我が家とお引越し
家族との再会を楽しんだルリアルカ。
新しい家族のレティア。
帰る家もできました。
「いつでも城に来てくれ」
「お姉さま、待ってます」
ゼフィアとファリスに見送られて、私達はお城の部屋を出ました。
部屋を出るとウェイスさんはギルドの仕事があるから先に戻ると言い、慣れた足取りで行ってしまいました。
「いつでも会える……ですか」
家族に会えるのは嬉しいことです。嬉しいことなのは間違いありません。嬉しい誤算です。
なぜ誤算なの?ですか?私は再会するなんて思いもしなかったからです。
思い出があるだけで十分ですからね。
「ルリの家族の一人が王様だったとはね」
「ゼフィアが島から帰ったのは私が9歳ぐらいでした。どこに帰るとか聞いたことありませんから、私も驚きました」
お爺様からも聞いたことはありません。他の家族も何かあるのかもしれませんが、今ではもうわかりません。
「ルリさんにとって今日は嬉しいことが沢山あった日かな?」
私達より少し前を歩いているシエラさんがいいました。
「そうですね。少し疲れましたけど」
ですが、これから楽しい日々が始まると思うと疲れなんて気になりません。
「疲れたと言っている割に、ルリは嬉しそうね」
「当然です。家族も増えて嬉しいですから。夢みたいな話です」
セシリーの方を向いて言うと、横から。
「私も夢みたいです。私はもう一人と思っていましたから」
レティアが言いました。やはりどこか、私と似ている所がありますね。
「レティアにはルリがいて、私やシエラもいるわ。私とシエラは家族じゃないけど、いつでも頼ってね」
「家も近くだから」
「はい!」
レティアが嬉しそうに笑みを浮かべています。この娘を助けられてよかったと思います。
「それじゃ、ルリとレティアの家になる『ミューズの安らぎ』へ戻りましょう」
「楽しみです」
「私もです」
「二人してもう……ふふ」
「あはは。レティアってほんと、ルリさんと一緒だよね」
セシリーとシエラさんが嬉しそうに笑っていました。
「ここがルリとレティアの家になる部屋よ」
セシリーが部屋の扉を開けます。
「………」
何でしょう?私が泊まっていた部屋も大きな部屋だと思いましたが、この部屋は比になりません。
簡単に説明しましょう。
『ミューズの安らぎ』は五階建ての大きな建物です。大きさを表現するのは難しいですね。例えがうまくでてきません。『ミューズの安らぎ』はそれぐらい大きいのです。宣伝ではありませんよ?
話を戻しまして、五階はセシリーの部屋と宿の従業員の方が寝泊まりしている部屋があるそうです。考えると、セシリーの部屋は入ったことがありません。今度、レティアと一緒に遊びに行きましょう。
改めて、建物の説明をしますね。一階は受付と食堂です(夜はお酒も飲めます)。
二階は普通の部屋と大浴場。三階に高級な部屋と身体をマッサージしてくれる場所と広い広間があります。
そして、今日、私とレティアの家になる四階の部屋なのですが……。
「広すぎます……」
セシリーが部屋に入っていったので後に続いて入りましたが……。本当に広すぎます。私が泊まっていた部屋の何倍あるのですか?
「この部屋に泊まる人がいたとしても、貴族しか泊まらなかったから……」
セシリーがパタパタと部屋を歩いています。懐かしい光景です。
「大丈夫ね。掃除も全部問題なし」
部屋の確認を終えて、セシリーが戻ってきました。
「『ミューズの安らぎ』の方は信頼していますから、そのような心配はありませんけど」
やっぱり、広いですよね……。
「広いです」
レティアが呟きました。レティアもそう思いますよね?
「二人で住むんだから、広くてもいいんじゃないかしら?」
セシリーがそういいながら、椅子に座ります。
「この建物は私の持ち物だけど、この部屋はルリとレティアの物よ」
「それでも大きいですよ……。もう少し小さい部屋でもいいと思うのですけど」
「ダメよ。私が許しません」
「そんなぁ……」
こんなに大きな部屋なんて、落ち着きませんよ!
「広いですけど、お城の部屋と比べるとまだ小さいですよね」
レティアは「この大きさは快適です」と頷いています。
「ルリ、あなたがお姉ちゃんでしょ。しっかりしなさいよ」
「はい……」
部屋の中を説明しますね……。落ち込んでない?拗ねているだけです……。
部屋に入って直ぐに広間があります。広間には椅子がテーブルを挟んで6席あります。テーブルも食堂にあるような大きなテーブルです。窓際には大きなソファーがあります。お昼寝に便利な大きさです。陽が当たってポカポカでしょうね。あとはキッチンがあります。飲み物を冷やして置ける冷蔵庫?という物があるそうです。ちなみに私は料理はできません。食べるの専門とか言わないでください。
次に寝室に繋がるドアが一つあります。寝室には大きなベッドが一つ……一つですか!?確かに大きいですけど……。私が泊まっていた部屋の二倍はあると思います。それが一つありますね。レティアと並んで寝ても問題のない大きさです。あと、この部屋にも冷蔵庫があるようです。便利過ぎて動くのが嫌になりそうですね……。
次のドアはどこに……お風呂?お風呂ですよね……大きなお風呂がありますよ!これは楽しみです!窓もありますし、景色を眺めながら入るのもいいですね。のんびりできそうです。
次のドアはトイレでした。掃除の道具とかも置けそうです。
最後のドアは物を置くのに便利そうな小さな部屋でした。部屋の中に扉がありますね。これはなんでしょうか?えーと、洋服をしまえる場所のようです。
本当に広い部屋ですね……。
「ルリ、泊まってる部屋から運ぶ荷物は?」
「洋服と下着ぐらいです。他は空間に」
「ルリにはそれがあったわね。先に洋服とか運んでお引越ししましょう」
「はい。レティアはここで待っていてください」
「はい」
レティアにお留守番を頼み、私とセシリーは泊まっている部屋に向かいました。
「ほんと、便利よね……」
泊まっている部屋に入り、服を片付けている場所から取り出すと、そのまま空間へ入れるだけです。この方が移動に便利ですからね。服と下着を空間に入れ終わると。
「お世話になりました」
空になった部屋にお礼をいい、部屋を後にしました。少し寂しい気もしますね。
その後、四階へ戻り、服と下着を片付け三人で椅子に座って雑談をしていました。
「ところで、食事とかはどうするの?部屋に手配した方がいいかしら?」
「食堂でいいです」
「私も食堂で」
「そう?じゃあ、基本的に食堂で。部屋で食べたい時は言ってね?手配するから。洗濯物は今までと同じでいいわよね?あとは、部屋の掃除もこっちですればいいかな」
「全部任せているような気がするのですけど……」
ええ……。私たちの家にはなりましたが、全部任せっぱなしの気がします……。
「王様から毎月代金は頂くから気にしないでいいと思うわよ?」
「確かにそうですけど……あれ?」
「………」
気が付くと、レティアが静かに眠っていました。
「疲れていたのでしょうね」
「緊張していたのが解けたのかしら?」
「色々ありましたから。寝室に運んできます」
レティアが起きないよう、ゆっくりと抱え寝室に運び、ベッドに寝かせて。
「ゆっくり休んでください」
静かに寝室をでました。
「お姉ちゃんしてるわね。お母さんかもしれないけど」
「私に子供はいませんよ」
「そうね。あはは」
笑顔でセシリーが笑っていますが、不意に真剣な顔をしましたね。
「ルリが強いのはわかってるけど、大丈夫よね?」
「何がです?」
「あなたとレティアが危険なことに巻き込まれないか心配なのよ」
「そうですね……」
レティアが狙われない保証なんてありません。
私も常に近くにいるわけではありません。
ですから。
「レティアには色々覚えてもらおうと思います」
「魔法?」
「魔法です。基礎的な魔法は知っていると思いますが、最終的に魔島で使われる魔法まで覚えてもらうつもりです」
「た、大変そうね……」
「セシリーにも覚えてもらいますよ?」
「ええ!?」
「静かにしてください。レティアが起きてしまいます」
「ご、ごめんなさい……。でもどうして私まで?」
セシリーがそんな物騒な魔法はいらないわよと言っていますが。
「そのことに関して、先に謝ります。ごめんなさい」
「え?どうして、ルリが謝るの?」
「巻き込むつもりはありませんけど、レティアに関わっているのです。セシリーも狙われない保証はありません」
「……そっか。つまりはシエラもよね?」
「です。シエラさんにも覚えてもらいます」
「本当は巻き込まないように、旅に戻るのがいいのでしょうけど」
「ダメよ。それはダメ」
「どうしてです?それが一番、被害はでない方法なのですよ?」
「そうね」
セシリーが目を瞑っていいます。
「ねぇ、ルリ。レティアみたいな小さい子の命を狙うのって許せないよね」
「もちろんです」
「それは私もよ。私に何ができるかって言われたら……正直に言うと、何もできないわね。港の騒動、幸い死人は出なかったそうだけど」
「亡くなった方はいなかったのですね。それはよかったです」
「いい事だけど、よくありません。ルリは大怪我したんでしょ?」
「そうですね、左肩から腰までバッサリと斬られました」
「そんな大怪我を……」
セシリーが青い顔をします。
「レティアを庇うのに時間がなかったものですから」
「そうなのね。庇ってなかったら?」
「レティアはここにはいません」
「そう……。レティアを守るにはそれなりに強くならないとダメか。仕方ないわね……。私にとってもレティアは妹みたいなものだしね。やるわよ」
「ありがとうございます」
「でも、本当に大変そうよね……。何からやればいいのか全然わからないわ……」
「セシリーは覚えてみたい魔法はありますか?」
「覚えれるならだけど、空間魔法を覚えてみたいかな?でも超上級レベルなんて私じゃ……」
「覚えれます、と言ったら、覚えますか?」
「覚え……れるの?」
セシリーは信じられないという顔をしていますね。
「覚えれますよ?魔力自体が多くないとダメというのはありますけど」
「私はそこまで魔力は多くないわ。多いとしても、普通よりも少し多いぐらい」
「なら、増やせばいいのです」
「ルリ、魔力は簡単には増えないわよ……」
セシリーが呆れた顔をしていますが。
「増えますよ?」
「……嘘でしょ?」
「魔島の魔法って魔力使いますからね」
「……ルリの言いたいことはわかるけど、魔島の人って小さい頃から魔力多そうよね。ルリもそうだし」
「私の魔力は確かに多いですけど……」
薄い笑みを浮かべて言います。
「練習の結果、今の魔力なのですよ?」
「嫌な予感がしてきたわ……」
「大丈夫ですよ。死んだりしませんから」
「逃げてもいいかしら……?」
「逃がしませんよ?」
満面の笑みを浮かべながら言うと。
「早まったかしら……」
セシリーが肩を落としていいました。
「それじゃ、お休み」
「はい。お休みなさい」
セシリーが部屋を出て行きました。明日から色々とやることが増えたので楽しみです。
「考えると、夕飯食べていませんでした」
港で戦ったり、お城で再会したり、お引越ししたりと食事をする暇がありませんでしたね。
「今の時間は……」
部屋に飾られている大きな時計を見ます。19時ですね。
「食堂に行ってみましょう」
静かに部屋をでました。鍵は私とセシリーが持っている物と後日、レティア用の鍵が用意されるそうです。部屋のお掃除はセシリーが女性だけで受け持ってくれるように手配してくれました。私は男性がいても平気ですが「レティアもいるんだから」と怒られました。
「今の時間はお酒も飲める時間ですから、賑やかそうですね」
宿でのお仕事、ギルドのお仕事のおかげ?もあって、賑やかなのにも少しは慣れました。静かな方が好きですけど。
「今日はそれほど賑やかではないようです」
思ったよりも静かでした。人はいますが、静かにお酒を楽しんでいるみたいです。
「ルリちゃん、こんな時間にどうしたの?」
「あ、料理長さん」
どこに座ろうか考えていると、料理長さんから声を掛けられました。宿のお仕事をしている間に、少し親しくなったのです。
「今日は食事をする暇がなかったので、少しお腹が空いたと思いまして」
「それは身体に悪いね……。ルリちゃん一人なの?お嬢さ……、オーナーは?」
「セシリーとは部屋で別れました。たぶん、お部屋だと思います」
「そっか。んー」
料理長さんが何か考えていますね。ちなみに料理長さんは女性の方です。豪快な料理もありますけど、繊細な料理も多いのです。
「ルリちゃん、多くても食べれそう?こんな時間に量を進める私もあれだけど……」
「大丈夫です」
「じゃあ、ちょっと試作品に付き合って。まだ、お店で出したこともない品なんだけどね」
「いいのですか!?」
「いいの。付き合ってもらうから、これはサービスよ。それじゃ、待っててね」
緑の果実水を置いて、料理長さんは厨房へと行きました。
「どのような料理でしょう」
料理長さんが作る料理は本当に美味しいのです。初めて『ミューズの安らぎ』に来た時に食べたお魚料理、あれは忘れられません。とりあえず、料理ができるまで待ちましょう。
「これはお酒ですか」
果実水と思い、口に含んでみると果実酒でした。お酒独特の香りがなかったので、飲んでみるまで気が付きませんでした。飲めなくはないので、問題はありませんけどね。
「たまには悪くはありませんね」
グラスを口に運びます。味も微かな甘みはありますが、さっぱりしているので飲みやすいです。
しばらく、お酒を楽しみながら待っていると。
「おまたせー。って、ナンパとかされなかった?」
料理長さんが料理を運んできたと同時に慌てていいましたね。
「何もありませんでしたよ?のんびりと、お酒を飲んで待っていただけですから」
「お酒?……間違えた!」
料理を私の目の前に置くと同時に叫びましたね。間違えですか?
「ルリちゃん、大丈夫?このお酒、結構きついんだけど……?」
「平気ですよ?あっさりしていておいしかったです」
返事をしながら、目の前の料理に目がいきます。食いしん坊?こんな美味しそうな料理を目の前に置かれて我慢する方が難しいのですよ。
「お酒の事はオーナーには内緒ね。ルリちゃんに飲ませたなんてバレたら給金下げられる……」
「いいませんよ」
「ありがと。料理の説明はあとにしましょう。冷めるのもあれだから。あ、横の小さな入れ物に入っているソースは辛いから注意してね」
「はい」
真っ赤ですね。見た目通りなら相当辛いと思います。
「召し上がれ」
「いただきます」
一口食べると、そのまま「はむはむ」と食べ続けたのでした。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さま。ほんと、ルリちゃんが食べてる所は見ていると作ったかいがあると思うわ」
「あはは……」
少し恥ずかしいですね。ですが、美味しい物は食べると止まれません。
「さてと、料理の説明をしましょう。珍しい肉が手に入ってね」
「珍しい肉ですか?」
「虎よ」
「虎ですか?確かに珍しいですね」
主に料理で流通しやすい肉は狼の肉です。布の素材となる、もふもふした動物はえーと……羊といいましたか。羊の肉も流通は少ないです。理由は羊は高いのです。高級な生地ができますからね。虎は狩猟以外、まず手に入らないと思いますから、さらに希少です。
「ここを贔屓にしてくれてる冒険者の人がいてね。ギルドを経由して安く譲ってもらったの」
「なるほどです」
「味はどうだった?美味しいっていうのは、ルリちゃんの食べてる表情を見てわかるんだけど」
「そうですね……」
味を思い出してみます。
「虎の肉って独特な味があるので、何種類かの香草と一緒に焼くと落ち着いた味になりますよね。料理長さんが作ったこの料理も焼いた物でしたし。かかっていたのは黒い実の茎ですよね?あれも香辛料になりますから。弱火で香草と一緒に焼き始めて、火がある程度通ってから黒い実の茎を砕いたものをふりかけて、高温で表面を焼き上げた感じでしょうか」
「ルリちゃんって料理できないよね……?」
「できませんよ?自分で言うのも悲しくなりますけど、食べる方が好きですから」
「ここまでわかっているのに、料理ができないのが納得できないんだけどね……。厨房の若い子だと今の料理食べただけでそこまでわからないよ?」
「そうですか?」
「ええ」
「ルリちゃんが料理を覚えて厨房に来てくれると凄い戦力になるのに……」と呟いているのが聞こえます。
「料理はできませんが、味はわかりますから。あと、あのソースですが癖になりそうです」
「でしょ!あれ、作るの悩んだのよ」
「赤い種子を乾燥させて砕いた物に黒の実の茎、あとはあの僅かな酸味は黄色の果実ですね。甘味は赤の果実の果汁だと思いますから……。赤の果実の果汁を弱火にかけながら、最初に赤い種子の砕いた物を加えて調節、次に黒の実の茎、最後に火を止めてから黄色の果実の果汁を加えて調節だと思うのですけど」
「一度食べただけでそこまでわかるものなの……?」
料理長さんが驚いていますね。
「意外とわかりますよ?細かい部分まではさすがにわかりませんけど」
「ルリちゃんが言った材料で、ほぼソースできるからね。呆気なく見破られたのはちょっとショックだけど」
「それは悪い事をしてしました」
美味しい物には手加減できませんから。
「いいのよ。まだまだ改良できそうだし。ルリちゃん的にはこの料理はどう思った?」
「とても美味しいです。ただ、小さい子供にはソースが辛すぎると思います。辛いのが苦手な大人でも少し厳しいかもしれません」
「ふむふむ」
「そうですね……ミルクを使うとソースが別物になってしまいますから、白の果実を絞った液で味を優しくするのもいいと思いますね」
「なるほど……。ルリちゃん、本当に料理は……」
「できません……」
本当にできませんからね?色々詳しいのは家族に料理が得意な人がいたからです。
「参考になったわ。ありがとう」
「お力になれてなによりです」
「これはデザートね」
デザートはよく冷えた赤い果実でした。
「美味しそうです」
「これももう一工夫したいけど、案がなくてね」
「工夫ですか?」
果実を一口食べます。よく冷えた果実自体も甘いですが、これは果実を煮詰めた物を表面にも塗っているようですね。
「いい案ある?」
料理長さんが期待を含んだ目をしています。期待されても困りますが……あ!
「島で食べていたおやつを思い出しました」
「ルリちゃんの故郷のおやつ?興味あるわね」
「私が口にしたものを使うのはちょっと忍びないのですが」
目の前にある赤い果実はよく冷えているだけで、凍ってはいません。ですが、凍っても味はしっかり残るものだと思います。
「こういう物がありますね」
目の前のデザートを魔法で一気に凍らせてから、小さく砕きます。氷を削るのではなく、雪のように少し薄くです。
「……見たことがないわ」
「魔法を使ったのは私は調理手段を知らないからです」
「食べてもいい?」
料理長さんが興味津々です。
「はい。私の食べかけを使ったのがちょっとあれですけど……」
「私は気にしない。知らない料理が作れるようになるのなら、それは些細な事よ」
そう言いながら、料理長さんがテーブルにあったスプーンで一口食べました。
「なにこれ……?」
「口にあいませんでした?」
「そんなことないわ!なんていうのかなこれ……。薄いけど凍っているから、舌触りがあるし。果実の味もはっきりしてる……。長い氷でもないから、スプーンで食べやすい……。果実を使ってるから、他の果実でも試す価値は……」
「他の果実でも美味しいですよ」
「!?」
料理長さんの目が真剣な目をしています。何か色々思いついているのかもしれません。私の楽しみも増えそうです。
「ルリちゃん、このおやつって名前あるの?」
「ないですね。島でおやつとして食べられていたぐらいですから」
(主に私のおやつですとは言えませんね……)
「なら、名前はルリちゃんの名前を少し使うわね」
「え?」
「発案者の名前を入れるのは基本基本」
「ええ!?」
「大丈夫、可愛い名前にするから」
後日、『ミューズの安らぎ』のデザートに『氷菓 ルリ』という物が追加されました。読み方は『ひょうか るり』と読むそうです。また、文字の間に各果実の色が入るそうです。かなり恥ずかしいですが、料理長さんは大満足していました。
「お腹も一杯になりましたね」
部屋に戻り、レティアの様子を見てから、窓際のソファーに座ります。
「お風呂も入りたいですけど、明日の朝に入りましょう。今から入ると、レティアを起こしてしまうかもしれません……。あふ……思ったより、私も疲れていたようです……」
着替えないとダメですね……。着ていた服を脱ぎ、就寝着を取り出そうとしますが。
「面倒ですし、眠い…です……ね………すぅ……」
私はそのまま眠ってしまったのでした。
これから始まる生活が楽しみで仕方がないルリアルカです。
楽しく平和に過ごしていければいいと思いながらも、そうはならないと思っている所もあります。
セシリー、シエラたちと関わり、色々と考え方は変わってきていますが、静かな所が好きなのは変わりません。
作中に出てくる、果実水や果実酒ですが、色でしか表記されません。どの様な果実なのだろうと考える方がいらっしゃれば、赤い果実は現代のリンゴという風に考えて頂けるとわかりやすいかもしれません。
ルリアルカの世界で果実等は基本的に名前がありませんので。
次回更新は書き終わり次第です。




