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貴族学校編プロローグ。

星団最強シリーズのスピンオフになります。

 貴族学校編はフローレンスの娘、ステイシーが主人公の物語。

 それに伴い時代設定を少し遡る事になります。


【星団統一5年後・クーン城客間】


「ポコちゃん譲ってくれてありがとう。今日は排卵日直前だから絶好のチャンスなの」


「頑張るナノ。応援しているナノ」


 ベビーラッシュもようやく落ち着き、政務に追われていたフローレンスも、ようやく子作りをする決心を固めていた。


 他の嫁たちが気を利かせ、今夜は誰もアーレイを呼ばない。


 そんな気遣いが、かえって彼女の胸を高鳴らせる。


「レン、今日は思いっきり甘えちゃいなさいよ、アーレイ成分をたっぷり補給すれば、赤ちゃんなんてすぐ出来るわ♡」


「も、もうフィーったら……」


 真っ赤になって俯くフローレンスを見て、フィリーサは楽しそうに肩を震わせた。


 人工授精なら、ほぼ確実に子供を授かれる時代。


 それでもフローレンスは、その方法だけは選びたくなかった。


 愛する人と寄り添い、互いの温もりを感じ、その果てに授かった命だからこそ、何ものにも代え難い宝物になる。


 そんな想いを胸に秘めながら、彼女はそっと胸へ手を当てた。



 ※※※※※※



 【 10ヶ月後・クーン城内医務室】


「いよいよね……」


 医療用カプセルの中で、フローレンスは大きく膨らんだお腹を優しく撫でていた。


「無事に生まれてきてくれるのね……私の赤ちゃん」


 普段は王妃として国政を支え、常に凛とした姿を見せている彼女だったが、今だけは一人の母親だった。


 間もなく出会える我が子を想い、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。


「安心してください、フローレンス様。間もなく元気なお子様のお姿をご覧いただけますよ」


 医師の優しい声が室内に響く。


 クーン王国の医療技術は星団でも最先端を誇っている。

 母体への負担を極限まで減らす医療用転送装置により、出産時の危険も大幅に減少していた。


 それでも――。


「レン、そんなに心配しなくてもいいよ、フィリーサもいるから安心して」


 フローレンスにとって、この瞬間の緊張は技術では消せないものだった。

 アーレイが寄り添い、不安を打ち消してくれる。


「うん、ありがとうアーレイ……」


 初めて我が子を迎える母親としての不安と、それ以上の喜びが入り混じていた――。


「それでは始めます」


 医師が装置を起動させると、淡い光がカプセルを包み込み、次の瞬間――。


「うっ――」


 フローレンスが一瞬、苦痛に見舞われた瞬間――新生児用カプセルの中に、小さな命が姿を現した。


「ふぇ……ふぇ……ふぎゃあぁ……」


 温かな羊水の中から突然外の世界へ出た赤子は、初めて触れた外気に驚き、泣き声を上げる――。


 その小さな身体は、すぐに母親の胸へと抱かれた――。


 「……」


 先ほどまで元気いっぱいに泣いていた赤子は、まるで母親の温もりを理解したかのように、静かに泣き止んだ――。


「……嗚呼、私の赤ちゃん――」


 フローレンスの瞳から、自然と涙が零れる。腕の中にいる小さな命。自分とアーレイが授かった、大切な宝物。


「あなたの名前は……ステイシーよ」


 優しく語り掛け、その声は母親としての想いが込められていた――。


「産んでくれてありがとうレン。君にそっくりだね。きっと綺麗な女の子になるよ」


 アーレイはそっと二人を包み込むように寄り添う。

 金色の髪は、幼い頃のフローレンスを思わせるほど、よく似ていた。


「ごめんね……待たせちゃったね、アーレイ」


 自分が母になる日は少し遅れてしまった。彼女はそれをずっと気にしていたのだ。


 しかし、アーレイは優しく首を横に振る。


「何を言っているんだ。子供は天からの授かり物だよ。遅いなんてことはない」

「ありがとうアーレイ……」


 母親に抱かれ、スヤスヤと眠るステイシーを見つめながら微笑む――。


「それに、同じ年頃の兄妹たちがこれからたくさん生まれてくる。きっと賑やかになるよ」


 ステイシーを始め、今年は多くの新しい命が誕生する予定だった。


 来月にはマギーが双子を。


 その翌月にはタイラーの第二子が。


 さらに数ヶ月後には、レティも初めての子供を迎える。


 これからクーン王国には、次の時代を担う子供たちが増えていく。


「うふふ……そう言ってくれると安心するわ。ありがとう……アーレイ」


 フローレンスは幸せそうに微笑んだ――。


 だが、初産という大きな負担は、転送技術を使っても楽ではないのだろう。


 安心した瞬間、張り詰めていた力が抜け、ステイシーをアーレイへ預けると、穏やかな表情で瞼を閉じた――。



 ※※※※※



 【5年後・クーン城】


 5人の子供達は順調に育ち、どこかに行くとしても遊ぶにしても、常に一緒に行動する仲良しだ。

 4歳を迎えた辺りから当然、外遊びが多くなり、野山を駆け巡る事になる。


 「姫姉ちゃま、危ないから降りてくだち、ちゃい」


 木によじ登るステイシーに注意を促すのは、タイラーの第二子で長女のアイラだ。

 ライトグリーンの髪色と金眼を持ち、緊張すると舌を噛むタイラー直系の遺伝子は健在らいし。


 「だってアデールはもっと高いところまで登っているのよ、負けられないわ」


 木によじ登るステイシーは負けず嫌いの性格なのか、遊び相手であるアデールを常日頃からライバル視している――。

 

 とはいえ森の番人であるエルフ族の跳躍力は人間の能力を軽く凌ぎ、勝てることは決してないが、この努力が後に役に立つことになる。


 「エッタには絶対無理」

 「ティータはそんな所には登らないの」


 真っ白な髪色を持つ双子のパルエッタとパルティータは、目を凝らしても見分けがつかないほどそっくりだ。


 顔立ちはマギーの若い頃そのまんまのウサギさんで、レスプ族の特徴である存在感が超希薄だ。

 一旦目を離せば見失ってしまう――。


「アイラも、にょぼるの」


アーレイの嫁は皆美顔だ。

全員の親が美形なので男を虜にする未来はそう遠くないだろう――。


 ダーヴィド「ステイに負けたくない!」


 レティの息子ダーヴィドは、ダークオレンジ色の髪色をもち、美顔のレティと、アーレイの塩顔が混じった少し少女っぽい細身の男の子だ。


 しかしその風体に似合わずステイシー同様に勝ち気で、剣の代わりに木の枝を腰に刺し、将来剣士を目指しているのが一目でわかる――。


「それじゃ今日から暗殺術を教えるわ」


 4歳まではフローレンスが子育を行い、政務に復帰するとを入れ替わりで次はレティが代わりに務めを果たすことになる。

 元凄腕暗殺者の彼女は子供たちにその技術を惜しみなく伝授するつもりだ。


 「レスプ族に暗殺スキルは重要」

 「ステルスウサギで活躍するなら必修」


 双子の母マギーは、訓練を受けてなくても暗殺者の素質を持ったバグ級ステルスウサさんだ。


 アーレイが星団に呼ばれて覇者になるまでの活躍を綴った「3星団統一戦記」にて、母親の活躍を知った2人は躊躇うことなく受講するみたいだ。


 ちなみに息子のダービッドは剣士を目指しているのか、暗殺には興味が無い。

 アイラは魔法の方が興味をそそるのかアデールに教えてほしいと頼んでいた――。


「ステイシーはどうするの、身を守るためには必要よ」

「うーん、打撃系は男の子に敵わないから受けようかな〜」


 勝ち気な性格は言い方を変えれば、頑張り屋さんと同義語なので、女の子が教わる護身術としても最高と考え教えを乞う事にしたらしい。

 それに魔法も教えて貰いたいのかアデールに頭を下げると、それが気になったのかパルエッタとパルティータも同じように入門する事に……。



 ※※※※※



 【更に2年後・クーン城大広間】


「今日から全員で初等部で学ぶのよ」

「はーいママ」


 5人兄弟はレティを筆頭に、母親たちの愛情がたっぷりと注がれスクスクと育つ。 

 気がつけば日本で言う小学校にあたるクーン王立学校が、これからの学び舎になる。


「お父様が壇上から見守ってくれるので、みんな元気よく張り切っていきましょうね」


 今日は入学式当日で、正装姿の5人兄弟は母親に手を引かれシャトルに乗り込む。

 父親のアーレイさんは祝辞を述べるためにすでに学校入りしているので、壇上から我が子の姿を眺める事になっている。



 ※※※※※



 <<クーン王立学校>>


 クーン王立学校は身分に関係なく入れる大学までの一貫校で、初等部と中等部はトコロテン方式で授業料は無料。

 高等部からは保護者の収入応じて学費が決まり、さらに成績に応じてクラス分けが行われ、偏差値でいう60以上のクラスは全てが無料になるという特典付きだ。

 なので貧しくても勉強さえ出来れば優雅な学校生活を満喫できる実力主義の学校だ。


 「君らが今日から入る初等部は、勉強をしながら元気いっぱい遊んでくれればそれでいい、6年間仲良く過ごすことを願う」


 祝辞を述べるのは王立学校設立者のアーレイ名誉校長だ。初等部では難しい話は理解不能だ。

 なのであっさりと挨拶を終えるとさっさと壇上を降りてしまう。


「それでは皆さん身体測定と魔力測定を行いますわよ〜」


 本日の案内役は、ミストラルブルーのドレスを身に纏う豊穣の女神ジョリアーナ嬢だ。相変わらずムチムチボヨンの豊満な身姿は1ミリも変わることなく、保健指導員の出立のナーと共に新入生の案内役を引き受けてくれる。


 ステイシー 「魔法適性検査はさっさと済ませて、剣技のテストを受けたいの」

 ダービッド 「僕は剣技のテストで一番を取るんだ」

 ナー「活発なお子様たちですわね、さぁ皆さん私についてきてくださいね」


 剣技に関しては腕力の違いでダービッドに一歩及ばず、ステイシーは2位の成績を収める。

 二人とも5精霊の加護を貰い、闇以外の魔法適性があることが判明した。


宜しければブクマ評価お願いします。

星団最強シリーズの続編になりますが、コンテスト応募用に単独投稿してあります。

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