゼフィア様の隠し子だという噂です」
ザインさんの眼が鋭くなりました。
「私とゼフィアは家族ですが、血は繋がっていません。ザインさんが何を考えているのかはわかりませんが、ゼフィアやファリスに迷惑をかけるようなことはしません」
「そうですか。信じてよいですか?」
「はい」
私の返事を聞いてから、ザインさんが目を瞑りました。
「私は国の障害となるものを排除してきました」
「排除ですか?」
物騒な言葉ですね。
「私はゼフィア様の父君の代から城に使えています。先王が亡くなってからは城内には企て事が多く、ゼフィア様も狙われることが多々ありました。私は亡き先王より、国を守るように命じられていたので、暗躍している者たちを人知れず排除していました」
「ゼフィアはそのことを知っているのですか?」
「知っています。王になられてから伝えました。薄々は気が付いていたのでしょう。私に王妃様と幼いファリス様を守って欲しいと伝え、ゼフィア様は旅にでました。そして、魔島と呼ばれる場所に辿り着いたと」
「ザインさんは後悔しているのですか?」
国を守るためとはいえ、友人や知り合いも手にかけている可能性はあります。厳しい選択を迫られたに違いありません。
「後悔はありません。私はこの国が好きですからね。ですが……長い歳月が過ぎた今、ルリアルカさんの存在を知りました」
「……私が障害となると判断されたらどうするのですか?」
「斬ります」
「ゼフィアが怒ることになってもですか?」
「はい。私が死ぬことになっても」
ザインさんはこの国が大好きなようです。ゼフィアは人に恵まれていますね。
「私のことは心配しなくても大丈夫です。ゼフィアが辿り着いた魔島の家族といえばわかりますか?」
「魔島の?」
「ゼフィアからは魔島のことを聞いていないのですか?」
疑われたのは、ゼフィアのせいですね。後でお説教です!
「魔島で強くなったというのは聞いております。誰と交流があったか?というのは、一切話してはくれません。それは魔島の礼儀に反すると言っておりました」
ゼフィアにも色々あるのですね。お説教は無しにします。
「ゼフィアは強いです。守られる立場よりも守る立場です。王妃様とファリスも守ってくれます。その周りの人々もです。ですから、ザインさんは休憩してもよいのです。少しは休憩しないと疲れるのですよ?」
ザインさんは王家に仕え、その生涯を終えるのでしょう。そのような立派な人は休まないとダメなのです。
「ありがとう。私の心配が一つ無くなりました」
「はい」
私達はお城に着くまで、雑談をしているのでした。
お城の中を案内され、王座のある部屋の前にいます。ザインさんは王都守護隊を見に行くそうで、途中で別れました。
「扉を開けます」
扉の前にいる兵士の方が開けてくれました。目の前には大きな部屋が広がっています。本当に大きい部屋です。謁見の方もくると考えると納得の広さでした。中に進みましょう。
ゼフィアが王座だと思われる、豪華な椅子に座っているのが見えました。ファリスはその横にすわ……。
「お姉さま――――!」
椅子から立ち上がって、両手を広げて私の方に走ってきます。会うのは港の騒動以来ですね。
「会いたかっ……」
「ルリ!会いたかったぞ!」
ファリスは両手を広げたまま固まりました。私を抱きしめているのは、ゼフィアです。ゼフィア、色々台無しです。それに大人気ないです……。
「いつでも来いと言ったのに、お前は全く来ないし。ん?髪型変えたのか?前髪も綺麗に短く切って。後ろは編み込んでるのか。ほんと、可愛いなぁ……。ちょっとまて……元々、可愛いルリがこんなにも綺麗な姿をしている。余計な奴が集まりそうだな……。ルリ、変にちょっかい出してくるやつはいないか!?いたら俺が叩き斬って……」
「ゼフィア、落ち着い……」
「お父様、お姉さまから離れてください!」
私の声はファリスの叫び声にかき消されました。二人とも興奮しすぎです。周りの兵隊さんや偉い人?が少し引いてますよ?
「別にいいだろ。家族だしな。ルリは可愛いし抱き心地もいいんだ。離れろと言われても離れたくない!」
「何逆切れしてるのですか!……抱き心地?お父様はお姉さまに抱き着いて感触を楽しんでいるのですか!?」
これは何も言わない方がよさそうです。完全に喧嘩ですからね。
「可愛い家族を抱きしめて何が悪い!」
「何を開き直って!まさか、今抱きしめたまま、お姉さまの身体をまさぐったりしてないでしょうね!」
「さすがにそんなことはしない!まぁ、気持ちはわからんでもないが」
「本音はそれですか!なんて卑猥な!破廉恥な!……まさかとは思いますが、お姉さまに手を出していないでしょうね……?」
マズイ気がします。ですが、これは親娘の喧嘩です。私はなにもしないのです。
「馬鹿なことをいうな!そんなことするわけ……」
「ん……」
抱きしめられている腕に力が入ったので、声が出てしまいました。
わざとではありませんよ?
「……お父様?今、何かしましたよね?絶対に何かしましたよね!?お姉さまから声がしましたよ?悪戯でもしたのですか?娘の私がいる前で。この広間で……。反論は認めません!認めるわけにはいきません!」
「何もしてねーよ!」
「あなた」
凛とした声が聞こえました。透き通ったように綺麗に響く声です。
「アレイシア!?」
ゼフィアのことを「あなた」と言っていました。この方がゼフィアのお嫁さんで、ファリスのお母さんですか。綺麗な方です。
「私もこの間に居るのをお忘れ?私もルリアルカさんに会いたかったのよ。それに、簡単に年頃の娘に抱き着かないでください!ファリス、引きはがしなさい!」
「はい!お母さま!」
ファリスがゼフィアを掴んで引っ張っていきます。
「初めまして、ルリアルカさん。私は王妃のアレイシア・フェイマスといいます。あなたの事は昔から色々と聞いています」
とても丁寧な方です。ファリスの性格はゼフィアに似たのかもしれませんね。言い方が酷い?でも、父娘で似ていますよ?
「それに、ゼフィアが家族と言っているのですから、お城にいつでも会いに来ていいのよ?」
「アレイシア様は……」
「様はいらないわ」
アレイシアさんは気さくな方みたいです。島の家族にも似たような雰囲気の人がいました。
「アレイシアさんは、ゼフィアが私を家族と言っていることに不満はないのですか?」
私の素直な疑問です。ゼフィアにはお嫁さんのアレイシアさん、娘のファリスがいます。私は血の繋がりはありません。魔島では家族といいますが、それは魔島だけでの話だと思います。人によっては、不愉快だと感じても不思議ではありません。
「私は気にしないわ。そうね……いつも話を聞いていて、母親ではないけど、ルリアルカさんを娘のように思っていたわ」
「ルリでいいです」
「ありがとう。ルリさんは話で聞いていた内容だと、いつも元気であちこちに行く女の子と聞いていたけど、見た感想は、とても可愛くて大人しい感じね。物静かともいうのかしら?そうだ、ルリさんに聞きたいことがあったのよ」
「聞きたいことですか?」
私に聞きたいことですか。何を聞きたいのか見当が付きません。
「魔島って女性もいるのよね?」
「はい。女性の方が多かったです」
「ゼフィアが言い寄った女性とかいない?」
アレイシアさんの眼が真剣です。怖いぐらいに……。
「言い寄るですか?いたような、いなかったような?」
「いたのね……。ルリさんも可愛くて、それに美人だし……ゼフィアに言い寄られたことはない?」
「私はありません。再開した時に激しく抱きしめられたぐらいです」
爆弾投下?え?失敗しましたか?
「そう……」
「ルリ、間違えてはいないが、妙な言い方するな!」
ゼフィアの慌てた声が響きます。でも、事実ですよ?
「あなたは魔島で強くなって帰ってきました。それこそ、英雄と呼ばれる程に。強くなる以外に魔島で女遊びもしていたのではないでしょうね?」
「想像だけでいうなよ……」
「ですが、あなたは魔島の家族は綺麗な人が多いとおっしゃいました。疑われても仕方がないと思いませんか?」
「そうかもしれんが、絶対にない」
「でも、最近ではルリさんを激しく抱きしめるという例があるわ。ルリさんと一夜を共に過ごしたいと考えたことはありませんか?」
ゼフィアが私と一夜を?家族ですから、何も問題はありませんよ?え?意味が違う?
「そりゃ、これだけの美女だ。本音を言えば……」
なんでしょう?ウェイスさんが「また余計なことを」と言った気がしました。
「自分の娘と歳も変わらない女性との間に子を儲けようと?」
「絶対にねぇよ!長たちに全力で殺されるわ!」
ゼフィアが叫びます。お爺様たちならやりかねません。
「ゼフィアは……」
少し気になりました。
「私との間に子供が欲しかったのですか?」
家族というのは父と母がいて成立する。これが普通だとお爺様から聞いています。ですが、私には両親はいません。だから、少し気になってしまいました。子供が欲しいというわけではありませんよ?
「それはない。長たちと考えは同じだ。自分が死んでも守る価値がある。ルリはそれだけ大切な家族なんだよ」
「そうですか」
大切な家族と言われるのは嬉しいですね。
「ゼフィアを苛めるのはここまでにしましょう」
アレイシアさんの嬉しそうな声が響きました。
「アレイシア、やって良いことと悪いことがあると思うんだが……」
ゼフィアは疲れ果てたようですね。質問攻めでしたし、仕方がないでしょう。
「それはあなたが悪いのよ?ルリさんのことは昔から聞いているから、心配はしていないけど、魔島の女性たちは別。妻の私に心配かけさせた罰よ。気にしていないと思った?」
「いや、それは……」
「お父様が悪いのよ」
ファリスがそう言って、私に抱き着いてきました。
「お父様が私よりも先に抱き着いたので出遅れました。改めてお姉さま、会いたかったです」
「いつでも会えると思うと、なかなか足が進まないのです」
「そのような遠慮は要りません。お姉さまにお父様が何かしようとしたら、私とお母さまで討伐してあげます!」
「そうね。その時は討伐しましょう」
「お前ら……。女はこれだから怖いんだよ……」
これが本当の家族ですか。親と子供がいる。温かく、微笑ましい光景です。ですが、少し寂しいですね。
「そんな顔するなよ。俺たちには血の繋がりはない。でもな、家族には違いないんだよ。だから、そんなに寂しそうにするな」
「お姉さま……」
「顔に出ていましたか?」
「ええ。そんなに寂しがらなくてもいいのよ。ルリさんは血の繋がりを超えた、家族の繋がりを知っているのでしょう?」
そうです。血の繋がりなど関係ない、家族の繋がりを私は知っています。寂しかったのが馬鹿らしく思えてきました。
「魔島の家族はとても大切な家族です」
(もういませんが)
「ルリにはレティアもいるだろ?」
「はい。大切な妹です」
(血の繋がりはないですが、今いる大切な家族です)
「私は一人ではないのですね」
(セシリー、シエラさんもいる)
「当たり前だ。……泣いてるのか?」
「泣いてませんよ」
私は涙を浮かべたまま、笑顔で答えたのでした。
ルリのいた魔島の家族はルリを溺愛しています。
ですが、失った彼女は常に一人ぼっちだと思い込んでいます。
レティアのことを大切な妹と思っているのは本当ですが、それでも心のどこかで自分は一人だと思い込んでいます。
ルリはどのように変化するのでしょうか?
次回の更新は書き終わり次第となります。




