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【錬金術師の再臨】〜錬金術が消えた世界で、わしの知識だけが規格外だった〜  作者: 新生浮世
第三章 帝国編

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第115話 少し強気に出るしかないかの

 バリスを出発して数日。


 野営をしながら街道を進む。


「見えてきたであります!」


 サーシャがそう告げる。


 眼前に街を囲む外壁の輪郭が見えた。


 少し馬車が揺れ出した。


 道を見ると、今までの無機質な石造りの道が、彩色された石を用いた道へと移り変わっていくのが分かった。


(バリスとはかなり違いがありそうじゃな)


 元老院の色が強い街。


 そう言っておった片鱗が道の変化から感じられた。


 やがて外壁の影が実態となって鮮明に視界に入る。


 全面の白い壁が太陽に照らされて反射し、わしは少し目を細める。


「情報の通り、華やかな街であります!」


 客車の中でサーシャがそう叫ぶ。


「目が疲れそうですね」


 その横でフレインがそう呟いた。


****


「ルクセリアへようこそ。入領手続きを……」


 笑顔で迎えようとしていた、役人が笑顔を消した。


 男の視線を辿ると客車──ドランじゃろう。


「獣人族は入領出来ん」


 役人がピシャリと言い、雰囲気がガラリと変わる。


 わしは許可証を取り出し男に渡す。


「なんだ、これは」


 男は許可証を確認し、「チッ」と軽く舌打ちをした。


(役人がこの反応とはの……)


「通ってもいいが、すぐに立ち去ることを勧める」


 そう言うと、役人は視線を外した。


「この街に"蒼門亭"という宿があると思うのじゃが、どこにあるかの」


「大通りを進んだ道なりの右手にある」


 わしが聞くと、役人は目を合わさずにそれだけ答えた。


 わしはため息をつきつつ、馬車を出発させた。


「あの、自分がいながら、申し訳ないであります」


 サーシャが客車から力無く言う。


「確かにバリスと違いますね」


 アリアがサーシャの言葉をフォローするように言った。


 門を通り抜けると、彩色された道に似合うような色合いで建物が両端に並んでいる景色が広がる。


「これは、綺麗ですね!」


「そうであります!

 ルクセリアは帝国の中でも帝都よりも煌びやかだと言われているであります!」


 アリアが言葉をこぼすと、サーシャは切り替えたように声を弾ませた。


「煌びやかではあるが、俺はバリスの方が好きだな」


「えぇ、少し気持ちが落ち着きませんね」


 ドランが言うとフレインが同調した。


「そうでありますか?」


 サーシャは首を捻りながら二人へ問いかけた。


「人の好みはそれぞれじゃからな。

 それより客車内のカーテンを閉めておけ」


 わしが客車にそう伝えると、サーシャを含めて納得したのか客車のカーテンを閉めた。


 道に人通りが増えていく。


 軍人もいることはいるが、ドレスを着用した女性や仕立ての良いスーツを着た男性が多い。


(ドランやフレインではないが、わしも苦手な部類じゃな)


 わしは内心そう思いつつも、蒼門亭を探す。


 しばし進むと、他より少し大きな建物が見え、看板に大きく"蒼門亭"と書いてあった。


「ここで待っておれ」


「分かりました」


 わしが御者台から客車へ伝えるとアリアが答えた。


 御者台を降り、宿へ入る。


「いらっしゃいませ」


 受付の女性が礼をしながら言う。


 街の煌びやかさとバリスの宿の系列という位置付けからか、身のこなしも高級を謳っておるのも頷ける。


「おひとり様でお泊まりでしょうか?」


「いや、五人なんじゃが、ラウネル殿はおるかの」


「オーナー、ですか?」


 女性はわしの言葉を聞き、少し止まったものの聞き返した。


「オーナーのお知り合いでしょうか?」


「いや、知り合いではないが、紹介状を預かっておるのでな」


 わしはグラウスからの封筒を出し、そう言った。


「少々お待ちください」


 女性はそう言って受付の奥の部屋へと入っていった。


(さて、すんなり泊まれるとよいが)


 内心で考えておると、奥から男性が現れた。


「私が蒼門亭オーナーのラウネルです。

 紹介状をお持ちとのことですが」


 ラウネルが笑顔で軽く一礼をした後、そう言った。


 わしは封筒をラウネルへ渡す。


 ラウネルは封筒から手紙を取り出しそれを読んだ。


 読み進めると明らかに顔が曇っていくのが分かった。


「チッ、グラウスめ……厄介なことを」


 わしに聞こえるか聞こえないかの微かな声で、そう言っておるのが聞こえた。


「お客様」


 笑顔が消えたラウネルは少し低くなった声色になるも、丁寧に言葉を続ける。


「本来ルクセリアでの獣人族は宿泊をお断りしております」


「そう、聞いておるの」


 正確には可能性が高い、と聞いておったが。


(予想通りと言えば、予想通りじゃな)


「ですがこの紹介状の手前、お断りが難しいので宿泊は受け入れさせていただきます」


「それは助かるのう」


 明らかに本意ではない……そういった顔をしておったが、宿泊できるだけで良しじゃろう。


 それにしてもグラウス殿は、どんな内容の紹介状を書いたのかのう。


「ただし」


 ラウネルの声がひとつ上がる。


「蒼門亭が獣人族を受け入れた……そう言われると宿の格式が下がるのも事実。

 ですので、入館および退館は必ず裏口からにしていただきます」


「承知した」


「それと、宿内での食事はお部屋でお願いします。

 食堂は利用禁止ということで」


「それも仕方なかろう」


 条件が多いが、ここは飲み込むしかないじゃろうな。


「はぁ。では五名様でお一人様の宿泊が金貨一枚。

 獣人族の方は金貨三枚になります」


「む? 二倍、ではないのかの?」


「それはバリスでの話でしょう。

 本来ならお断りです。

 私もリスクを取っているのですから三倍にさせていただきたい」


「裏口からの入館と退館の徹底、食堂の利用禁止。

 他国の貴族位がそこまでの条件を飲んでおる」


 わしは目を細め、ラウネルへの視線を強める。


「それはちと王国を舐めてやせんかの?」


 そこまで言い切ると重い沈黙がわしとラウネルの間に広がる。


 しかし、他国の名前を出されたからか、ラウネルは観念したようにため息をついた。


「仕方ありませんね。獣人族の方は一泊金貨二枚です。

 その代わり、用意したお部屋からも極力他のお客様に見られないようにお願いします。

 裏口のほど近いお部屋にいたしますので難しくはないでしょう」


「条件が多いのう」


 わしは渋々という顔をしながら頷き、ラウネルへ金貨を支払った。


「馬車はどこへ預ければよいかの」


「裏に広場があります。厩舎もそちらにあるので。

 裏口もそちらから入れます」


 ラウネルは金貨を数えながら、そう答えた。


「鍵はこちらです。鍵にお部屋の番号がありますので。

 で、こちらの鍵が獣人族の方のお部屋になります」


 鍵を四つ、それとは別でもうひとつの鍵を出した。


 わしはそれを受け取った。


「世話になる」


「お願いした件、よろしくお願いします」


 言葉遣いは丁寧じゃが、内容はなんとも言えんの。


 わしはラウネルの言葉を背に馬車へと戻った。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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