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零ー32 白の少女は物騒

 

『――たっだいま〜!』


 光達が集まるいつもの空間。

 白の【ミーシア】はいつも通りの元気な声でポンッと現れる。

 けれど元気な声のミーシアとは違い、返ってきた声には何処か安堵と焦燥を感じさせた。


『おおっ! 良かった、ミーシアは無事であったか!』

『……これで半数か』


 ミーシアはどうしたの? と聞こうとしたが、それよりも先にいつも何も無いはずの空間に透明感のある箱に入っていたキラキラしている物と伏せている茶色い生物に意識が向いてしまっていた。


『どうしたの?』

『実はの、この揺れに関し――』

『そっちじゃなくてそこにある物と生き物だよ』

『いや、この揺――』

『……保護した』

『こ――』

『へぇ〜! 可愛いねっ』

『……だろう?』


 わりと凶悪な顔である。

 そして3回も無視された青の【ウィニア】はプルプルと震え始める。

 それに気付かない茶の【グラール】とミーシアは茶色い生物も交ぜて話を続ける。


「ニャァ」

『なんで言ってるのかな?』

『……よろしくっす、姐さん! だな』

『あはははっ、なんだかグラールが言ってると――』




『お主ら一旦黙らんかー!!』


 ウィニアは限界が来たのか、目をクワッと見開き叫びだす。するとウィニアの光が急激に大きくなり、光がなくなったそこには、巨大な鯨が存在していた。


『わぁっ! おっきな生き物だねぇ〜!』

『……ほう、壮観だな』

「ニァ(カッケェっす!)」

『お主らなぁ……』


 目の前に突如巨大な生物が現れたというのに呑気すぎる光と獣達に何処かその目に憂いを帯びるウィニア。お願いだから話を聞いてよ……と。


 そんなウィニアの心情を知ってか知らずか、ミーシアは初めて見る生物の周りをぐるぐると周り出す。そしてグラールは何か考え始めた。


『へぇ〜、食べたら美味しいかなぁ? あむ』

『なっ!? や、お主は何を学んできた!?』


 と、いつの間にかミーシアも人の姿になり、ウィニアに齧り付いていると、下の方で歓声(?)が聴こえ、そちらを見てみると象が存在しており、その周りを茶色い生物、ハイエナがぐるぐると回っていた。


『……やはり』

ぼぉーひはの(どーしたの)ブファール(グラール)?」

『……我らが降りた際になった姿に此処でもなれるようになっていると思ってな』

「んむ? あ、ほんとだっ!」


『むむむ……』


 スタッとこれまた何故か現れた見えないがある床にミーシアが着地する。


『……我らの存在が昇華しているのか?』

「見てみて〜、髪伸ばしたり短くしたり出来るよー!」


 何故か最初になった姿になれる姿が固定されていた光達。ミーシアは己の髪で色々と試し、理解すると今度は腕や足を伸縮させ始めた。


 そんな傍ら鯨の姿だったウィニアは光に包まれ、その巨大な姿を徐々に縮ませていた。

 そして光が消えるとそこには妙齢の女性が腰に手を当て立っていた。


「ふっふっふ、妾も人間の姿になったぞよ」


 フッと髪をなびかせるウィニア。

 目はいつものジト目だが、口角は少し上がり、何となくドヤ顔をしているようにも見える。


 そんな自慢げなウィニアを見たミーシアはすぐにタッタッタッと走っていき飛び付いた。


「えいっ」

「ふぁ!?」

「えへへ〜」


 突然抱き、にへらっとするミーシアにウィニアは目を見開き、抱きついた当人は何か違和感を覚えた。


「なんだろう?」


 その違和感の正体を掴む為、ミーシアは手でそれを掴んでみる。


「んっ……」

「?」


 ミーシアはウィニアの頬が薄らと朱に染まっている事に気付いた。

 それでもなお、ミーシアはそれが何か分からないので、その柔らかい何かを何回か揉んでいた。その度にウィニアは頬を染めながら身体を捩らせる。


「お主……」


 ウィニアがそろそろ限界だと思い、少し荒い息を吐きながらミーシアを剥がそうとした時、突如大きな揺れが空間を襲った。


 その揺れに驚いたミーシアはウィニアにぎゅっとさらに強く抱きつき、それに伴いウィニアは体制を崩してしまい、2人して倒れ込んだ。


「いててて……なんだったのかな?」

「いやお主……先に妾の上から避けてくれないかのう……」

「あ、ごめんなさいっ」


 その際鳩尾辺りにミーシアの膝がグッと押ささりウィニアがぐえっとカエルの潰れたような声を上げたが、ミーシアは続いてグラールが人間の姿になっているのを見て、うずくまるウィニアを気にせず近付こうとしたが、何やらその周りに柄の悪そうな男達5人が居た事から、顔を少し引き攣らせながら数歩後ずさる。


 すると、そんなミーシアの心情を知ってか知らずか男達はミーシアの前にミーシアをして一瞬見失ってしまう速さで瞬時に並び、ピシッと背筋を伸ばすと一斉に頭を下げた。


「「「よろしくっす! ミーシアの姐さん!!」」」

「……ええと……よろしく?」

「「「ハイ!!」」」

「ひぃっ」


 ミーシアは肩をビクゥッと跳ねさせる。


 そして痛みから立ち直ったウィニアがそんなミーシアを後ろから抱きしめると男達に問いた。


「お主らはさっきのハイエナか……?」

「ハイ! ウィニアの姐さん! 兄貴が俺らを人と同じ姿にしてくれたお陰で話せるようになりやした!」


 ウィニアはバッとグラールの方を見る。しかしそこには笑みを浮かべているただの好々爺しかいなかった。


「グラールは何処じゃ!」

「……我はここにいるのだが」

「なっ、お主がグラールか!? 冗談はよせ!」


 そんな馬鹿な!? と愕然とした表情をグラールに向けるウィニア。そんな反応にグラールは普通分かるだろうといった様子で少しムッとし、詰め寄ろうとしたが、再び起こった激しい揺れに、それは防がれた。


 皆が体を伏せながら揺れに耐えている時、ミーシアだけは髪を上手く使って己の体を固定して揺れに耐えおり、それを見た元ハイエナ達は瞳をギラギラ(キラキラ)させながらミーシアを見ており、それを見たミーシアは驚いて髪の操作が不安定になりグォングォン揺れた後、跳ね上がった。


 そして、揺れが漸く治まり、同時に落ちてきたミーシアが髪で作ったクッションの上に着地すると、体の中から何やら見慣れたものが飛び出て来た。


『はぁ、中々辛いのですね。体が動かせないというのは……』

『俺も嫌な夢を見てた気分だ……夢じゃないってことは分かってるがあんなの認めたくはないな……』


 ミーシアの中で激しく揺らされていたせいでふらふらと出て来たそれは緑と赤の光、エアとファルであった。


「あっ、おかえりー(……あれ? なんでわたしの中から出てきたのかな?)」


 ミーシアが最もな疑問を浮かべるがそれを声に出す前にエアが話し出す。


『先に言っておきますと私達は私達であり私達ではありません。いわば分身体的な存在です。ですので私達はここにいません』

「いや、そこにおるではないか」

『……まず聞けよ年増女が……』

「なんじゃと!? お主も変わら」

『それでですね』

「何故此処には妾の話を聞かない者ばかりなのじゃぁ!?」


 ウィニアが悲痛な声を上げるが、エアはそれを無視して話を進めた。


 エアが話したのは己の感情が高まった時に感じた不気味な黒い存在の正体、それに自分達の器が囚われていること、その中心にいるのがシーアスだということが器を通じて分かったこと。それと今自分達がいるのはミーシアに力を送ったからだと。

 それで話は終わりだと言わんばかりに「今の状態は疲れるから寝させてもらいますね……」と言いミーシアの中に入っていった。


「んー、シーアスの存在は普通に感じるから問題ないと思うけど黒い存在ってなに?」

「ミーシア、お主シーアスの存在が」

『簡単に言えば人の怨みとかの集合体だな。どうもそれは俺らの存在が不安定になったその隙間に入り込んでくる』

「……となるとシーアスはファル達とは違い力をミーシアに送れなかったか送らなかったかだな……力を送るとは?」

「そ」

『それは分からない、だがそれをしたお陰で俺は今ここにいる』


 とうとう話を聞いてもらえないウィニアが少し離れたところで膝を抱えながらいじけてしまった。


「ねえねえ」

『どうした?』

「ファルは人の姿になれないの?」

『なれないことはないが、今こうして話すのもだいぶ辛い状況だからなりたくはないな』


 ファルの言葉通りよく見てみればいつもの赤い光がいつもより少し弱々しかった。

 それを見たミーシアは何処からともなく現れた火縄銃のようなものを手に取り、首をこてんっと傾けながら、


「じゃあ取り敢えずシーアスとファル達の器を返しにもらいに行く?」

『あー、そう言ってもらえるのはありがたいが多分今の状況で行っても逆に呑まれる可能性があるぞ。何せ俺とエア、シーアスの力を持ってるんたからな……あとそれ仕舞ってくれ』


 そんな事を言うファルにミーシアは不思議そうな顔をしながらバンッと引き金を引く、ファルはビクッとする。


「わたしだったら問題ないよ?」

『あ、ああ……確かにあれが俺達の知ってるシーアスだったらな』

「?」

『要するとミーシアでも敵わないくらいに強くなっちまった。いや、正確にはシーアスじゃなくてあの変な奴が、だけどな』


 ファルは、早くそれを仕舞ってくれ、と内心思いながら、己が見た事をミーシア達に伝えた。


 それは人のような姿をしており、背中には鳥の羽のようなものが生え、時折不気味な声を発すると。そしてその付近に自分達の器があることを。


『恐らくだがシーアスの精神は奴に呑まれている。だが空になっているとはいえ器だけ取り返せば奴を倒すことでシーアスは戻ってくると思う。俺を見れば分かる通り俺達の存在はそんなに弱いもんじゃあない。帰るのに邪魔なあいつさえ倒してしまえばシーアスだって帰ってくるだろうな』


 と、逆に器が取り返せなかったらどうしようもないけどな、とファルは付け加えた。


「だがミーシアでも敵わない奴なのであろう? そんな相手にどうするというのじゃ?」


 最もな疑問を目から光が消えかけているウィニアがだす。そして最後まで言えたという小さなことでその光も少しだけ戻っていた。


『それに関しては私から』


 ミーシアの体からエアが再び出て来てそんな事をいう。ミーシア達は思った、


 寝るんじゃなかったの? と。けれどその話をするのは皆、無粋だと思い喉まで出かけていたそれを飲み込んだ。


『まずはグラールと……ウィニアに協力してもらいたいのです。良いですか?』

「……我はどのような事であろうと協力しよう」

「妾もじゃ」


 2人は首を縦に振り承諾の意を示す。


『それでは貴方達にはミーシアを守る盾となってもらいます。そしてミーシアは苦しいでしょうけど()()1人で奴……終焉の代行者とでも言っておきましょうか、なんか……あれはそれっぽいですし』

「名前ですらな」

『……だから口挟むんじゃねーよ……』

「ぐぬぬぬ……」


 ぼそっとエアに最もなことを言われ、自分でも自覚があるのか唸るウィニア。

 そんなウィニアの肩にグラールがぽんっと手を置いて首を横に振った。


 ウィニアは無性に悲しくなりミーシアに抱きついた、そんなウィニアをミーシアは優しく撫でる。とうとうウィニアは泣き出した。


『それでミーシアには終焉の代行者に挑みシーアスの器を回収してもらいます』

「シーアス自身は回収しないの?」

『それにはまだ此方の戦力が足りませんので今はまだ……。それとハイエナは……』

「ハイ! 俺達は何をすればいいっすか!? エアの姐さん!」


 瞳をキラキラと輝かせながらエアの方を見るギャング……もとい心優しき男達。

 そんな男達を見ているとふとエアがおや? と不思議そうにし、暫し熟考した。


『――そうですね。貴方達にはミーシアと一緒に行動してもらいます。但し、貴方達は戦わず、ミーシアがやられてしまった時の回収役です』

「待ってくれ。……話を聞く限りこの者等をミーシアに同行させるのは危険だと思うのだが」


 と、エアが提案したことにグラールが意を唱える。

 しかしエアは何故? といった様子で聞き返す。


『グラール、貴方がしたのですよね? ハイエナ達の強化を』

「?」

『あぁ……』


 何を言っているのか分からないといった様子のグラールにエアは何かを悟ったような声をだし、いいですか? と前置きしてから話し始めた。


『貴方はハイエナを人の姿になれるようにしましたね?』

「……したな」

『それですよ。唯の動物が人の姿になれるわけがないじゃないですか。貴方がハイエナを強化したのでそのハイエナが私達に近しい力を持ってしまったのですよ?』

「……それは悪いことであったのか?」


 何処かしゅんとした雰囲気を醸し出すおじいちゃん。そんな姿を見た心優しき男達はオロオロとしだす。


『いえ、今の状況に関していえば正直助かりました。何せ私とファルはミーシアの再生を、グラール達にはミーシアの存在が侵されないようにするのに精一杯でしょうから。但し、次からは無闇にそういう事をするのは控えるようにしてください。何が起こるか分かりませんので』

「…………善処しよう」


 少々いつもより沈黙が長かったグラールは渋々といった様子でエアの言ったことに頷いた。


 それを確認したエアはハイエナ達に向き直った(?)。


『そういう事です。分かりましたか?』

「分かりやしたァ! 姐御ォ!」


 何やら姐さんから姐御にランクアップしたエア。ハイエナ達は悟ったのであろう、悲しい光達の上下関係を。


『ではそろそろ行きますか……世界があと1つしか残っていませんし……』

「『あ……』」


 一斉に声を上げたミーシア達。


 残った世界の1つはミーシアが創り出していたリラ。

 けれどその世界は既に半分程侵食されてしまっていた。


「わわっ、早くとめないと!」

「封鎖じゃ封鎖ー!」

「……無理ではないか?」


 口では言えるが、実行するには明らかに力関係分かってしまうような暴力的な侵食。自分達がが終焉の代行者に劣っているという事を目の当たりにしてしまう。


 しかし、それが分かっていたのかエアは冷静に話を進めた。


『では予定通りにグラールとウィニアには私達と同じようにして下さい。そうすればどうとでもなります』

「どうすれと!?」

「……エア等と同じように元の姿になれば良いのではないか?」


 と、グラールが茶の光になりミーシアに溶けるように入っていくのを見ると、ウィニアはなるほどと頷き己も同じように青の光になり入っていった。


『では私達も』

『だな』


 エアとファルも同じようにミーシアに入っていった。


「それでは行きましょうか」


 少女が火縄銃のようなものを右と左に1丁ずつ背に掛けながらそんな事を言う。


 ……


 ……


 ……



『お主誰じゃ』

「ミーシアですが?」

『……』


名称を終焉の代行者に変更です

▼終焉の代行者

光達が創り出した生物の怨嗟がシーアスを通じて具現化した存在。いずれ訪れる世界の終焉を先んじて起こしてしまう。生への執念から表れた自らの脅威になるものを排除するその特性は、ルイやセティにも及んだ。


火縄銃(具現化した暴力)

せー婆の家にあったそれをミーシアがなんとなく模倣して少々おかしな性能になった武器。見た目形は現代日本人が知る火縄銃そのもの。が、仕組みは装填いらず(ただし10発打つと10秒間使えなくなる)の銃で威力はフルバースト(10発)で山が地図上から消えてしまうような威力。(ミーシアの主武装)


△ミーシア(?)

無邪気な暴力が無慈悲な暴力に...


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