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第十二話 食事とは

無断転載・複製・商業利用禁止。

本作品の著作権は作者個人のものとする。

本作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは関係御座いません。

「ん〜⋯!美味しいです!」

洋服店では、想定外の反応をされてどうしたら良いものかと慌てたが、その後俺が事前に予約していたショッピングモール内の和食料理屋で、六葉さんは定食の豚汁を嬉しそうに食べていた。

(味噌汁とか、温かい汁物が好きだと言っていたからな)

とても大切そうに少しずつ豚汁を食べており、豚汁を口にするたびに幸せそうに微笑みながらモグモグとしている六葉さんがとても可愛い。

(ちょっと小動物みたいだ)

安直な表現かもしれないが、少しずつ食べる可愛い姿が小鳥のようで愛らしい。

豚汁以外の、主食の米や主菜の焼き鮭等の食べっぷりは普通に良い。細い体なので少し心配していたが、その様子のみからすると健康的だ。

(高級料理店でなくても喜んでもらえて良かった)

そう安堵して呑気に鴨蕎麦を食べているこのときの俺は、後に会計で六葉さんともめることになるとは微塵も思ってもいなかったのであった。

食事を終えた後、レジの前で会計をしようと財布を取り出した俺の横で、六葉さんが「あっ私も⋯!」と言いながら鞄から素早く財布を取り出した。

「俺が勝手に予約したんだし、俺が払うよ。六葉さんはまだ働き始めたばかりだし、外食代まで出すのは流石に大変でしょう」

「い、いえ!家賃や光熱費代を払っていなのでなんとか⋯!あ、もちろん、私も収入が安定すれば家賃などもお支払いしますが⋯いえ、お話が脱線してしまいましたね。とにかく、公平に!割り勘で!」

「いや、初のお出掛け記念ってことでさ!俺がお祝い⋯?で出したいんだよ!」

「でもっ」

「なら、次は割り勘にしよう!今回は俺に格好つけさせてくれない?」

「⋯!わ、わかりました⋯ありがとうございます」

六葉さんは何故か顔を赤らめて俯いた。

(あ、あれ⋯?なんか、洋服店の時とデジャブだな⋯俺、もしかして今日ずっと空回っている⋯!?)

待たせてしまったのが悪かったのか、レジの店員さんからの生暖かい視線を浴びながら、俺は悶々としながら会計を済ませるのだった。

店を出ると、入店の際に自然と離していた手を再び繋ぎ直そうと言い出すのが無性に恥ずかしくて、店の入口の横で黙って立ち止まってしまった。

(はぐれないようにまた手を繋ごう、と言うだけなのに⋯あ〜我ながら情けない!)

「⋯雄二さん」

「っ!どうしたの?」

情けない胸中を見透かされないように、平静を装って返事をした。

何かしらの用があって、それを言われるのだろうと無意識に、必然的に耳を済ませた瞬間、左手にほど良い温かさを感じた。

「______!」

「はぐれないように、また手を繋ぎます⋯よね?」

羞恥で紅潮した頬、それ以にの至高の明るさを放つ笑顔。羞恥心を誤魔化すかのような、少しわざとらしい悪戯っぽい声。

「もちろん⋯六葉さんはまだスマホ、持っていないからはぐれたら大変だしね」

俺は少し不自然に堅い声で、六葉さんと同じように羞恥心を誤魔化すように言った。

(俺達、いつもお互いに照れ隠しをしている気がする⋯俺は美女と話慣れていないし、六葉さんは人間とコミュニケーションを取るのが慣れていないからだろうな)

昼食を終え、ショッピングモールを一通り周り終えた俺達は、行きと同じく電車で帰宅しようと外に出るべく、モール内の一階を歩いていた。

「あっ⋯六葉さん、花屋があるよ。午前中に通った時は気がつかなかったなぁ」

他の店らに比べてスペースの狭い花屋は、こぢんまりとしながらも豪華な花々が美しい。

(葉女的にどうなんだろう⋯植物が好きみたいだし、喜ぶよな?前に、野菜も共食いにならないって言っていたし)

「折角だから、買って______」

「⋯」

直感的に違和感を感じ、言葉を途中で止めて六葉さんを見下ろすと、その美しい顔にあるのは、いつもの明るい微笑みとは異なっていた。

微笑んではいる。

しかし、どこか哀しげなような⋯ほんの少し、暗い笑顔だった。

「⋯六葉さん?もしかして、花屋は嫌いだった?」

「あっ、いえ⋯!ここのお花屋さんは好きですよ」

「そう?植物が可哀想とか、何か⋯」

「ここのお花さん達は皆さん、お店の方にしっかりお世話をして頂けているようで、元気そうですから大丈夫ですよ」

「確かにいきいきとしいるね。綺麗だし」

(何だ、さっき表情がいつもと違うように見えたのも気のせいだったのかもな。今はいつも通りニコニコしているし、声も明るい)

「⋯先ほど、植物が可哀想かとお気遣いくださったようですが⋯人間さんがこうしてくださらなければ、種の保全が叶わなかったお花さんもいらっしゃったでしょうから、むしろ私は感謝していますよ」

本当にそう思っていそうな、優しい笑顔で六葉さんはそう言った。

(環境汚染とか、日本が山や丘を切り開いて住宅街を作るのとかをテレビのニュースとかで見ても、普段から人間に対する恨み言は六葉さんの口からは聞いたことが無いし⋯俺の考えすぎだったな。特に気にしていなさそうだ)

「帰りましょうか。今夜はハンバーグですよ。初めて作るので楽しみです!」

花を買うつもりだったが、六葉さんが楽しそうにそう言ったので、俺は自然と頷いて、帰宅しようと二人で再び歩き始めた。

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