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【錬金術師の再臨】〜錬金術が消えた世界で、わしの知識だけが規格外だった〜  作者: 新生浮世
第三章 帝国編

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第125話 確かにこれは最高級じゃな

 眼前には、バリスでもなくルクセリアでも見なかった、広大な外壁がそびえ立っておる。


「これは壮観じゃな」


「帝国の中心都市であります!

 壁の中はルクセリアのような煌びやかさはないでありますが、都としての壮大さが広がっているであります」


 わしの呟きにサーシャの声が客車から聞こえた。


 濃い茶色の壁が、それだけで威圧感を与えておるようじゃ。


「これは、確かに凄いですね」


「王国でも驚きましたが、これは中々規模が違うようです」


 アリアとフレインも目の前の光景に思わず声をこぼした。


 長蛇に並ぶ馬車や歩行者の列に並び、手続きを待つ。


「帝都で、獣人族はどんな扱いなんだ?」


 ドランがサーシャに聞いた。


「良くも悪くも無関心が多いであります。

 決して友好的でもないでありますが……バリスに近いと思うであります」


「なら、まぁ大丈夫だな」


 サーシャは帽子を深くするような仕草をしながら言った。


 差別的な視線がないわけではない、ということじゃろうな。


 徐々に列が進むと、帝国の役人から声がかかる。


 わしが許可証を見せると、役人は表情も変えずに淡々と作業をしておった。


「入府手続きは完了です。どうぞお入りください」


 それだけ言うと、役人はわしらの後ろの者への手続きへと移った。


「なんというか、普通じゃな」


「普通より機械的な感じがしましたが」


 わしが感想を言うと、アリアがそう言った。


 門をくぐると目の前が開けた風景を見せる。


 まっすぐに伸びた道の先には、大きな要塞が見えた。


「あれが、帝都の中央にあるヴァルディア城であります。

 あなた方様が泊まる宿は次の角を左に曲がるであります」


 サーシャの案内に従い、わしは馬車を進ませる。


 馬車が四台通れる程の広い道に、たくさんの人々が行き交っておる。


「人も多いですね」


「帝国で最大の都市でありますから」


 店や家屋はバリスのような統一されて建物ではないが、区画がハッキリしておるのか、まとまりがあるように感じる。


 生活感が溢れておるのに、機能的な街という印象じゃな。


 角を左に曲がると道幅は狭くなる。


 とはいえ馬車二台分がすれ違うだけの幅がある時点で広さが確保されてあるのが分かる。


「そこであります」


「この辺に宿なんかあるか?」


 サーシャの言葉にドランが客車の窓から周囲を見渡す。


「えぇと、これであります」


 サーシャが指差した方を見ると宿とは思えぬほどの高さを誇っておる建物があった。


「これは宿……ですか?」


「これは大きいですね」


 アリアもフレインも絶句したように呟く。


「おいおい、これに泊まるのか」


 わしが宿の裏手に目をやると、それだけで人も泊まれそうなほど立派な厩舎が見えた。


「おぬしも今夜は贅沢に休めるのう」


 わしはそう言いながら馬の背を撫でた。


 そのまま裏手に進み、客車を停める倉庫に入る。


「この倉庫でも寝られそうだな」


 ドランは倉庫の中を見てそう感想を漏らす。


「これは空気に不快感が全くありませんね」


 フレインも客車から降り、その空気を肌で感じておる。


 おそらく客車が傷まぬよう、空気中の水分を調整しておるのじゃろうか。


 倉庫の至る所に通気性を高めるよう隙間が開いておるのが分かった。


「これは確かに誰でも泊まれる宿ではなさそうですね」


 アリアもキョロキョロしながら誰にでもなく呟いた。


 馬車から馬を解き、厩舎へと連れて行く。


 厩舎に入った馬も心なしか嬉しそうに見える。


 わしらはそのまま宿の中へと入っていった。


 宿のロビーは見るからに清潔感であふれておるのが分かる。


「うわぁ」


 アリアが感嘆の声を上げる。


 天井も高く、建物内であるにも関わらず開放感がある。


「いらっしゃいませ」


 宿の受付嬢と思われる女性が、こちらに一礼をした。


 その洗練された動きにグラウス殿を思い出す。


「ご予約はされておりますでしょうか?」


 受付嬢はドランへの視線もなく、わしら全体を見て笑顔でそう言った。


「わしの名前はボニフじゃ。

 もしくは"ルーク"で予約されてはおらぬかの」


 わしの言葉に、受付嬢は笑顔は崩さずぬまま、体をピクリと反応させた。


「承っております。四名様と……すみませんもう一度確認してきます」


 受付嬢はそう言って受付まで戻っていった。


「やはり自分は泊まれないでありますか……」


 サーシャは少し期待しておったのかガックリと肩を落とす。


 そこにすぐ受付嬢が戻ってきた。


「五名様に追加されていることを確認いたしました。

 宿泊のお手続きをいたしますので、代表者の方はこちらに」


 受付嬢がそう言うと、サーシャの顔は明るくなった。


「良かったであります! あれ?

 いつ追加されたでありますか?」


 サーシャは首を捻った。


 あとで本人から説明してもらうか……サーシャが疑問を覚えておればじゃが。


 わしは受付で手続きの記入を済ませる。


「お代の方は、先方の方に請求……となっておりますので、お客様からは不要でございます。

 こちらが各部屋の鍵になっております。

 扉の開錠術式が施されておりますので紛失されないようお気をつけください」


 わしは鍵を受け取る。


 鍵に魔法の術式とは……あとで解析でもしてみるかの。


「では、お部屋は七階になっております。

 こちらの昇降機からお部屋の方にお向かいください」


 受付嬢は隣にある扉を手で案内し、そう言った。


「しょうこうき、ですか?」


「はい。左側が降りる時の扉になります。

 右側が昇りの扉です。

 こちらのレバーを引いていただくと始動いたしますので、床が来ましたらお乗りください」


 アリアが質問すると、受付嬢はそう言いながらレバーを実際に引いた。


 ガチャリという音とともに、右側の扉が開き、中で大きめの鋼が動いておるのが分かった。


 しばらくすると言っておった通りに結果が現れ、止まった。


「お乗りいただいた後は、中からレバーをお引きください。

 ゆっくり上昇いたしますので、七階に着きましたらお降りいただければと思います」


「降りる場所かどうかは分かんのか?」


 ドランがそう質問する。


「中に入りまして右側に階数が表示されますので、そちらをご確認ください。

 ただ、お客様がお泊まりになるお部屋は最上階になりますので自動で止まります」


「それは助かるな」


 ドランの質問に受付嬢は笑顔でスラスラと答える。


 わしらは説明のまま、昇降機に乗り込む。


「何かありましたら、またお気軽にお申し付けください」


「承知した。感謝するぞい」


 わしは中に入り、レバーを引く。


 ガチャリという音と同時に、床が動き上の階へと進む。


「これは、凄い技術ですね」


「なんかフワフワするな」


「不思議ですね。魔法でしょうか」


 アリア、ドラン、フレインが昇降機に対する感想を言った。


「さすが最高級の宿であります!

 これは自慢になるであります!」


 サーシャは案内役であることを忘れておるのか、純粋にはしゃいでおる。


「ふむ……名残があるのう」


 わしは昇降機に施されておる、技術の裏を"視る"。


「ボニフさん、名残……ですか?」


「うむ。まさかのう」


 わしはさらに受付嬢から渡された鍵の方も視た。


「ボニフ殿、もしかして」


 フレインの言葉に、わしは頷いた。


「"錬金術"の跡じゃ」


 サーシャを除き、三人はわしの言葉に神妙な表情になった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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