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アトライア;VRMMOにおける水棲生物の生態観察記  作者: 桔梗谷 
第一の節 トカゲ落ちる
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 「………」

 「すいませんでした!!」

 私の前には土下座した女の子が居る。

猫系獣人の証でもある三角にピンと立った猫耳もくりんくりんと動くであろう猫しっぽも見る影もなく萎れている。さながらたれにゃんこのようだ。 

 彼女は猫系獣人に剣士を選択した前衛タイプのようです。前衛とは言っても、猫獣人の身軽さを生かして片手剣と小盾を用いた回避盾スタイルみたいですね。コウショウと同じ戦闘スタイルと考えてもいいですね。

 私の周りには妹のテンカとそのパーティーメンバー達が彼女に対して白い目をくれている。もし第三者がこの光景を見ていたのならば土下座の猫獣人と仁王立ちのリザードマンという大変シュールな光景をお届けしたであろうことは間違いない。何かの誤解を受けそうな状態であるが、これにはちゃんとした理由があるのだが、どうにもやはりリザードマンの鱗顔が要らぬ誤解を引き寄せてしまいそうである。

 「あの……そろそろ許してあげて下さいませんか? みいこちゃんもこの通り反省していますので……」

 テンカの懇願するような声を聞き私は必死の様子で頭を地面に擦りつけている少女を見やる。

 いや、別にもう気にしているわけではないのだけれど。そりゃ、謝られるようなことをされたのは事実だけれど、ここまで申し訳なさそうにされるのもなんだかなぁ。

 「まぁ、妹の知り合いと言う事ですし、私も死んだわけではないので……ただ」

 一息、言葉をためる。

 「ただ、敵性NPCと勘違いして攻撃を加えるのは、危険行為ですからね。避けられたので今回は問題がありませんでしたが、もしうっかり殺されしまったらその時点でPK行為をしたとみなされるのですから。次からは気を付けて頂きたいものです」

 私が諭すようにいうとみいこは面目ないといった風で更に体を縮こませた。

 こうしていると私のほうがなんだか悪者のように思えてくるのは何故だろう。私はただ、テンカにパーティーメンバーを紹介したい、と言われたので狩りを中断してロマの森から出ていく最中だったのですけれど、いきなり「経験値~!!」と叫びながら一人飛び掛かってくる彼女を見たときはあごが外れるかと思いました。「索敵」に何か反応があったと思ったら獣人の女の子でこちらに向かって剣を振り上げているのです。何か来ると知っていてもこれにはびっくり。何とか避けられましたが、襲われた後にPCマーカーを切っているのを思い出しました。アレを付けていると自分がPCだと証明できるのですが、私は切った状態にしていました。まさか、モンスターと勘違いされるとは思っていませんでしたけど。それから、わーキャー騒いでいるとテンカ達が現れて彼女を拘束。今に至るというわけ。

 事態を冷静に改めて思い返すと頭痛がするような気がしてくる。ここでそのまま、謝罪からの聴許だけではこの子は納得しない気がしますね。

 PK行為、俗にいう殺人行為というものであるが、それはこのセカオピでは認められている。街中といった非殺傷フィールドではそういった行為をすることはできないが、町の外やダンジョンの中といったフィールド上ではそれらの行為は可能である。PK行為を受けた側は所持金の半分が奪われる仕様だ。PKをしたプレイヤーはその時点でPCマーカーが赤に染まる。マーカー表示を無しにすればフィールド上では分らなくなるが、街中では強制的にPCマーカーが表示されるので犯罪プレイヤーだと一目瞭然で判別できる。そうなってしまえば、街中でのNPCの対応も悪くなるため孤立状態に陥ってしまう。また、PK行為をされた側はした側を指名手配することが可能だ。死亡した事例はログに残るため、それをゲーム内申請によって指名手配することが可能である。指名手配されたものを討伐、つまりPKすることによって賞金が手に入ることになる。犯罪プレイヤーとしてのマーカー解除には特定の手順が必要らしいが、β版では実装されていなかったらしく今のところ誰かに討伐されるという方法以外には存在しない。私としては正直言ってPK行為はデメリットのほうが大きいと思う。実際、PKプレイヤーはプレイヤー達からすると金の詰まった宝箱のような扱いを受けている。一度指名手配された場合、誰かに討伐されるまでは犯罪プレイヤー扱いなので永遠と狙われるらしい。どちらが悪いのかわからなくなってしまうが、これがPK行為の代償だと考えれば妥当なレベルなのではないだろうか。

 彼女が私を襲ったのも理由はわかります。普通のゲームではリザードマンなどは敵として出現することが多い。ところがこのゲーム、リザードマンはおろか、子鬼族という種族もプレイヤブルであるし、はてはオークという誰が実装しようといったのかすら分らない種族もプレイできる。普通のゲームの感覚で行くと間違いなく足元を掬われるのだろう。何せ、世界初のVRMMOなのだ。運営もプレイヤー達に与える情報はほんの一部と言っていたことからもこのセカンドオピニオンに詰め込まれたものが透けて見える。

 まぁ、私が襲われた原因の一端にはPCマーカーの表示をオフにしていたからでしょうね。フィールド上では敵性NPCにはマーカーが表示されないというかマーカーが表示されるのはPCだけだ。おそらく、彼女はマーカー表示の有無を見て私がNPCだと勘違いしたのだろう。ううむ、こう考えてみるとこの子かなりそそっかしいですね。

 まぁ、浮かれてミスをするという事もありますよ、と言って許して御終いにしようと思ったが、この子の様子を見ているとただ許してしまうだけだと余計萎縮するのではないかと思う。

 (ふむ、どうしようか。)

 どうすれば角がつかないようにことを収められるか考えていると、耳の長い人、サクさんが怜悧な顔に笑みを浮かべる。

 「ただごめんなさい良いですよ、と許すのもどうかと思うけれど。ネア君、ここは彼女のことを許してくれないかしら。何か私たちにできることがあれば協力させてもらうから」

 サクさんからの提案が上がる。おそらく、引っ込みがつきにくくなった私に対する助け舟という事でしょう。

 「ネア君。私からもお願いできます~?」

 「兄さん……」

 テンカの目には懇願するような色が見える。何も言葉を発しなかったが黒衣の女の子、あやめちゃんも不安そうな目で私を見てくる。

 うわぁ、すごい悪いことした気分。もうこのあたりで終わりにしたいですね。サクさんの提案には有難く乗っておきます。

 「でしたら、生産職の方に紹介していただけますか? できればそれで今回の件は手打ちにしておきたいのですが」

 「ええ、知り合いにβ時代から生産職をやっている方がいますからその方にメッセージを送るだけです」

 サクさんの顔が緩む。綺麗な顔が緩んで可愛らしさが見え隠れする。ネアはつい、視線が吸い寄せられる。

 ……あれ、この人の顔見覚えがあるのだけれど。


 私の知り合いでした。それも同じ学校の同級生が二人。ゲームでまさか、妹の知り合いだと思っていたので自然私の知らない人だと勘違いしていました。私の知り合いがいるってテンカは言っていたのにです。これは反省。

 エルフの女性。サクでいいと言われましたが彼女は同じクラスの多岐咲夜さん。クラスの委員長をしている方です。ちょっと冷たそうな表情をしていて綺麗といった印象の強い人です。実際は結構面倒見の良い性格をしていてどうやら、テンカの中学時代には同じ部で部長をしていたとか。まさかの「演奏家」を選んだと聞いてビックリしたけれどテンカから話を聞いてなるほどと納得する。そうすると、ここにいる全員が「演奏家」に敵性があることになるのですがそれもある意味すごいなと思いますね。

 もう一人は雨宮凛さん。りっちゃんでいいよと言われましたが流石にリアルでは呼べないですね。彼女は学校でも有数の美少女と言われています。告白もかなりの数を受けていてそのすべてを断っているとかなんとか。噂話に私は基本的に疎いので又聞きですけどね。りっちゃんのような美少女なら普通は一目見たらわかると思うのですが、流石に晶族では顔の見分けがつきにくいです。かくいう私もリザードマンの顔ですからね。見分けなんてつくとは思えません。まぁ、同じクラスとは言っても言葉を交わす機会はそんなにありませんでしたからしょうがないのかもしれないです。できれば、これを機に仲良くなれたらいいですね、と思っておくことにします。

 テンカについては家族なのでおいておくとして私に切りかかった彼女も妹の知り合い、というか私この子のこと一回見たことがあります。もう一人の女の子、あやめちゃんもですが。一度テンカの引退演奏に行ったときにテンカに引っ付いて泣いていたのが猫獣人のみいこちゃん。そのとき、泣いてはいなかったけれど同じくテンカに引っ付いていたのが機人族のあやめちゃんです。その時一回だけですが、テンカから離れない彼女たちを見ていい子だなぁ、と思った記憶がありました。まさか、襲われるとは思っても居ませんでしたが。みいこちゃんは猫獣人の剣士だそうです。いわゆる回避盾のようで索敵範囲も広かったため不運にも一人でいた私に反応してしまったようです。これについては彼女も反省しているので蒸し返すつもりはありませんが、気を付けてほしいものです。もう一人のあやめちゃんは機人族の「忍者」だそうです。どうも、一回忍者でロールしてみたかったそうですが、何も機人を選択しなくても。機人族は魔法による状態異常が効きにくく体力回復速度が速いことが挙げられますが、その反面最低ランクのMPとポーションや回復魔法が効かないある意味マゾ種族と言われています。「忍者」はスキル「忍術」の使用に結構なMPを消費するのでどちらかと言えば相性は微妙なのですけれど本人曰く忍術は奥の手、とよく分かりませんが本人の信条があるらしく使える回数が少なくてもいいようです。

 みいこちゃんとは仲直りしましたよ。サクからも知り合いの生産職がいるから紹介すると言ってもらえたので万々歳です。

 現状において私の求めるものは装備。セカオピではレベルアップによる能力上昇は基本存在しません。スキルによる身体能力の向上を図るか、地道に能力値を育てていくしか無い為装備品の質がかなり重要視されます。まだゲーム開始直後の状態ですからそれほど高性能の物を望むわけではないですが、初期装備よりかはいいものが欲しいです。できれば、水中でも使えるものが。ソロでそこそこやっていけそうな見通しが立っているのもリザードマンの防御力故ですからね。生産職の方はどこかの大手か、ギルドに入ってしまうのが常であり個人の意向を組んでくれるような生産職の方と出会えることはある意味一つの財産となります。つまり、私もいい生産職の方と知り合いになっておきたいのです。ですので、サクに紹介していただいてとても助かりますね。

 それから、彼女たちとはゲーム内情報の交換やフレンド登録をして別れました。

まだまだ海へは行きません(いけません)

展開遅くてごめんね!!

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