表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【錬金術師の再臨】〜錬金術が消えた世界で、わしの知識だけが規格外だった〜  作者: 新生浮世
第三章 帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/140

第102話 実戦投入じゃの

 翌朝、客車内で目を覚ます。


 朝に弱いアリアもゆっくりと体を起こそうとしておった。


 起こしはしなかったが。


 わしは客車を出て、ゆっくりと体を伸ばす。


 窮屈な場所で寝ておったからか、体の骨がパキパキと鳴る。


 周囲を見渡すと、雨は上がっておったものの、霧が重く立ち込めておった。


「これは、厄介じゃのう」


 同じく客車から出てきたフレインも周囲を見渡した。


「雨の影響ですね。

 エルフの森を基準にすると、ですが数刻もすれば霧は晴れるでしょう」


「どうするんだ? もう出発か?」


 続いてドランがそう言いながら出てきた。


「いや、霧が晴れるまで待つ。

 このままでは轍が見えず帝国とは違う方向に進む危険も多い」


「そうか。

 あー早く保存食じゃなくてまともな飯が食いたいぜ」


 ドランがそうぼやいた。


 わしもそれには同意じゃな。


 わしは馬のもとへ行き、朝露に濡れた馬の毛を梳いて整える。


 アリアも遅れて客車から出てきた。


「おはよう……ございます……」


 まだ眠たいのか目をゴシゴシしながら、そう挨拶をした。


 わしは桶に水を生成し、アリアへと持っていく。


「これで顔を洗うんじゃな」


「あー、ありがとう……ごさいまふ。

 ふぁ〜〜……」


 やれやれじゃな。


 わしは簡易用の屋根をしまう。


 その後、万象器を客車から外し元に戻した。


「ふむ、久しぶりじゃったが、調整は上々じゃな」


 しばらく霧が晴れるまでのんびり、というところで霧の奥から魔力の淀みが感じられた。


 わしが立ちあがろうとしたが、ドランが客車から槍を取り出した。


(このあたりの勘の鋭さというか、空気の変化を感じ取るのが凄いの)


 わしはゆっくりと立ち上がり、馬と客車を守るように陣取った。


 ドランの行動を見たあとでアリアとフレインも動いた。


「襲撃、ですか?」


 アリアは霧の奥を警戒しながら二つの短剣を構えた。


「襲撃というか、これは魔物だな」


 ドランも槍を構えて周囲を見渡す。


 フレインは弓を持ちいつでも矢を射れるようにしながら、目を瞑る。


 ──カツン


「そこです!」


 霧の奥から、微かな硬い音がしたと思えばフレインは目を開け、すぐさま矢を放った。


 霧の向こうでキュイッという短い悲鳴が聞こえた。


「さすがじゃの」


 フレインは止まらず二射目、三射目と矢を射った。


 音だけで位置を把握しておるのが、その矢はことごとく魔物に当たり、その度に悲鳴が上がる。


 そしてキュウゥゥウ!と長めの悲鳴が聞こえ、音が消えた。


「当たりましたね……」


 当てた本人が驚いておるようじゃが。


 すると同じ方向から複数の魔物の鳴き声が響いてきた。


「この鳴き声は『岩跳びの怪鳥ロックホッパー』だな」


 ドランが魔物を特定する。


「やつの羽は、羽というより鉱物のように硬い! アリア気をつけろ!」


 ドランがそう叫ぶ。


「分かりました!」


 ──カッ、カッ


 ロックホッパーが岩を蹴る音が、何度か聞こえ、それが近づいてくる。


「ドラン殿! 右上です!」


「おうっ!」


 フレインが音を正確に聞き取り場所を指示する。


 突然現れたようにロックホッパーが霧を切り裂いて突っ込んでくる。


「うらぁ!」


 ドランは槍をしならせながら矛先の横っ面をロックホッパーに叩きつけた。


 ボコォッッ!と衝撃音が響き渡り、ロックホッパーが岩盤に叩きつけられた。


「フンッ!」


 ドランはそのまま槍を突き立てた。


 ドランが言っておった鉱物のように硬い──と言われていた羽を難なく突き破り槍はロックホッパーの体を貫通する。


 キュゥゥゥゥ!と悲鳴をあげ、そして息絶えた。


「嘘だろ……」


 他方、別の場所でも三体目、と思われるロックホッパーがアリアの方へ飛び込んでおった。


 ロックホッパーがアリアを目掛け、その鋭い鉤爪を振り下ろす。


 ──キィン!


 アリアが片方の短剣で受け止めると、軽い金属音同士がぶつかるような甲高い音が鳴った。


「やぁっ!」


 空いたもう片方の手にある短剣に魔力を通す。


 短剣の刃は薄く光り、そして刃を包んだ。


 そしてロックホッパーの足へ短剣を振り抜いた。


 まるで短剣はすり抜けるようにヒュンッと空を切る音がした。


 遅れて足が切断され、ロックホッパーはそのまま地面に落ちる。


 片足のなくなったロックホッパーはもう片方の足だけで、キュゥキュゥと鳴きながら逃げるように動く。


「まだです!」


 アリアはロックホッパー目掛けて素早く走り、そして二振りの剣をそれぞれ振り抜いた。


 ロックホッパーは切られた箇所から血飛沫を上げ、やがて動けなくなった。


「倒した──」


 アリアはヒュッと血を払ったあと、信じられないような表情で短剣を見た。


 わしは周囲の魔力の淀みを探る。


「三人ともお疲れじゃの。

 もう魔物はおらんようじゃ」


 わしがそう言うが、三人は魔物の脅威よりも、ただ少し呆然としておった。


 やがてドランは槍を引き抜いて、こちらへと戻ってきた。


「すげぇぜこれは」


 ドランは興奮し、言う。


「叩きつけた後に手に来る衝撃が少ねぇ。

 素振りは何度かしたが、実戦では段違いだ」


 そう言いながらブンブンと槍を振る。


「しかも、しなりだけじゃねぇ。

 この矛先も特注品じゃねぇか。

 ロックホッパーの羽を普通に突き破りやがる」


 アリアもこちらへ戻ってきた。


 こっちは興奮、というよりも不思議そうな表情じゃが。


「あの魔物の足を切った時……

 切った──という感触はあったんです。

 あったんですが、その……」


「抵抗がなかったかの?」


 わしが代弁するように言うと、アリアは何度も頷いた。


「それが魔力伝導率の違いじゃな。

 刃を包むように先端まで均等に行き渡っておったのが見えたからの」


 わしがそう答えた。


 アリアはその後何度か素振りをしておった。


 もらった当日もしておったはずなのじゃがな。


 フレインは無言で弦を何度か弾いておる。


 そしてその度に小さく頷いておった。


 思わず訪れた実戦投入は大成功、と言ったところじゃろう。


****


 戦果を噛み締めておると霧が薄れ、視界が開けていく。


「ようやく晴れましたね」


 アリアがそう言い、「出発ですか?」と付け加えながら客車へ戻る。


「そうじゃの」


 わしも馬を繋ぎ、御者台へ登る。


 ドランとフレインも続いて客車に戻ると、馬車を帝国へ進ませる。


 地面が硬かったお陰か、雨の影響はそれほどでもなく、少しの水たまりがある程度であった。


 その少しの水たまりに空から差し込んだ光が反射し、薄くなっておった轍を力強く描いていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


面白かったと思っていただけましたら、

ブックマーク・評価をいただけると、執筆の大きな励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ