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どうして人にはない圧倒的なアドバンテージを持っているのにそれをろくに活かさず平々凡々と生きているのだろう。
しばらく音無君を見ていて私はそう思った。
改めて言うまでもなく、他者の思考を読み取れることのアドバンテージは凄まじい。
対人関係はもちろん、応用を利かせれば手に入らないものの方が少ないくらいになんでもできるはずだ。
にもかかわらず、音無君はただただ普通に一般的な男子学生をやっている。
学校には遅刻寸前でやって来て、ダルそうに授業を受けて、たまに超能力で小賢しいことをやろうとして、学校が終わったらその日一番の元気で教室を後にする。
超能力が関わらなければどこのクラスにも一人はいる普通の学生を彼はやっている。
もっとうまくやれるはずなのに。
テストのカンニングなんて回りくどいうえに確実性に欠ける方法は本来必要ない。補習だって嫌なら受けないで済むようにする方法なんていくらでもある。多少人の道から外れた行動をとったところでそれを咎めることができる人間なんて誰もいない。
私の言うことだって音無君はその気になれば本当は無視することができる。
彼の超能力はあまりにも人間関係をめちゃくちゃにすることに向きすぎているのだから。
全部台無しにする覚悟で音無君が動いたなら、私だってさすがにただでは済まない。
でも、彼はそうしない。
だって、私が勉強を教えたというだけでテストのカンニングを自重するような人だから。
もし、私が超能力を持っていたらきっと音無君の何倍もうまく使いこなしていたと思う。
心を読めるから今以上に完璧な人間関係を構築して、願望を満たせるから今以上に完璧な天使様をやれていて、誰でも利用できるから今以上に誰も私に疑問を持たない完璧な環境を構築できていたはず。
だから、超能力を持っているのが音無君で良かった。
愚かで、小物で、臆病者で、小賢しくて──心を読めるのに、人の心を大事にしようとする人だから。
しばらく音無君を見ていて私はそう思った。




