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【錬金術師の再臨】〜錬金術が消えた世界で、わしの知識だけが規格外だった〜  作者: 新生浮世
間章 長旅前の準備編

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第97話 新しいものは嬉しいもんじゃな

 ボルジャーはまず、フレインの方を向いて弓を取り出した。


 弓の歪みや弦の張りを最終確認してフレインに手渡した。


「弦を弾いてみてくれ」


 フレインは弦を軽く弾いた。


 ──ピンっ


 軽く高い音が工房に響いた。


 フレインの指が、わすがに止まる。


「良い音だ。違和感はないか?」


「えぇ、正直驚きましたね」


 表情は変わらぬ。


 じゃがフレインは何度か弦の引き心地を確認する。


「軽すぎず、安定のある重さですね。

 何より弦自体が滑らかなのにしっかりひっかかりますね」


「それについては、こいつが持ってきた素材の力だな」


「いや、素材から弓に適した加工をしたおぬしの手腕じゃろう」


 わしがそう言うと、ボルジャーは照れくさそうにして、言葉を続けた。


「あとは矢を番えて、実際に引いてみて違和感ないか確認だな」


 ボルジャーがそう言うと、フレインは持っていた矢を番て、弦を引いた。


「違和感はありませんね。

 今までの弓に比べて安定感が増しています。

 これであればそうそう外れることはないでしょうね」


「それに関しちゃお前さんの腕次第だがな」


「えぇ、この弓の出来に恥じぬように精進するまでです」


 ボルジャーは満足そうに頷いたあと、槍の方を取り出した。


 自身で軽く振り、細部の状態を確認してからドランへ手渡した。


「へへ、ありがてぇ」


 ドランは心底嬉しそうに槍を受け取る。


「んだ?こりゃぁ」


 槍の柄を持った瞬間ドランの顔つきが変わった。


「ん?なんか問題があったか?」


 ボルジャーが聞く。


「あ、いや。柄の感覚がな……」


 ドランはそれだけ言うと柄を両手で持ち、軽く折り曲げるように力を加えた。


 さらに今度は逆方向へと力を加える。


「ちょ、ちょ! ドランさん!?」


 アリアは慌ててドランを止めようとする。


 それをボルジャーが止める。


「いや、嬢ちゃん。

 槍は"しなり"が重要な武器でな。

 特に最初は柄の強度としなり具合を、ああやって確認するんだ」


「そうなんですね。いきなり折ろうとしてるのかと思ってビックリしました」


 アリアはホッとした様子で言った。


「こりゃすげぇな」


 感触を確かめたドランが槍を改めて見て呟く。


「強くしなやかに曲がるのに全く折れる気配がねぇ。

 それなのに硬い。

 正直意味が分からん」


 槍の状態に満足がありつつも、今までの槍との違いに混乱している様子じゃ。


「さすがの俺も自分で作りながらビックリした」


「多分こんな槍には出会うことはない、と断言してもいいぐらいだ」


「へへ、同感だぜ」


 すぐさま混乱した様子から切り替わり、ドランは目を輝かせて槍を撫で始めた。


「最後は嬢ちゃんのだ」


 短剣を二本取り出し、片方ずつ刃の歪みやバランスを見てアリアへと渡す。


「二本、ですか?」


「そうだ、比べてみな」


 アリアは二本を両手に持って並べ、見比べた。


「長さが、違う?」


「それだけじゃねぇぞ。

 短い方に魔力を流してみな」


 アリアはそう言われ、短い方へ魔力を流す。


「えっ!?」


 アリアは驚く。


「なんか、魔力の伝わり方にひっかかりがないというか……変な意味じゃないんですけど……」


 アリアは言葉を詰まらせるが、そのまま続けた。


「凄く気持ち悪いです!」


「ガハハハ! 言い方は悪いが気持ちは分かるぞ」


 ボルジャーはアリアの言葉を聞いて豪快に笑った。


「隕鉄の質が、この世のものじゃねぇ!と言いたいくらい魔力伝導率が良かったんでな。

 まぁ俺は専門家じゃあないが、武器としての能力は分かる」


「武器への魔力伝導がスムーズじゃと、単純に負担が減るぞい。

 筋力で劣りやすいアリアに、武器の魔力伝導率の高さは単純な武器自体の性能より重要かもしれぬ」


 わしがそう付け足すと、ボルジャーも同意するように頷いた。


「長い方は軽く振りやすいようにしてある。

 まぁ重心の方は正直嬢ちゃんにあわせて調節……というのは実際に振りながらでないと出来ん」


 そう言って、ボルジャーがわしの方を見た。


「その辺りはわしがやるでな」


「どうせ何も言わんでも、やったんだろうがな」


「まぁ、その通りじゃな」


 ボルジャーは「ふん」と鼻を鳴らし、視線を外した。


「そっちの剣振ってみな」


 ──ヒュッ


 刃が風を切る音が心地よく鳴る。


「軽いですね。 初めて触った剣じゃないみたいです」


「その辺りは嬢ちゃんの今まで使ってた剣に似せてある。

 短剣や剣の類は、握り心地や持ち手の太さなんかが変わるとバランスが崩れるからな」


「さすがじゃのう」


「お前さんに言われても嬉しくないぞ」


「いや、純粋に褒めておるんじゃが……」


 三人は各々自身の武器の感触を確かめておる。


「あの三人のは作ったが、お前さんのはいいのか?」


 ボルジャーがわしの方に向かって、そう聞いた。


「わしは自前のが、家にある。

 蔵に直しておいたが、丁度いい機会じゃから引っ張り出してくるわい」


「そうか。 お前さんのことだから気持ち悪ぃ武器なんだろうな」


 失礼なやつじゃ。


 じゃが非常に良い戦力強化になったの。


「さて、何か不満があれば持ってこい」


 ボルジャーは短くそう言った。


「代金はいくらになるかの?」


 わしはそう言って袋に手を伸ばした。


「あー、それがだな……」


 ボルジャーは目を泳がせる。


「なんじゃ?」


「あ、いや。なんというか」


「らしくないのう。ハッキリせんか」


 ボルジャーは意を決したように言う。


「今回の素材が余ってな……その、余った素材を譲ってくれねぇかと思ってだな……」


「なんじゃそんなことか。別に良いぞ」


「え?マジか?」


 わしの即答に驚いたのか、ボルジャーは目を丸くした。


「いや、それより代金をじゃな……」


「いやーありがてぇ! しばらく休もうかと思ったが、楽しみが増えたわ!」


 ボルジャーはそう言って店の奥へと移動しようとした。


「いや、じゃから代金をじゃな!」


 ボルジャーはすでに奥に引っ込んだが、奥からくぐもった声が届いた。


「あほか!余った素材で余るほどお釣りがくるわ!

 これで金まで貰ったら割に合わん!」


「はぁ、そんなもんかのぅ」


 わしは袋から手を離した。


 後ろを振り返ると、三人は未だに新しい武器の感触を確認しておった。


「いつまで確認しとるんじゃろうか……」


 気持ちは分からんでもないが。


 わしは三人が満足するまでその場に待つハメになった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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