零ー16 変わった2人組
「――ん……? ここは……」
さっきまで森だったのに今は何故か木製の部屋にいた。
「夢だった? いや……俺の小屋よりもだいぶ小さい部屋だから違うか」
取り敢えず窓があるし、そこから確認してみるか。
「――ここは……町?」
静かな喧騒、されど人はそれなりに多く行き交っており、辺りにはここと同じく木製の家が建っていた。
賭けに勝ったのか?
「ユキ、出て来てくれ」
俺は虚空に向かって声をかける。
すると何の兆候も見せずにユキは現れた。
『どうしたの?』
「取り敢えずごめん、突然帰還を使って」
『ううん、状況は私も分かってた。気にしてないよ』
「ありがとう」
良かった。
俺もあの空間に送るのは気が引ける、というより出来るなら送りたくない。音もなく暗い空間、初めてユキをあそこに送った時は泣いて帰ってきたしな。
取り敢えず撫でよう。
「――ユキ、ここがどこだか分かるか?」
『分からない、外にも出てないしこの世界の事も少ししか知らない』
「そうか……取り敢えず下に行こう」
『分かった』
ユキが頭の上に乗り、俺達は部屋を出ることにした。
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「――おや? おーい、あんた達! 連れの目が覚めたようだよ!」
俺が階段を降りるとふくよかな女性が俺を見ると奥の方に声をかけていた。
連れ?
「あの、ここは?」
「知らないで連れてこられたのかい? そうさねぇ、ここは宿屋兼食堂を営んでるミトギだよ! さっ、食堂の方に連れがいるから行ってきな!」
「いや、連れって……」
「私は仕事に戻るからね!」
…………行くか。
「執事! こっちだ!」
食堂に入ったらすぐに声をかけられた。
声をかけてきた人と隣の人が連れなのか?
「俺?」
「おう!」
そうらしい。
呼んでいるので取り敢えず彼らの向かいに座る。
「ええと、初対面……ですよね?」
「ええ、最初に私から。私はリレンです、主に魔法を使い、後方支援を担当します」
「俺はアストだ!」
「自分の紹介もまともに出来ない馬鹿は見ての通り剣を使います」
「ああ゛!? お前だって色狂いって抜けてんだろうが!」
「なっ!? 誰が色狂いですか!」
「お前だよお前! 美人がいたら常にナンパして回ってるじゃねえか!」
「はっ、それは私が行くのではなく相手から来るのですよ。貴方なんて常に面倒な事に首を突っ込むただの馬鹿じゃないですか!」
「何だと!」
「何ですか!」
何なのこの人達……。
これって自己紹介だったはずだよな?
「表出ろ! 今日こそ決着つけてやる!」
「望むところです!」
そして2人は睨み合いながら外に出て行った。
「えぇぇぇ……置いてかれた?」
会って早々勝手に言い合いを始めたと思ったら俺の存在も忘れたのかよ。
……気になることもあるしついて行くか。
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「――強いなあの人たち」
外に出ると2人は離れて睨み合っていた。
さっきまではよく分からなかったが、今の2人を見ていると、俺と同じくらい…………いや、剣と魔法を分けて考えたら完全に俺が負けてるな。
俺の15年はどこへいった……
『ご主人様、遠い目してないで止めた方がいいよ? 被害がでる前に』
「……あ、確かにそうだな。2人には悪いかもしれないけど。《束縛せよ-風縛》」
詞だけじゃ効果がなそうだし一節だけ詠唱を足した。
流石にこれで何ともなかったら心が折れるんだけど……
「――あ? 動けねえぞ」
「っ、これは……風魔法ですか」
よしっ、成功!
「あなた方がここで戦ったらここら辺が吹き飛びそうですしやめません?」
「「っ!?!?」」
「え、何その反応……」
話し掛けた俺の顔を見た瞬間に2人が目を見開いたかと思うと、今度は顔を青白くし始めたんだけど……なにごとですか……
「――後ろには何もいないな」
『ご主人様って自覚無いもんね』
「そう言われてもな……」
よく見たら野次馬に来た人まで同じような反応してるし……あ、5人くらい倒れた。
「…………食堂に戻りましょうか?」
「あ、ああ」
「そう、ですね」
微妙な表情をしている2人が付いてきたのを確認してから、俺は食堂の方へ歩き出した。
人の顔を見てそれは失礼だと思わない?
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「――私は今から食事にしようと思いますが、あなた方は?」
「いや、俺はお前が来る前に食べてあるから大丈夫だ」
「私もです、水だけ頼んで頂けたら」
「分かりました。注文いいですかー? 日替わり定食1つと水を3つお願いします」
「はいよー!」
まあそれしかないんだけど。
「――はい、日替わり定食だよ! 銅貨2枚ね!」
「はい、ありがとうございます」
「まいど!」
早いな、パンとスープにサラダ……日替わりじゃなくて毎日同じ感じっぽいな。
「いただきます」
「――そういえば私の名前はルイです。リレンさん、アストさん」
「おうっ、よろしくな、ルイ!」
「ええ、よろしくお願いします、ルイさん。それと私達に敬語は必要ありませんよ、何せ冒険者、ですから」
何故冒険者を強調した?
……まあ気にする必要もないだろうしいいか。それに敬語じゃなくてもいいのは助かる。正直かたっくるしいのは好きじゃない。
「んー、じゃあこれで。――それで聞きたいことがあるんだけど」
「いや、それはいいんだが……なあ……………」
「貴方が降りてきてから気になってたのですが……頭に乗せているそれは何でしょうか……?」
ユキが見えてたのか。
少しだけ驚いたが、あれだけの強さも持ってるんだから普通だろう。
取り敢えず俺は、ユキの事を神獣というのを抜きに説明した後、どうしてこうなっているのかというのを2人に聞いていった――




