第8話:再び変な噂
川岡さんとは二年生二学期で隣の席になるはずとはいえ、一年生のときからある程度は距離を縮めておきたい。しかし部活ではなかなか話すことができない。かといってクラスが別だとほとんど会うチャンスもない。チャンスがなければ作るしかない!ということで昼休みには他のクラスの前の廊下をあてもなく歩くことにした。偶然に廊下で会うかもしれないし、そうすれば挨拶ぐらいはできる。まぁちょっと挨拶したぐらいで印象が変わるということもないかもしれないが。
マンモス校で9クラスもあるので、自分のクラスからかなり離れたところまで歩いていく必要があるのがとっても不自然に見えそうだが仕方がない。昼休みの時間は、クラスの外で話をしている女の子のグループや、走り回っている奴がいたりとかなり賑やかなので、そこまで目立たないかもしれないことを祈るだけだ。
ある日、廊下を歩いていると同じ水泳部の吉沢さんがクラスから出てくるところにバッタリと会った。吉沢純子さんは背は低めで、水泳部ということもあってか髪は短く、少しぽっちゃりしているけど、とても可愛い女の子だ。しかも成績は学年で一桁台で水泳部の中では一番人気があった。俺が水泳部で好きな女の子はもちろん川岡さんだったが、吉沢さんは憧れの存在のような感じだった。
「こんにちは、吉沢さん。調子はどう?」
「あっ向井君。どうしたの、こんなところに」
「気晴らしに校舎の中を歩いているんだよ」
「よくわからないけど、それじゃね」
ちょっと話ができたくらいで、とても印象が良くなるとは思えないな。偶然に廊下で出会って話をして、さらには印象を良くするというのは、かなり難しいミッションのような気がしてきた。
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その後も一ヶ月ぐらい昼休みに廊下をさまよってみたが、数回吉沢さんと挨拶したぐらいで、川岡さんとは会えずじまいだった。タイミングが悪いのか、昼休みにクラスから廊下に出ていないのか。クラスの中を確認できればよかったのだが、さすがに他のクラスの奴が毎日のようにクラスの中を覗いていたら怪しすぎるからな。
クラスに戻って席に座ると、隣の坂上さんから話しかけられた。
「向井君、なんか変な噂がたっているよ」
「えっ、また噂?今度はどんなの?」
「昼休みに廊下で女の子をナンパしている軽薄男だって」
声をかけたのは水泳部の知り合いでナンパじゃないんだが。と思ったが、確かにそのことを知らない奴が傍から見たら、ナンパしているように見えるか?いや、挨拶しかしていないんだから絶対ナンパじゃないだろ。別に遊びに行こうよとか言っていないし。この噂には悪意を感じる。
「いや、水泳部の知り合いに挨拶していただけだよ」
「週末のデートに誘っているんじゃなくて?」
「そんなことをしたら、恋バナとして噂になっているよ」
「そりゃそうか」
ただでさえも恋バナの噂は広がりやすいのに、廊下でデートに誘ったりなんかしたら火に油をそそぐようなものに違いない。それにしても俺が廊下で挨拶しているところをチェックしているとは中学生の観察力の高さは凄いものがあるな。軽薄男という噂が流れるのはさすがにまずいので、昼休みに偶然に会うことを期待しつつ挨拶に行くのはやめることにした。それにしてもクラスが違う女の子とどうやったら親しくなれるのだろうか?タイムリープする前にAIに聞いておけば良かったと後悔するのであった。
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