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【錬金術師の再臨】〜錬金術が消えた世界で、わしの知識だけが規格外だった〜  作者: 新生浮世
第三章 帝国編

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第128話 ハッキリと囮と言うんじゃな

「あ、他の人呼ぶならサーシャちゃんも呼んできて」


 わしが、部屋を出て他の皆を呼ぼうとすると、ルークがそう言った。


「なぜじゃ?」


「いや、サーシャちゃんにも動いてもらった方がいいんだよね」


 わしは振り返りルークを睨んだが、どうやら具体的なことは教えてくれぬらしい。


「仕方がないのう」


 わしはそう言って部屋を出ると、後ろから「話が早くて助かるね」と声が聞こえた。


 アリアにドラン、フレインの後、サーシャにも声をかけ、わしの部屋へと向かう。


「さて、集まったね」


 ルークが軽くそう言うと、わしの部屋の空気にピリッと緊張が走った。


「まず、サーシャちゃん」


「は、はい! あの、あなた様は?」


 声をかけられたサーシャは返事をしたものの、戸惑いながらルークに質問した。


 ルークは懐から何やら紋様が描かれた金属片を取り出し、それをサーシャに見せた。


「わわわ! そ、それは皇帝陛下の──」


「はい、そこまで」


 サーシャがそこまで言うと、ルークは口を挟んだ。


「も、申し訳ありませんであります」


 サーシャは謝りながら立ち上がり、背筋を伸ばす。


「ボクはサーシャちゃんの直属でもないし、軍でもないから。

 そんなに畏まんなくていいけどねー」


 ルークはいつも通り飄々とした態度でそう言った。


(皇帝陛下の──と言ったのう)


 つまり、ルークの正体は公的な機関よりさらに上の何かで動いておるようじゃな。


 わしが思案しながらルークを見ると、ルークがこちらを見て苦笑した。


「さて、サーシャちゃんを呼んだのにはお願いがあってね」


「自分にお願い、でありますか?」


 ルークは頷き、封書を一通取り出してサーシャへと渡す。


「これはなんでありましょうか」


「それを地方行政局の"マイルズ"ってやつに渡してきて。

 まぁキミの所属局だから分かると思うけど」


 ルークが言うと、サーシャは封書とルークを交互に見て首を捻る。


「"マイルズ様"でありますか?

 聞いたことがないでありますから、自分の部署ではないと思うであります」


「それは別にいいよ。ボクが地方政治局に行くよりキミの方が適任だから」


 サーシャを見ると、ルークの言葉にどうすればよいのか悩んでおるように見える。


「あ、ちなみにボクのお願いは陛下のお願いと思って聞いてね」


 その言葉を聞いたサーシャは完全に固まった。


「おぬし、そんな軽々と帝国のトップの名前を使ってもよいのか?」


「いいのいいの」


 わしが聞くと、なんでもないことのようにルークはそう言ってのけた。


 "自身の言葉を皇帝陛下の言葉として扱え"とは──普通に考えれば許されるような行為ではない。


 じゃが、それが通るということは……


「あ、ちなみにボクは皇族とかじゃないよ?」


 わしの考えを読んだようにルークが口を挟んだ。


「まぁ、ボクのことはどうでもいいけどさ。

 サーシャちゃんお願いできるかな?」


 言葉は軽く、優しく言っておるが、その実は強制命令のようなものじゃな。


「ま、任されたであります!

 命に代えましても"マイルズ様"に、この封書を持っていくであります!」


「よろしくー」


 緊張気味に上擦った声で言うサーシャとは反対に緊張感なくルークは答えた。


「んで、ボニフちゃん達はサーシャちゃんについて行って欲しいんだよね」


「他には?」


「それだけ〜」


 具体的な指示はなく、ルークはサーシャについていけとだけ言った。


「それだけで、アルバートのやつをとっちめれんのか?」


 ドランが訝しむようにルークへ聞いた。


「確実、とは言い切れないなぁ。

 でも可能性は高いと思うよ」


「お前の話ははぐらかしが多くて分からん!」


 鼻を鳴らし、ドランは息を巻いた。


 ルークはちらりとサーシャを見たが、すぐに視線を外した。


「まぁいっか。ボニフちゃん達はねー、"囮"みたいなものだから」


「"囮"ですか?」


 アリアがルークの言葉を繰り返すと、ルークは頷いた。


「みたいな、ね。地方行政局についていくだけで、多分元老院が動く」


「アルバートではなく?」


「アルバートがどこにいるか分かんないんだよね〜」


 ルークは両手を上げながら、「参ったよねー」と声を漏らした。


「サーシャ殿に私達がついていくだけで、アルバートの位置が分かる……と?」


「かもしれない、ぐらいかな?

 まぁ動いたらあとはボクの仕事だね」


「で、アルバートの位置が分かった後はどうするんじゃ?」


 わしが聞くと、ルークは少し悩んだ。


「本当はね。この件って帝国で肩を付ける話になってたんだけどね」


「私達に協力をお願いしておいて?」


 アリアはキッとルークに視線を送った。


「そうなるよねー。まぁ元々王国から逃亡してきてるし、扱いが難しいのよ」


 ルークはアリア、ドラン、そしてフレインと順に見る。


 最後にわしの方を見て口を開いた。


「いい感じに"王国貴族の名代が帝都にいる"から、情報共有しましたって形なら……まぁなんとかなるかなー」


「つまり、見つけたらわしらへ知らせる、と?」


「そゆこと」


 ルークの返事を聞くと、アリアはルークへ向けた視線を外した。


「んで? それはいつ実行すんだ?」


「明日にでも、すぐに」


 ドランの問いかけに、ルークは即答した。


 明日、王国から続いていた問題が大きく動くことになる。


 そう思ったわしらは顔を見合わせて大きく頷いた。


 その横でサーシャは未だに体を固まらせていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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