表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野巫の祭  作者: 凡栄
43/81

野巫の祭 43

野巫の祭 43




飲みながら話しながらとはいえ鰻は待つものだから、やっと出てきた鰻重に三人とも歓喜の声を上げていた。


おそらく一番高い鰻重なのだろう、米粒が見えないほど鰻が詰まっているとか、焼き色が良いとか、香りがたまらないとか口々に目の前の鰻重を讃える言葉が続いていた。


そのうちに


A「おい!眺めていたって腹の足しにはならねぇからな。温かいうちに食っちまおうぜ」


C「その通りだな。せっかくなんだ、頂くとしよう」


B「ありがたや、ありがたや」


A「おい!仏壇にあげたもんを食べるんじゃねぇんだから変な言い方するなよなぁ」


B「だって今年に入って初めてだもんよぉ〜、ありがたいやな」


A「そんなんは心の中だけで言えよ」


B「心を切るのかぁ〜」


A「大相撲じゃぁねぇや!」


C「おいおい二人とも、食べようよ」


A「こいつが変なこと言うからよ」


C「いいじゃぁないか、食べよう」


B「いよっしゃ、いただきまーす!ハフハフ⋯うん!ハフハフ⋯旨い!」


A「あっ!この野郎!お前のせいで鰻が口に入るのが遠回りになったって〜のに素早いんだからよう」


B「ハフハフ⋯そんなの⋯ハフハフ⋯俺の⋯せいじゃ⋯ハフハフ⋯ねぇや!」


C「ハフハフ⋯おい、旨いぞ!早く食べなよ⋯ハフハフ」


A「ちぇ〜っ!結局俺が最後かよ〜ハム⋯ハフハフ⋯うま〜い!」


B「おい〜トロットロだなぁ〜、これで旬ではないのかよ」


C「んっ?あぁ、さっきの話な。並べて食べたことないからさ、俺にはわからないけど⋯」


A「お前でもわからないのかよ、こんなに旨いのにかぁ?」


B「ハフハフ⋯ハフハフ⋯」


C「まぁな、じゃあさ、今度は冬にまた来ようよ」


B「ハフハフ⋯ハフハフ⋯」


A「それまで生きてりゃ〜いいけどな。あっはっはっは」


B「ハフハフ⋯ハフハフ⋯」


A「おい!おめぇは食ってばっかいんじゃねーよ!」


B「だって、旨いんだもの。しゃーないだろうよ」


C「あははは、いいじゃないか。食べよう」


A「まったく⋯ハフハフ⋯うんまいな!」


B・C「ああ、旨い!」


A・B・C「あははは〜」


友達とはいいものだ。

こんなふうに集まって笑えるというのは羨ましいものだ。

それに引き換え私には⋯


おっと、いけない。

山さんがいたな。

今夜にでも電話をして来週の約束をするとしよう。


人に会って笑いながら食べて飲んで。

今更ながら良いものだな。

仕事を卒業して、利与が亡くなってからこんな簡単なことを忘れていた。

子供達に会うのはもちろん楽しいが、どうしてもまだまだ利与の話をしなければならないから。


さてと、こちらは残りのお茶を頂いてお引けにするとしよう。


湯飲みに手をかけた時に、また並びの三人組の会話が耳に入ってきた。


A「おい、そう言えばさっきは話が途中だったよな」


C「んっ?あぁ丑の日の由来か?」


A「そうよ!それよ!何か他にもありそうだったよな」


C「あぁ、まぁよくある諸説ってやつだよ。これだ!ってのは無くて良いんじゃないかな」


A「どうしてだい?」


C「いわれが何であれさ、鰻が旨いってことに変わりはないわけだし、色々あった方が楽しいじゃないか⋯」


A「色々ねぇ⋯」


B「はい!ごちそうさん!旨かった!」


A「もう食い終わったのかよ!」


B「おまえら話しすぎなんだよ。食べるときは食べるのに集中しなきゃ〜な!」


C「そりゃそうだ。せっかくの鰻だからな」


B「そうよ!色々といわれがあったって旨いもんは旨いんだよ。あっはっはっは」


C「そういうこと、そういうこと。何を言っても旨いという事には変わりがないな」


A「ふ〜ん、そんなもんかね〜。色々と前置きや「うんちく」があった方が楽しいじゃないか。俺らだって鰻重が来るまでは盛り上がってたんだしよ。おかげで旨さも増したってもんだろうよ」


C「それさね!最後に旨いって真実があるからこそ、その前のうんちくも盛り上がるのだしさ。まっ、色々迷わされる方が食べる側は旨さが強く感じられて良いじゃないか」


A「う〜ん。そうかねぇ。それじゃぁよ、旨いって真実が変わらないんだったらよ、迷わされてるだけ損だろうよ」


C「損?」


A「そうだろう。なんて言うかさ、なんかよく分からなくなっちまったけど、分かってる事なら先にその「真実」ってのをよ、味わえた方が良くないか?回りくどいって言うかよ」」


C「それも含めての食べる楽しみだろうさ。確認作業だよ、確認作業。最後に旨いって事を間違いなく手に入れるための。そうさ!駅のホームで駅員がやってる指差し確認みたいにさ、間違いなく旨いんだって答えに確実に辿り着くように皆んなで楽しみながらその時を待つためのお約束ってもんだろうな」


「んっ?」(何だろう?何か引っかかるな⋯)


A「けどなぁ⋯」


B「もう!お前ら考えすぎなんだよ!」


(考えすぎ?)


B「今食ってる鰻は旨いだろ!それが真実なの!集中して食べないからあれこれ考えるんだよ!旨いってことだけ認めてさっさと食っちまえよ!」


C「そうそう。旨いって真実は一つだよな。うん、旨いなぁ」


A「な〜んだか俺だけ迷ってて⋯あれっ?何だったっけ?」


B「いいから食え!食って旨いって認めろ!」


A「うん⋯ハム⋯うん。旨いなぁ!」


B「物事何でも認めちゃえば真実は簡単なんだよ。話を楽しむのは食べる前まで!今は旨いって事だけ認めて集中すればいいんだよ。って俺はもう食っちまったけどなぁ。あっはっはっは」


(何だろう、何か気になる会話だ⋯)








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ