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これが優雅な王宮生活

 少女の朝は早い。

 にわとりが無く前に目覚めて、一日100回の正拳突き。

「夜着が破けてしまいます~。おやめください~」

 それが終われば、ランニングで足腰を鍛える。

「あああ…、せっかく準備した純白のドレスがぁ…」

 それから獰猛な獣相手に実践トレーニング。

「わふ~わふわふ」

「王宮の犬はみんな大人しいですけど、万一があるからやめてください」

 全ての準備を終えた少女は、天にこぶしを突き上げ叫んだ。

「さあ、王子!どっからでもかかってこーい!」

「わおーん!」

「どうしてそんな話になったんですか。そもそも、殿下は出張中ですよ」

 足元というか、へその辺りに犬をまとわりつかせながら(少女の身長が低いせいである)なんでもない庭へと続く渡り廊下で、こぶしを突き上げながら叫んだ少女に、侍女たちが丁寧に突っ込んで行く。

「いったいいつになったら、あいつと会えるのよー!」

 あれからもう一週間、相変わらず王子は少女の前に姿を現さなかった。

 王宮を出るには王子の許可を貰わなければいけないのに、その王子が城の外にいるのである。1日ほど滞在したら、さっさと王宮を出て行くつもりだったのに、とんでもない妨害である。

「私たち精一杯、お世話させていただいてるつもりです。何がご不満なのです~」

 確かに衣食住に不満は無い。というか、少女が前世から今世に渡るまで、かつてない待遇である。

 しかし、少女にとってはそんな問題ではない。

 閉じ込められているという感覚からくるストレスもあるが、それもまあ慣れはじめた…。慣れたくはなかったが…。

 でも。

「そもそもそんな世話される理由がない」

 少女はばりばりの平民どころか、むしろ流浪民である。こんな王宮で、侍女についてもらって、三食たべさせてもらって、という身分ではない。

 進んで流浪したいというわけではないけれど、だからといって意味も無く不相応な待遇におかれることも、また落ち着かない原因である。

「そこは王子さまの婚約者さまということで」

「却下」

 侍女の童話でも読むような提案には速攻で却下の二文字を叩きつける。

「そもそもあの王子は何してるのよ」

「とても大事なことをしていると聞いています」

「大事なことねぇ…」

 また人助けなんかで我が身を犠牲にしてなければいいんだけど…、と少女はひとりごちた。

 王宮に二週間滞在する間調べたが、少なくとも城の中ではちゃんとうまく仕事の分配がなされているようであった。あのお人よし王子に、仕事や頼みごとが集中してまわるということは起こっていなかった。

 そこらへんは、少女も安心した。

 少なくともあの王子も、前世の経験からマネージメントという言葉ぐらいは学んだらしい。

 しかし根っからのお人よしの王子が、その程度で変わるとは思えない。何か機会があれば、また自分の身を投げ出してしまわないか不安である。

「そういえば、夕食は王さまと王妃さまにお誘いされてますよ」

 城に閉じ込められてからというもの、王さまと王妃さまとも顔見知りになってしまった。

 信じられない事態である。

 もちろん、そんな大きなコネクションが常々欲しいと思っていたけれど、今回は何かずるした気分になって商売になんて使う気が起きない。

 少なくとも王宮御用達の商人を目指すなら別の国でやろう、と少女は思っている。

 なので王さまや王妃さまとは、お茶を飲み交わし、前世の王子が身包みをはがされた間抜け話をしてやるぐらいだ。まあ、肉親の手前だから、ちょっと美化してはやっている。

「せっかくですから、部屋にもどって新しく仕立てたドレスをお召しになりましょうね~」

 王宮に閉じ込められて(少女視点。王宮の人間からすると歓迎して)からというもの、何着か新しいドレスを仕立てられてしまった。

 少女はいらないといったのだが、その後、少女の着ていた(ボロ)服は、全力で捨てられたらしいことが判明。

 もったいないと激怒した少女に、侍女たちは泣きながら謝ったが、同時にちゃっかりと新調したドレスを着せられた。

 捨てたものは帰ってこないし、前世が鳥だからといって裸で過ごすわけにもいかないが、なんか不条理である。

 もちろんこれらも城を出るとき少女は返却する予定だ。正直、分解して売り払いたいほどの高級生地ばかりだが、が自力で手に入れたわけではない。売ってもあぶく銭になるだけだ。

 小柄な体型にあわせたせいで、ドレスが流用できる可能性はあまり高くなさそうだが、まあ使い道がなければ、孤児院に寄付でもすればと、書置きぐらいは残しておこう。

 部屋にもどり少女がそんな計画を立ててる間に、侍女たちは少女にドレスを着せ、髪を結って行く。

「うふふ、結婚式でも私に髪を結わせてくださいね」

「誰との」

「王子さまとのです」

「ないから」

 楽しそうに髪を結っていた侍女にそう答えると、侍女はちょっと悲しそうに、そしてちょっと不思議そうに聞いてきた。

「王子さまのことお嫌いなんですか?」

「……」

 いつもはきはきと答える少女が、その疑問には沈黙した。

 それから数秒だって、ようやくぽつりと答えた。

「嫌いじゃないわよ」

 それから数瞬、また言葉を付け足す。

「ただ…、傍にいたくないだけ…」

 侍女は最初の言葉を聞いたとき嬉しそうな顔をしたが、次の言葉を聞くとしょんぼりと顔を曇らせた。

「よく、わかりません」

「別にわからなかったらそれでいいのよ。あいつはいい奴よ。前世の私が保証する」

 少女は侍女その疑問に答えることはなかった。



終わり方は考えているんですけど、途中の話が難しいです。

あと気を抜くと一人称になります…。なってます…?

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