第94話 もう二度とやらんからの!
報酬をもらいギルドを出る。
空は暗くなり、街に夜の顔が出始めておった。
「なんか、ちょっと金稼ごうかってだけだったが異常に濃い一日だったぜ」
「そうですね……」
アリアは少し疲れた様子じゃ。
「しかし、おかげで目的としてはかなり達成したのではないですか?」
「うむ。何しろ三つ分の依頼の報酬じゃからの」
わしは報酬の入った袋をたたいて答えた。
「さて、宿に戻るかの」
わしらは宿へと戻って、その日の疲れを癒した。
****
翌日。
「おい!ボニフ!あれ買うぞ!」
ドランがわしの袖を引っ張り肉屋へと入る。
「ほぅ、確かにこれは買いじゃな!」
レーベン名産の乾燥腸詰めを買い込む。
あまりの量に店主が驚きながらも、大げさに感謝しておった。
「これの調理法のオススメはありますか?」
そうアリアが店主に聞いておった。
わしとドランが微妙な顔つきになったのは言うまでもない。
「アリア殿は料理もされるのですね」
「はい!料理楽しいですよ!
ボニフさんの家に戻ったらまた作りますからフレインさんも食べてくださいね!」
アリアは満面の笑みで言った。
「それは楽しみです」
フレインは純粋にそう答えた。
わしとドランはますます微妙な顔をするのであった。
いや、確かに美味いんじゃがな……。
****
「これは、美味いのぅ!」
「確かにボアの肉にクセがないですよ」
「このような料理が……エルフの皆にいつか教えてあげなければいけませんね」
ドランが耳にしたという、ボア肉の美味い料理店に入り、舌鼓を打つ。
いや、それにしても、じゃ
「おぬしは、どれだけ食べるつもりじゃ?」
「あん?まだ五皿目だぞ?」
「"まだ"? まだ食べるつもりですか?」
「食べ過ぎは体に毒、と聞きますが……」
「んなもん後で体動かせばいいんだよ」
ドランの食いっぷりにわしらだけではなく、料理店の店員にまで呆れられておった。
****
さらに翌日──。
わしらは再びギルドを訪れる。
「あー、領主からの連絡?
……んー、なんか来てた、かも?」
相変わらず、やる気がないようじゃ。
しかし、しっかり出勤だけはするんじゃな……
「あ、あった。多分これだね」
リサはそう言って皺皺な紙をカウンターへ置いた。
いや、なぜ皺皺なんじゃ。
「あのー、これ領主様からの書状ですよね?
なんでそんな皺皺な……」
アリアが恐る恐る聞いた。
「いや、依頼書の中に混じってて、間違えて一回ゴミ箱に入れちゃったんだよねー。
いやーうっかり」
悪気のなさすぎるリサの姿にさすがのドランも唖然とした。
「人間社会では長の手紙を、あのようにしても問題ないのですね」
「いや、そんなわけなかろぅ……」
「貴族様の書状を皺皺にしたら不敬罪もありえますよ……」
アリアがそう言うも
「えー?あの領主なら大丈夫でしょー。
ってか用が終わったならあちらへどうぞー」
そこまで言うとリサは本へと視線を移した。
「ある意味あいつはボニフより無敵だな」
ドランはそうポツリと言った。
失敬な。
「とりあえず封蝋、開きますか?」
「はぁ、そのまま開くと破れるかもしれぬ」
わしは書状をアリアから受け取る。
──分析。
──状態記憶反応、よし。
(そのまま再構成すると文字が消えるかもしれぬな……)
わしは脳内の演算をフル回転させる。
──インク成分、分析。
──分子結合固定。
──羊皮紙成分および封蝋の構成要素を術式に保存。
──インク成分、および形状の固定。
──再構成。
──術式展開!
羊皮紙に錬金術式が展開され光る。
──インク成分と形状をそのまま再構成対象に結合。
そして光が収まり、綺麗な書状が現れた。
「こ、これで……大丈夫……じゃろう」
(脳の奥が、疲労を訴えておるようじゃ……)
「錬金術ってこんなことも出来るんですね!」
「これは凄いものを拝見させていただきました」
「すげぇ!さすがボニフだな!」
「なぜか褒められても……嬉しくないわい……」
戦闘の時より尊敬の眼差しを受け取るのはなぜじゃろうな。
「ボニフさん、なんか疲れてません?」
「当たり前じゃ!文字情報だけ固定したまま、紙だけを再構成するなぞ普通せんわい!
計算量だけ多いのに結果が綺麗になるだけなんじゃぞ!」
「ボニフ殿がこんなに声を荒げているのは初めて見ましたね」
「あ、あぁ。なんかちょっと嬉しいのはなぜだろうな」
「ま、まぁとりあえず封書を開きましょう」
(もう二度とこんなことに錬金術は使わんわい)
アリアは封書を解いて書状を広げる。
「えーと、レオポルト公爵からの返信が来たため、
この書状を持って領主邸に来られたし。
門番には書状を持った四人が来たら最優先で通すように言ってある。
時間はいつでもよい」
「だ、そうですよ」
アリアが読み上げた内容で旅へと向かう道一歩先へと進んだ音がした。
「書状、元に戻して良かったな」
「えぇ、さすがボニフ殿です」
「ですねー」
「なんか納得がいかんわい」
わしらはそのままエルンストが待つ領主邸へと向かった。
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