19:ブログ編
ちょっと寄り道。別に読まなくても問題はないので説教くさいと感じたらブラウザバック推奨です。
つい、一か月ほど前の出来事である。新たにVRMMOと呼ばれるゲームカテゴリが世界で初めて日本で生まれたのである。名前はセカンドオピニオン。元々VR技術というものは脳障害を抱えた人々に対する医療目的であったり、飛行機や船などの操作シミュレーターとして企業や軍事用途では用いられていたものが、この前初めて一般向けとして発売されたのだ。それは世界で最初の一般向け利用を目的とした開発であり、世間では大いなる肯定の意を伴って認知された次第である。
実のところ、まさか、ゲームとしての一般利用が来るとは私は予想していなかった。というよりも、このVR技術というモノそのものについて私は、一般で用いられることが難しい技術ではないかと思っていたからだ。
私はその点で古い人間であったのだろう。世間での反応を見る限り、この技術はなかなかに良く広まって居る様だ。VRMMO。私は寡聞にして、それを聞いたことすらなかったが或る界隈ではかなり一般的に望まれたものであったらしい。人々の関心を引き付けるには十分な内容であったようだ。
というわけで私も買ってみた。幸い、時間に余裕がある身であったこともあり、いい退屈しのぎになりそうだという思惑もあった。
感想として、ここまでのものが、と言いたくなるほどの物であった。私自身、実は研究用や医療用のVR機器を使ってみたことがある。だが、このVRMMOで再現されているのは想像以上の現実味を帯びた世界であった。
システムにスキルや様々な職業を選び、モンスターを倒して冒険する、というのは日本お得意のRPG要素であり、ごくありふれたものであったが自らの分身であるアバターを実際に操作してプレイすること、それだけでとてもクリエイティブなものに見える。恥ずかしながら、年甲斐もなくはしゃいでしまったことについては勘弁願いたいと思っている。どこかで誰かに迷惑を変えてなければいいのだが……。
少しばかりプレイしてみた感触としてそこそこ高難易度に設定されているような気がした。そもそも、これまでのゲームは平面上のアバターをコントローラーを用いて間接的に動かすことが主流だった。それが直接的にアバターを動かす方式に変わってしまったのだから、それは戸惑うのも当たり前だろう。現に私もそうであるし、それ以上にゲームが好きで好きでたまらない、という人々も同じ問題を抱えているのではないか、と思われる。この難易度の高さはアバターを直接自分の身体として扱うところにある。
直接、自分の身体として扱う以上ゲームを攻略するために必要なのは自分の身体をどこまでうまく動かせるか、といったところに焦点が当たるからだ。それなりの運動神経を必要とするVRMMOではある意味で不公平な作りとなっていることだけは否めないだろう。勿論、そういった問題があるならばそれを緩和できるように振舞うことはできるが、そういった行動をとる以上、プレイヤーの自由度といった問題は低くなるだろう。
VRMMOはリアルスキル、つまるところ現実世界での運動神経に依存するのか。そういった疑問は勿論出てくるだろう。その疑問に答えることは勿論できる。
答えは限りなく否に近い、と答えることが出来る。
VR技術というものが発展を遂げることとなった一つの要因として、元々この技術は脳の働きと知覚の関連性を調査するために作られたということがあげられる。
意思というものはどうやって発生しているのか。また自己知覚はどのような状況でも正常に機能しうるのか。極限状態というものを容易に作り出すことのできるVR技術はそういった実際に行うには難しい心理実験をいとも簡単に行うことが出来る。
脳と電脳のかかわりを研究することは人が自らの自己というものについて知ることが出来る「唯一の手段である、と主張した科学者もいたように脳とインターネットの融合を図ろうとした学者は多かったりする。
みんなは知らないかもしれないが、VRMMOをプレイする時に頭に装着するヘッドギアがあるだろう。これにもその理念が組み込まれている。
一般にいうならば人工海馬と呼ばれる機械だ。元々は記憶障害を患った患者や脳の言語野に深刻な損傷を負った患者に使用する用途だったものが軍事用に転用されたものが始まりである。詳しい用途に関しては筆者も知らないため割愛するが、一般には知られていないがそれなりに使われている技術であると覚えておいてほしい。
さて、長々と書いてしまったが結局のところリアルスキルこそがVRMMOに必要なのか。その疑問を解消するためにこの前提知識が必要だったのだ。
もう諸君らも気付いているだろうが、ヘッドギアに内蔵されている装置群のなかにその人工海馬と呼ばれる機器が内蔵されている。このパーツには実は様々な分野で活躍していた武道、スポーツなどの体力的、肉体的に優れる者たちの運動データが内蔵されている。揺籃型ヘッドギアはレム睡眠とノンレム睡眠を自動的に区別する機能を持つ。一時的なトランス状態に陥った我々は意識の拡散状態へとフェーズが落ちる。そこに指針となる外部記憶媒体であるヘッドギアが我々の意識を誘導するために働くというわけだ
。
だから、運動神経のないものでも一定以上の動きを可能とすることが出来る。これで分かったようにどれほど運動神経のない愚図がこのセカンドオピニオンというゲームをプレイしたとしてもそのうち武道の達人並みの動きが出来るという事だ。
ヘッドギアは脳とつながっているわけでは無い為、ため込まれている知識は常に一時的なものだし、ゲームをプレイし終わったとしても私が武道の達人になっているわけではないから気を付ける様に。
さて、これまでに述べた内容でVRMMOをするうえでリアルスキルというものは大きなアドバンテージになりえないことが説明できた。勿論、このセカンドオピニオンだけがこうなっているわけではなく、もともとは軍隊での教育課程に用いることが検討されていた当時からこの機能については一応の完成のめどが立っていたとされている。実際にこの機能が実装されたのはごく最近らしいのだが。
ここで忘れてはいけないのは元々VRMMOの技術は自己知覚や脳の働きを図るうえでの研究目的であった、ということだ。この研究の最終目的は人類に比肩する存在の創造であり、また人間という種をつまびらかにすることが目的である。もはや、生物学的アプローチだけではなく哲学的アプローチをも必要とする段階に来ていることの表れなのだろうか。直接的に自己を認識するすべを持たぬ人類という種はVRという架空の次元で得た仮初めの肉体を知覚したときどのような反応が起こるのか。それについては十分な知見が実はまだ得られていない。
恐らくはゲームをしている時としていないときでは心理的状態に影響が及ばないよう、様々な配慮がなされているヘッドギアであるが、何も起きないということはないだろう。存在の消失反応などの問題が起こる可能性は十分に秘められている。一般向けにVR技術を販売するのにはまだ早すぎるのではないかという声も一部上がっている。世間では一種のお祭りの様に謳われているその技術がどれほどの影響を人の精神に及ぼすのか。
VRMMO。VR技術の一つの方向性の極致というべきそれは、一体これからどうなっていくのか。とても興味深いと言えよう。
三章は遅くなりそうです。三月中に来なかったらああ、無理だったんだなと思ってください。
四月から私事がまた立て込んできますので更新がかなり空きます。具体的には三カ月ぐらい。
あまり期待せずに待っていて下さると私の気休めになります。




