零ー44 どう思われようと気にしない
私、その場の思いつきで(殴り書き的な)書いているせいか、急に全く書けなくなる時があります。次作からはもう少し考えてから書くようにしますね。
「な、なあルイ。お前……何した……?」
「私には暫くお2人が話していて、いつの間にかルイさんがフェニックスの首を切っている光景が見えていたのですが……」
男の首を叩ききった後、俺は2人を手招きして呼んでいた。
俺が男を殺った事による2人の反応は、アストはそもそも見ていなかったせいで、突然消えたカメレオンに少しだけ動揺している。リレンの方は見ていたが、何をしたのかが全く分からないといった様子だ。
「1回死んでもらっただけだ」
「「……?」」
いや、端的に言うとこうなるんだよ。結果としてな。
「ここの試練はもう終わったって事で理解してくれ」
「倒したって事でいいんだな?」
「ああ」
「私としましては、腕1本くらいは持っていかれる激戦を予想していたのですが、そうでもないのですね」
安心しろ、次からはそうなると思うから。
というより、最悪全滅もあり得るんだよな。もし他の幻魔が男と同じくらいの力を持っていたのだとしたら、だけどさ。
まあ確かに今回は呆気ない終わりだよな。消化不良っていうか……。次からは死なない怪我しない程度の激戦希望。
「――よし、帰るか」
「そうすっか」
「そうですね」
「「「…………」」」
「どうやって?」
「降りてきた穴からじゃねえのか?」
俺達は揃って辺りを見渡す。
「私達が来た時は、確か塔のような穴がありましたね」
「無いけどな」
先程辺りを見回したが、そこには先が見えない緑色の光に照らされた緑の草原が広がっているだけだった。
「いえいえ、ありますよ。あそこに」
俺の言葉を否定したリレンが頭上を指さす。そこにはリレンの言う通り1本の柱が確かに存在した。ただし――
それは天から伸びる、半ばから削られてしまっている1本の柱であった。
「「まじか……」」
「出口は地道に探すしかなさそうですね」
~~~~~~~~~~
「……報告」
「……何もねえ」
「……何もありませんでした」
『扉しかなかった』
「だよな……」
予想していた通り、げんなりとした残念な返事が帰ってきた。
出られないことを知ってから早10日。俺達は別れて草原を走り回っていた。合流の目印は半ばまで削られた柱の真下。
木も何も無い草原で目印なんて普通はいらないのかもしれないが、この空間、とにかく広い。どれくらいかというと、全力で走っても端まで辿り着けないぐらいだ。
転生して身体強化が使えるようになってからはだいたい時速100キロくらいは出せるようにはなってる気がするけど、帰るのを考え、6時間走っても端まで辿り着けないという……最早遺跡じゃないよなここ。俺より倍は早いユキは何とか端まで辿り着いたらしいが、そこには透明な壁があり、その奥にはまた草原が続いていたとか……。
そしてここ9日くらいは同じ返事が――
「あれ、ユキなんて言った?」
『扉しかなかった』
ユキ曰く、扉しかなかった……
「絶対それだろ!」
「それじゃねーか!」
「それですよ!」
『言ったよ?』
危ない危ない。今日まで同じ報告ばっかりでついつい同じ返事を返してしまったが、ユキがさらっと重要な事を言ったよ。ユキもなんでなんでもないように言……そう言えばユキの声って常に抑揚無かったな。泣く時は泣くから感情の隆起はしっかりあるんだろうけど、ユキの声からは感情が読みずらかったりする。10年以上一緒にいるけど分かるようになったのは、何か食べたいって時に声がほんの少し低くなること。あとは……ユキが何かに引いた時に左の後脚をほんの少し浮かせるくらいだ。浮かせた後は、その足で俺の頭を蹴りながらどこかに飛んでいく。
……俺ってまともな事知らないな。
「ゴホンッ。ユキ、その扉ってどんな感じだった?」
『緑色のどこでもドア』
「……」
「なあルイ。どこでもドアってなんだ?」
「……ただの別の場所と繋がる戸と思ってくれ」
「それは大変興味深いですね。空間魔法の類ですか? それとも時魔法――」
あぁ……緑とか絶対アイツだ。それにもう1人。どこぞの猫型ロボットと同じような物を作る人といえばあの方以外いない。
この世界の神の習性? の"面白ければ何が起ころうと気にしない"を1番に体現してしまっているあの方のことを俺は少し……いや、かなり苦手だ。
数々の魔道具を作るその発想力は満点。だが、その人となりがマッドサイエンティスト的――とまではいかないにしても、あれはなんというか……子供特有のちょっとした残酷さを持つ方だ。若すぎる見た目はともかく俺より結構歳上ではあるんだけどな。
「はぁ……リレン、アスト」
「なんだ?」
「どうしました?」
俺はそろそろかなと思い、包丁や鍋等をポーチから取り出しながら2人に話しかける。
「明日、ちょっとした戦闘になる……と思う。だから今日はご飯食べたら明日に備えて休もう。見張りはいらない」
「休むってのは分かるが、見張りいらねえのか?」
「あぁ。俺達がユキ言う扉に近づかない限りは(タンッ)アイツも何もしてこない、そもそも(タンッ)扉に入っても何もしてこないと思うけどなっ(ダンッ)」
「アイツっつーと、フェニックスの事か」
俺の考えてる通りだとしたら、絶対にアイツは今頃酒でも飲んで寛いでいる。右往左往している俺達を肴にでもしてへらへらと笑いながらっ。
「あの、ルイさん?」
野菜を切っていると、リレンが不思議そうな顔で俺を見て話しかけてきた。
「どうした?」
「なんと言いますか、ルイさんが物に当たる姿をこの頃よく見ますので。何かあったのですか?」
「あー、いや、な。ただ、無性に……イライラするんだよ」
タイミングとしては俺がゴブリンに魔法を打ったあたりから。その時はまだ、少し感情が昂りやすくなったな〜って感じで面に出るほどじゃなかったんだが、アイツと戦ってからは名前も言いたくないほどアイツに対し、ずっとイライラしている。無意識に、野菜を切るというより、叩き切ってしまっているほどには。
「心当たりは?」
「うーん……心当たり、ねぇ」
今のイライラの原因は間違いなくアイツだけど、それは根本的な問題ではないんだよな。何せ、この感情が昂りやすくなったのに気づいたのはスイハちゃんといた時だからだ。
最初は相手にされないながらも両親がいる事に対しての嫉妬のようなもの。次に何故スイハちゃんはそんなにも愛らしいんだ! とか本人目の前にして叫んでしまったり、お菓子を出した時の欲望とプライドがせめぎ合っているのか手を出したり引っ込めたりする仕草が可愛すぎて少しずつお菓子の量を増やして癒されたりとか、耳を触ったら、顔を真っ赤にしながら俺の耳を前後に揺らしながら怒ってくる姿がこれまた可愛すぎて思わず抱きしめてしまったりとか、普段の俺ならやらなそうな事を平気でしてしまっていた。
そしてスイハちゃん繋がりで考えると、この感情の昂り易さの原因は――
「そうだな、恐らく黒い魔力だと思う」
「ルイさん……声に出ていましたよ?」
「ん……? 別に聞かれて困る事じゃないからいいや」
変に隠してる方が、いざバレたっていう時に恥ずかしくなるからな。……いや、スイハちゃんのの事に関しては、バレたとしても恥ずかしいことなんて何1つ無いよな。
「で、黒い魔力の事なんだけどさ。この世界の住人として何か知らないか?」
「そうですね……」
俺がそう聞くと、リレンは顎に手を当てて考え出した。
リレンはアーイスト王国の学院を首席で卒業したらしく、その知識量は相当なものとアストから聞いている。リレン本人から聞いた事では無いが、事あるごとに俺が不思議に思った事を口にした時には、すかさず答えてくれるので俺もその辺りは信頼している。
俺も15年間訓練しかしていなかった、というわけではないが、この世界の事はほとんど知らないに等しかったりする。一般常識等はセティさんから教わったが、それ以外は何故か日本の勉強をさせられた。日本の勉強をしてなんの役に立つのか、と聞いてもセティさんは「ミーシア様が教えといて、と言ってましたので……」と困り顔で言っていた。ちなみに、教師はいないので独学だ。
「黒に関してでしたら小耳に挟んだ事はありますね。確か、ハスト神聖国の兵士の方々が"黒に備えて"という理由で白い鎧を身に付けているらしいです。……私が見た時は白い鎧ではなく黒い鎧……いえ、上から下まで全身黒でしたね」
「俺が見た時は赤だったぜ。アイツらってもしかしたら全身なんかの色に染める変な趣味でもあるのかもしんねーな」
「アスト……貴方のそれは……」
アストの言ったことにリレンは最初、何か言いたげにしたが、もしかしたらその可能性も十分にあるのでは……と呟きながら再び顎に手を当て考え出した。
でも、リレン、アスト。考えてるとこ悪いが、赤いのは間違いなく返り血だと思う。アストはともかく、リレンは変な先入観があるせいで返り血だと断言出来ないんだろう。
その先入観の原因の、全身が黒いっていうのは俺も分からないけどさ。
結局、黒い魔力に関してはリレンも知らないらしく、いずれ分かるだろうということでこの話は幕を閉じたのだった。
スイハへ対するルイは、親バカすぎる父親って感じです。行動の一つ一つが愛おしい的な。15年間娯楽無しで癒し無し、姿は可愛いがとんでもなく恐ろしい神(夢魔神スウ)としか会っていなかったので、その反動が全てスイハに回った結果です。




