零ー33 騎士は神になれど悪魔には勝てず
「――と、まあこの様な感じですね。ここから先は何度も死んでしまった事によってぼろぼろになり、記憶の譲渡が出来なかったそうです――どうかしました?」
「〜ッ」
どうしたかって?
頭が痛いんですよ門番さ……テイト様。
俺って苦痛耐性Ⅵあったよね? それがありながら腹を刺された時並に痛いって……なかったらまた……またじゃないまたじゃない。
兎に角発狂でもして死んでたんじゃ?
「ああ、そういえばなんで私は人の身であるルイさんに記憶の同期をしたのですかね? 普通の人であれば死んでいるような事を……」
やっぱりか!?
なんだろう、神ってやっぱり何かがずれてるよな。何せ普通の人なら死んでることをやっても『あー、ごめんごめん〜』って軽い感じで終わるんだから。セティさんを筆頭にクナビコ様とかオウキ様とか……。
「あぁ……本当に駄目ですね、神になってから長いせいか、人の頃の身体ではなく神としての身体を基準に考えてしまいます……」
「〜っはぁ。ええと、テイト様も元は人だったんですか?」
漸く痛みが治まり、俺はテイト様が何やら聞いた事のある事を言ったので、それについて聞いてみる。
「はい。私は第1世代の人類から神になり、元は今は亡き国の騎士をしておりました。お恥ずかしながら、当時は”その騎士在りし戦敗北の2文字あらず”といわれ、拝められていたりもしましたね」
おおぅ、なんかとても凄い人だった。ちょっと特殊で強い門番って思ってました。そうですか、英雄みたいな存在だったんですね。
「ただ……」
「?」
それまでは少し自慢げに語っていたテイト様、けれど次には顔を少し青くしながら話だした。
「あれは国内に凶悪な悪魔が現れたと聞き、私は300程の私兵を引き連れ、それを討伐に向かった時の事です」
「――報告のあった村に私達が着いた時、そこには村人達の胴と頭が離れ、辺りが紅に染まっていました。そしてその中心にはとても美しく、血みどろの中としては場違いな程に純白な衣服を身に纏った1人の女性が居たのです。私はその女性の存在が場違いでおかしいと、そして何故か足がすくんでしまいました。なので私は部下に話を聞いて来るように言い、10人程がその女性の元に向かいました」
「どうなったと思いますか?」
「えっ。……その女性がただ迷い込んだだけでテイト様方が保護した、とかですか?」
俺は純白と言う言葉を聞き、よく知る人物の顔が一瞬脳裏をよぎったが、それは関係ないだろうと思い、かぶりを振ってなんとなく考えた事を答えた。
そんな俺の答えにテイト様は、それなら良かったのですけどね……と乾いた笑いをあげながら首を横に振った。
「飛びましたよ、首が、綺麗な放物線を描きながら。私にはそれが見えない鎌に刈り取られたように見え、死神を幻視しましたね。私は即座に女性が報告に上がっていた悪魔だと思い、盾を構え、部下に警戒するようにと促しました」
「返ってきたのは盾への衝撃、鈍い音と金属音だけ。それだけで私は何が起きたのかを理解できてしまい、背筋が凍りました」
「恐らくその時私は不格好にでも逃げるのが正解だったのでしょうね。けれど私はそれをせず、剣を構えました。その頃は騎士としてのプライドがありましたから」
「私は女性と対峙しました。ですが女性の目をその時しっかりと見た――見てしまった時、私の身体は何らかの魔法、または恐怖――それら今でも分かりませんが動かなくなりました。次の瞬間には炎、氷、雷が視界を埋め尽くし、そこで私は人としての生を終えました……」
え、ええと……。
「大変……でしたね?」
「はい……。ですが今となっては昔の話ですけどね。何か気になったことはありましたか?」
とてもとても、それはとってもありましたとも。映像を見せられてるような記憶の譲渡とか、記憶の最後に出てきたミーシア様は見覚えがあるけどその前にミーシアと呼ばれていた光? とか、世界が1つこのリラしか残っていなかったんだとしたら地球はどうして存在するのか、とか。
取り敢えず聞くのは特に耳に残った2つにするか。
「では第1世代の人類と純白の衣服を纏った女性とは誰だったのですか?」
特に気になったのがこの2つだった。
第1世代の人類ってことは第2世代もいるってことだし、何となく思ったのが、魔法がその頃には普通に存在しているってことは幻魔を食べた以降の話ってことになるんだけど、どうも悪魔が現れたからといって国がテイト様みたいな重要な騎士をそう易々と送るわけがない、そもそも戦なんて幻魔の被害がある中でできる訳が無い、前提で国がまともに機能してたかどうかすら定かではないし。
それにもう……ね。純白の美しい女性、炎氷雷を使う人って聞くとどうもあの人しか浮かばないし……。
「そうですね……。第1世代の人類というのは私が生きていた頃のリラ、第2世代は第1世代が滅んだ後、衰退しながらも生存していた幻魔以降の人類を指し、ルイさん方地球に生きる人類が第3世代と分けられています」
「俺のいた地球が第3世代?」
「はい。第3世代は主に個々の潜在能力を上げる代わりに第1、第2世代とは違い人並み以下の力しか持ちません。ですが、それを転生や転移させる場合には、潜在能力はそのまま、力が此方の住人と同じようになるので、人並み外れた存在になります。ただし、終焉の代行者に転生等をしていることを悟られない為にもそう頻繁には行えないのですが」
てことは、地球って終焉の代行者とやらにバレないようにこっそり創った武器庫みたいなものかね? 中身人間だけどさ。
「それと女性の事ですが……お察しだと思いますが……セルスティーナ様です」
セルスティーナ? セティさんだよな?
そんな血みどろの中、白い服着ていて、炎氷雷なんて上位の魔法3種同時に使える人なんて時代をいくら遡ろうとセティさんだけだろうし。いや、よく知らないけどさ。
でもテイト様がセティさんに殺られたっていうなら、同期……第1世代? 何年前の話だこれ?
「あの、テイト様って何歳ですか?」
「私ですか? 私はに――らぁ!?」
ニラ?
いや、違うよな。突如飛来してきた岩が真横から直撃したテイト様が変な声をあげながら吹っ飛んでたし。
そして岩が飛来してきたほうを見てみると、話に出ていた人物が何かを振りかぶったと思われる状態でぎこちない笑みを浮かべていた。
「……す、すとらいーく?」
「そうだな……」
流石にそれは無理があると思うけどな。どこの世界にも巨岩で野球する人なんていないって。仮にやってそうな人を挙げろと言われたらそれは孫○空とかのサ○ヤ人くらいだから。
「で、なんでテイト様に岩を?」
「うっ……い、いや〜、だって私は乙女ですし? ざっくりとでも年齢は知られたくなかったといいますかぁー……」
セティさんがこちらから目を逸らしながらそなことを言う。
まあ確かに女性は自分の年齢を知られるの嫌うしな。理解出来ないことはない……ないんだけどさぁ……
「ないわー」
「うぅ……」
何せテイト様って昨日と違って鎧じゃなくて私服なのか結構ラフな格好だったから生身に体よりも大きい岩が直撃したことになってるんだよな。しかも今はその岩に潰されて唯一出てる手はなんか痙攣してるし……。
まあ、あの龍の突進受け止めてたくらいだし死にはしてないか。
「何かあったか? 別れてからそんな日も経ってないけど」
と、俺が聞くと項垂れていたセティさんが顔を上げ、何処かほっとした様子を見せながら1つの提案をしてきた。
セルスティーナ(セティ)
表向きはミーシア付きの秘書神。けれど実態は別の神。生前は白の悪魔と恐れられ、死因は異界種将軍格2体に同時に襲われた事。ただし相打ちであった。
当時のステイタス
総魔力-80000
スキル
炎魔法・氷魔法・雷魔法・精神侵食
ユニーク
光の子・???・???・無詠唱・???
称号
孤独な死神・殺戮者・神域到達者・救世主
光の子は所謂神子。スキルにランクがないのは仕様です。




