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零ー10 苦痛、恐怖、そして成長

…………… 

「セティさんや」

「何ですか? ルイさんや」

「傷増やすの止めてくれない? 痛いし疲れるんだけど」

「すぐ終わったら修行になりませんから。我慢してください」



 あれから1時間がたった、と思う。


 最初にあった傷は全部治した。でも減らない、痛みと共に増えていく。

 原因は現在進行形で俺に膝枕をしながら片手に包丁を持っているセティさんだ。

 ヒールを使い、傷を治すとすぐに斬ってくるせいで終わりが見えない。


「《ヒール》《ヒール》《ヒール》――――」


 ずっとヒールを使っていると、どれだけ魔力を集めればいいのかが分かってきたので、今では5秒程で使えるようにはなった。





 2時間後~





「――もうよくない?」

「そ、そうですね。私もそろそろ足に限界が……。――今ある傷を全部治したら回復魔法は終わりにしましょう」

「オーケー……。《ヒール》《ヒール》――――」


 それから30分かけて漸く全ての傷を治した俺は起き上がり、セティさんと向かい合っていた。


「結構暗くなり始めたけど、まだやる?」

「はい、暗くなったらやれる事もありますので」


 今はまだ周りが少し見えるけど、もう少したったら灯りが無いせいで何にも見えなくなりそうだな。


 そんな中でやる訓練って何かあるかね?

 あったとしても猫みたいに暗い中でも周りが見えるようにするくらいだと思うけど。暗視とかさ。


「前準備として、まずは立ってください」

「いや、立ってもそんな長くは持たないけど」

「それも踏まえて、です。解決策はありますのでまず立ってください」

「分かった」



 重い……



「それでは魔力を集めて"キュア"と唱えてください」

「《キュア》……何も変わらないけど」

「ルイさん、切り傷を治せるくらいの魔力でしたら発動すらしませんよ」

「ああ、そっか――《キュア》」


 魔力は取り敢えず最初にヒールをした時と同じくらい。

 そして膝が震え始めてたのが治まった。


「疲労回復……か?」

「正解です。キュアの魔法は疲労回復の効果がありますが、肉体疲労の回復ではなく精神疲労の回復なので、脳を騙しているような感じです」

「えーと……どゆこと?」

「簡単に言いますと、使いすぎると肉体を傷めてしまいますので多用は出来ません」


「ですが、今回に限っては多用してもらって構いません。今日の目的は痛みに慣れてもらうことですから」

「なるほど」


 確かにずっと斬られていたせいで多少の痛みは慣れてきたかもな。というよりも、慣れざるを得なかっただけだが。

 魔法を使うのに痛みに意識を持っていかれるとすぐに不発に終わるしな。


「暫くはそうしてキュアを使うのに慣れてください」

「分かった、でも肉体を傷めるって骨とか筋肉だよな? 傷めたら立てなくなると思うんだけど」

「それに関しては大丈夫ですよ。傷めたら回復しますから。いくらでも続けてください」



 鬼か!



「やばっ――《キュア》――《キュア》」

「頑張ってくださいね」





 ~~~~~~~~~~





「――もういいですよ」

「っはぁぁぁ……疲れた。いや、疲れてないけど疲れたと言いたい……」

「お疲れ様です」


 実際あれからどれくらい経ったかは分からない。


 キュアを使ってるせいで疲れというものを感じなくなり、肉体に限界が来て倒れたら、セティさんに回復されまた立たされる。まさに地獄の無限ループだった。



「帰るか。うん、帰って寝よう、もう寝たい」



 俺は四足歩行で家に(ガシッ)……おや?



「――セティさんや。何故足を掴む」

「ルイさんや。何故帰るのですか?」

「終わったから?」

「終わってませんよ?」

「嘘でしょ?」

「本当ですよ? こうでもしなければ……死にますよ?」

「…………はい」



 神は残酷だ……




 






「――セティさんの姿すら見えないんだけどそれでもやる?」

「はい。最初に言った通り暗くなってからやれることもありますから」


 目の前の暗闇にはセティさんがいるのだろうが見えはしない。月明かりくらいあってもいいと思うが、周りの木々が光を完全に遮ってしまっている。


「では刀を持って立ってください」

「分かった」



 あ、これいい杖替わりになるかも



「《プロテクション》ルイさん、今から刃物を投げますが、当たって死にそうな部分は強化しましたから安心してください」

「え、待って。それおかしくない? こっちは何とか立ててる状況なんだけど」

「ルイさんはこちらが投げた物を避ける、または迎撃してください。では始めます!」

「え、ちょっ……」



 これっていつ来るか分からないやつか。


 避けるって言われてもな。何も見えないこの状況でどう避けろと……



 ――キンッ



 刀に何か当たった?



「ルイさん。刀、構えた方がいいですよ?」

「怖っ!?」



 今のってセティさんが刃物投げたって事だよな!?

 

 ……一旦深呼吸するか



「すぅ…はぁ…」

「いいですか?」

「いいぞ!」



 ――





 ――――





 ――――――――





「っ! がっ、あ? あ……ああ、ああ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」



 ――――痛い


 ――――熱い


 ――――苦しい


 ――――怖い




 突如、何かが刺さったかと思うと、それに対しての痛みを感じる前に、様々な感情が溢れ出てきた。

 俺の体はそれに()()しようとしているのか、体の中をなにかが駆け巡り、全身にこれまで感じた事が無い程の痛みに全身が襲われる。



「だず……げ……て……」

「ルイさん、ヒールを使いなさい。それが貴方の成長に繋がります」

「ぐっ……ひ、《ヒール》……《ヒール》《ヒール》《ヒール》《ヒール》――――」





「あっ、間違えました…………頑張ってください、ルイさん……」



 この時俺は何を考えていたのかが分からない。

 それでもセティさんが言ったことを唯一の救いだと信じ、痛みを堪えながらも回復魔法を使い続けていた――








 △▽△▽△▽




「……」

「寝てしまいましたか」



 私は疲れ果て、寝てしまったルイさんを見ます。



「流石に可哀想なことをしてしまいましたね……」





 懺悔(ざんげ)の小剣





 それが私のルイさんに刺した剣の銘です。



 "懺悔の小剣"それは昔、罪人の処刑に使われました。

 刺された者は苦痛を、そして恐怖を植え付けられます。

 最後には自らが犯した罪に怯え、悔やみながら死んでいきます。

 一種の呪いの剣でした。


 あまりに非人道的な剣だったため、今はもうありませんが。



 そんな剣をミーシア様に創って貰ってまでルイさんに使った理由はちゃんとあります。





 今のままでは確実にルイさんは死んでしまいます。



 ミーシア様やニーシャ様にとっては、たった一人の人間が死んだとしか思わないでしょう。



 ですが私はそうは思えません。


 幼き日に両親を失い、誰にも相談をせず、表面上は元気な様に取り繕って今の今まで生きてきたのです。



 私も()()()()()()に両親を失いました。

 その気持ちは痛いほど理解出来ているつもりです。


 これは同情なのでしょうか?


 そうなのかもしれませんね


 それでも私は彼の力になってあげたい、そう思っています。



「《鑑定》――」




 ルイ(17)

 職業:執事(仮)

 総魔力-1365/5500


 スキル

  風魔法Ⅰ・回復魔法Ⅴ・魔力操作Ⅴ・魔力増強Ⅰ・苦痛耐性Ⅵ・恐怖耐性Ⅹ・調理Ⅲ・生活魔法

 ユニーク

  精神力強化・精神適応・潜在能力解放・潜在能力拡張・(試練の枷)


 称号

  悲しみを背負いし者・残念イケメン・神獣の契約者・神の試練を受けし者



「――"懺悔の小剣"がこれ程とは……」



 恐怖耐性がⅩとなると受けた恐怖は相当でしょう。寝てくれて良かったかもしれません、いくら適応をしたとしても心にその恐怖が染み込んでしまっては本末転倒です。





 ――そして称号"悲しみを背負いし者"



「どうにかこれを無くせれば良いのですが……」



 その首輪がある限り貴方はずっと死と隣合わせでいることになるでしょう。

 それでも決して折れず、曲がらず、真っ直ぐに生き抜いてください。



 今生に幸あらんことを


 ルイさん、私は貴方の幸せを願っています。



 ▽△▽△▽△




セティ「私、あの剣は家に仕舞っていませんでしたっけ?」

???「ふふふ...」




なお、”悲しみを背負いし者”はリラでは持っている人が稀にいるくらいで持っている人は早死する人が多かったりします。

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