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クリスマスを間近に控えた肌寒い今日この頃。セカンドオピニオン第二出荷とアップデートがあった。
更新点は新種族の「魚人」の追加が行われたり、スキルやアーツの効果に関する修正がちらほらとあった。変わったところでは船の建造だろうか。元から船の建造はできるようになっていたらしいが、新しく追加された設計図を使うことである程度望んだ性能の船をNPCなどに制作してもらえるようになった…らしい。実際のところそういったことが出来るまでの余裕があるプレイヤーはほとんどいない為、更新レポートの中にそういった項目があるという話があるだけなのだ。
それよりも私たちの話題に上がったのはダンジョンや従魔の追加などの話題だった。
「アップデートで従魔が仲間になる様になったらしいけど、従魔ってどんなのがいるんだっけ?」
お昼休み、机を突き合わせながら高尚と私は弁当を食べていました。いつもは食堂でご飯を食べている高尚ですが、今日は母親が弁当を作ってくれたらしく教室で一緒に昼ご飯を食べることが自然に決まっていました。食べているときに話すことは勿論セカンドオピニオンについて、私自身かなり、正道から外れているためか高尚が話してくれるゲーム情報はかなり興味があります。
弁当を食べているときに手に油がついたのか、ナプキンで手の平をふき取りながら不意に高尚がそう訊ねてきた。
「前からアイテムだけはあったとかいう話らしいけれどね。私も何が仲間になるかなんて知りませんよ。そのあたりの話はほとんど記載になかったですからね」
「そうそう、ほとんどそんな話が流れないわよね。クエストの報酬でそんな前提アイテムがあるって話を聞いたけど……。凛はβの時にそんなもの見た?」
「いいえ、私も見ていないわ」
知らないという私の言葉に追従する二人がいた。左右をちらりと見るとにこりと笑顔を浮かべた多岐さんと雨音さんの二人がちょこんと女の子らしく可愛らしいお弁当を机の上に置いている。
この二人はゲーム中で妹と一緒にいたサクとりっちゃんです。二人は有希の中学時代の部活の先輩だということがついこの前判りました。同じクラスなのに知らなかった私もどうかと思いますが、それから時々ですが一緒の席で弁当をつついたりすることがある様になりました。偶にですけどね。妹の先輩と何を話すことがあるのかと思いますが、自分の知らない有希の話を聞いたりセカンドオピニオンの話やらでそこそこ話が合ってそれなりに仲良く? しているのだと思います。まぁ、私はゲーム内ではほぼ誰とも会うことが無いですけど。
「そうか~。新はともかく、二人は何か知ってんじゃねぇかとは思ったけど。やっぱそんなもんか。めんどいけど情報くるまで総当たりだなぁ」
「ははは……」
そう言って若干遠い目をする高尚。このメンバーの中では一番廃人に近い高尚のことです。総当たりといったらその作業量はどれだけのものやら想像したくはありませんね。
従魔を手に入れるための前提アイテムとして目されている「従魔石の鈴」はアップデート前から存在している話はちらほら聞いたことがありますが、どれもそんなのがあるという話レベル。使い道も分らないアイテムはほかにもいろいろあったせいもあってかその波に埋もれてしまったようです。
「一応イベントもあるみたいだしその後でもいいんじゃないかしら。のめり込みすぎると眠れなくなるわよ」
「そうね。というか高尚君、あなた最近授業中の居眠り多くないかしら? 田中先生だからといってもあそこまで豪快に熟睡されたらさすがに、ね」
そう言って生暖かい視線を高尚に向ける多岐さんと雨音さん。ついでに私も視線を送っておく。実際、最近の高尚は授業中での居眠りが多い。恐らく、深夜までセカンドオピニオンに入り浸っているのでしょう。揺籃型のVR器具は睡眠に近い状態に意識を落とすせいでその後、しばらく眠れなくなるんですよね。とは言っても、実際に寝ているよりかは睡眠の効果が薄いので結局授業中に居眠りするという事です。私や彼女たちはそこまで時間を費やしているわけではないので授業中に眠くなることはほとんどないです。
「とりあえず、勉強位はしようか。この前のテストどうでした?」
なるたけ優しく聞こえる様に尋ねてみる。そうするとさっと高尚の顔色が面白いくらいに青褪めた。どうも触れてはいけない部分であったらしい。
「今度勉強教えてくれ委員長!! 新も一緒でさぁ!? この前のテストマジやばかったんだって。せっかく思い出さないようにしてたのに新の馬鹿野郎っ!?」
思い出すのも嫌とばかりにいやいやをする高尚。そんな仕草をされても心が冷えていきますが、まるきり手を貸さないというのも駄目でしょうね。……私ではなく多岐さんに勉強を見てもらおうと頼んだところに若干のしこりがありますが、そこについては不問としましょう。
「まぁ、私は良いですけど……。多岐さんはどうです?」
すると、多岐さんは苦笑するように
「私もいいよ、といってあげたいけどテスト前はほかの子にも教えることが多いから難しいかな」
ごめんね、といった風に手を合わせている女性陣。断られてしまったようです。
青ざめた表情の高尚がぐぉぉと頭を抱え始めました。それほどに前回のテストは拙かったのでしょうか。そういえば、テストが返されてから高尚がやけに浮ついていた気がしましたがそれが原因だったのでしょうかね?
「いや、違う!! ってか俺のテストの点数なんかどうでもいいだろ!!」がばりと顔を上げて高尚が吠えます。
「キレた……」
「キレたわね……」
「露骨に話を逸らしに来ましたね」
三者三様に冷たい視線を高尚にやります。彼はじとっとした視線を受けてたじろいだ。
「そ、そういや新はまだNPCと一緒にいるのか? 長いイベントだよな、もう二週間はそこにいるんだろ。どうなんだよ、終わる気配は」
「え、ああ。どうも期間が分らないイベントでね。どのくらいいるのか見当もつかないや、最近はもういっそのことソロで活動するのもいいかなって思ってる」
「ええ、そうなの!?」
意外なことに私の返答に反応したのは多岐さんだった。予想外のところから抗議の声が上がったせいでぎょっとしたような顔で見てしまうと彼女ははっとしたように顔を赤らめた。
「い、いやね、有希ちゃんがあなたの話ばかりするからどうせなら一緒にいてくれるとこっちが楽というかなんというか……」
最後のほうは少し小さい声になりながらもそもそとした声で彼女は呟いた。ある意味珍しいものが見られたと雨音さんがニコニコとしている。
「そうね~。いつも有希ちゃんの兄さん自慢に巻き込まれているものね~」
「や、それが嫌なわけじゃないけどさ……」
どうも有希の家族の自慢話に付き合ってくれているらしい。たびたびそんな話をしていると聞くと恥ずかしいものがあります。知らない間に私のイメージが広がってしまっているようで落ち着かないですね。
「あ、あはは。うちの妹がお世話になってるようで。有希の面倒を見て頂いて本当にありがとうございます」
「もう……」
思わず苦笑すると多岐さんが真っ赤に赤くなった顔を俯かせた。
「それはともかく、新はあれか。今度のイベントには出れないのか。レベル上げのいい機会なんだけどな、残念だ。」
高尚が若干芝居がかった仕草で残念そうに言う。
「そですね。私は当分ゲーム内で会うことは無いのじゃないですかね。
私にいるところまで行くには船を使う必要があるみたいだし」
「まだ、ギルドハウスすら持ってない私達には遠い話ね。もう、普通に泳いで行ったほうが速いんじゃない?」
「そんな無茶な……」
そんなバカみたいな話をしていると昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。じゃあね、と席を立つ高尚や女性陣二人を見送りながら机の上を片付ける。このまま、のんびりと一人旅見たくプレイしてみるのも本当にいいかもね、と頭の隅に考えながら学校が終わるのを待つのであった。
まさかの投稿ミス、ということでもう一話早めに投稿します。残念ながら続きが殆ど書けていないのでここから暫しお時間をいただきます。
続きが読みたいという方には申し訳ありませんが今しばらくお待ちください。
感想、誤字報告は随時受け付けていますのでお気軽にどうぞよろしくお願いします。




