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【錬金術師の再臨】〜錬金術が消えた世界で、わしの知識だけが規格外だった〜  作者: 新生浮世
間章 長旅前の準備編

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第98話 旅の前日は華やかに……華やかとはなんじゃ?

 各々が武器に満足した中、わしらは家に戻る。


 客車の中でも武器の話をしておったが、まぁよい。


 家に入り、夕飯を食べる。


 長旅が近いと言うこともあり、無駄に動くこともなく各々が英気を養う。


 丁度ご飯を食べ終わった所でドランが、わしの方へと視線を向けた。


「そういえば、ボニフは武器どうするんだ?」


「わしか? わしは自前の武器がある。

 さっき蔵から出してきたでな。

 調整したらそれを使うつもりじゃ」


「ボニフさんの専用……気になりますっ」


 アリアが身を乗り出して聞いてきた。


「あまり大したものではないぞ?」


「いえ、これまでの同行からするに、私達には予想も出来ない武器かもしれませんね」


「ですよね! 私もそんな気がするんですよ」


「ボニフの武器がまともなわきゃねぇよな」


「なんかひどい言われようじゃが、本当に"見た目"は普通じゃよ」


 わしは、席を外し武器を持って三人の元へと戻った。


「わしの武器はこれじゃな」


 それを見た三人は、どう反応してよいか分からぬ……といった表情じゃな。


「えーと……なんですか? これは」


 アリアがわしの武器を指差して言う。


「なんというか、凄い地味だな」


「これは武器……なのでしょうか」


 まぁそういった反応にもなるじゃろうな。


 何しろわしの武器は──


「まぁ、三人がそういった表情になるのは分からんではない。

 見た目は"ただの棒"じゃしな」


「ですよね……」


「俺の目がおかしくなったのかと思ったぜ」


「とはいえ、ただの棒ではないですよね?」


 そりゃ、ただの棒ではないが。


「まぁこいつに関しては説明ができん。

 名を"万象器"(ばんしょうき)と言う」


「バンショーキ?」


 アリアはわしが口にした武器の名を、怪訝そうになぞった。


「まぁ、便宜上そう呼んでおるだけじゃ。

 それにわしは錬金術がメインじゃ。

 武器はついでみたいなものじゃな」


 わしは一拍置いて、ため息をついた。


「と、いうかじゃな。

 わしは戦闘は専門外じゃぞ?

 錬金術は学者とか研究者の範囲じゃからな」


 わしはそう言ったが。


「いや、しかし今までのボニフさんの行動からしたら……ねぇ?」


 アリアがドランを見る。


「そもそも専門外が盗賊を複数人倒すとか……ねぇだろ。

 そう思うよな?」


 ドランがフレインを見る。


「スタンピードであれだけ活躍していたのを見てますから……

 さすがの私もちょっと同意しかねますね」


 三人が揃って頷いた。


「事実なんじゃがのう……」


 わしは自分の武器を元の場所へと戻した。


****


 アグリスへ向けた旅の出発前日の夕暮れ時。


「明日から長旅になりますよね?」


 アリアがそう告げてきた。


「旅へ向けた決起会をやりましょう!」


「なんじゃ?」


「決起会?」


「それはなんでしょうか?」


 アリアは拳を握り締め、力強く言った。


「旅へのやる気を出し、今からみんなで「やるぞーー!」って気合いを入れるために盛大に盛り上がる会です」


 何故かアリアはやる気をみなぎらせておった。


「長い旅になるんじゃし、今から気合いを入れると途中でバテてしまうわい」


「力は入れるべき時にいれねぇと、適切に槍は振るえねぇもんよ」


「えぇ、矢を射る時の集中は、構えた後から中るまでの瞬間にだけする事で命中率も向上しますね」


 わしら三人は口々にそう言った。


「いや、そう言う事じゃなくてですね……」


 アリアはわしら三人を見渡した。


「これから何があるか分かりません!

 より四人の結束を高めて、目標に向かって士気を上げるためにやります!」


「いや、しかしじゃな……」


「しかしじゃなくて、やるったらやるんです!」


 アリアがいつものアリアではない程主張する。


 一体何がアリアをそうさせておるのか。


 その答えはすぐにやってきた。


「と、いうことで今日という今日は私が料理を作ります!」


 アリアがそう言った瞬間、わしとドランは立ち上がった。


「わしは明日の準備がまだ残っておったようじゃ」


「槍の手入れを……」


「アリア殿の料理は楽しみですね」


 フレインだけは純粋に述べた。


「ボニフさんは昨日の夜、準備は万端じゃ!って言ってましたよね?」


「そうじゃったかな……」


 わしはシラを切った。


「ドランさん、新しい槍でまだ使ってもないのに手入れっているんですか?」


「いや、槍ってのは意外と繊細で……」


 ドランはよく分からぬ言い訳をしておる。


「そもそも、"何故か"ボニフさんとドランさんが私に料理をさせないじゃないですか。

 私も料理を振る舞いたいんです!」


 アリアの中で料理をすることは絶対らしい。


「ボニフ殿、もしかしてアリア殿の料理は、その、美味しくない……のでしょうか?」


 フレインがわしに近づき小声でそう聞いてきた。


「いや、なんというか……"味は"この上なく美味い」


 わしは特に"味は"を強調した。


「では、良いのではないでしょうか?」


 わしはあの感情をフレインに説明が出来んかった。


****


 アリアの料理が完成し、テーブルの上に色とりどりな……色とりどりな……


「やはり、黒いの……」


「いや、このスープなんて黒いというか紫だぞ」


「これは中々に趣のある料理ですね」


 フレインは言葉を選んで言った。


 さすがにその見た目に驚いておるようじゃ。


「ふふふ。どれも自信作ですよ!

 旅の前日に栄養満点です!」


 アリアは目を輝かせておる。


「さあ! いっぱい食べて下さいね!」


 アリアはそう言って自分の分を食べ始めた。


「うーーん! 美味しい!」


 それは知っておる。


 知っておるのじゃが、見た目のせいで全くと言って良いほど食欲が沸かぬ。


 沸かないどころか、食欲がどんどん失せていくのが分かる。


 わしがドランを見ると、同じ気持ちなのかスプーンを持ってはおるが全く料理に手をつけておらぬ。


「どうしたんですか? 二人とも。

 すっごく美味しいですよ」


 アリアは自分の料理を食べながらわしらへとそう言って料理を勧めてくる。


「フレインさんも遠慮しないで食べて下さいね」


 笑顔でフレインにも勧めた。


「では、いただきます!」


 意を決したフレインは料理に手をつけて食べた。


 口に運び、その味を噛み締めるように味わい、そして飲み込んだ。


「これは! 街で食べた料理よりも洗練していて、今までで食べたどの料理よりも美味しいですよ!」


「もぅフレインさん。

 もっと褒めていいですよ」


 フレインはその味に見た目が気にならなくなったのかアリアの料理を食べ進めておる。


 その様子にアリアは上機嫌になった。


 しかし、視線はわしとドランをチラチラと見ておるのが分かった。


「ドラン、そろそろ食べぬとアリアが不機嫌になるかもしれぬ」


「そうだな……さっきからチラチラ見られてるしよ」


 わしとドランは同時に料理を口にした。


「「…美味い……」」


 わしとドランは同時に呟いた。


 やはりアリアの料理はうまかった。


 いや、もっと言えば以前食べた時よりも美味くなっておった。


「ふふふ、そうですよねー?」


 アリアの機嫌がさらによくなった。


 フレインは普通に美味しそうに食べておる。


「しかし、こんなに美味いのに……」


「どの店で食べるよりも、極上の味じゃのに……」


((また食べたいという気持ちが全く沸かん!))


 わしとドランの心の声が重なった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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