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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 69

野巫の祭 69





最後の一口を流し込み、麦茶を飲んで


「ごちそうさま⋯」


写真の方に目を向けて


「本当に、大変な時代になったものだよ。バブルの後片付けがようやく終わりかけてきたところだったのになぁ⋯。それに⋯お前もいなくなってしまった⋯」


しばらくそのままラジオの音をボーッと聞いていたが、洗濯機の終了を知らせるブザーで我に戻る。


「やれやれ、今日は天気が良いから外で干せるな。」


立ち上がり、食器を片付けて洗濯機の蓋を開ける。


中身を取り出し、カゴに入れてベランダへ。


洗濯物を全て干し終わり部屋に戻ると、時計は9時を回っていた。


さて、電話線の連絡と、役場への連絡をしよう。


電話会社に連絡すると、午前中に開線作業に来てくれるという。ありがたい。

FAX本体も届くだろうから役場はその後に連絡しよう。


エアコンと扇風機を止めて窓を開け、部屋の掃除をしていたら玄関の紙飛行機が目に入った。


そうだ、管理人さんに届けなければ。


掃除を済ませて紙飛行機を持って部屋を出た。

一階の管理人室にいくと管理人さんは留守だったが、外を見ると掃除をしている。


「おはようございます。5階の高瀬ですが。」


と、声をかけると手を止めてこちらを向き


「あぁ、おはようございます。今日も暑いですね。どうされましたか。」


振り向いた顔は汗でびっしょり。

外の掃除は大変だ。


「すみませんがね、一昨日なんですが窓から紙飛行機が入ってきまして。上の階か、下の階か子供さんが飛ばしたものではないかと。」


と、手に持った紙飛行機を見せる。


「そうでしたか。わざわざどうも。では管理人室で預かって掲示板に書いておきましょう。」


そう言って紙飛行機を受け取った。


「では、よろしくお願いします。」


「はい。お預かりします。」


挨拶をして部屋へ戻る。


しかし今日も暑い。

そうそう、工事の人が来た時に部屋が暑かったら申し訳ないな。


そう思い、エアコンをつけて部屋を冷やして待つことにした。

外で働く者達にとって、この時期は「涼しい」というのが何より嬉しいことだからな。


部屋が冷える頃に工事の人から電話があり、10分ほどで到着とのこと。

マンションの回線を調べてみたら確かに共同で光回線が入っているので15分程度の作業で終われるのではないかとのこと。


重ね重ねありがたい。

回線申し込みもその場で完了できるらしい。


待つ間も無くインターホンがなり、作業の人が来てくれた。


手際良く開線作業を済ませて、書類の作成に入る時に麦茶を出した。


「トイレのもとになってしまうから迷惑かな?」


と聞くと


「そんなことはありません。ありがとうございます。部屋も涼しくて助かります。」


そういうと麦茶を美味しそうに飲んでくれた。


ピンポーン♪


インターホンが鳴り玄関を開けるとタイミングよくFAX本体が届いた。


サインをして受け取ると


「それ⋯付けちゃいましょうか。」


作業員が言ってきた。


「いいんですか?」


半分期待して答えると。


「繋ぎ方わかりますか?」


と言われて


「わかりません!」


即答した。


作業員は笑いながら箱を開けて、これまた手際良く繋いでくれた。


簡単な説明を受けて、書類に判を押して作業終了。


ありがたいことに一度で作業が済んでしまった。


費用は初回の料金と合算されるので注意するように言われて作業員は帰っていった。

しかも必要の無くなったすべての梱包材まで持っていってくれた。


麦茶一杯で帰したのは悪かったかな⋯。


割り振られた電話番号は、ちょっと覚えづらい数字だったが、誰に教えるわけでもないからいいだろう。


さぁ、これで役場に連絡ができるようになった。

こちらのFAX番号を伝えなければな。


そうか⋯

前に電話したのは双葉町の中にある出張所のようなところだったっけ。


もう一度、二本松市の役所を調べなければ。


いつもの型遅れノートパソコンを出してちゃぶ台に乗せた。


二本松市のホームページを開けて見るが、こちらもまだ混乱しているようで、復興事業計画や、電力会社と政府に行なっている補償問題の情報ばかりが出てくる。


ここに入っている浪江町の役場の番号があったので、こちらの方が情報があるかもしれないので連絡してみよう。





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