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【錬金術師の再臨】〜錬金術が消えた世界で、わしの知識だけが規格外だった〜  作者: 新生浮世
間章 長旅前の準備編

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第89話 領主として流石じゃの

 翌朝、宿の朝食を済ませ、領主邸へ向かう。


「こちらはレーベンの領主邸になります。

 本日、ご約束されておりますでしょうか?」


 門番にそう止められたが。


「以前、闇ギルドに関わった冒険者が訪れた。

 そう伝えてはくれぬかの」


 わしがそう言うと門番は、その件を知っておったのか顔色を変えた。


「し、少々お待ち下さい!」


 門番が屋敷へと駆けて行った。


「すぐに会えますかね?」


 アリアがそう口を開いた。


「屋敷におるなら会える可能性は高いが、

 まぁ会えぬなら今日約束をしてもらえばよかろう」


 そう話しておったら門番が戻ってきた。


「お通ししてもよいそうです。

 お入り下さい」


 そう門番に通され、アリアはホッと息を吐いた。


****


 屋敷の応接室へと通されたわしらは、ソファへと腰掛けた。


 ほどなくして応接室の扉が開き、奥からエルンストがやってきた。


「話を聞いて君らだと思っていた」


 そう言いながらエルンストは対面の椅子に座る。


「久しいな」


 エルンストは一拍置き。


「あれからこちらへ寄って報告に来てもらえると思っていたが──」


 そういえば、王都からの帰りは強行軍じゃったしの……。


「色々あって寄れんかったんじゃ。

 申し訳ないの」


 エルンストはフッと口角を上げた。


「まぁ、忘れていた……という訳ではない、としておこう。

 ボニフ殿、アリア殿、ドラン殿。

 そちらの方は存じ上げんが」


 エルンストはわしらを順番に流し見て、そう言った。


「以前、わしらの名を名乗ったかのぅ」


「闇ギルド、そして以前のラスティンの件で既に知っていた。

 それにレオポルト公爵から王都での顛末は聞いている。

 随分と動き回っていた事もな」


 そう言ってエルンストは椅子から立ち上がり、


「王国の誘拐事件を解決してくれて、改めて感謝する」


 そう言って頭を下げた。


「あ、頭をお上げ下さい!」


 アリアは慌てて立ち上がり、そう言った。


「貴族ってのはもっとこう、偉そうにしてると思ったが……」


 ドランはそう口にした。


(現実主義者でありながら、貴族としての礼節は弁えておる)


(いや、エルンスト殿の場合は領主としての立場かの)


 わしはエルンストという貴族の評価を一段階上げた。


 フレインは口を挟む事もなく、状況を観察しておるようじゃ。


****


「で、本日はどう言った用件だ?

 まさか本当にその報告に?」


 わしは首を振った。


「報告もあるが、今日は別件じゃの。

 ちと頼みたいことがあってな」


 レオポルト公爵との出会い。

 バルトロメオの裏オークションについて。

 アルバート侯爵の関わりと国外逃亡。


 これらについて報告をした後、

 教団のことは伏せて、帝国への入国が必要であることを伝えた。


「ふむ。帝国への入出国許可証か……」


 エルンストはしばし思案に耽るように下を向いた。


 やがて顔を上げわしらの方を見る。


「確かに私であれば君らの許可証は発行できる」


 わしらは顔を見合わせた。


「では──」


 そう言いかけたところでエルンストは言葉を遮るように手を向けた。


「しかし、今の帝国の情勢は厳しい。

 入国審査もだが、私が得た情報によると帝国内部がだいぶきな臭い」


 目を細めて、そう言った。


「まぁ王国の派閥争いも似たようなものだが」


 エルンストは自嘲しながら小さく呟いた。


「帝国内部が、というのはどういうことですか?」


 アリアがそう尋ねる。


「正確なことは言えん。

 これは情報統制というよりは私自身、正確なことが分からんという意味で、だ」


「人間社会の政治は複雑と聞きますが、まさにそういうことなのでしょうね」


 フレインがそう一言でまとめた。


「エルフのように種として一つの家族のような関係であれば、このような事にはならんのだろうがな」


「我々のことも、ご存知なのですね」


 エルンストは頷く。


「細かいことは知らんが、大まかにはな」


 エルンストは続ける。


「まぁ帝国の内情の細かい事に関しては、未だ掴めておらん。

 だが、厳しいのは確かだ」


「私が発行できる許可証でどこまで君らが帝国で自由に移動できるかは分からん」


「ふむ、じゃが発行自体は可能なのじゃな?」


 わしがそう聞くとエルンストは頷いた。


「君らには恩がある。私ができる範囲は協力する。

 なので──」


 エルンストは立ち上がり、使用人を呼び何かを指示した。


 使用人が応接室から出て行き、しばし待つと羊皮紙とペンを持って、エルンストへ渡した。


「私からレオポルト公爵へ君らの許可証を発行して貰うよう取り計らう。

 私ではなくレオポルト公爵なら、恐らく帝国内を自由に移動できる程度の効力になるはずだ」


「そこまで、していただかなくても……」


 アリアはそう言うが、


「これは私の感謝の気持ちとして受け取ってほしい」


「感謝する」


 そこまで言われ、わしは素直に受け取る事にした。


「早馬を出す。君らが直接王都へ出向くよりは早く許可証が届くはずだ」


「それはありがてぇ」


 ドランが言う。


 エルンストは笑顔で応える。


「レオポルト公爵から返事が来たらギルドへ使いを出す。

 三日から五日はかかるかもしれんがギルドへ寄って報告を待っておいてくれ」


 エルンストからの手厚い対応を受け、わしらは改めて礼をした。


「それまでレーベンの街を楽しんでくれ。

 名物の腸詰め料理は絶品だぞ」


「そう言えば前来た時に食べた腸詰めは美味かったの」


 わしがそう言うとエルンストは嬉しそうに破顔した。


****


 屋敷を出てレーベンの街並みを通る。


「なんとかなりそうですね」


「うむ」


「エルンストに感謝だな!」


「あの領主は領民を大事にする心が見えました。

 その部分ではエルフとしても敬意を評しますね」


 わしらはそれぞれ口にしながら、一度宿へと戻った。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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