第127話 帝国のいう国のあり方
「ここが、帝都でも指折りの料理店であります」
サーシャに帝都案内をお願いし、連れられて来た料理屋。
メニューを見ると王国の料理の他にも、他国の料理まで並ぶ。
「アグリスの料理もありますね」
アリアはメニューを見ながら呟いた。
「あちらとの交易もあるんでしょうね」
「まぁ、せっかくなら帝国の飯を食いたいな」
ドランは他国の料理には目もくれず、帝国のメニューをじっくり見始めた。
「おすすめはなんじゃろうな」
「それでしたら、ドレイクサーモンの酒蒸しであります。
かなりの大きな魚が蒸されていて、身もふっくらで美味しいであります」
サーシャが自信満々な顔でそう言ったので、まずはそれを頼む。
他にも帝国ならではの料理を注文し、しばらくすると料理が運ばれてきた。
「これは美味そうだな!」
ドランが早速料理に手をつけた。
「さて、わしらもいただくかの」
ドレイクサーモンの酒蒸しとやらに口をつける。
「ほぅ、これは美味いのう」
わしが声を上げるとサーシャの顔が綻んだ。
(美味いのは本当じゃが、やはり味が濃いのう)
フレインを見ると、バリスの時と同じく少し困った表情をしておった。
アリアとドランは……美味しそうに食べておるの。
「帝国の料理で楽しんでもらえるのは嬉しいであります」
サーシャが笑顔で言うので、あまり野暮なことは言わん方がいいじゃろうな。
わしらはそのまま料理を楽しむことにした。
****
料理店を出て、帝都の街並みを歩く。
「この先は帝都の中央区になるであります」
街に入った時に見えていた帝城が、より大きく目に映る。
「これは、大きいですね」
「城っつーか要塞だな」
アリアとドランが帝城を見て呟いた。
「帝城は専用の許可証がないと立ち入れないであります。
役人の私でも入れないであります」
「それだけ徹底しているということですね」
フレインがサーシャの言葉にそう言った。
中央区と呼ばれる区画に入ると、外郭の街とは違い人通りも少なくなっていった。
「こっちが政治部の区画であります。
で、反対のこっちが軍部の区画であります。
自分は行ったことがないでありますが、帝都の区画で一番広い区画であります」
「あの帝城よりもデカいのか?」
ドランが帝城を指差しながらサーシャに聞いた。
「人数が違うでありますから。
軍部区画は帝城の三倍は広いと言われているであります」
「それは大きいですね……」
アリアはサーシャの説明を聞いて、大きく口を開けて驚いた。
「ここから帝城を挟んだ裏が元老院の区域であります」
「元老院……」
その言葉にアリアは色々思うことがあるのか小さく呟いた。
「自分は入れないでありますが、他の区域より……それこそ外郭の臣民エリアより華やかだ、と言われているであります」
「ルクセリアを思い出すと、なんとなく想像がつくのう」
わしがそう言うと、サーシャの顔が少し曇った。
「そう、でありますね。自分も今では奇妙な感情になるであります」
「ところで、軍の訓練所なんかの見学は出来ねぇのか?」
ドランが空気を変えるように聞いた。
「難しいと思うであります。かなり事前からお伝えすればもしかしたら、ということもあるかもしれませんでありますが」
「そうか。帝国の軍の動きなんかを参考にすれば俺の槍も一段階レベルアップすると思ったが」
ドランは手持ちの槍を見てそう呟いた。
「おぬしの槍捌きは軍のような統制されたものではなく、冒険者由来のものじゃろう?
まぁ参考にはなるかもしれぬが、それだけでレベルアップはせんじゃろう」
「そりゃそうかもしれねぇが、見学出来るならしたかったところだな」
「弓なんかも確かにエルフと違う点があれば気になるところですね」
ドランの言葉にフレインも頷いた。
「帝国の軍の訓練は難しいじゃろうが、王国の方なら見れるかもしれぬな」
わしがそう言うと、二人は「そういえば」と呟いた。
「サーシャさんは政治部の方に所属しているんでしたっけ?」
アリアはサーシャへ聞いた。
「そうであります! 政治部の地方行政局であります。
赴任して一年ちょっとバリスに派遣されたでありますから、帝都の政治部にいたのは数年前でありますが」
わしらは政治部の区画に視線をやり、サーシャの言葉を聞く。
軍部と政治部と元老院、そして帝城。
帝国というのは四つの組織が絡まり国が動いておるようじゃな。
わしは帝城を見上げ、帝国という国の複雑さを感じながら中央区を後にした。
****
帝都の散策も終わり、宿へと戻る。
部屋の鍵を開けようとすると、術式が展開されないことに気付いた。
(扉の鍵が既に開いておるな)
扉を開け、警戒しながら部屋に入る。
「おかえり〜」
「なんじゃ? このような高級な宿に泥棒かのう」
案の定というか、ルークが部屋にいた。
「やだなぁ。この宿取ったのボクだよ?」
悪びれもなくルークはそう言った。
「ふん。普通の登場は出来ぬのか?」
「まぁまぁ。サプライズってやつ」
「なんじゃ、それは……」
わしは呆れながら、ルークを見る。
「そんなことより、本題入ろうか?」
ルークは少し笑顔を消して、そう言った。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
面白かったと思っていただけましたら、
ブックマーク・評価をいただけると、執筆の大きな励みになります。




