第113話 会議は踊り、答えは一つ
わしらは宿へと戻る。
サーシャは「明朝にまた来るであります」と言って自宅へと帰っていった。
夕食を宿で取った後、四人でわしの部屋に集まる。
「今日で二泊目ですね。
明日は帝都方面に移動ですか?」
アリアがはやる気持ちを抑えつつも、そう言った。
「そうじゃの。公務という体じゃったが、この街でのポーズは十分じゃろう」
「案内はサーシャに任せる。今ん所はそんな感じか?」
ドランの言葉にわしは頷く。
「恐らくニクソン代官の監視役……じゃろうが帝国のことは正直分からん。
少し面倒じゃが渡りに船というところもあるのう」
「しかし、サーシャ殿を見ていると監視されている……そんな感じは見受けられませんね」
フレインは今日のサーシャを見た感想を、そう述べた。
「確かに、なんというか本当に案内役として張り切ってるって感じでしたね」
「いや、本当に案内役なんじゃねーのか」
アリアとドランもサーシャに感じたことを言う。
確かにあれで監視役──は不自然じゃな。
「案内役にしろ、監視役にしろ……
わしらは別に帝国に何かをしようと言う意図はないからの。
無事に入国するための名代という手段が、少し厄介になっただけじゃ」
「一旦、帝都までは普通に移動できますしね」
アリアが笑顔で、わしの方を見てそう言った。
「それにしても、次の街でドランをどうするか……それは決めておく必要がありそうじゃの」
「元老院……そう言っていましたね」
フレインがそう呟く。
次の街は元老院の色が強い、そう言っておったな。
「公爵の手紙にも確かその言葉を書いてましたよね?」
アリアが空を見ながら思い出すように言った。
「そうだったか? よく覚えてんな」
「確か"軍部、政治部、元老院で不穏な空気がある"──じゃったかの」
わしもアリアの言葉で思い出しながら言った。
「その、元老院がどういったもので、その色が濃いとドラン殿にどう影響するのか……
それが分かりませんと対策が難しいですね」
「元老院は分かりませんが、サーシャさんの様子からして、ドランさんへの視線も露骨になるってことですかね」
フレインの悩みにアリアも続ける。
「そんなもん、無視すりゃいいだろ」
ドランはそう言うが──
「無視、出来る程度なら問題ないんじゃが。
露骨な排斥行為……つまり街に入れない、または街から追い出される。
こうなると実害が出る可能性があるのう」
「そりゃ……厳しいな」
わしの言葉にドランは少し考え、答えが出なかった。
「でもサーシャさんはあくまで公務として外に出さない方がいい、そう言ってましたよね。
つまり街にはとりあえず入れるんじゃないですかね」
「恐らく。じゃが最悪のケースは想定しておった方がよい」
わしの部屋は再び沈黙に包まれた。
これはかなり厄介じゃな……次の街の雰囲気や制度が分からんと対策が取れぬ。
サーシャに聞くか?
いや、さすがにこれ以上口を滑らせるとは思えぬな。
滑らせる可能性もあるが、それに賭けるようなことでもないしの。
「他の街、を経由するのはどうなんですかね」
アリアがポツリとそう言った。
「サーシャの言ってた次の街を通らずに帝都へ、ってことか」
「選択肢としてはありじゃな。
じゃが最短ルートでなくなるため時間はロスするの」
「それに他の街でも元老院という組織の色が強ければ同じですしね……」
「そう、ですよね」
アリアが思いついた案も厳しそうということに肩を落とした。
「つーかよ」
ドランが体を起こして口を開く。
「ボニフやフレイン、それにアリアが考えて分かんねーってことはよ」
ドランがわしらへと視線を向ける。
「次の街に行って考えればいいんじゃねーか?」
一拍。
「何かあったらその時はその時で考える。
不味いことが起こればボニフがなんとか出来んだろ?」
ドランが真っ直ぐな視線で、わしを見た。
その目には強い"信頼"──その意思がこもっておった。
わしは思わず笑った。
「そうじゃの。まぁなんとかなるか」
「そうだぜ。今までもそうやってきただろ」
「ドラン殿らしいですね」
フレインもフッと笑った。
「ドランさんのお陰でふっきれましたね!」
「よせよせ、照れくせぇ」
ドランはそう言ってベッドに横たわった。
それ、わしの寝るベッドなんじゃがな。
わしはそう思ってまた笑った。
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