零ー28 始まりの光、赤は紅い花を見る
世界がまだ創られていない頃
…
存在していながら存在していない、不安定なある空間に6つの”光”が生まれた
”光”はそれぞれ色が違い、それぞれ別の自我を持っており、それ故に”光”は自らの名を決めました
赤の光は自らを【ファル】と
青の光は自らを【ウィニア】と
緑の光は自らを【エア】と
茶の光は自らを【グラール】と
白の光は自らを【ミーシア】と
黒の光は自らを【シーアス】と
光達は考えました
『自分達は何の為に生まれたのか?』と
しかし光達は生まれたばかり。何も分からず何が出来るのかも分からない、光達は暫し途方に暮れました――
そんなある日、白の【ミーシア】は
『悲しいなぁ』
と、何となく思って呟いた言葉
しかし、次の瞬間何も無かった空間に光が生まれました
光達は新しい仲間が増えたのかと思い、その空っぽだった心に《嬉しい》という感情が芽生えました
しかしそれは勘違いだったと光達か気付くと、今度は白が言った《悲しい》という感情が芽生え、黒の【シーアス】は他の光達よりも一際悲しそうにしていました
すると、明るくなった空間に闇が生まれました
光達はまた何も無くなってしまうのではと《恐怖》という感情が芽生えます
赤の【ファル】は叫びました
『そんなは認めない!』と
それは《怒り》の感情、怖いという感情、存在するものを失ってしまう事の否定。他の光達も口々に、
『もうあんなのは嫌だよ...』
『私達が何をしたの!?』
『何も……出来ないか』
『ごめんなさいごめんなさい――』
《焦燥》《戸惑い》《諦め》《混乱》
感情が溢れ出し、空間が軋む
そんな中周りを冷静に見れていた白の【ミーシア】だけは違う反応をみせました
『光があれば闇もあるんだよっ、2つは相反して1つなの!』
と、言ったはずの白を始め、光達は初めは何を言っているのかが理解出来ませんでした。
しかし冷静になり、周りを見てみると光がもたらす明るすぎる空間に混ざり合うように闇が生まれ、決して闇が光を飲み込もうとしているわけではなかったのです
光達は《安堵》した
すると今度は土、葉そして水が生まれ、光達はある共通点に気付きます
光は白
闇は黒
土は茶
葉は緑
水は青
自らと同じ色という新たな発見に光達は《喜び》ました
そんな中自らと同じ色が無い事に気付いた赤の【ファル】は《奮起》します
すると
赤い火が生まれました
光達は《楽しい》を知った
これが世界の始まり――
それは
永い別れが近付いてくる事を表す――
~~~~~~~~~~
――大地が生まれ
――海が生まれ
――空が生まれた
――そこに生物が生まれ
――進化し
――滅んで
――生まれるを繰り返す
緑の【エア】が言いました
『私達って何なのでしょうか?』
『んー、わからなーい』
白の【ミーシア】が2つの惑星を眺めながらそう答えました
『我等は……存在しない物を創れる』
『しかし、妾達は創れるが、創った生物は作れたとしても創れはしない』
『それに僕達って他の生物と違って死なないし』
『そして俺達には姿が無い』
茶の【グラール】青の【ウィニア】黒の【シーアス】火の【ファル】はそう語る
生まれてからもずっと考えていた事、それでも未だに答えは出ない
創っても創ってもその答えだけは光達では創れない
『――じゃあ姿を創ろうよっ! そして私達が創った生き物達と一緒に過ごしたら私達が何なのかも分かるかもしれない!』
白の【ミーシア】の意見を聞いた他の光達は『それもそうだ』と自らが創造した生物に姿を変えていきました
――青の【ウィニア】は青の生物に
――緑の【エア】は緑の生物に
――茶の【グラール】は茶の生物に
――赤の【ファル】白の【ミーシア】黒の【シーアス】は人の姿になりました
『しゅっぱーつッ!』
光達は個性はあれど真っ白な心
何も知らず、何も見ていない
どんなものにも変わってしまう存在
――まだ知らない、世界の弱肉強食を
――まだ知らない、醜い生物の全てを
――まだ知らない、別れの時が近づいて来ていることを
――まだ知らない、もう後戻り出来なくなってしまったことを
光達は何も知らない、それ故に純粋すぎたことを――――
▼▲▼▲▼▲
『生きている者は全て殺せぇ! ただし! 我々服従すると言う者は己の最も大切な者の首を狩って来い! それならば一考の余地をやろう! ハッハッハッ』
頭のネジが何本も外れたように狂った笑い声を上げる者。その周辺には数多の死体が転がっていた。
『は、はは……。生きる為なんだ、許してくれよォ!?』
『いやあぁぁぁぁっ――』
『嗚呼……神よ、私達が何をしたというのですか……』
『ぱぱ、まま、なんでねているの? にげよ? ねえ……ぱぱ、まま、わたししずかにしたよ? どうしていつもみたいに「えらいねって」あたまなでてくれないの? どうして? ねえ、ねえ、ねえ――――』
「――な、何なんだよこれ……」
赤の【ファル】は眼の前で行われる残酷で無情な光景に呆然と立ち尽くしてしまう。
聴こえてくる数多の銃声、人々の悲鳴、狂ったように嗤う人、既に息がないだろう人に語り掛ける人。そして広がるのは己が司る火が辺りを燃やし尽くしている光景。
「俺達はこんなものを創ってた……のか?」
自分達はただなんとなくで様々なものを創ってきた。
けれど――
その創ったものがこの地獄の様な光景を創り出したファルは分からないと……否、分かりたくない、信じたくないのだ、決して自分達の創ったものが創ったものを殺している、そしてそれを嘲笑っているものがいるということを。
様々なものを創っている過程で出来た人間という生物、自分達は初めて同じ言葉を話す生物が出来たということでとても喜んだ。
それがどうしてこうなった? 何が悪かった? 自分達はこんな光景を見るためにこの人間という生物を創り出したのか?
ファルは頭を抱え呻きにも近い声を出す。
と、そこに1人の少女が近づいてくる。
「お兄ちゃんどうしたの? 頭いたいの?」
「……なん……だ?」
ファルは声を掛けてきた少女になんとかそう返す。
「えっとね、いたいところがある時はこうしたらいいんだって、いたいのいたいの飛んでけーって。どう? いたいのなくなった?」
少女は蹲っているファルの頭にその小さな手を乗せ少し頭を撫でたかと思うと手を離した。そして笑顔でそう聞いてくる。
が、突然の事にファルは目を丸くし何も言えなくなってしまった。
「え……」
「もー、まだいたいの無くならないの? 欲ばりさんだねーお兄ちゃんは。しょうがないな〜、いたいのいたいの飛んでけーっ、いたいのいたいの飛んでけー、ふふんっ、もー大丈夫でしょ?」
と少女は得意気に腰に手を当て胸を逸らしながらファルそう聞いた。
「……ありがとう」
「どーいたしましてっ。ほら、行こ? ここは危ないから、ね?」
そう言い、少女は手を差し出して来る。
「あ、ああ。俺はファルだ。えっと、君の名前は……」
「お兄ちゃんはファルって言うんだ、いい名前だねっ。私の名前はねーくー――」
――パァンッ
「え……」
突如として鳴った銃声
それに合わせ目の前の少女が力なく倒れる
そしてそこに1人の男が現れる
「ヒャッハーッビンゴだぜェ! やっぱいいもんだねぇ人を殺すっつーのはよォ!」
そこにいたのは狂ったように笑いながら全身を真っ赤に染め、手にした黒い何かをうっとりとした目で見ている男――それはまさしく狂人の類いだった。
「あ、あぁ……」
「んぁ? もう1人いたのかよ、さっさと殺して――」
「おい……」
「あ? なんだよ」
ゆっくりと立ち上がった赤の【ファル】に対して男は心底めんどくさそうにそう返した。
「何故殺した……」
「あ? 何だって? 聞こえねーよ」
「っ、何故殺したと聞いている!! 同じ生物だろ! お前と同じく生きているんだぞ!? 何なんだお前は! 何故平然と笑いながらそんな事が出来る!? おかしいだろ!?」
ファルは顔を赤くし、激昂しながら男に問う。
眼の前で殺された少女、それを見て笑う男。そしてその男には少女の他にも沢山の人間を殺してきたと思われる痕。
それはあまりにも己が想像もしてい無かった、出来もしなかった全てが狂った光景。
ファルは、自分達が一体何をしていたのかがすでに分からなくなる程に精神が崩壊し始めていた。
そんなファルを男は嗤い
「――そんなのおもしれーからにきまってんじゃねぇーか!」
「あ……」
自分達が創り出した生物が同じ生物を殺して面白いと言う。
(俺が……俺達が創りたかった物はこんなものだったのか?)
ファルは自らの存在が崩壊していくのを感じとった。
「俺を怯えた目で見る奴が! 俺に泣きながら命乞いをしてんのが! 家族を守ろうとしながら死ぬ奴が!」
「う、う゛あぁァァァ――ッ」
「怒りに満ちた目が! 絶望した目が! 全てが! 俺は好きなんだよ!」
ファルは自らの中にどす黒い何かが生まれてくるのを感じた。それは錯乱していた心を急激に冷ました。
そして、黒いそれはもう止められそうにもない事を理解する。けれどこのままでは大変な事になる、ただそれだけは何故か分かった。
ファルは思考を巡らす。
俺は何をしたいのか
俺は何を救いたいのか
俺は、俺達は1番何が大事なのかと
そして考えた末に導き出した答え
それは皆と創り出したこの世界――
この世界を世界を守るには……
ファルは世界を守るとい意志の元、常に明るく自分達光を導いてくれる光を思い浮かべる。あの光ならばどんな事でもしてくれそうだと。
すると、己の力が徐々に失われていくのを感じ、その力が何処にいったのかも自然と理解出来た。
力を失う事で己の存在は消滅してしまうかもしれないが、そうするだけでも今までしてきた事が救われる気がしたから……
救われると信じて……
けれど全ての力を託すには圧倒的に時間が足りなかった。
(少しでも、少しでも多くだ。少しでも多くあいつに俺の力をっ――)
「あ? オメェどこ見てんだ? ……殺れればどうだっていいか、じゃあな」
――パァンッ
赤の【ファル】は赤い液体を流し、倒れる。
「あーあ、なんか変な感じがするヤツだったな。まあいい、次だ次!」
男は次の獲物を求め、赤の【ファル】から離れていく。
再び鳴り響く銃声と人々の悲鳴
残された赤の【ファル】はやがて黒くなり、空気に溶け込むかのように消えてゆくのだった――
▼赤の【ファル】
正義感は強いが、精神面が弱い。本人は光達の中で頼れる兄的な存在になろうとしているのだが、中々うまくいかない模様。
書いていて思いました
なんかヒャッハーしてる人に病んでそうな女の子、ちゃんと説明してくれるが最終的には殺しちゃう人....まともな奴いねぇ、と...




