表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/71

第22話 歩くしかないのぅ

 戦いが終わり、森に静寂が戻った。


 護衛たちは地面に座り込み、荒い息を吐いている。

 致命傷こそないが、全員が満身創痍じゃ。


「……ったく、なんなんだよ……」


「俺ら、死んでてもおかしくなかったぞ……」


「はぁ……ギルドに戻ったら酒奢れよ……」


 軽口を叩ける程度には回復してきたようじゃ。


 旅芸人がようやく目を覚まし、きょろきょろと周囲を見回す。


「……え? え? 俺、生きてる……?」


「気絶してただけじゃよ」


 旅芸人は安堵の表情を浮かべた。



 御者は倒れた馬を見て、深いため息をついた。


「……馬はダメだ。車輪も壊れてる。

 こりゃあ、もう動かんね」


 わしは馬車を見る。


 部品が幾分か焼け焦げておる。


(構造が変わっておるな)


 抽出、再構成──……


 いや。


 素材が、足りぬな。


 それに。


(馬がおらぬのであれば、客車を治しても意味がないの)


 わしは錬金術式を使うのをやめた。


 御者は立ち上がって言った。


「悪いが、俺は元の街に戻らせてもらう。

歩きになっちまうが….…」


 続いて《三つ葉の盾》のリーダーらしき男も頷く。


「俺たちもギルドに戻りてぇ。

 怪我もひでぇし、依頼の報告もしなきゃなんねぇ」


 アリアがわしの袖を引く。


「ボニフさん……どうします?」


「ふむ……」


 わしは周囲を見回す。


 ドランは少女──ミナの隣に座り、静かに頭を撫でている。


 ミナはまだ怯えているが、ドランの腕の中では少し落ち着いているようじゃ。


 アリアはミナを見つめながら、どこか遠くを見るような目をしていた。


(少女に妹の影を重ねておる、のかの)


 護衛たちがこちらへ歩いてくる。


「で、あんたらはどうする?

 街に戻るなら護衛するぜ。

 ……まぁ、あんたらの方が強そうだがな」


 わしはアリアを見る。


 アリア少し俯く。


「……私は」


 顔を上げて、続けた。


「このまま王都へ向かいます」


 その表情には、強い決意が宿っていた。


 妹を探すため。


 その思いが、言葉よりもその目から強く伝わってくる。


 それを見て、理由は分からぬだろうが何かを察したのか、《三つ葉の盾》の男は頷いた。


「そうか……なら、気をつけて行けよ。

 どっかでまた会えたら、飯でも奢ってやる」


 そして、ドランからわしに視線を流し。


「あんたらがいなかったらやばかった。

 護衛としちゃ情けねぇ限りだが──」


 リーダーの男はそこで区切り、他の二人のメンバーに視線をやった。


「「「ありがとう」」」


 三人は同時に頭を下げた。


(中々に気持ちの良い冒険者じゃな)


 軽口を叩いてはおったが腕はそこそこ達者じゃった。


 恐らく冒険者としてのプライドもあるじゃろう。


 しかしこやつらは冒険者に必要なものを知っておる。


 任務に忠実であること、されど生きること。


 あの男──ルークと言っておったが。


 あやつにやられても逃げず、そしてわしらに頭を下げる。


 五百年前の有名な冒険者も、漏れなくそういった矜持を持っておったものじゃ。


 わしは《三つ葉の盾》の面々を見て、頷いた。


「命があれば、また会えるじゃろう」


「あぁ、そうだな」


「何かとびきり美味い飯でも考えておいてくれると助かるでな」


「ははっ!」


 わしが言うと、ようやく男は笑顔を見せた。


「飛び上がるくらいなオススメを奢ってやるよ」



「達者でな」


「あんたらも気をつけてな」


 護衛たちは手を振り、御者と共に元来た道を戻っていった。


 旅芸人も肩をすくめる。


「命あってのものだしな……俺も街に戻るよ。

 王都はまた今度だ」


 そう言って護衛たちの後を追った。


****


 残ったのは、わしとアリア、ドランとミナの四人。


 ドランがこちらを見た。


「……お前たちは、こっちに来ていいのか?」


 わしは内心で肩をすくめる。


(別に一緒に同行する……と言った覚えはないんじゃが……)


 だがアリアがすぐに言った。


「目的地は同じなんですから!

 一緒に行きましょう!」


 わしの方を見て、同意を求めるような目を向けてくる。


「……やれやれ。

 まぁ、引き返す理由もないしの」


 ドランはミナの頭を撫でながら、小さく頷いた。


「……助かる」


 ミナも、アリアの方を見て小さく微笑んだ。


 さて、王都まではどのくらいの距離なのじゃろうな……


 五百年前とは変わった風景にを前に、全く予想がつかぬわしは顎をさすった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


よろしければブックマーク・評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ