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私の悩みと新たな思い

 世の中、才能がある人が有利だ。

 私にはないけど。

 でも、努力だけは負けない。

 魔力増加の訓練を初めて三週間、私は悩んでいた。


「どうして、私の魔力は増えないのかな……」


 私、シエラ・エルナンドはルリさんから魔力増加の訓練方法を教えて貰ったのに、魔力の増加が非常に少なかった。一緒に始めたセシリーは順調に。ルリさんの妹のレティアはセシリーよりもさらに魔力の増加が多かった。


「私だけ……」


 私は二属性の魔法を訓練前から使えた。

 訓練で魔力が増えると他の魔法も扱えるのかな?と楽しみにしていた。

 でも、実際は……。


「言うほど、増えてないよね」


 私だけ本当に増加が少なかった。ルリさん曰く、魔力の増加は個人差があると。でも、三週間が経って、セシリーとレティアの魔力量を見ていると、自分だけ置いて行かれた気持ちになる。だから、家に帰ってからも、ルリさんが教えてくれた訓練方法を毎日行っていたのに。


「私って才能ないのかな……」


 悲しくて涙が出る。

 レティアと自分を守るために始めたのに……。

 このままでは私がレティアに守られてしまう。


「………」


 考えていても気が滅入る。私は部屋を出て、外に出ることにした。


「少し肌寒いかな?」


 時間は夜というより、ほぼ深夜。外にはお酒に酔った人ぐらいしか見かけない。


「気分転換に少し散歩でもしよ……」


 部屋に籠っていると嫌な事ばかり考えてしまうから。


「歩く場所は適当で……あれ?」


 視界によく知った後ろ姿を捉える。あの長く緩い三つ編みはルリさんだ。


「こんな夜中に一体なにを?」


 私はルリさんの後をつける事にした。やましい気持ちはないよ?

 ルリさんはトコトコと歩き続ける。私は距離をとりながら追いかける。

 暫く歩くと、ルリさんは王都の外へと続く門の前に着いていた。


(こんな時間に王都の外に?)


 何をしに行くのか、まったく予想が付かない。夜中に一人で?

 ルリさんは門の警備の人と話し終えると王都の外に出て行ってしまった。


(追いかけないと!)


 私は走って門へと向かった。


「こんな遅くに王都の外にでるのは許可はできないんだが」

「え?」


 警備に私は止められてしまった。ルリさんはなんで普通に通れたの?


「ルリさんは普通に外に出たのに?」

「ルリアルカさんの友達か。その顔……ギルドのシエラさん?」

「はい」


 明かりで私の顔が見えたらしい。お父さんに怒られるだろうなぁ……。


「ルリさんに用事があって追いかけてきたんだけど」

「何も聞いていないんだが。……ルリアルカさんの友達でもあるし、シエラさんならいいか。通っていい」

「あ、ありがとう」


 通れることはありがたいけど、完全にルリさんを見失った。どうしよう……。


「ルリアルカさんなら王都の傍の湖に向かったよ」

「ありがとうございます!」


 私はお礼を言って、王都の外へと出た。湖は王都から少し離れている場所にある。少し時間はかかるけど、場所がわかっているから追い付ける。慌てる必要はない。場所がわかっているから。



「見つけたけど、何をしているのかな?」


 ルリさんは湖の前にある岩に座り、夜空を眺めていた。


「もう少し、見ていたら何かわかるかな」


 盗み見するのも気が引けるけど、ルリさんが何をするのか知りたかった。


「何もない……」


 ルリさんを見続けて一時間は経過したと思う。ルリさんは未だに座ったまま、まったく動かなかった。


「ルリさんも散歩だったの……!?」


 何か違和感を感じた。これは魔力?あちこちにいる!?


「こく……ろう……?」


 黒狼とは魔力を持った狼で一番強い。それが、二十匹?いや三十匹はいる。それも、ルリさんの周囲に。


「………」


 怖くて声が出せない。黒狼は上級冒険者でやっと太刀打ちができる魔物だ。それが約三十匹……。いくらルリさんが強いと言っても、命の危機としか思えない。


(怖い!それでも、声を掛けて助けに入りたい。けど、声を掛けた直後、全ての黒狼が私に向かってきたら、私の命は助からない……。だけど、今のままではルリさんの命が)


 結果、私は動けなかった。情けなくて涙が出てくる。これから友達が大怪我を負い、死ぬかもしれないのに、一歩も動けない。なんて私は弱いんだろう……。


「あ……」


 わずかに声が出た時、黒狼が数体まとめて、ルリさんに飛びかかった。


「っ」


 ルリさんの方を向くことができない。ルリさんが目の前で食い殺されたりしたら、それこそ余計に見れない……。次は私に向かってくるだろうけど、ルリさんを見捨ててるんだ……私は助からなくてもいい。そんな気までした。


「無暗に殺めるのは嫌いなのですけど、仕方がありません」


 ルリさんの声がしたと思った直後、「ギャゥ!」という悲鳴らしきものが聞こえた。


(見るのが怖い。でも、見ないと……)


 私は恐る恐る顔を上げた。そこには信じられない光景が広がっていた。

 ルリさんは両手に以前、お城で見た剣を携え、飛びかかった黒狼を真っ二つにしていた。


(黒狼が一撃……?)


 ルリさんは魔法を使っていない。剣で戦っている。魔法の方が得意なはずなのにどうして?

 私はそのまま見続けた。目が離せなかった。


 ルリさんは左右から同時に向かってきた黒狼を後ろに少し下がり、二匹が重なる所で一刀両断した。その光景に黒狼たちは少し怯んだように見えたけど、何もなかったように、ルリさん目掛けて飛びかかっていった。

 ルリさんは慌てる事なく、一番最初に襲ってきた黒狼を蹴り上げるとそのまま飛び込み、振り返りざまに落ちてきた黒狼を一閃。飛びかかっている残りの黒狼たちは地面に着地したが、ルリさんは群れに突っ込んでいく。右手で左側にいる黒狼を切ったと思えば、そのまま回転して飛び上がり左側の黒狼を斬る。黒狼たちが後ろに下がった瞬間、ルリさんが踏み出し、また一匹。そのまま、向きを変えて剣を横になぐと三匹が斬られ、飛びかかった黒狼は残りわずか。飛びかからず、警戒したままの黒狼は……まだ二十匹はいる。


「私は無益な殺生はしたくありません。できれば、ここではないどこかに行ってください」


 ルリさんが黒狼たちに言うが、人の言葉を理解するはずもない。それは無駄な行為だと私は思った。


「はぁ……」


 ルリさんがため息を吐くと同時に飛びかかってきた二匹の黒狼を切り捨てた。


「もう一度いいます。私は無益な殺生はしたくありません」

「………」


 黒狼たちはルリさんを見つめている。すると、後ろを向いて立ち去っていった。


「なんで……?」


 魔物が人の言葉を聞いて帰った?聞いたこともない……。

 そう思った直後、私の背後の木に何かが刺さった音がした。


「なにこれ……。濡れる……?え?血……?きゃぁ―――!」

「ああ……。間に合いましたけど、失敗しました」


 恐る恐る見ると、頭上にはルリさんの剣で樹に射止められ絶命している、黒狼がいた。


「シエラさん、怪我はありませんか?」


 いつもの優しい、ルリさんの声。


「う、うん」


 返り血を浴びているからか、お人形の様な姿からは妖艶な雰囲気が出ている。


「間に合ったのはよかったのですが、血まみれですね」

「うん……黒狼のだけど。遅くなったけど、助けてくれてありがとう」

「はい」


 いつから気が付いていたのだろう?もしかしたら、最初から気が付いていたのかもしれない。私がそう考えていると。


「シエラさん、こっちに」

「え?」


 ルリさんが私の腕を掴んで歩きだす。湖から離れて少し歩いていくと、木造の小さな小屋が見えてきた。


「お風呂に入りましょう」

「お風呂……?」

「はい。私は返り血を浴びていますし、シエラさんは頭から黒狼の血を被ってますから。今のまま、王都に戻ると大事ですよ?」

「そうだね。でも、お風呂って?こんな場所にはないよね?」

「それがあるのですよ」


 ルリさんが嬉しそうに小屋の入口を開ける。小屋の屋根は無く、空が見えた。


「主の居ない捨てられた小屋だったのですが、空が良く見えましたのでお風呂を作ってみました」

「そうみたいだね……」


 小屋の中には脱衣所らしき空間と立派な浴槽だけがあった。屋根がないからある意味、露天風呂かもしれない。あれ?作ってみたっていったよね?


「服は脱いだらここに入れてください」


 少し深い穴をルリさんが指差していた。ルリさんは自分の服を脱ぎ終えて、指さしていたのとは別の穴に服を入れていた。恥ずかしくないの?


「ウェイスさんに心配かけたくないですよね?」

「……うん」


 私は服を脱いで、穴の中に入れた。何かするのかな?


「入れ終わりましたか?それでは」


 ルリさんは言い終わると同時に魔法でお湯を出し、穴の中に入れていった。

 帰りは濡れたままになるんだね……。


「お湯を入れ終わったら、風属性でぐるぐると不規則に回しておきます」


 「汚れが綺麗に取れるのですよ?」とルリさん。任せるしかないよね。


「あと、シエラさんにお湯ですね」


 ルリさんが言い終わると同時に、頭上からお湯がシャワーのように降り注いだ。


「髪を洗ってください。といっても、石鹸がないので綺麗には流れませんけど……」

「大丈夫だよ。こんな所でお風呂には入れると思わなかったし……」


 落ち着いてくると、凄い寒気に襲われた。


「私はルリさんを見捨てようとしたんだった……」


 自分の行動を思い出し、とてつもない罪悪感に襲われた。

 大切な友達が危険な目にあうとわかったのに、私は……。


「仕方がないと思いますよ?」

「……え?」


 聞き間違えじゃない。


「それでも、私は……」


 涙が止まらない。

 見捨てようとしたのは事実だから。


「生きていると色々な事があります。見捨てなければいけない事も。今夜がその見捨てなければならない時だったのですよ」

「……に……」

「?」

「簡単に言わないでよ!」


 「ザパン!」と音をたてて、ルリさんごと浴槽に飛び込んだ。


「何でそんな簡単に!私はルリさんを見捨てようとしたんだよ!それを、仕方がない?私が……私がどんな気持ちで!なのに、ルリさんは!」

「………」

「どうして……どうして!こんなにも卑怯なことをした私に……。自分が助かろうとした私の行動が仕方がないなんて……」

「……勇気なんて誰にでもあるものではありません」


 ルリさんの優しい声が聞こえる。


「自分の命を大切にするのは当然ですよ。それが普通です。助けようとしても見捨てなければならない、それはとても苦しい決断ですが間違った判断ではありません。助けようとする勇気は大事です。でも、自分の力を量れずに行動するのは無謀というものです。だから、シエラさんのとった行動は間違いではありません」


 優しいルリさんの言葉を聞いたまま、私は泣き続けた。



「………」


 どれくらい泣いていたのかな。

 頭には優しく撫でてくれる、ルリさんの手。本当に温かい。


「ママみたい……」

「ママですか?」

「ち、ちがっ!お母さん!」


 慌てて、ルリさんから離れる。顔が赤くなってるとは思うけど、お風呂のせいにできるよね?


「落ち着きましたか?」

「うん……」


 いっぱい泣いたから、スッキリした。でも、考えてみると、かなり恥ずかしい。


「それにしても、ママですか。ふふ」

「笑わないでよ……」


 ルリさんが無邪気に笑う。さっきまでお母さんみたいな雰囲気だったのに、今は少女だ。


「シエラさんの珍しい姿が見られました。満足です」

「わ、忘れて!」

「無理です」


 ルリさんの笑顔はずるい。


「ところで」

「……なに?」


 少し拗ねながら答えてしまう。だって、恥ずかしいし。


「どうして、王都から後をつけてきたのですか?」

「ばれてた?」

「はい。シエラさんがギルドから出てきた時には気が付いてましたよ?」

「あはは……」


 ルリさんには簡単にばれていらしい。でも、私が家を出た直ぐに?


「深夜は危ないのですから、今後は注意してください」

「わかった……。って、ルリさんこそ、深夜に出歩いてるよね!?」

「私はギルドにあった注意書きを見たからですよ」

「注意書き?」


 ギルドにそんな依頼あったかな?


「深夜の湖付近で魔物の影があるというものですよ」

「……あった。それで討伐?」


 依頼というより、王都からの市民への注意だよね。


「襲ってきましたからね。シエラさんも居ましたし、黒狼が引いてくれなかったら全滅させるだけでした」

「想像できるけど、想像したくない……」

「そうですか。あ、ちょっと待ってください」


 ルリさんが服を入れた穴を見ている。お湯はなくなり、風属性の魔法だけが回っているように感じた。


「限りなく弱い火の魔法を灯してと。これでいいです」

「何をしたの?」

「服を乾かしているのです」

「便利というより、凄い魔法の使い方だよね……」


 「乾いた後は温かいのですよ?」とルリさんが言う。

 そんな使い方聞いたこともないよ。


「話を戻します。シエラさんはどうして、私をつけてきたのですか?」

「う……。それはその……」

「?」

「魔力が全然増えないから、気分転換に外にでたらルリさんを見かけて……」

「それでつけてきたのですか」


 ルリさんが少し呆れている。


「シエラさん、前にもいいましたよね。魔力の増加には個人差があると」

「聞いたよ。でも、それでも、私だけ置いてけぼりで……このままだとレティアを守るどころか、守られそうだし」

「仕方がありませんね」


 ルリさんがお風呂から上がって外に向かっていった。え?ちょっと!?


「ルリさん、服!服ー!」

「直ぐに汚れてしまいます。シエラさんも外へ」

「ええ!?」

「早く」

「う、うん……」


 ルリさんの静かな声に押され、私もお風呂から上がり、外へ出た。服を着たいよ……。


「シエラさんは魔力が全然増えないと言っていましたね」

「そうだよ……」

「魔法以外に試した事はありますか?」

「魔法以外……?」


 魔法以外に試す事?何それ?魔力って魔法に使うよね?

 私が首を傾げていると。


「実践の方が早いですね」


 ルリさんが髪をなびかせながら半身になる。構えてはない。ただ、半身で立っているだけだけど、隙はない。


「何をするの?」

「私に一撃を入れられれば、それでよしです」

「最初から無理な気がしてならないんだけど……」


 ルリさんに一撃入れる?普通に考えてもありえない。


「私からも攻撃はしますけどね」


 ルリさんが言い終わると立っていた場所から姿が消えた。どこに!?


「ここですよ」

「後ろっ!?」


 私は身体を回転させて、ルリさんの方へ向く。でも、できるのはそこまでだった。

 ルリさんは私の胴に目掛けて掌を打ち込んでくる。寸止めしてくれたみたいだけど。


「っ……。ごほ!ごほごほ……」


 衝撃だけで身体の芯に響いた。直撃していたらどうなっていたのか想像したくない。


「次は当てますよ?」

「っ!」


 急いで距離を取る。ルリさんのあの動きは目で追えない。私じゃまだまだ遠いから。でも、もしルリさんみたいな動きができるのなら。


(ルリさんは移動の時に全身に魔力を纏っていた。踏み込む時は主に両足に)


 ルリさんのようにうまくいくはずはない。練習もしたことがない行動だから。でも、試してみる価値はある!


(両足に魔力を込めて……一気に踏み出す!)


 ルリさんの真正面に一気に距離を詰めれた!これは成功だ!って、あれれ?止まれない!?


「ルリさん、とまれなー!」

「要練習です」


 ルリさんは私が激突する瞬間、私の右腕を掴み投げた。叩きつけられると思った地面は柔らかく、痛くない。地面ってこんなに柔らかかった?


「地属性魔法で地面を柔らかいものに変えておきましたから、そこまで痛くないはずです」

「うん。全然痛くなかった。でも、さっきのって?」

「魔力は魔法として使う以外に、身体能力を上げるものがあります。殆どの人はそれを無意識に行いますが、意識して使う事もできるということです。ゼフィアも使いますよ?」


 王様も使う?魔島にいたから覚えたのかな。


「シエラさんはそれを行えますが、セシリーとレティアは無理です」

「私よりも魔力が多いのに?」


 魔力が多い方が扱いやすいってことじゃないの?


「身体に魔力を纏って動くということには向いていないのです。覚えれば少しはできるとは思います。でも、シエラさんのようにはいきません。ある程度はできても、その先には届かないのですよ」

「そうなんだ……」


 私にしかできない。それがわかったのが嬉しかった。


「訓練を怠ってはいけませんよ?」

「それは続けるよ」

「ならいいです。魔力が増えれば、消費が大きな魔法も扱えますから。例えば……」


 ルリさんが魔力をあつめ……。え?これって暴走?


「ル、ルリさん!?」


 ルリさんから大量の魔力が放出される。危ないよねこれ!


「これは魔力の暴走ではありません。身体能力を上げた状態ですよ」

「さっきの比じゃないよね……」

「毎日頑張っていれば、こういうこともできるのです」


 ルリさんはそういうと、魔力の放出を止めた。ほんと、色々と凄い人だと思う。


「さて、汚れましたし、もう一度お風呂に入りましょう」

「そうだね」


 ルリさんが嬉しそうに歩いている。お風呂大好きとは聞いたけど、ここまで好きなんだ。



 お風呂から上がり、服を着て王都に向かって歩きだす。

 乾いた服が温かくて気持ちいい。

 ルリさんは髪を緩い三つ編みにして歩いている。髪を切って以来のお気に入りらしい。結ってなくても綺麗なのに。三つ編みだと可愛いが先にでてくるよね。


「ルリさん」

「どうしました?」

「色々ありがとう」

「私は何もしてませんよ」


 ルリさんはトコトコと歩いていく。私は助けられたよ?


「ルリさんはレティアとずっと王都に住むんだよね?」


 私は話題を変えることにした。


「レティアはそうですね。でも、私は違うと思います」

「え……」


 ルリさんの予想もしない返事に驚くことしかできない。家族がいるのにどうして?


「私は死に場所を探していますからね」

「レティアがいるのになんで!」


 それは前の話じゃないの?今はレティアって妹がいるんだよ?


「レティアは可愛い妹です」

「なら、別に死に場所なんてどうでもいいよね!」


 声が自然と大きくなる。感情を抑える方が無理。


「私にも色々とあるのです」

「そんな……無責任だよ!」

「そうですね」


 ルリさんが歩いていた足を止めて、私の方を向いた。


「確かに無責任です。レティアを守ると言っておきながら、私は今もどこかで死に場所を求めている。矛盾した話です」

「そこまでわかってるなら……」

「でも、私の考えは変わりません」


 ルリさんが優しく微笑む。どうしてそんな笑顔になれるの?


「私は守れなかったのですよ。そんな人が生きていていいのでしょうか?」

「………」


 私は答えることができない。ルリさんみたいに強い人が守れない?軽い言葉で返事してはダメだと本能が告げてる。


「ルリさんの考えは本当に変わらないの?」

「変わりません」


 ルリさんの薄く赤い瞳が私を見ている。でも、どこか遠くを見ているようにも見える。


「別に今すぐということはありません。時がきたらいずれということです」


 ルリさんは振り返って、王都に向かって歩きだした。


「結局はいなくなるんだね」


 どうすれば、ルリさんは考えを変えてくれるのだろう?

 私と同じ歳で死に場所を求めて旅をしていた彼女。

 何があったのかは想像もつかないけど、妹もできたんだよ?家族ができたんだよ?

 それなのに……。


「そんなの、悲しすぎるよ……」


 気が付けば、涙が流れていた。


(誰がルリさんを助けるんだろう)


 考えが過る。

 助けてあげないとダメなのは、レティアだけでなく、ルリさんもだと気が付いた。

 でも、どうすれば……。


(考えるしかできないよね)


 ルリさんは色々助けてくれる。教えてくれる。なのに、ルリさん自体が救われないなんて、そんなのは嫌だ。


「………」


 前を歩いている小さな後ろ姿を見る。

 彼女が救われてはダメだということはありえない。


「守る事の難しさ……」


 『守る』という言葉の重さを思い知った。

 彼女はその重さの意味を知っている。

 私は僅かを知っただけ。

 追い付けるなんて思わないけど。


(ルリさんを助けたい)


 私は心の底からそう思った。

 シエラは努力家です。

 目立たないところで頑張りますが、なかなか伸びないのに悩んだりもします。

 逆にルリはなんでもできますが、自分は何もできないと思っています。


『全てを失った少女は何を求め旅をするのか』はルリアルカが主人公ですが、セシリー、シエラ、レティアの三名はサブ主人公となります。



 次回の更新は書き終わり次第となります。

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