↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/12

入学の前に。

本編の始まりです。

【デルタ王国・謁見室】


 第九艦隊の再編について相談するため、アーレイはデルタ王国を訪れていた。


「みんな元気そうでよかった」


 予定していた仕事を終え、久しぶりに作戦司令室へ顔を出していると、モジュールのアイコンが開き、ジェフから呼び出しが入った。


<アーレイ。仕事が終わったのなら、顔を出せ>


「……嫌な予感しかしないのだが」


 フローレンスが里帰りしていることもあり、無下に断るわけにもいかない。


 仕方なく謁見室へ向かうことになり。


 そして――。


「今年は、アーヴィンの王子がデルタ王立貴族学校へ編入してくるぞ」


「それは大変ですねー」


「フォーレストからも来るぞ」


「人気があって結構なことですねー」


「それから、トレイシーと同い年だな」


「奇遇ですねー」


 いつもの、ノーサイド的なやり取りが続くが、ここでトレイシーの名前が出たことで、アーレイは何となく嫌な予感を覚えた――。


「なので、クーンからも参加させることになったぞ」


「……やっぱそう来たか」


「なんだ。不満か?」


「学費が高いですよねー」


「今回はタダにしてやる」


「クソ狸。レンとの相談は済んでいるのか?」


「お前とやり合うなら当然だな」


「……まあ、いいや」


 こうして、アーヴィン、フォーレスト、クーン。三つの王国から生徒が集められ、結果として、トレイシーを含む五名が、デルタ王立貴族学校高等部へ編入することが決定した。



 ※※※※※



【数ヶ月後・クーン城】


 入学を控えたある日。ステイシーの母親であるフローレンスの元へ、一通の通知書が届けられた。


「まぁ……なんてことでしょう……」


 アイコンを開き、内容を確認した瞬間。フローレンスの顔から、みるみる血の気が引いていく。


 そして頭を抱えた――。


 届いたのは、デルタ王立貴族学校へ入学する五名の入学試験の結果と、成績に応じたクラス分けの報告書だった。


 そして娘、ステイシーの評価とは――。


「F」


 赤く表示されるFの文字に、思わずフローレンスは何度も見返す。が、変わるはずもない。


 一般の家庭であれば――これから頑張ればいい。


 だが――王族は違う。


「Fは……さすがに駄目でしょう」


 王族にとって、成績不振は単なる学力不足ではない。

 それはクーン王家の汚点になりかねない。


 Bなら、まあ問題はない。


 Cなら、少し締め上げればいい。


 だが――。


「Fは駄目よ……完全に底辺じゃない」


 しかも、よりにもよって自分の娘だ――。


 王族としての立場を考えれば、到底笑って済ませられる成績ではない。


「今なら……まだ間に合う」


 入学式までに、何とかしなければとフローレンスは強く思う。


 しかし、彼女一人ではどうにもならない――。


「直ぐにアーレイには頼らない方が良い」


 夫であるアーレイには最後の判断を委ねるしか無い。その前に解決策を先に備えないと、妻として失格だ――。


「……先にアデールとタイラーに相談しましょう」


 こうなればウルトラCの解決策しかない。

 なので自ずと同じ側室であり、子供たちの教育にも関わっている二人の顔が浮かぶ――。


 こうしてフローレンスは、アデールとタイラーに協力を求め、相談に向かうことになる。


【城下町・カフェテリア】


「あらあら、これは……遊んでいたからだね」


「うわぁ〜うちのアイラと真逆だわ(呆)」


 成績表を見るなり、呆れ顔の二人。

 いくら仲が良くても、この時ばかりは恥ずかしい――。


「お恥ずかしいお話ですみません。けど、中等部はこんな成績じゃなかったのよ」


 遊び仲間のアイラとは大違いで、成績の悪さにフローレンスは動揺を隠せない。


「最近、ひたすら剣術に没頭していたみたいよ」

「ああ、だから夜は早く寝てたんだ。ならどうにかなるかな」


 なんて事はない、勉強せずに大好きな剣に打ち込んでいただけだった。


 地頭は元々悪くはない、これならまだ挽回出来る。だが、時間が無さ過ぎる――。


「それでこのまま入学とはならないのでしょ、クーンの学校通わせる?」

「いや……お爺ちゃん(ジェフ国王)が……乗り気で……入れない選択肢は無いわ」


 ことの始まりは、ジャスティン国王からだった。

 息子を入学させるので、クーン王族とも交流を持ちたい――そう連絡が来たのが発端だった。

 ジェフに相談すると孫に会えるのが嬉しくて、学費免除するから是非と言われ決まった話なのだった――。


「ああ……それじゃ断れないのね」


「それでね相談なの……」


「良いわよ、なんでも聞いてあげるから安心して」


 そしてフローレンスは大胆な解決策を述べ始める。

 内容はというと、成績優秀なアイラをステイシーに化けさせ、ステイシーは一般人として入学させ、成績が上がれば最終的に正体を明かすという作戦だった。


「アイラは協力すると思うけど、ステイは大丈夫かしら」


「うふふ、そんなの問答無用に決まっているわ」


「じゃ!偽装魔法は任せて!」


 仲良し側室たちは、フローレンスの悩みを解消する為に、一致団結するのだった――。



 ※※※※※※



【とある研究施設】


 クローン体を生産するとある企業の研究施設。

 トップシークレットと明記されるその部屋には、成人男性より一回りほど小さな人間の脳が、保存液の中で浮いている。


「リリア、必ず君を表舞台に戻すからもう少し待ってて――」


 大きなガラス管の中を漂う脳に向かって、悲しそうな表情を浮かべる一人の少年がいた。



 ※※※※※※



【クーン城・アーレイの執務室】


 コンコン!


「んっ?何だ、ぞろぞろと……ああ、また何か仕出かしたんだな……」


 お茶を嗜み、休憩中のアーレイの元に、入学を控えた五人とアデールを筆頭に母親がぞろぞろと姿を現わす。


 その中で、一番緊張しているステイシーの表情を伺えば、口を開く前にアーレイは溜息をもらす。


「まずは、これをご覧になってください」


 タブレットを差し出し、五人の成績表を見せる。


「こ……これは……酷いな――」


「ステイシーをこのまま入学させるのは、クーン王族の沽券にかかわります」


 母親の言葉に、ステイシーは石化魔法で固まっているかのように微動だにしない――。


(終わった終わった……詰んだ詰んだ……)


 ステイシーは内心で反省の念を、念仏を唱えるように複唱していた――


「……それで、解決策を提示してくれないか」


「はい、アイラをステイシーに偽装、ステイシーは偽装後、一般人として入学。アイラの替わりはI・F・Gのフィグネリア嬢に肩代わりして貰います」


 頭を抱えたまま、解決策を聞いたアーレイは、その途方もない計画を知ると、既に放心状態だった――。


「爺さんの手前、そうするしか無いな。ステイシー、君には条件を付ける」


「はい、何なりと申し付け下さい」


 条件を付けるの言葉で、入学すると分り、一歩前に出たステイシーは一瞬、安堵の表情を浮かべるが、すぐさま力強い目つきに変わる。


 そして――


「三年生になるまでにTOP10に入れ。できなければお前を――王籍から外す」


 シュバッ!


「……お父様!申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」


 とんでもない高い条件にも拘らず。潔いステイシーは、スライディング土下座を決めるのだった……。

宜しければブクマ評価、感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。