野巫の祭 74
野巫の祭 74
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「もしもし健か⋯」
「あ〜もしもし父さん、ごめんね遅くなって。」
「いや、こっちこそこの前は忙しい時に電話してすまなかったな。」
「そうなんだ、このところ色々とあってね。そうだ、絵莉が父さんのことを心配していたよ。何かあったのかってね。」
「えっ⋯そうなのか。」
「うん、いやね、絵莉からメールが来てて父さんが変なことを気にしてるってさ。」
「そうか⋯心配かけてしまったか。いやな、ここのところ気になることがあってな⋯。」
「何なの?その⋯気になることってさ。」
「いや、大したことでは無いのだろうけど⋯なんだ⋯そのぁ〜人の目が気になるというのか、周りから⋯そのぉ〜どんな、どんな風に観られるのかなぁ〜なんて思ったりしてな。」
ごまかせた⋯かな。
いや、娘にもこちらの動揺は伝わっていたようだし、やはり心配させることになってしまうか。
「そうなんだ⋯。まっ、何となくだけど会って話した方がいいことかな。」
やはり、ごまかせないか。
いずれは話さなければならない時は来るだろう。
しかし、今ではない。
「うん。そうだな。できれば直接会って話したいことなんだが、父さんも少し調べてみたいことがあってな。」
「ふ〜ん。じゃあ心当たりみたいなものはあるの?」
「まぁな。あまり心配はかけたくないが、この歳になるとちょっとしたことでも気になるもんなのかな。今まで気にしなかったことが妙に気になるようになっているんだ。」
「そっか、まぁ原因みたいなものがわかっているならいいかな。詳しくは今度聞かせてもらうよ。」
「そちらも、いや、そちらは忙しいだろうから時間のある時で構わないからな。」
「わかった。その時には調べたことも聞きたいね。」
「そうだなぁ。退屈させないくらいの話は用意するさ。」
「あんまり無理とか無茶はしないでよね。」
「わかってるよ。ありがとうな。」
ごまかせはしなかったが、驚かせるような話は避けられたか。
うちの子供たちは小さな頃から感が鋭いところがあるからな。
それに関しては利与に似たのかもしれない。
しばらく笑い話をしていたが、息子の年齢を考えると仕事では厳しい立場にもなっていると思い
「そういえば、そちらも仕事では大変なんじゃないのか。去年の地震の影響はまだまだ収まりそうにないしな。」
と、仕事場のことを聞いてみた。
「そうなんだ。いや大変なことになったよ。被災地域の復旧復興はもちろんだけど、すべての地域で向こう30年間から50年間の防災に対する基準が見直しになっているからね。建物はもちろん、都市部の再開発や整理、全国のインフラの再検討や河川の補強に補修、今ある建物の耐震強度の確認とかね。しかも全部一斉にやっているから会社の中の組織も組み換えて処理能力を上げていかなければならないし、うちは道路もやっているから急ぎのことばかりでね。」
「そうか、大変だな。引退した父さんが言うことは何も無いが、やれるだけのことはやりなさい。今目の前で起きていることは人生でも最大クラスのものだろうから。」
「そう思う。」
「踏ん張りどころだな。」
「ああ、そうだね。」
「うん。気力だけは落とさないようにするんだぞ。」
仕事を始めてからこれほど困った声を聞くのもなかったな。
毎日遅くまで頑張っているのだろう。
すると、急に声のトーンが変わって話し始めた。
「そういえば、父さん「橋」って作ったことあったっけ?」
橋?なんのことだ。
「橋か?橋は無いなぁ。地下鉄や建物とか設備ばかりだったからな。」
「そうだよね⋯」
「どうしたんだ。そんなこと。」
「いやね、俺今度大きなプロジェクトに参加することになったんだけどさ。」
「すごいじゃないか。」
「それが、ちょっと微妙なんだよね。」
この後、信じられない話を聞くことになった。




