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文化祭が終わっても、それですっかり全てが終わりというわけにはいかないらしい。
とくに文実の委員長ともなると多くないとはいえ、事後的な事務処理が少しばかり発生する。
放課後、ダブルチェックという名目で天羽さんの処理した資料に目を通していると不意に脳内に声が飛び込んできた。
「(……で、相談なんだけど)」
どちらかと言えばこっちが本題だったのだろう。
聞こえた声に資料から顔を上げると天羽さんが鞄からクリアファイルに挟まれた一枚のプリントを取り出した。
「……あー、人気者は大変ですね」
無言で眼前に差し出されたプリント。
それを見ておおよその相談内容は理解できた。
生徒会長立候補申請書。
立候補にあたって必要な条件である十五人の推薦署名はすでに記入済みとなっている。
天羽さんであれば推薦人を集めるくらい造作もないだろうけれど、問題なのは署名に記載されているその名前。
現生徒会長、愛染蓮の名前が先頭に記入されていた。
俺の知っている限り、天羽さんは自分から望んでそういう役職に就こうとするタイプではない。何もしなくても勝手に周りに祭り上げられたり期待されたりして結果的にそのポジションに収まるだけだ。
つまり、今回のこれもおそらくは天羽さんの望んだことではない。
署名欄の記載を見るに、現生徒会長がそうなることを望んでいるのだと推測できる。
まぁ、気持ちは分かる。
天羽さんは改めて考えるまでもなく優秀だ。その優秀さは文実においても遺憾なく発揮されていた。
そして、現生徒会が解体され、新生徒会が発足される時期はすぐそこまで迫ってきている。
生徒会長としての最期の仕事を行う中で、こんな優秀な人材を見つけたらそりゃあ勧誘したくもなる。
天羽さんがこれを断るとは微塵も思わない。
期待には感情を後回しにしてでも応えるのが天羽天音という人間だから。
……で、ここからが問題。
天羽さんはこれを相談として持ち込んだ。
天羽さんは生徒会長に確実になる。
それがどれほどの重圧や責任あるものなのか俺は想像でしか語ることはできないけれど、それにしたって今よりもしんどくなるのは目に見えている。
そして、そうなった天羽さんはきっとそれを表には出さずに内側に溜め込むだろう。
きっと、天羽さんはガス抜き役のサンドバッグを所望する。
どこにそれを置いておくのが彼女にとって一番都合が良いかを考えた時に一つ、非常に俺にとって都合の悪い憶測が浮かんだ。
だから、これは「相談」なのだ。
「音無君、私が生徒会長になったら生徒会に入ってほしいんだけど……いいよね?」




