第八話 デートって何??
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一週間後、六葉さんとの生活のお陰で幸せを感じることができて、相変わらず辛い仕事に対しても以前よりはストレスを感じておらず、俺にとっては平和な日々を過ごせることに感謝しながら朝の身支度を済ませた。
(もう六葉さんとの同居生活も二週間か〜)
この二週間、六葉さんは毎日家事をこなしながら日中の日雇いバイトや家でできる内職、パソコンを使ってできる臨時バイトを掛け持ちして頑張っており、相変わらず、ネットで色々な勉強もしているようだった。
たまに忙しそうだが、辛そうな雰囲気は無くむしろ楽しんでいる様子だ。
しかし、彼女自身で初めて稼いだバイト代を俺へのプレゼントであるネクタイを買うために使ったり、あとは六葉さん自身が使う生活必需品ばかりに充てていた。
(自分がほしい物は無いのかな?自分自身よりも俺のことを優先してくれて嬉しい反面、申し訳ないというか、心配なんだよな⋯六葉さん、楽しく過ごせているのかな?表面上、表情は明るいし元気そうに見えるけど、他人の本心はわからないしな⋯)
女性といえば、と言うと今の時代はアウトかもしれないが…しかし、個人的にはやはり、服やアクセサリーといった装飾品を好み、お金を掛けるイメージがある。
しかし、六葉さんは激安の服を買って着ていた。
六葉さんのセンスが良いからか、もしくはファッションについてもネットで勉強したからか、コーディネート自体はオシャレではあった。
ただ、どうしても…流石に少し安っぽい。
だからといって馬鹿にしているわけではなく、ただ彼女がそれを不満に思っていないかが心配だった。
(たぶん、もっと綺麗な服を着ている方が六葉さん自身の気分も上がる…よな?女心は分からないけど…)
自分自身ももっと色々な服を着ている六葉さんを見てみたいという自分勝手な願望は誓って少ししかない。少ししか。(本当は凄くある)
光熱費や家賃や食費といった大半の生活費は俺が出しているとは言っても、六葉さんはそれすらも自分の分は自分で出そうと必死に働いている。
家事をしてもらい、可愛さで癒され、プレゼントまで貰った。
(六葉さんは遠慮するだろうけど、俺もお返しがしたいな。お互いに気を遣いすぎない程度に…)
時計に目を向けると、もう家を出なくてはならない時間だった。
「…六葉さん、もし良ければ今度の日曜日にショッピングモールに行かない?色々な物が売っているから人間について知れると思うし、きっと楽しいよ」
ネクタイのお礼については、あえて口にしなかった。六葉さんに気遣わせず、気楽にショッピングモールを楽しんでほしいからだ。
六葉さんの表情がパァッと明るくなった。
「是非、行きたいです!」
「じゃあ、決まりだね。いってきます!」
「はい、いってらっしゃい!」
ニコニコと手を振って見送ってくれた。
まだ一緒に出掛ける約束をしただけなのに、凄く喜んでくれているようだ。
俺は、いつも通り自然と家を出て会社に向かおうとアパートの共通廊下を歩いている途中で…ふと、ある重要なことに気がついた。
“一緒に出掛ける”って…二人きりで?美女…六葉さんと?優しさと可愛さのあまり、心臓が定期的に過敏な反応をする相手と?
(………これってデートじゃねぇえええええええ!?)
なぜ、最初から気がつかなかったのか。自分で提案をしておきながら、俺はとてつもなく焦り始めた。
(いや、デートではない!少なくとも六葉さんはそうは思わないはずだ!ただ二人で買い物をするだけ!そう、数回、スーパーに買い出しに二人で行ったのと同じ…なわけがあるかぁあああああ!!俺にとっては違う!どうしよう!?デートって何を着れば良いんだ!?スーツ!?なわけないよな、あー駄目だ、頭を冷やしてからまた考えよう!)
荒ぶる心中を深呼吸で落ち着かせながら、会社に向かった。
堀田雄二、三十三歳独身、美女と驚愕の初デート!
約束の日曜日の、相変わらず穏やかな天気の午前。
俺はそんな絶好のデート日和に少しプレッシャーを感じ、元々緊張していたが、より緊張しながら身支度を整えていた。
多少、迷走はしたが約束をした日から今日までの数日間で何とか冷静にデートプラン等をまとめることができた。
(まぁ、デートではないのだけど…女性と二人きりの、しかも久しぶりのマトモな外出だしな。特別であることに変わりはない!)
ちなみに、俺が勝手に浮かれてデートプランを考えただけで、六葉さんに頼まれたわけではない。慣れないことだったので人よりも無駄に時間はかかってしまったかもしれないが、その分、六葉さんが楽しめるようなプランを完成させたつもりだ。
「雄二さん、私、お出掛けの準備ができました」
着替える際にお互いが見えないように俺は洗面台の前、六葉さんは居間で身支度を整えていた。
「俺も丁度できたよ。それじゃあ、忘れ物は無いかな?」
六葉さんは、水色のショルダーバッグを開けて中身を確認し、周りをキョロキョロと見渡してから、改めて俺のほうを向いた。
「はい!大丈夫です」
「俺も大丈夫そう。じゃあ、出掛けようか」
家の鍵やスマホ、財布等が自分の鞄に入っているのを確認しながらそう言って二人で玄関に向かった。




