第36話 家族というものは、悪くないのぅ
「ミナ……ミナ……!」
ミナの母は、泣きながら娘を抱きしめ続けていた。
その肩は震え、声は途切れ途切れで、
どれほどこの日を願っていたかが伝わってくる。
「おかあさん……!
ミナ、ちゃんと……いきてた……!」
「ええ……ええ……!
もう……もう離さないから……!」
周囲の客も足を止め、温かい視線を向けている。
アリアは涙を拭い、ドランは鼻をすすりながらそっぽを向いた。
「……よかったな、ミナ……ほんとによ……」
(家族というのは、こうも強い絆を持つものかのぅ)
わしは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
「おい、どうしたんだ!? 何の騒ぎだ!」
店の奥から、慌てた声が響いた。
宝飾店の扉が勢いよく開き、立派なスーツを着た男性が飛び出してくる。
ミナの母が涙を拭いながら振り返った。
「あなた……! ミナよ……ミナが……!」
「……え?」
男性──ミナの父は、ミナを見た瞬間、完全に固まった。
一歩も動けない。
目を見開き、口を震わせ、
信じられないという表情のまま動いておらぬ。
「……ミナ……?」
「……おとう……さん……?」
ミナが小さく手を伸ばす。
その瞬間、父の表情が崩れた。
「ミナァァァァ!!」
父は全力で駆け寄り、ミナを抱きしめた。
「ミナ……! ミナ……!
すまん……すまん……!
守れなくて……すまん……!」
「おとうさん……ミナ、だいじょうぶ……!」
ミナは父の胸に顔を埋め、
小さな手で服をぎゅっと掴んだ。
その姿に、アリアはまた涙をこぼし、
ドランは腕で目元を隠した。
「……よかったのぅ、本当に」
****
しばらくして、両親はようやく落ち着きを取り戻した。
「ミナ……どうやって……どうやって戻ってきたの……?」
「えっとね……
ドランと……
アリアおねぇちゃんと……ボニフと……
いっしょに……」
ミナは一生懸命説明しようとするが、
言葉は断片的で、ところどころ曖昧だ。
それでも両親には十分だった。
「……あなた方が……ミナを……?」
ミナの母が、涙で濡れた目でこちらを見る。
「うむ。たまたま縁があっての。
ミナを保護し、ここまで連れてきた」
「たまたま……?
いえ……そんな言葉では片付けられません……!」
ミナの父が深く頭を下げた。
「本当に……本当にありがとうございます……!
どれほど感謝してもしきれません……!」
「頭を上げてくだされ。
わしらは当然のことをしたまでじゃ」
「当然なんかじゃありません……!」
父は震える声で続けた。
「ミナが……ミナが戻ってきてくれた……
それだけで……どれほど救われたか……!」
母もまた、涙をこぼしながら頷く。
「どうか……どうか店の中へ。
お礼をさせてください……!」
「では、お言葉に甘えるとするかの」
****
再会の余韻を残したまま、わしらはゆっくりと店の中へ足を踏み入れた。
わしらはミナの両親に案内され、
宝飾店──いや、商会の中へ入った。
店内は広く、高級そうな宝飾品が並んでいる。
アリアが小声で呟く。
「……すごい……本当に大きな商会なんですね……」
「ミナの家、すげぇ……」
ドランも圧倒されている。
「壊すなよ?」
「壊さねぇよ!?」
(ふむ……これは確かに、貴族相手の商売もしておる規模じゃな)
わしは店内を見渡しながら思った。
ミナの両親は、わしらを奥の応接室へと案内する。
「どうか、ゆっくりお話を聞かせてください……!」
ミナは両親の間に座り、幸せそうに笑っていた。
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