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アトライア;VRMMOにおける水棲生物の生態観察記  作者: 桔梗谷 
3章 トカゲ、その腕に夢よ抱け
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2章6の部分

セントーレアの階梯を第六から第九へと変更

 セカンドオピニオンは世界初のVRMMOとして生み出されたゲームである。国主導で行われたためか、ただVRMMOとしての収益を見込むだけでは開発理由としては弱いとされた。勿論、技術力をみせるという行為を孕んでいたのは当然であるが、やはりそれだけでは理由として弱い。そこで、量子コンピュータを用いた惑星シミュレータとしての側面を推すことで開発が進められることが決まった。そのうちには、惑星の環境サイクルを再現するだけではなく仮想人格としてのライフゲームを作り出すことも狙いとして設定されていた。

 

 つまり何が言いたいのかというと、彼らは実際の人間の様に振る舞い、与えられた刺激に対して適切な反応を返すことが出来る、という事である。


 「準備出来たかしら?」

 金の髪をたなびかせながら耳長の女性が振り向きざまに問う。そこには三人の同行者たちがいた。

 「………!」

 「インベントリに全部入れるだけですので……」

 「うにゃ~。お出かけなの!!」

 三者三様の答えが返ってくる。女性はにこやかに笑みを深める。首を回して前を向いた。

 「なら、海のそこへと出発進行っ!!」

 そして、満足げな顔をしたセントーレアさんは拳を振り上げて言い切った。

 

 くしゅん。可愛らしいくしゃみの音がした。獣人幼女のフリージアちゃんが淀んだ空気にたまらず鼻を擦る。かすかに潮の香りが充満した空間は埃っぽく、感覚の鋭いフリージアちゃんにとっては鼻がむずむずしてくるのだろう。一見海の上に建てられたようにも見える研究所の地下に彼らはいた。

 四人は階段を下る。こつこつと音が響く。研究所に見た目からは想像もできないほど地下は広く、足音がよく反響する。白い壁は四方を覆い、開放感よりも圧迫感を憶えた。

 「それにしても地下に何があるんです? 始めて来ましたけど、広いですね」

 「ふふふ………内緒!!」

 セントーレアさんは笑顔のまま答える。どうやら、教えてくれる様子はなさそうだ。

 「見ればわかるわ。見ればね」

 「くちゅんっ」

 フリージアちゃんの可愛らしいくしゃみが鳴った。私もくしゃみが出そう。

 どうやら、彼女は私に教える気はないようであった。それどころか、その何かを見てネアが驚くことを期待しているような風であった。いつも通り可憐に映る笑みには少しばかり小悪魔めいた何かが映りこんでいた。

 ……さて、何があるのでしょうか?

 

 

 そもそもの発端はベルベットフラワーから手に入れた感応石でした。それを使えば共鳴の鈴というモンスターテイムが可能なアイテムの作成が可能となるそうです。そのためには手に入れた感応石を加工する必要があるそうですけれど。私の初心者レベルんの技量では難しいそうです。

 「それで、当てがあるとはどういう事なんですか」

 「そうそう、共鳴の鈴を作るのならついでだし。どうせなら一回ネア君を連れて行ったほうが良いと思うところがあるのよ。そこでならいろいろと手に入るしね。結構ボロボロでしょ装備とかも」

 ボロボロと言われて思わず自分の装いを見る。装備を最後に変えたのはここへ来る前、ゲームを開始してから一週間も経っていない。時々、村のほうで強化や補強をしてはいたが、元が元なのか、それなりのものにしかならなかったのだ。酷使してきたためなのか、心なしか装備の外見も煤けて見える。

 「そう……ですね。かなり、耐久値も下がってきていると思います」

 「それじゃあ、さっそく行く用意しよっか!!」

 「………へ?」

 「なんだかんだで時間取りそうだからいっそのこと向こうの宿に泊まる事にしましょう。それじゃあ、必要だと思うものを持って机にでも座って待ってなさい。さぁ、フリージアちゃん、久々に遠出するわよ!」

 「? ……うゆ? 行くっ!!」

 ……軽いなぁ。フリージアちゃんはなんとなく気分で、サウロさんは基本的にセントーレアさんの提案には従うので、当然肯定。驚きのフットワークの軽さで外出が決まったのであった。


 そして、今に至るわけである。


 「でかいですね………」

 それは威容とともに暗闇の奥、ぽっかりと開いた穴の上に吊り下げられるような形で鎮座ましましていた。海水の上に釣り下がっているそれは横幅は約6m強。全長はおよそ10mもあるエイの様な見た目の何かであった。中央にはガラスの様に透明な物質が丸い半球を二つ覗かせている。銀に煌めく滑らかな表面はどのような物質で形作られているのかすら分らない。まるで、それだけは違う世界にあるような錯覚さえ覚えた。

 「これは……」

 「これはライア。海の中を自在に泳ぐ翼をもった私達の持つもう一つの身体よ」

 セントーレアさんが微笑む。ネアはただ、ライアと呼ばれたものをしげしげと眺めるほかなかった。

 ネア達の前にあるものは潜水艦だったのである。

 

 名称:ライア

 タイプ:アーティファクト

 重さ:8

 レア度:9

 品質:8

 備考:潜水艦。武装あり。二人まで搭乗可能。

 

 鑑定結果、アーティファクトと出た。レア度は九。現状ではプレイヤーの誰もが見たことが無いであろうまごうことなき激レア品と呼べるものである。それが今、ネアの目の前にひっそりと佇んでいた。

 「こんな凄そうなものどこで手に入れたんですか?」

 ぺたぺたともの珍しそうに手を触れているフリージアちゃんを宥めながらセントーレアさんに問いかけた。

 「ちょっと昔色々とあった時に海の底で引き上げたこれを貰い受けたの。あ、アーティファクトっていうとても珍しいものだから変なところ触って壊さない様にしてね。たぶん大丈夫だと思うけど」

 そう言ってセントーレアさんがフリージアちゃんの脇を抱え込むように持ち上げた。

 にゃ、とどこか楽しそうなフリージアちゃんを抱え込んだまま、片手で透明な半球の根元をごそごそと弄る。すると、小さな機械音とともに半球がエイの機体のなかへと飲み込まれていった。半球があった場所には人がかろうじて座れるほどの空間と小さな椅子、それにたくさんのよく分からないボタンや計器が備え付けられていた。セントーレアさんはそのまま、中へとフリージアちゃんを入れる。すると、再び半球が現れて元の位置へと戻る。フリージアちゃんはぽかんとしたままの表情だ。だが、次第に楽しそうな表情を浮かべる。珍しさに好奇心が刺激されたようだ。そのまま、おー、と嬉しそうに笑う。

 「これで手が空いた時とかに一人で色んなところへ行ったのよね。サウロが今はいるからあまり乗ってなかったけど……。今から行く場所はちょっと遠いからこれで行った方が速いのよ」

 セントーレアさんがライアに手を置く。撫でるように手を動かしている。

 「へぇ………」

 ふと、ネアはあることに気付いた。

 「ライアって二人乗りみたいですけど、四人で行くんですよね? 乗れない人はどうすれば……?」

 おそるおそるといった風なネア。どうにも嫌な予感がひしひしとしていた。

 「ごめんなさいね。ネア君は自力でついてきてね? サウロも一緒だし、私も無理をさせないようにするからね」

 「………はぁ」

 これは……たどり着けるのでしょうか?

 半球を内側からたたき始めたフリージアちゃんの手がぺしぺしと鳴らす音だけが空しく響いた。

 

 (はぁはぁ、もう無理です。キツイ)

 ネアは軋む体に鞭うちながら、目の前を悠然と泳ぐエイの形をしたアーティファクト-ライア-の後ろから遅れまいとして必死の形相で手足を動かしていた。

 少し視線を下にやると魚の群れがぐんぐん後ろへと取り残されているのが見える。今、ライアが出している速度が異常なのだ。

 「遅れないように頑張ってね」

 脳裏に女性の声が響く。この声はライアに乗り込んでいるセントーレアさんから送られたものだ。彼女の持つスキルによるテレパシーのようなものらしい。残念ながらネアのほうから返信を返すことはできない様になっている。

 (そんなこと言われてもセントーレアさんたちが速過ぎるんですが。というかサウロさん生身でライアに追いつけるのか……)

 ネアの斜め前には猛スピードで泳ぐライアに軽々とついて行っているサウロがいた。普段と変わらない相貌には余裕すら見える。あれほどのスピードを出しておきながら、顔色一つ変わらないのは年季の違いなのだろうか。

 「そろそろ休憩するかしら?」

 一方的に告げられる声とともにライアの速度が次第に落ちていく。ぴたりと止まるころにはネアの身体にはとてつもない疲労感が襲っていた。

 今、ステータスを見たら「水泳」とかのレベルがすごいことになっていそうだな、と思ったがあまりの疲労にネアはパネルを開く事さえ億劫に感じた。

 「それほどスピードは出してないつもりなんだけど、しんどかったかしら。もうそろそろ、目的地の近くだから一旦海上まで上がるわよ」

 ライアがゆっくりと上昇を始める。ネアもゆっくりと海上に上がる。海上に上がったライアの半球が開き、セントーレアさんの金髪が海風にたなびいている。

 「もう、目的地の近くまで来たわ。今は見えないけど、もう少し移動したところに島があるの。そこの海底が目的地だからね」

 海の上へと飛び出した頭を捻り、「遠視」スキルを発動させてみる。周りを見渡す。なるほど、かなり小さくはあるが、島らしきものが見えた。

 「なんとなくそれっぽいのが見えました。あそこですか」

 「ネア君は「遠視」スキルを持っていたわね。そうよ、あそこの方向に行くの」

 ネアが指し示した方向を見たセントーレアさんがそう言った。

 「目的地の近くまで来たのは良いんですけど、もう少し速度を落としてくれませんか? さすがにきついです」

 ネアはこれを言うか一瞬迷ったが結局言う事にした。疲労でスタミナ値ががりがりと削れている現状をそのままにしておけば倒れそうだと思ったからだ。

 「あらら、それは大変ね」

 セントーレアさんの返事はとてもそうは思っていない感じであった。少しネアはむっとした。

 「今、「水泳」のスキルはどのくらいかしら? それと「潜水」と」

 「え? 「水泳」が……49で「潜水」が47ですね」

 いきなり問いかけられたネアは面食らった様子で答える。ネアの返事を聞いたセントーレアさんはにこりと笑った。

 「それならもうすぐ上位スキルに辿り着けるわね。それなら大丈夫。まだまだいけるわ」

 セントーレアさんは形の良い顎に指を当てながら何事か思案するように呟く。そこで、

 「………複合スキルになるだろう」

 「複合スキル?」

 サウロさんの口から気になる言葉が飛び出した。複合スキルとはなんだろう。ネアの記憶ではそのようなものを聞いた覚えがなかった。ネットの情報も整理がされていない状態であり、様々な情報が錯そうしている。彼が知らないのも無理はない。

 「複数の下位スキルが上位スキルになるときに統合されて一つのスキルとして昇華されたものの事をそう呼ぶの」

 セントーレアさんが指を指揮棒の様に振る。

 「勿論複合スキルとして統合されれば、その分のスキルスロットには空きが出るわよ。他にも、特定のスキルを持っていると使えるようになる複合アーツというのもあるわよ」

 「へぇ………私が持っているスキルにもそれがあると」

 それはかなり嬉しい情報である。現状、一度に使用できるスキルは職業スキルと種族スキル、加えて取得スキルと呼ばれるものの三種類としてカスタムされたものに限られている。そのうち、職業スキルと種族スキルは固定なので取得スキルだけが自由に選ぶことが出来るスキル群なのだ。その取得スキルが複合スキルとして統合されるほどいい話はないだろう。

 「まぁ……内緒」

 うふ、とウィンクを返された。

 「自らで見つけ出すが正道であろう」

 サウロさんも頷く。やはり、そこは教えてくれるつもりが無いようだ。組み合わせを探すのは自分の手で、という事だろう。

 ………ネットの情報はこまめに目を通したほうが良いのかも。ネアはとりあえず、ログアウト後に情報掲示板を周ってみようと決心した。



 「むぅ。海ばっかりでつまんないのです」

 しばらく談笑していると周りの風景を見渡していたフリージアちゃんがそうこぼした。どうやら飽きたらしい。辺りを見渡しても見えるのは青い水面ばかり、飽きてくるのも当然だろう。この風景を延々と眺めているよりかは海中を眺めるほうがまだ代わり映えがある。

 「さぁ、休憩も終わり。もう少し頑張りましょ!!」

 フリージアちゃんの言を受けたセントーレアさんの一言とともに出発する。私のスタミナ値もすっかり回復している。異論はなかった。

 彼女たちはライアへと乗り込み、潜水の準備をする。やがて静かな機械音が鳴り、出発の準備が整ったことを知らせた。

 ごぼごぼと泡を吹きだしながらライアの滑らかな機体が水面へと沈んでいく。すかさず、ネア達もそれに続く。身体を捻る様にして捻じるだけで深い海の底へと潜ることが可能となる。

 ゆっくりと下降を続けるライアの後ろにサウロさんとともに降りて行った。

 

 

 海は広く、三次元に広がる奥行きは必然的にモンスターとのエンカウント率に直結する。広さはモンスターの密度の薄さにつながっている。その代りと言ってはあれだが、出くわすモンスター一体一体は癖が強く、また巨大で強力な個体が多い。ネアはそのうち、比較的小型で弱い部類に入るモンスターを対象に狩りを行っていたが、それでもかなりの気力と体力を必要とするものであった。それは一体狩るごとに身体の傷を癒し、その身を襲う疲労を振り払う必要があったほど。それほどまでに海に住まうモンスター達は強い。

 テンカ達が対峙したスタンセンチピードのようなモンスターのような大きさがごろごろいるのが海である。それはメタ的な話を見るならば、本来海での戦闘は船などによる艦上戦闘を前提としているからだろう。基本となるサイズからして違う。だからこそ、海で出会うモンスターはでかいのだろう、とネアは思考の彼方でそう考えていた。そう、今自分たちが対峙している状況から逃避するために。


 「回避っ!!」

 脳裏に響く声に従って、今居る場所から全力で飛び退く。ばねのように身体をたわめることで爆発的な加速が得られる。その代償のように身体を襲う負荷に顔を歪めながらネアは今までいた場所を見やる。

 どごんっ!!

 海水を伝う振動に頭が揺さぶられる。水中ではあらゆる振動が空気中よりも高速で伝わる。瞬間的に発生した衝撃はネアを吹き飛ばす。

 ネア達を襲ってきたのは平べったい体を硬い板金の様な鱗に覆われた巨大な魚であった。その堅牢さは依然対峙したオッテウスを髣髴とさせるものであった。

 ネアが先ほどまでいた空間から引き戻されるように動く何かがある。一見棒のようにも見えるそれはモンスターのほうへと引き戻されるにつれ、ストローを曲げる様に折りたたまれる。ヤゴだ。ヤゴの口に似ている。ネアは幼少期に川原で見つけたトンボの幼生を思い出した。そのモンスターは魚の様な体とヤゴの様な自在に伸び縮みずる口を持っていた。

 「クラスピアよ!! その口に挟まれたら真っ二つにされるわ!! 気を付けて!!」

 セントーレアさんの悲鳴のような声が脳裏に響く。言われなくてもそんなことは容易に想像が出来た。私の防御力では一撃でアウトだろうと。

 口をしまい終えたクラスピアがのそりと動く。幸いと言えばいいのか本体の動きはそれほど速くはない。問題はその口だ。折りたたまれた口吻が伸びる速さは初動を捉えるのが精いっぱいであり、体が反応して避ける、となると難しいと思われた。ただでさえ巨体なのだ。一撃の範囲はでかい。

 (【タイドレイメント】………)

 とりあえず、水の鎧を纏い防御能力の向上を図る。たとえ、たやすく打ち破られる張子の虎となってもあるだけましだ。何より、ネアの心の安定には必要なことだった。

 のそのそと動くクラスピアに氷の塊が突き刺さる。サウロさんの一撃だ。サウロさんの操る無詠唱の魔法がクラスピアに襲い掛かるが、その堅牢すぎる鎧を突き破るには至っていないようだ。

 心なしか、サウロさんの顔も渋面を作っているように見える。

 ネアもとりあえず、クラスピアの気を引くように泳ぎ始める。ネアの攻撃手段ではクラスピアの防御能力を貫くことはできそうにもない。ならば、せめて攻撃の手を引き付ける様に行動するほかないとネアは思った。

 クラスピアは尾びれをひらひらと揺らしながら狙いをネアに定めた。クラスピアの口吻がネアを狙って放たれる。

 しゅっ!!

 水を切るような音と共に伝わった振動が辺りを揺るがす。狙いは外れ。ネアに当たることはなかった。しかし、その攻撃により海中を暴力的な海流が襲った。押し出された海水は流れを生み、局所的に渦を作り上げる。

 (不味い不味い不味いですよ!?)

 ネアはたやすく流れに飲み込まれ、おもちゃのように振り回される。すぐに渦は消えたが、ネアの運動能力はすぐには戻らなかった。

 身動きが取れなくなったネアへと狙いやすくなったとばかりにクラスピアが身体を向ける。折りたたまれていくヤゴの口がタイムリミットを告げているように見えた。

 変わらずサウロさんが攻撃を加えているが、クラスピアはまるで気にした風でない。オッテウスに対してできたことがクラスピアには通用しないのも問題であった。

 クラスピアのゆっくりとした動きが獲物を追い詰め、勝利を確信したようにも見える。

 今にもヤゴの口がネアに向かって射られんとする瞬間、

 「ごめーんっ!! 避けてっ!!」

 脳に叩き付けられるような絶叫が響いた。それとともにクラスピアに巨大な氷塊が突き刺さった。サウロさんの生み出した氷塊とは違い、先端が鋭くとがっている。まるでつららのようなそれはクラスピアの硬い表皮を突き破り、その長さの半ばほどまで身体へと突き刺さった。瞬間、つららが爆発した。

  きゅるおらぁぁぁぁぁぁぁ!?!?

 海水の中を声なき声が蹂躙した。クラスピアの上げた悲鳴は音ともつかない何かとなって辺りに響き渡る。そこを追い打つかのようにサウロさんの生み出した氷塊が叩き付けられる。

 だが、驚嘆すべきはモンスターの生命力か。クラスピアは痛みに激しく身体を捩じらせる。絶えず、つららは打ち込まれている。クラスピアの鱗を貫けていないものもあったが、確かにダメージを与えられている。ネアはセントーレアさんのほうを見やる。すると、彼女の駆るライアの両翼に一対の穴が開き、そこから絶えずつららが射出されているのが見えた。

 (武装まであるのですか……。本当に何でもアリですね)

 しかし、モンスターはその馬鹿げた生命力を発揮し、痛みに嘆く身体を動かした。それまでの動きはまるで本気を出していなかったのだとばかりの素早い動きで身を反転させ、脱兎のごとく逃げ出した。

 「クラスピアなんてこのあたりじゃあまり見かけないんだけどねぇ。とにかく何とか追い払えたわね」

 あっという間に消えるクラスピアの後姿を見ながら、脳裏に響く声に頷く。どうせなら、もっと早く助けてほしいと思わないではなかったが、そこまでの贅沢を言うつもりはなかった。命あってこその物種ともいうだろう。

 「あ、援護遅くなってごめんなさいね。武器の操作方法忘れてて……」

 てへ、と擬音が付きそうな声が響く。先ほどまで持っていた気持ちが吹き飛んだ気がした。

 「そ、そろそろ。目的地の近くだから。もう直ぐ着くと思うわよ?」

 ネアのじとっとした視線を受けてか、心なしか早口の声が響く。

 もうすぐ目的地、という言葉を信じて一行は旅路を急ぐのであった。

まったく書き上げられなかったために投稿。一カ月かかってこれ一つだけなのです。リアルが忙しかったんや……。

4月からかなり私事の事で執筆時間が取れなくなるので休載に近いことになります。すみませんね。

息抜き程度に読んでいただけると嬉しいです。

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