零ー12 恐怖が糧になるもの
「あ、起きてますね!」
「ええ、起きてますよ。ええ起きてますとも。だから食べ物と飲み物プリーズ」
「……分かりました。少し待っていてください」
セティさんは軽くた――め息を吐き、部屋を出て行った。
「何故ため息?」
『――ご主人様は分からないと思うけど、あと3日寝てたらご主人様死んでたんだよ?』
「は? ……はぁぁぁ!? 俺、そんなに寝てなくないか!?」
『――今日で4日目。死ぬ理由はセティ様が使った剣の副作用。セティ様も使ってから気付いたみたいで慌ててたよ』
「そ、そうか……」
危なすぎだろ!
セティさんも気付かなかったってどんな剣だよ!?
俺が知らずのうちに死にかけてた事に唖然としていると、セティさんが見覚えのある赤い木の実を持ってきていた。
「ルイさん、それに関しては本当に申し訳ないです……。まさか呪いがここまで強い物だったとは思いませんでした」
「鑑定はしなかったのか?」
「いえ、鑑定はしました。ですが、使った剣のランクはⅩ、私の鑑定では呪いがあるという事しか分からなかったのです。さらにいえばその首輪、私が説明した他にも効果はあるかもしれません」
「そうか」
セティさんの鑑定でも分からない事があるらしい。
でも呪いの剣ねぇ。確かに刺された時は痛かったし何かが怖かった。
何が怖かったかは何故か分からないけど、感じた怖さなら覚えている。なのに不思議とそれに関しては何も感じなくもなっている。トラウマにでも残りそうなのに。
「それで、えーと……それは?」
「プテです、採ってきました」
「……何処から?」
「そこからです」
「……俺の見間違いじゃなかったらそれ、毒入りじゃなかったっけ?」
転生初日に見た木の実の中にこれと同じのがあった。幻覚と狂乱を引き起こし、全身に常人では発狂する程の痛みを与えるって……
「よく覚えていましたね」
「記憶力には自信があるからな」
「では食べてください。大丈夫です、必要な分の解毒は済ませていますので」
「いや、でもさ、普通お粥じゃない? 俺、3日何も食べてな「そんなやわな身体じゃありません。えいっ」んぇっ」
人が喋ってる途中だって言うのに。
「――変な味だな、味の無いガムみたいな。あと全身がちくちく何かに刺されてるような……」
「まあ必要な分の解毒ですからね」
必要な分の解毒……毒?
幻覚○
狂乱○
痛み✕
…………ん?
「なんちゅうもん食わせてくれてんだっ!?」
「えー」
「えーっじゃないって! 常人が発狂するほどの痛みだそ!? 俺元日本人の一般人だぞ、おい!」
「常人? ……冷静になって考えてください《レスト》――発狂する程痛いですか?」
「……いや、そこまで痛く……ない?」
痛みはある、でも少し尖らせた鉛筆で軽くつつかれてるくらい。
おっと、これではまるで俺が常人じゃなくなったみたいじゃないか、ははは……
「――何でこうなった……?」
「なんでもいいじゃないですか」
「そうか、常人じゃなくても問題はないか。人間だし」
「……人間でもそんな人いませんよ…………」
「そこ! 聞こえてるからな!」
もういいよ、なんでも……はぁ……
「そろそろ動けるようになったと思いますが」
「ん? ああ、確かに」
「プテは体全体の機能を活性化させる効果がありますからね。昼食を摂ってきてはどうですか?」
「もう昼なのか、分かった」
腹も減ったし行くか。
「っと……あ……っ」
「あ……」
試練のこと忘れてた……
『――バーカ』
ユキの一言に俺とセティさんの間に、なんとも言えない空気が流れた。
~~~~~~~~~~
「――ご馳走様でした」
また魚っぽい味だったけど昨日とは違う味だったな、以上。
「今日はどうしたらいい?」
「そうですね、確認ですかね。魔力操作はかなり速く出来るようになっているはずですよ」
魔力操作っていうと、身体強化か。
「――これは……」
「どうです? 驚きました?」
「ああ、素直にこれは驚いた。まさかユキと同じくらいの速さで動かせるようになったとは」
前の速さがナメクジと考えれば、今の速さはネズミって感じだ。
でも、どうして急にこんなに速くなった?
正直刺された後は記憶が朧げでほとんど何があったか覚えてないんだよな。
「ルイさん、死に物狂いでヒール使ってましたからね」
「……覚えてないんだけど」
「それは仕方がないと思います。あの時は痛みと恐怖のせいで最早半狂乱状態でしたからね。まあそのお陰で成長出来ましたが」
死に物狂いで半狂乱って。そりゃあ覚えてないわ。
「そのお陰とは?」
「忘れ去られた魔法の特性です。今から900年前の話なのですが――――」
――当時、魔法はその全てが現在と比べるととても強大な力を有していました
それは何故か?
それだけの力が無くては生き残れなかったからです
魔物はその全てが強力無比
人々が思うは、恐怖、絶望、そして怒り
人々は神に問いました
『我らは何故こんなにも無力なのですか?』
と
神は言いました
『人の子が人の子である為』
人々は神に請いました
『それならば我らは人の子を辞めるのも厭いません。どうか我らをお導きください』
と
神はそれならばと
『魔を喰らいし者は魔の力を得るだろう』
"魔"
それ即ち魔物
人々が忌み嫌う物
魔の力を得ることは人の身から外れる事、人々が忌み嫌う者になるということ
人々は逡巡しました
そこにひとりの男が名乗り出ました
彼は人々が幾人もの犠牲を出しながらも、ようやく倒した異形の魔物の肉を喰らいました
しかし彼は倒れました
人々は神に見捨てられたのだと絶望しました
それから幾人もの人々が異形の魔物の肉を喰らい、同じ様に倒れました
人々が生への固執を諦めかけた時、奇跡は起こりました
男が目覚めたのです
人々が男に問を掛けようとしたその時、人々の前に火の魔物が現れました
そして火の魔物は巨大な炎の塊を創り出しまします
火の塊が迫る中、人々は『もう終わりだ』そう思いました
人自らの死を予期し、人々は死の時を待ちました――
しかし人々がいつまでも来ない死に人々は目を開けました――
そこには火の塊は無く、代わりに水の防壁が出来ていました
人々は男を見ました
そこには水を纏った男が
人々はまだ神には見捨てられてなかったのだと涙しました
そして男は手に水の槍を持ち、常軌を逸した速さで魔物に肉薄すると、火の魔物に水の槍を突き刺した
火の魔物は倒れました
それを皮切りに倒れていた人々も目を覚まし始めました
人々はそれぞれ"火"水"風"土"光"闇"の魔法を使える者、"回復"精神"時空"等の特殊な魔法を使える者がいました
人々は奮い立ちます
50年の日が経ち、人々は迫り来る魔物を打倒し、遂にはシストルム大陸の奪還を成功させた
そして魔物はもう1つの大陸、ミノア大陸に逃げていきました
しかし人々ももう攻めることは出来なくなっていました
それは力の衰退
最盛期の頃と比べると、その力は大きく落ちていた
人々は、ミノア大陸の各地に魔物を封印した
水の魔物 リヴァイアサン
風の魔物 フェニックス
土の魔物 ベヒモス
光の魔物 ルシファー
闇の魔物 モラクス
『ふっ、奴は我らの中でも最弱。次は我が...あれ?』
神「出番は後だから封印されといてー」
『我が覇道がー!?』




