表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/65

第36話 家族というものは、悪くないのぅ

「ミナ……ミナ……!」


 ミナの母は、泣きながら娘を抱きしめ続けていた。


 その肩は震え、声は途切れ途切れで、

 どれほどこの日を願っていたかが伝わってくる。


「おかあさん……!

 ミナ、ちゃんと……いきてた……!」


「ええ……ええ……!

 もう……もう離さないから……!」


 周囲の客も足を止め、温かい視線を向けている。


 アリアは涙を拭い、ドランは鼻をすすりながらそっぽを向いた。


「……よかったな、ミナ……ほんとによ……」


(家族というのは、こうも強い絆を持つものかのぅ)


 わしは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。



「おい、どうしたんだ!? 何の騒ぎだ!」


 店の奥から、慌てた声が響いた。


 宝飾店の扉が勢いよく開き、立派なスーツを着た男性が飛び出してくる。


 ミナの母が涙を拭いながら振り返った。


「あなた……! ミナよ……ミナが……!」


「……え?」


 男性──ミナの父は、ミナを見た瞬間、完全に固まった。


 一歩も動けない。


 目を見開き、口を震わせ、

 信じられないという表情のまま動いておらぬ。


「……ミナ……?」


「……おとう……さん……?」


 ミナが小さく手を伸ばす。


 その瞬間、父の表情が崩れた。


「ミナァァァァ!!」


 父は全力で駆け寄り、ミナを抱きしめた。


「ミナ……! ミナ……!

 すまん……すまん……!

 守れなくて……すまん……!」


「おとうさん……ミナ、だいじょうぶ……!」


 ミナは父の胸に顔を埋め、

 小さな手で服をぎゅっと掴んだ。


 その姿に、アリアはまた涙をこぼし、

 ドランは腕で目元を隠した。


「……よかったのぅ、本当に」


****


 しばらくして、両親はようやく落ち着きを取り戻した。


「ミナ……どうやって……どうやって戻ってきたの……?」


「えっとね……

 ドランと……

 アリアおねぇちゃんと……ボニフと……

 いっしょに……」


 ミナは一生懸命説明しようとするが、

 言葉は断片的で、ところどころ曖昧だ。


 それでも両親には十分だった。


「……あなた方が……ミナを……?」


 ミナの母が、涙で濡れた目でこちらを見る。


「うむ。たまたま縁があっての。

 ミナを保護し、ここまで連れてきた」


「たまたま……?

 いえ……そんな言葉では片付けられません……!」


 ミナの父が深く頭を下げた。


「本当に……本当にありがとうございます……!

 どれほど感謝してもしきれません……!」


「頭を上げてくだされ。

 わしらは当然のことをしたまでじゃ」


「当然なんかじゃありません……!」


 父は震える声で続けた。


「ミナが……ミナが戻ってきてくれた……

 それだけで……どれほど救われたか……!」


 母もまた、涙をこぼしながら頷く。


「どうか……どうか店の中へ。

 お礼をさせてください……!」


「では、お言葉に甘えるとするかの」


****


 再会の余韻を残したまま、わしらはゆっくりと店の中へ足を踏み入れた。


 わしらはミナの両親に案内され、

 宝飾店──いや、商会の中へ入った。


 店内は広く、高級そうな宝飾品が並んでいる。


 アリアが小声で呟く。


「……すごい……本当に大きな商会なんですね……」


「ミナの家、すげぇ……」


 ドランも圧倒されている。


「壊すなよ?」


「壊さねぇよ!?」


(ふむ……これは確かに、貴族相手の商売もしておる規模じゃな)


 わしは店内を見渡しながら思った。


 ミナの両親は、わしらを奥の応接室へと案内する。


「どうか、ゆっくりお話を聞かせてください……!」


 ミナは両親の間に座り、幸せそうに笑っていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


よろしければブックマーク・評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ