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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 70

野巫の祭 70




何度もかけ直すが、なかなか繋がらない。


30分ほどしてようやく繋がったが、前に電話した双葉町役場に入っている浪江町役場の職員と違って細かい話には対応が難しいと繰り返されるばかりだ。


こちらが知りたいことを伝えて、わかったら連絡して欲しいと伝えても、やはり個々の対応はしかねるという答えだった。


これ以上話していても仕方なさそうだったのと、前に電話した職員の対応が良かったので、情報は少ないかもしれないが私のような者の話でも聞いてくれる相手の方がいいので、礼を言って電話を切った。


携帯電話に履歴が残っているので、そのまま双葉町役場の浪江町役場へ電話する。


こちらも何度かかけ直すことになった。


4〜5回目で繋がり、浪江町の情報が知りたいことを告げると、現在浪江町は立ち入り禁止になっていて住んでいた人たちも福島県内だけでなく各地に避難していることを教えられた。


学校や年代で人が探せないかと訪ねると、名前と年齢と学校名を聞かれて答えた。


相手が復唱しながらメモを書いている雰囲気の途中で


「ちょっとすみません。電話替わりますね。そのままでお待ち下さい。」


と急に言われて、違う人が電話に出た。


「こんにちは、高瀬さんですね。先日は遅い時間に電話してすみませんでした。」」


その声は前回の電話で話を聞いてくれた職員だった。


「はい。高瀬ですが、あなたはこの前の⋯」


「はい。電話を受けた者です。ご連絡ありがとうございます。」


「こちらこそ、憶えていてくれてありがとうございます。」


何と嬉しいことか。

おそらくは膨大な対応作業があるだろうに、こんな年寄りのことを憶えてくれていたとは。


「高瀬さん、あれから調べてみたのですが、高瀬さんのお探しの方々はかなり広範囲に避難されていまして、こちらとしても一括では絞り込めない状況にあります。」


「そう⋯ですか⋯」


「さらになのですが、学校と学年、生まれ年で絞っても女性の方は名字が変わられていますし、男性でも震災以前に転出されている方達に関しては追いきれないでおります。」


何と何と、そんなことまでしてくれてたのか。


「お忙しいのに、私のことにお時間を、大事なお時間を使って頂いてすみま⋯」


言いかけた途中で遮るように


「そんなことはございません。高瀬さんがお知りになりたいことは、きっと大切なことです。こちらが出来ることは何でもいたしますので、一緒に探していきましょう。」


「ありがとうございます。」


正直、私が憶えていることはほとんどないので、学校名と生まれ年だけがたよりだが、それで調べられることも限られるだろう。


それでも間違いがないと思われる人が数カ所にいることは分かったとのこと。


郡山市、いわき市、それと県外では埼玉県の加須市。


一番人数が多かったのは意外にも県外の加須市だった。


そして何よりだったのは、この電話相手が居るのは、その加須市に移った役場だということ。


ここでようやく今日が土曜日だということを思い出した。


「あの⋯今日は土曜日ですが、なぜ電話に出られたのですか。」


「えっ、あぁ、あすの日曜はたぶんお休みをいただきますが、けど日曜も大体はここにおります。」


「そうなんですか。休みもなく大変でしょう。」


「大変は⋯そうですね大変です。ですが避難されている方たちや、いまだに仮設住宅が決まらないでいる方たちにとっては日曜も平日もありませんから。出来ることをどんどんやっていかないと⋯です。」


現場はもちろんだが役場は役場で大変なのだな。


繋がったFAX番号を伝えて、何かわかれば連絡して欲しいと伝えて電話を切った。


10分ほどしたら繋いだばかりのFAXが鳴り、紙が出てきた。






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