42
音無君は人の心が読める癖に人の理解があまりにも浅いように思う。
私は、実のところかなり音無君を替えの利かない人材として重用している。
それこそ、周囲が持っている天使様の理想像を壊すことがないように細心の注意を払って音無君が隣にいることの理由作りに小さくない手間をかけるほどに。
それくらい、本音をぶちまけても良い相手としての彼の役割は重要で今更手放すなんてありえない。
だから、いい加減に彼は気づくべきだ。
私が隣に置いておきたいと思った以上、逃げる術なんてないということに。
学校を休んだ程度で校外学習を休めると思うなんて生ぬるいし、家から出ない程度で夏休み中接点を持たないで済むなんて考えが甘すぎる。
その程度、私がどうにかできないと本気で思っているのだろうか。だとしたらあまりにも私に対しての理解が浅すぎるし私を侮りすぎだと言わざるを得ない。
「……なんか、ありました?」
そのくせ、たまにこうやって人が隠して見せないようにしようって気を付けてるところを見透かしてくるんだからなおさら質が悪い。
それも超能力とか関係なく、素でやっているのだから本当に質が悪い。
せめて勝手に心を読んで勝手に知っていて欲しかった。そうしてくれたら開き直って全部ぶちまけられたのに。
でも、音無君はそんなことはしない。勝手に流れ込んでくる表層的な思考しか彼は聞かないようにしている。こちらから見せない限り、少なくとも超能力を使っては踏み込んでこない。人の気持ちを大切にする彼らしい考え方だと思う。
「……家族と、何かあったんですか?」
全部、吐き出したくなった。
聞いて、へたくそで何の解決にもならないフォローを入れてほしいと思ってしまった。
そう思ったから、自分がかなり参っているのだと自覚した。
やっぱり家になんて長く居るべきじゃない。
「……なにそれ。もしかして、私のこと好きなの? ごめん、音無君のこといい奴隷だとは思ってるけど恋人とは……」
私は、私のストレス発散のために音無君を利用しているに過ぎない。
献身を求めてはいけないし、これ以上このお人好しを引き込んではいけない。
「……ありがとね」
たとえどれだけ救われたとしても、その一線だけは守らないといけない。




