表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/215

7-15 女神新時代 ソラを目指す女神

 少し早めの昼食をと思って店を探していたら、先に冒険者ギルドが見つかった。


「森ではぐれた魔物の討伐とか依頼が出てるんじゃないか?」

「経験値を! 余に経験値を与え給え」


 興味を持つヨリトモとルイに押し負けて入ると、確かに討伐の依頼がいくつもある。宿代と食事代でそれなり出費があり収入も必要だから、稼ぐのも少しは必要ではある。依頼を確認する4人を置いて、オススメの食事処を聞き取り調査。裏手にいい店があると聞いて、まだ依頼を漁ってた4人を連れてその店へ。


「お主がこの店の事を聞いてる間に確認したのじゃが、この街にはちゃんとサガミハラが居るようじゃ。我とサクラは昼からは神殿じゃな」


 食事をしながらの話し合いの結果、そこまで望むならと言うことで、これから別行動。僕とハコネは女神問題でサガミハラさんに会いに行く、4人は近場の依頼を見つけたら狩りに行くという事になった。




 店出た後は先に宿を決め、4人の狩りが終わった後の合流はそこにした。翌朝には帰ってきてなさいという取り決め。何を狩りのターゲットにするのかは興味があるからギルドで依頼を受けるところまで一緒に行くと言ったけど、今夜獲物を披露する楽しみを残して欲しいと言うので、宿から別行動になった。


「もし倒されたらお主の部屋に戻るとなれば、慎重になるじゃろう」

「ここに戻されちゃうわけだからね」


 もしもの時を考えて、確保した宿の部屋にハコネの扉を出してある。そうでないとみさきちの部屋から出ざる得ないし。


 街を歩いてる人は、尖った耳を出している人と、出していない人。出していない人は防寒のためにフードを被っているので、その中に隠された耳が尖ってるか丸いか分からない。耳を出しているエルフは寒くないのだろうかと心配になるけど、やせ我慢するだけの価値がその耳出しにあるのかも知れない。


 サガミハラさんの神殿は、荒れるでもなくまともな状態。門の前に門番が居るけど、特に声を掛けられもしない。門を潜ると中央の道に沿ってレンガ造り2階建てな建物が幾つも並び、神殿というより学校という風情。若者が出入りしているから、本当に学校かも。他に2階まで届く大きな扉が付いた建物もあるけど、扉は閉じているから中身は謎。

 道の突き当りに、尖塔が申し訳程度に神殿っぽさを感じさせる建物があり、そこへ向かう。ちなみに、道を神殿(推定)に向かう人は他に居ない。


「ここが神殿じゃろうか?」

「そうです。始めていらっしゃる方ですね。サガミハラ様の神殿にようこそ」


 そう言えば、以前他の女神との面会では順番待ちをすることもあった。神殿に来る人はお祈りして帰っていく人が大多数で、面会まで求めるのは稀だから順番待ちは滅多に無いらしい。ここでも順番待ちはなく、サガミハラさんとすぐ面会させてもらえる様だ。


「お名前を……」


 奥の部屋で神官さんが僕らに声を掛けるも、返事をする前に白い空間に移動させられた。久しぶりの、他の女神の空間だ。


「ようこそ、噂の女神達」

「噂の?」


 噂になることは、数え上げればキリがないほどやらかしてるから、どの噂なのかは分からないけど、一方的に知っているらしい。


「西の人達からは、あなた達が来たら捕まえるように要望が来てるわ。あ、大丈夫よ、私はそんな事はしないから。でも連邦に所属してる女神なら、土地の人がそう願えば、言う通りするかも知れないから、注意してね。だから会っても大丈夫なのは、私以外にはヨコハマとハダノくらいね」

「オダワラはどうしたのじゃ? あやつは大丈夫じゃろう」

「オダワラさんか。どうしてるのかしらね。保護の役目を奪われた女神とは、向こうからやって来てくれないと連絡取れないの。あなた達みたいにね」


 他の女神もそうで、連絡がつくのはヨコハマとハダノ、連邦でも女神の力を取られなかったフジサワとヒラツカの4人。要するに、先の戦争で不在あるいは無事だった女神達。

 サガミハラさんがフジサワさんから聞いた話によると、武田方は女神が不在の間に諸領邦を攻略あるいは調略し、それらの都市は後に女神が復活しても女神に外交が届かないそうだ。

 女神達本人は、チガサキだけ唯一居場所が分かっていて、西の都に軟禁状態で、空きを見てこっそりフジサワに手紙を送ってきたそうだ。他の女神とも会う事は出来ず、同じ様に何処かに軟禁されているかもしれないという予想があるだけ。軟禁から抜け出して来ないのは、地元を人質に取られているためだ。その状態はもう50年も続いており、皮肉なことに女神を軟禁先に縛り付ける地元は、女神のことを気にする事も無くなって来ているそうだ。


「オダワラさんを助けたい?」

「アヤツのことじゃ。国を押さえられたままでは、自分が抜け出すことに良しとするまい。連れ戻すためには、国を取り戻す他ないのじゃな」


 サガミハラさんが頷く。この状況からの脱却には、武田軍を追い出して連邦を解体させ、女神を自由にすることだけど……


「連邦の人々は、大部分は連邦から抜けることを望んでいないわ。連邦のおかげで魔王軍の進行を止められていると考えているし、実際にその通りだから」


 武田軍を追い出して魔王軍が来たのでは、この街に居た人族のように今度は難民だ。それと比べて、連邦での生活は不自由でもないし、西からは新しい技術が流入してその恩恵に浴しているため、そこから離れる利益もない。不自由になったのは自らの上に連邦が被さって来た領主と、軟禁された女神だけ。なるほど、連邦は崩れない。


「さて、それじゃあ今度は、あなた達の番。秘密は守ってあげるから、何が起きたのか教えてもらえる?」


 全てを説明出来るほどに信頼してるわけではない。だから、武田丈二の正体、4人と魔王、そして僕の話は避けた説明になる。封印されてしまった事、佐倉のサクラが倒されて封印が解けたこと、ハコネと空間が繋がってる関係で復活後は八王子から出られたこと。


「飛ぶ魔法! それを知りたかったの。それがあれば、私の悲願が叶う」


 以前どうやって相模原を通らず八王子に行ったか説明する際に、飛行魔法が出てきたら、サガミハラさんはそこに食いついた。


「来て欲しい場所があるから、神殿に戻ったらこの場所に来て。私はそこで待ってる」


 そう言い、地図を見せられる。相模原の街から南東。


「そうそう、街を離れたら、空を飛んで良いからね。いや、ぜひ飛んで来てね」




 サガミハラさんが言う通り、街を出て森に入ったところで空へ。

 上から見下ろす森は、冬でも葉を茂らせる常緑樹。これが全部落葉樹だったら、下から丸見えだった。森の下にある道からは見えないのを良いことに、指定の場所に向かう。


「あれじゃな」


 森の中に、林冠上に飛び出している塔。上は半球状のドームで覆われている。どこかで見たことがある形状。

 その塔の脇に降りると、空からは見えなかったけど塔の隣に小屋が2棟建っていた。そして、塔の入口で、扉を開けて待っているサガミハラさん。


「さあ、入って。ここが何か、上がりながら説明するわ」


 等の中に入ると、右手に塔の壁面に沿って上がる螺旋階段があり、中央は何も置かれていない。


「外の建物、あれは来客が来た時に使うため。街からここまで歩くと半日かかるから、泊まって行く事もあるの」


 中央が吹き抜けな螺旋階段を上がり続けて、ついに上に天井が見える。螺旋階段はその天井の向こうに続いている。 


「これが何か、分かる?」

「天文台」

「そう。ここからソラを眺めるの」


 もちろん今は昼だから無理だけど、夜になったら宇宙(ソラ)を眺めるそうだ。それと飛行魔法の関係はと言うと、


「飛行魔法というのは、空を飛べるのでしょう? だったら、さらに高く飛んで、あの星々まで行けるんじゃないかしら?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ