第87話 なんでもいいと思っておったが
翌日。
レーベン行きの乗合馬車の護衛依頼を受けるためにギルドへ向かう。
ゼノスがミレイへ話を通すと言っておったな。
ギルドへ入り、そのままミレイの列へと並ぶ。
「おはようございます。本日はどうされますか?」
いつもの調子で、ミレイは淡々と言う。
「ゼノスから話は来ておらんかの」
わしがそう言うと、ミレイが一枚の羊皮紙を取り出した。
「レーベンまでの護衛依頼ですね。
間違いないですか?」
「うむ」
わしがそう返事をすると、ミレイが即座に対応する。
が、途中で動きが止まった。
「ボニフさん、アリア、ドランさんは臨時パーティー中ですね」
ミレイがそう告げる。
「何か問題があるのかのぅ」
わしがアリアとドランを見る。
「ずっとソロだったから分からんぞ」
「恥ずかしながら私も……」
フレインは昨日登録したばかりじゃしな……
わしはミレイの方へ視線を送る。
わしの意図が通じたのか、ミレイが説明を始めた。
「護衛依頼は“臨時パーティーでは受けられない”規定があるんです。
Bランク以上がいない場合に限り、ですが」
「ふむ……理由は?」
「簡単に言えば“信用”ですね。
Cランク以下の寄せ集めだと、連携不足や……最悪、逃げ出す例もあります」
「なるほどの」
「ですが“正式なパーティー”なら、責任は全員で負う形になります。
なのでギルドとしても安心して任せられるんです」
「で、わしらはどうなんじゃ?」
「ドランさんがCランクですので、正式パーティーに切り替えれば問題ありません」
そこまで説明を受けて、わしは三人へ振り返った。
「まぁ、どうせこの後の長旅も一緒じゃろうし問題なかろう?」
「私は問題ありません」
フレインがそう言う。
「むしろ、なんで今までしてなかったのかっつー話だけどな」
「……というより、私たち一緒に行動するようになってから、一度もまともな依頼は受けてませんよね」
アリアが、思い出したように言った。
「受けたじゃろ。
森の調査と猫探し」
「あれは……まともではないです」
「確かにな……」
ドランは思い出しながら呟いた。
「興味深いので旅の途中にでも、その辺りを聞かせてください」
「おぅ、いくらでも聞かせてやる」
フレインの言葉に、ドランは嬉しそうに言った。
「と、言うことで正式にパーティーとして受注するぞい」
わしはミレイに向き直して、そう言った。
「かしこまりました。登録しておきます──
が……」
「「が?」」
アリアとドランがハモる。
「パーティー名は、どうされます?」
****
護衛依頼を開始するまでにはまだ時間があったので、わしらは併設された酒場のテーブルを囲むように座った。
「で、どうすんだ?パーティー名」
「いや、なんでもよいじゃろう」
「同意します」
「いや、よくないです。
フレインさんも同意しないで下さい……」
「もし王都でミナにパーティー名を呼ばれて、ダサい、なんて言われるのは……泣くな……」
ドランがそう言うと、アリアは力強く頷いた。
「そうかのぅ。重要なのは名前じゃなくて中身じゃと思うんじゃが……」
「えぇ。なにを成し遂げたか、ですね」
わしとフレインは意見を一致にした。
「それに私達は教団の真意を探り、必要ならそれを阻止する旅に出ます」
「それにアリア殿の妹君を探す旅でもあるのです。
パーティー名はそこまで重要ではないでしょう」
フレインがそう言うと、アリアはグッと体を固まらせたが、
すぐに元に戻った。
「危ない……ボニフさんとフレインさんのコンボは危険です。
危うく納得しかけちゃいました」
「とはいえ、そう言われれば確かにそうだよな」
ドランが納得したように空を見上げた。
「ドランさん納得してはいけません!
ミナちゃんに笑われてもいいんですか!?」
「それは困るな……」
アリアの言葉にドランはまたも、意見を変えた。
「それにですね……」
アリアは続ける。
「もし珍妙な名前にした時に、長老様からそのパーティー名で呼ばれたらどうです?」
フレインは少し固まり
「それは……ちょっと嫌、ですね」
「ボニフさんも、長老様に笑われるかもしれないですよ?」
わしはそう言われ、想像した。
(ファルネスが大声で笑いながら、「お前のパーティー名、ダサすぎるだろ!ぶあっはっはっは!いやーワインが美味い!」)
なんというか……
「無性に腹が立つのぅ」
「でしょ! なのでパーティー名はちゃんとした名前にします!」
アリアがテーブルをドンと叩いて勢いよく立ち上がった。
その音に周囲の冒険者がこちらを見るが、すぐに視線は散っていった。
****
「《竜人の槍》とかどうだ?」
「それドランさんだけのパーティーです」
「《精霊の矢》とかですかね」
「パーティー全員がエルフだったら良かったですね」
「《四人で長旅》……」
「それはやる事であってパーティー名じゃないです。
ネーミングセンスも最悪です」
ドラン、フレイン、わしと候補を挙げたがアリアのツッコミが止まることがない。
しかし、わしにだけ辛辣すぎぬか?
「そういうアリアはどんなのがいいんだ?」
「そうですね……」
ドランが聞き、アリアはしばらく考える。
「《桃色の子猫と頼れる騎士達》と言うのは……」
「「「却下じゃ!」だ!」です!」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
よろしければブックマーク・評価をいただけると励みになります。




