零ー13 指先一つで......
「――要するに余裕が出来ると魔法は力を失うと?」
「んー、少し違いますね。余裕が出来ると力を失うのは間違いではありません。ただそこに来て漸く才能の有無が現れた、でしょうか」
「才能の有無ねえ、それまでは無かったということか?」
「いえ、ありはしたのですが、差がほとんど出来なかったのです」
才能の有無があったのに差がほとんど出来なかったって、随分と変わった話だな。
それってもう才能とか無いよな。
「当時、武器を扱う才能を持つ人は、魔法を扱う才能もありました。そういった人は戦う術を持っているため、魔物への恐怖は持ってはいましたが、それでも生き残れる可能性があるためそこまで大きいものでもありませんでした」
「そうではない人は魔力を持って尚才能はそこまでありませんでした。――武器を扱う人にに比べ、魔物への恐怖はとても大きなものです」
「まあそうだよな、すぐ死ぬんだし」
「はい。ですがそれは魔法と相性がとても良いものでした」
あー、だいたい分かってきた
「要するに、魔法の成長には恐怖が必要という事か」
「その通りです。まあお化けが怖いとかそういった恐怖ではなく、死へ直結する恐怖ですね。ルイさんが刺された時に感じた恐怖は、慣れない痛みを受けたことで死へ直結する程の恐怖になったのでしょう」
まあ半狂乱してたくらいだしな、なるべくして成ったって事か。
そういえば――
「封印した魔物中に"水"風"土"闇"光"はあったけど火は無かったよな、どこいった?」
「死にましたよ、結構早く」
「ああ、水の人に殺された奴か」
「はい、油断してたのか、急所を突かれて死んだようです」
窮鼠猫を噛む、か。鼠が人で猫が火の魔物、猫は物の見事に鼠に噛まれたわけだ。
「ちなみに、今、5体の魔物は、幻想の魔物、"幻魔"として語られています」
「幻想って空想じゃないか」
「現実逃避に近いですよね。今生きている魔物は"無"の魔物、どの属性にもなれない中途半端な魔物です。昔に比べれば弱い、けれど人々はそれと同じくらいの力しか持ちません。故にその魔物以上の存在を信じられない、信じたくなかったのかもしれませんね」
信じたくなかった……
確かに自分達の力が通用しない存在がいたら信じたくないのも分からないけど、復活しても対処出来るように頑張ろうよ……
「――そろそろ外に行きましょうか、風魔法についての説明をしたいですし」
「分かった」
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「――そういえば私、ユキちゃんがいつの間にかルイさんの頭の上に乗っているのが普通に思えてきました」
「《キュア》そうだな、少しは慣れてきてくれたのかね?」
魔法の練習をしに、俺が刺された場所に来ていた。
なぜ分かるかというと、そこに血痕があるからだ。
それに対して何も思う事が無い訳では無いけど、この程度の事を気にしていたら今後持たないと思う。
「慣れる、というよりだいぶ相性が良いみたいですよ。ルイさん寝込んでいた時だってユキちゃんずっと「うおっ、危な!」っとと、ユキちゃん、どうしました?」
『――黙って』
「そう言われてしまっては仕方がありませんね。……ルイさん、どうしてブリッジを?」
「しっかたないだろっっと。ユキがセティさんに飛んで行った時に、頭がグインってなったんだから」
……限界、ちょっと座るか
「まあ、ユキが俺に慣れてくれたっていうなら良かったよ」
「そういう事にしておきましょうか。――では風魔法について説明させてもらいますね」
「風魔法は一応不可視の魔法です」
「一応って所が何か意味深だな」
「不可視ではあっても魔力は見えますからね。この世界の人々は皆、魔力を視認出来ますし」
不可視の意味ないじゃん。
どうせ見えるならオーソドックスに緑に着色すればいいのに……
「この様に、《風刃》――どうですか?」
「ワー、スゴイスゴイ」
どうですか? じゃないから、確かに何かが出た気はした、でも速すぎて訳が分からないって……。
はっきりと分かるのは木が倒れたというくらいだし。
「属性魔法は、詞の概念さえ当てはまっていればどんな詞でも発動しますから試してみてください」
「何でもいいのか、じゃあ――《旋風》」
――ヒュウゥゥゥ……
「……そよ風じゃね?」
「――実感出来たようなのでいいますと、確かにどんな詞でも発動すると言いました。しかし、発動するだけです、詞の通りの結果になるとは限りませんなので詞は使う魔法にあった詞にしましょう」
「……だからか。あ、でも木は少し削れたな」
といってもほんの少し、1ミリくらいだ。
これも要修行だな。
「斬るだけでは無く、面の攻撃も使えますよ《風打》」
――バンッ
「あれ? 威力間違えちゃいましたね」
……うわぁ、木の半ばが穴空いて無くなったよ。
これを間違えたって、そんな誤差みたいな言い方……誤差で木が無くなるのか、跡形もなく。
「正直よく分からなかった」
「そ、そうですか……。では最後に燃費は悪いですが、使える詞を教えときますね。《風誕》」
「…………何も起きてなくない?」
「いえ、こうすればわかりますよ」
そういうと、セティさんは手首を横に振った。
するとその進行上の木々が纏めて切り倒された。
「お、おおぉぉぉ!? 凄いなそれ! 詞も何もいらないのかっ」
「そうなんです! こんな事も出来るんですよ――――」
そしてセティさんは空を飛んだ。
「どーですかー! 凄いでしょー!」
「ああ、かなり凄いわ! …………っ、はぁ」
「どーしましたー? 突然顔なんて抑えてー」
これは大声で言うべきでは無いよなぁ。というより言えないよなぁ。
「いや、あの……ねぇ」
『――セティ様、見えてる』
「あ……」
「見え? ……きゃあっ!」
セティさんは軽く悲鳴を上げ、降りてきた。
「……み、見ました?」
「…………見てないです」
「目を見て言ってくださいよぉ!?」
「……」
「うぅぅぅぅぅ……」
『――変態』
ユキよ、俺はすぐに見ないようにしたぞ。
だから変態は止めてくれ……。
……白だった、名誉の為に何がとは言わない。




