コーディネーティング
「言葉ちゃん本当にかわいい♡ これも着てほしい♡ ……あっ待ってその服にあれ併せてほしいかも! ……うんうんやっぱり小物を併せるとビシッと締まるね! じゃあ今度こそこっちを着てもらって〜……」
「……」
たすけて、という目で言葉が僕を見ていたが、僕はあえてそのSOSをスルーすることにした。むしろののかの方を見つめ、もっと頼む、とサムズアップを決める。任せとけ、と言うようにののかもサムズアップを決めた。
それを見て言葉は誰も助けてくれないと悟ったらしい。小さくため息を吐くと、勢い良くカーテンを閉めた。
「ののか、選んだ服見せてもらってもいい?」
「もちろんいいよ! はいどうぞ」
ののかは僕の申し出を快諾すると、カゴの中身を見せてくれる。色とりどりの洋服。1つ1つが可愛いのは分かるのだが、何をどう組み合わせれば「センスがいいファッション」になるのか……僕にはさっぱり分からない。
「もっとファッション誌とか読んだりSNSで情報収集すればいいと思う」
「僕何も言ってないんだけど」
「顔見れば分かるよ~」
親友のことだもん、とののかは笑う。……僕はののかのことで分からないことばかりだと思っているが……。
「じゃあ1個1個説明するね。……これはまず『このブラウス可愛いな!』からこれをベースに服を選んでいって、それでこれは結構裾がふんわりしているから逆にボトムスはラインがしっかりしているものを……」
ののかが説明してくれていることを、僕はしっかりと脳内に刻み込む。服の形状やカラーリングも、熱心に。
……ここで服を買っても、元の世界に帰った時に彼女に着せてあげることは出来ないから。ここから出たら、せめて似たような服を買ってあげたい。そう思って。
ののかにはきっと……この想いは、バレているんだろうな。
「……着れたけど」
するとカーテンが開き、頭上からそんな声が聞こえる。僕は顔を上げて……目を見開いた。
まず一番目を引くのは、真っ赤なワンピース。言葉の瞳の色と同じ色。言葉の動きに合わせて、裾がひらひらと踊るように揺れている。そうして揺れるたびに、スパンコールがキラキラと輝いていて、まるで星だ。そして彼女はそこに、ワンピースとは少し違う赤色の……レース? みたいなものを肩に掛けるように着ている。花柄の刺繡が上品さを出している。大人っぽい雰囲気に、見惚れてしまった。
「かっ……わいい~~~~!!!! ちょっと普段着にするにはフォーマルすぎるかもだけど、特別なお出かけとかには絶対いいよ~! やっぱり言葉ちゃんは赤が似合うね♡ 最高♡」
「……こんなに可愛いの、私には、似合わないよ」
テンション高くののかが褒めたのも束の間、言葉が暗い表情で首を横に振り、それを否定する。だから僕はすぐに1歩前に踏み出して……その手を握った。
「……そんなことないよ。すごく、かわいい」
「……っ」
僕がそう言うと言葉は微かに頬を赤く染め、小さく息を呑む音がする。そしてすぐに僕から視線をそらしてしまった。
「帰ったら同じ服買うね」
「え……いいよ」
「いや、僕が見ていたいから買う」
「……そう、好きに、すれば」
「うん、好きにする」
「……」
「灯子って本当に言葉ちゃんのこと大好きだねぇ」
いいことだ、と後ろでののかが笑っている。……大好きなのはもちろんそうなのだが、なんか他の人から改めてそう言われるとなんだか気恥ずかしい。
「ねぇ言葉ちゃん、言葉ちゃんさえ良ければこのままこれを着て遊ぼうよ」
「え。……えぇ、っと」
「だめ……かな?」
ののかが上目遣いでうるうると言葉を見つめる。んぐ、と言葉は少しだけ声に詰まり、しばらく悩んでいたようだったけど。
「……まあ、別に、いい……けど」
「本当!? やったー! お会計お会計♪」
許可が取れるや否や、ののかはレジまでダッシュする。その素早さに、僕と言葉は思わず顔を見合わせて……。
「……ふふっ、ののかってば必死」
「……そうだね」
僕がそう笑うと、言葉もそう呟く。その顔には微かな笑みがあって、僕はこっそり嬉しくなってしまうのだった。
「灯子もワンピースになろう」
「なんて?」
会計が終わたったらしいののかが帰ってくる。すると何故かその服装が黄色を基調としたワンピースに──僕が星のようだと思ったあのワンピースに変わっていて、いつの間に、という驚きと突然ワンピースになれと言われた驚きで、思わずそう聞き返してしまった。
「そういえば私もワンピースあるなって思って」
「そうだね……あの時買ったし懐かしいね……」
「灯子だけワンピースじゃないの逆に目立つからワンピースを買おう」
「いやどういう理屈」
「言葉ちゃんも灯子のワンピース見たいよねぇ!!!!」
「……」
「……」
「……見たい」
「じゃあ着る」
「決断が早い」
言葉が見たいと言うなら仕方がない。……まあ僕にファッションセンスなどないので、2人に似合うものを選んでもらおう。
そう決めた僕はワンピースが置いてある棚を探して歩き出す。あははっ、とののかが笑い、2人分の足音が後ろから付いて来た。




